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では、自分達が共感できるアーティストをあげるとしたら誰になりますか?

Jesse:クラシックな音楽にルーツを持っているアーティストだろうな。俺達の音楽を聴いてもらえれば、これまで話に出てきた音楽に影響を受けていることは明らかだと思う。俺達はLED ZEPPELINの大ファンなんだけど、彼らはどんどん違う音楽をやるようになっていった。DAVID BOWIEもその進化ぶりは最高だと思うし、常に素晴らしい音楽を作ってきているよね。

Sebastien:それに思い切ったこともやってきているしね。

Jesse:素晴らしい曲を作りつつも時代とともに違ったことをやったり、時代の先を行ったことをやったりしている人は大勢いる。特に名前をあげるのは難しいな。おそらく俺はGARY NUMANには凄く影響を受けていると思う。シンセサイザーとギターなんかを使ってロックをやった第一人者のひとりだからね。DEVOからも凄く影響を受けているよ。決まった方法じゃなく、どんな方法でやってもいいんだと思わせてくれたアーティストには共感できるな。

Sebastien:DEVOは凄いバンドで、真面目に音楽を作ってはいたけど、自分達のことを深刻に受け取ってはいなかった。俺は彼らのそういった面に刺激されるね。自分達のことを真剣に受け取りすぎのバンドが多すぎるし、そういったバンドは自分達のやっていることが他のバンドのやっていることよりも重要だなんて考えてる。俺は、それは違うと思う。俺達はこのバンドでやっていることは他のバンドとは違うと分かっているけど、だからといって、他のバンドよりも重要だなんて思ってはいない。人によってテイストは違うわけだし、俺達のことを好きな人もいれば、好きじゃない人もいるのさ。

Jesse:理想的には、みんなには俺達のバンドのことを好きでいてもらいたいか、そうじゃなければ嫌いでいてほしい。中途半端なリアクションはいらない。そういった反応を得るようなバンドでいたいね。

なるほど。さて、アルバムのジャケットにもなった、あなた方2人の顔に象の鼻がついたバンドのイラストについてなのですが。ジェシーによれば「リヴィングにいる象みたいな存在になりたい」ということで、このイメージが出てきたそうですね。

Jesse:この部屋に象がいると想像してみてくれ。俺達はここでインタヴューをしていて、君がそこにいて、俺はビールを飲んでいる。ロビーでは何か別のことをしている人達がいる。そこに突然象が現れたら、ここで起こっている全てがストップするだろ。インタビューなんてしてる場合じゃなくなって、象の行動に注目することになる。その存在に対応しなければならない。象を部屋から追い出すことは無理だからね。俺達がライヴしている時はそれが君達の選択肢となるんだ(笑)。つまり、それに対応するか、自分が出て行くしかないんだ。俺達はそういった存在だ、ということなのさ。今までも、これからもね。

わかりました。さて、デビュー・アルバムには『ユー・アー・ア・ウーマン、アイム・ア・マシーン』という非常にユニークなタイトルがつけられていますね。9曲目に同名のトラックが収められていますが、歌詞の中にこのフレーズはありません。この言葉がどのようにして出てきて、この曲とアルバム全体に冠されることになったのか教えてください。

Sebastien:この曲を書いた時、2人でリハに入る前にテープを聴きながら歌詞を書こうと思って、仮で録音しておいたんだけど、それを当時のガールフレンドが聴いて「今『You're A Woman, I'm A Machine』って言った?」って訊いてきたんだ。「いや、そんなこと言ってないよ」と答えつつも、凄く良いラインじゃないか、と思ってね。それでジェシーにも伝えて、どうしてだかはわからないけど、俺達のバンドにピッタリだと感じたんだ。曲のタイトルにはなっていても、歌詞としては出てこない。何度か使われている言い回しで妙なタイトルだけど、この言葉が俺達の現実を表すようになったんだ。別に自動操縦装置で動いているというわけじゃないけど、俺達はこのバンドをやって、レコーディングして、プレイしているマシーンなんだ。ここでは「Woman」になっているけど、別に他の人でもいい。彼らは彼らのやるべきことをやって、俺達は俺達のやっていることに集中しているから、自分達がマシーンみたいに感じるんだ。

Jesse:反応もマシーンみたいなんだ。キッズが俺達のところに来て、「オフをとって、ツアーを休むことはないの?」なんて訊いてくるけど、俺達の答えはNOだ。そうすると彼らは笑って、「そんな生活ができるなんて信じられないよ」なんて言う。でも俺達は働くのが大好きなんだ。この仕事は最高だよ。俺達は、仕事自体はマジメに受け取っているけど、自分達のことをマジメに受け取っているわけじゃない。このタイトルは俺達の真実なんだ(笑)。俺達2人の関係や、このアルバムをプロデュースしてくれた奴もアルバム制作中におかしくなっちまって、ミキシング作業が俺達のグループ・セラピーみたいになっていたこともあったよ。コントロール・ルームで何時間も、その時に俺達が抱えている問題について話し合ったりしたんだ。音楽を作っていることなんてすっかり忘れていたほどだった。

