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Tokyo, 2008. 9. 30
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation and translation by Stanley George Bodman

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フェイントの『ファシネイション』は、個人的に2008年のベスト作品のひとつだ。リリース直後に実現した久々の再来日公演もライヴ・バンドとしての実力の高さを示す素晴らしい内容だった。その直前に楽屋で行なわれた、唯一の貴重なインタビューを以下にお届け。これまでトッド単独のインタビューは何度かしてきたので、せっかくだからダポーズにも同席してもらいました。

「多くの人々は自分の弱さを隠すために『それについてはもう知っている、あれに関してはもう経験した』って虚勢を張るけど、僕達はそうはなりたくないね」

ようやくフェイントのライヴを再び見ることができてとても嬉しいです。これまで本国〜オーストラリアとツアーを続けてきて、調子も最高なところにきてるんじゃないかと期待しています。久々の日本、昨夜の大阪公演はいかがでしたか?

Dapose:最高だったよ。本当はもっと日本でたくさんライヴできたらいいんだけどね。

Todd:そうだね。本当に日本は大好きだよ。

まだ最新のステージを見る前なので、あまり具体的な質問はできないのですが、新作『ファシネイション』の収録曲をライヴでプレイしてみた手応えはいかがですか?

Dapose:新曲は良い感じだと思うよ。ここに来る前にアメリカのツアーでも早速やったけど、オーディエンスの反応もいいし、何より自分達が演奏していて楽しいね。

Todd:新しい曲をライヴでプレイするのは、いつだってチャレンジングなことなんだ。僕達の場合、ライブで再現することを想定して曲を書いたりはしないからね。

Dapose:なるべく音源通りに再現しようとはするけど、そのまま忠実に再現する必要は特に無いと思ってる。ライヴではライヴの楽しみ方があってもいいだろうし。

フェイントのライヴと言えば、映像素材を駆使した凝ったステージングで有名ですが、ライヴでプレイする新曲に合わせた映像を全て用意するとなると、レコードを作るだけでなく、映像まで含めて表現が完結するような感覚になってきませんか?

Todd:間違いなく、常に色んなアイデアが頭の中をグルグルと廻ってるよ。今回のレコーディングでも映像製作をどんどん進めたかったんだけど、気がついたら、アルバムのボーナス・トラックの製作に予想以上の時間を費やしてしまって、結局はボーナス・トラックも完成させられなかったし、各パートのアレンジや作曲自体がなかなか終わらなかったせいもあって、望んでいたほどそういうマルチメディア的な表現に力を注ぐ事ができなかった。アートワークにはそれなりに時間を費やせたけど、映像の新作は全く出来なかったね。

Dapose:とはいえ、そういうヴィジュアル面での表現というのも、このバンドにとって非常に重要な側面であることに変わりはないよ。今後もビデオを作ったり、映像を使ったステージングにより力を入れていきたいとは思ってる。

では、以前トッドが「ライヴ用に映像作品もたくさん作るから、いずれDVD作品も出したい」と言っていたのですが、その計画についての意欲はまだ持っていますか?

Todd:昨日もその件に関してレーベルとメールでやりとりをしたところだったんだけど、結論から言うと、まだ時間はかかりそうだね。もちろん僕らの方は作る意欲は満々なんだけどね。

最新作ではセルフ・プロデュース体制のもとで、メンバー全員が満足するまで徹底的に作業をつきつめることができたとのことですが、ソングライティング〜アレンジメント〜レコーディングのプロセスを通じて5人が完全に民主主義的であることを貫き通すというのも、なかなか難しいのではないかと思います。フェイントでは一般的にどのように曲が完成していくのか、創作プロセスを教えてもらえますか?

Dapose:大抵は、誰かがモチーフを持ってきて、それを各々持ち帰って曲にしてきて、みんなでそれぞれのヴァージョンを聴き比べながら1つの曲に仕上げるっていうパターンが多いかな。だから、1つの曲でも、必ず色んなバージョンが存在するんだ。まぁ、最終的なOKの判断を下すのはトッドなんだけど。

Todd:残念ながら今まで1度も、インストの曲をまず作ってから、そこに歌だけをのせるっていうパターンが成功した事例がないんだ。だから大抵はヴォーカルのメロディーを作ったうえで曲を作っていくか、ダポーズや他のメンバーが持ってきたパーツを元に歌を考えて、そこからどんどん組み立てていくっていうパターンが多いかもしれないね。

『ファシネイション』収録曲の中にも、アッという間に出来上がってしまった曲と、反対に物凄く時間がかかった曲があるそうですが、両者の代表となるナンバーはどれか、それぞれ教えてください。また、後者はどんな風に手こずったのでしょうか?

Todd:そうだねぇ、アルバム最後の曲はとにかく大変だったね。逆に“マシーン・イン・ザ・ゴースト”はアッという間に出来た。

Dapose:“サイコ”や“ギークス・ワー・ライト”はどっちとも言えないというか、もっとライヴっぽいアプローチというか、一発録りに近い感じで作ったんだけど、他の曲はどれもバラバラに作っていったから大変だったね。サビだけ先に録って、そこから次のアイデアを考えつつレコーディングするっていう工程だったから。

Todd:“アイ・トリート・ユー・ロング”は、最初ひとりで作った時は「こんな歌、誰が歌うもんか!」って(自分で作ったのに)言ってて(苦笑)、それからダポーズがツアー中にその曲をラップトップで色々いじりだしてから、ようやく面白くなってきたっていう、ちょっと変な流れで出来上がった曲だったね。

ジョエルのブロークン・スピンドルズをはじめ、メンバー各自サイド・プロジェクトをやっていますが、それらはフェイントでの特殊な創作態勢とバランスをとるために必要なことだったりするのでしょうか?

Dapose:どうだろう……あくまで個人的なことだし……。

Todd:みんなが忙しくやっている姿を見るのはいいものだよ。何よりバンドっていう他人のフィルターを通さずに、自分の考えだけで進めていけるしね。

Dapose:そうだね。ジョエルは少し違うけど、みんな常に誰かしらと作業してるから、それぞれが持っている特定の欲求が、そういうところで解消されているんじゃないかな。逆にフェイントとしても、それぞれのプロジェクトに興味を示しているしね。

Todd:バンドとしても、各自のプロジェクトに協力したいと思ってるんだ。これまではなかなかできなかったんだけど、今では自分達のスタジオがあるから、今後はもっと盛んにそういう活動もしていくつもりだよ。


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