Sebastien:俺達のアルバムには、タイトルが反映されていない歌詞が沢山あると思う。ほとんどの曲がそうなんじゃないかな。タイトルを先に作って、後に歌詞を完成させる時もあって、タイトルは歌詞の方向性を決めてくれるだけのものになっているものもある。

Jesse:よくサビの歌詞から曲のタイトルを決めるバンドもいるけど、俺達にとってタイトルは小説のタイトルみたいなもんで、特に詞の中に出てこなくてもいいんだ。

Sebastien:アルバムを作っている間、俺達はマシーンみたいに働いていて、一緒に住んでいる人、愛している人がそれによって辛い思いをすることになった。それでアルバム・タイトルにしたんだ。

歌詞は全体に恋愛のシチュエーションにおける激しい気持ちを取り扱ったものが多いように思えます。こうした感情を歌の素材にする理由は特に何かありますか? また、歌われていることは実際に自分で体験したことに基づいているのでしょうか?

Sebastien:ああ、どの曲もエモーショナルなのは、自分の知っていることや自分の経験したことが基に書かれているからさ。ライヴで意味のないことを歌っていたら、このバンドの本来の楽しみが人々に伝わらないと思う。だからパフォーマンスしている間もその歌われている内容に感情移入するようにしているよ。

「Little Girl」という曲では、生まれてくる姪への恋愛感情を歌っているようですが、この歌詞はどのようにして出てきたものなのでしょう?

Sebastien:俺の姪がまだ生まれる前に書かれた曲で、彼女が生まれる前からパフォーマンスされている曲なんだ。その後、彼女が生まれたんだけど、本当に彼女は美しいんだ。初めて彼女を見た時から俺は彼女の虜になってしまったよ。初めての姪だったし、俺の家族にとって初めての赤ちゃんでね。俺は、自分が知っていること、自分が歌いたいと思うことを曲にしようと考えているから、ここでは姪のことを歌いたいと思って歌詞に書いたんだ。人生で子供を作るのは大切なことだと思う。

Jesse:子供を作るって、人生で最も大切なことだと思う。自分達が哺乳動物で生態系、食物連鎖の一部だという事実を受け入れることで何もかもが納得いくようになるんだ。「どうやって生きていけばいいんだ。人生、どうすればいいんだ。生きている意味って何なんだ」なんて悩んでいる人が大勢いるけど、そういった人も自分の子供ができれば生きていることが何なのかわかるようになるはずだよ。そうすることで迷いがなくなるし、そうであって欲しい。俺も自分の子供を早く持ちたいと思ってる。この前、自分の子供ができたんじゃないかと思ったことがあって、その時は涙が出そうなくらいに興奮したね。怖いことではあるけど、凄く素晴らしいことでもある。あの感情は他のどんなことにも例えられないくらいに圧倒的なものなんだ。

また、「Black History Month」だけは、恋人でなく、子供達に歌いかけている内容になっていますね。この歌はどうやって出来てきたのでしょう?

Sebastien:ある夜ニューヨークにいた時にインスパイアされて書いた曲だ。曲のタイトルは2月に思い付いたもので、トロントでは2月が「Black History Month(黒人歴史月間)」なんだ。だから、アイディアとしては複雑なものじゃない。平面図と建築スケッチを抱えて街を駆けずり回っている男性というのが思い浮かんで、そのアイディアを基に曲を完成させたんだ。高校時代に物語を書くようになって分かったんだけど、書いている時はがむしゃらになっていて、その時は書いているものがどういう意味を持っているのか分からないけど、後になって分かってくるんだ。感じるがままに書いて、後で読み返した時に、どうしてそれを書いたのかが分かるっていう。そうすると自分のことがよく分かる。今でも同じで、歌詞を書いた後になってその歌詞の意味が分かるようになる。どこからともなく頭に浮かんだものを書くから、その時にはどういった意味があるのかなんて分からない。もちろんナンセンスなことを書いているわけじゃなくて、心にあるものを書いているんだ。後はどのように解釈するかなんだよ。

Jesse:例えばTHIN LIZZYの「Boys Are Back In Town」なんかも同じで、この曲を書いた人間は実際に街を離れてもいなければ、友達と遊び回っていたわけでもない。本当は友達なんていない、のけ者だったんじゃないかと思うよ。でも、彼にはあのコンセプトが頭に浮かんでそれに沿って歌詞を書いたんだ。情景が目に浮かぶような歌詞だよね。その時の状況とかが想像できる。俺達も、そういった物語を書くことが好きなんだよ。特に歌詞でそうするのは好きだね。そういった歌詞は他のものよりも記憶に残るからさ。

Sebastien:俺にはいつでも色んなアイディアがある。自分の持っていたアイディアが基になって書かれた歌詞を歌う時は、そのアイディアを頭に浮かべながら歌うんだ。

さて、私は見逃してしまったのですが、実は2004年の7月に初来日ライヴをやっているんですよね? その時の日本についての感想を聞かせてください。

Sebastien:日本には6〜7日間いたな。何だか夢の中みたいって言うか、すごく違う国だと感じた。もちろん、外国なわけだから当たり前なんだけど。渋谷に滞在していて、そこからはあまり出なかったな。

Jesse:君も知っているようにクレイジーな街だよ。渋谷の駅にあるホテルに滞在していたんだ。

Sebastien:日本人も俺達と同じように息をしている、同じ空気を吸っているということに気付いたんだ。体つきも一緒だということにね。だって、日本は俺達から凄くかけ離れた国で全然違うからさ、そういったことが新鮮に感じたんだ。日本に行く前はドイツにいて、そこでも少しそういう感じはあったけど……日本では本当に何が書いてあるのか全く理解できなかった。俺はカナダ出身でフランス語と英語は理解できるから、それまで言語でまごつくようなことなんて一度もなかったのにね。

Jesse:ドイツではレストランでオーダーするのは大丈夫だったのに、日本に来たら全然ダメでさ。

Sebastien:渋谷では街中のスピーカーから叫び声が聞こえて、どこを見ても何か書いてあって、人でごった返していてさ。俺が街に出たら背も高いし髭も生やしているしでみんなに注目されるかと思ってたけど、全然そんなことなかったね。街では色んなことが起こっているから、誰も俺達になんて注目しなかった。外国人である俺以外のみんなは何が起こっているのか理解しているようだったけど、俺には全く分からなかったよ。でも、すぐに慣れて、渋谷の街を歩き回ってビールを飲んだり、英語で人に話しかけるとそれに対して日本語で返事が返ってきたりして、滞在中は本当にクレイジーだったね。

Jesse:俺達は犬みたいだった。自由になってワイルドに走り回っているか、ケアしてくれる人にただついて行っているだけか。自分の主人には何が起こっているのか分かっているけど、自分では分からずにただ一緒について行っているだけみたいな感覚さ。見るもの全てが面白かったよ。日本がどんな場所なのかは、そう簡単には概括できないな。それはどこの国もそうだけどね。

では最後に、アルバムを完成させ、世の中に送り出した今、これからどのように活動していきたいか、将来の目標・野望について聞かせてください。

Sebastien:みんなに楽しんでもらえる良い曲を作って、自分も楽しみたいってことだね。後悔だけはしたくない。ずっと作曲はしていきたいし、できるだけ長く活動を続けていきたい。

Jesse:世の中にはデュオで活動しているバンドがいるのに、それを忘れている人が大勢いると思う。AIRやDAFT PUNK、CASSIUS……あと誰だっけな。昨日は色々と覚えていたのに。

Sebastien:STEELY DANもいるし。

Jesse:そう、STEELY DANもデュオだ。

THE WHITE STRIPESに比較されたりとかはしますか?

Sebastien:俺達のサウンドをよく知らない人が、俺達のアルバム・レビューを書かなきゃならなくなった時に、他の2人組と言えばTHE WHITE STRIPES、ということで比較されたことはあるな。

Jesse:今、彼らが盛り上がっているからね。

Sebastien:俺の最初のバンドも、俺とギタリストの2人組だったんだ。初めてのショウは、ブルーズ・ロック・バンドとしてやったものだったよ。THE WHITE STRIPESみたいだったけど、もっとマイナー調だったな。

Jesse:2人組で音楽を作っている人達だったら他にも大勢いるのに、俺達が2人だってことばかり注目されてしまう傾向があるな。デュオだってこと以外には、俺達が背が高いことや長髪だってこと、顔に象の鼻が付いているってことにみんなはこだわりたがる。バンドとしての露出を考えるとそれも良いことではあるけれど、やっぱりバンドとして長期間活動していくためにも、そういったことは忘れてもらって、俺達の音楽に注目してもらいたいね。それが当面の目標だ。そうしてもらうことで、俺達は自由に音楽が作れるようになる。俺達2人でまだこれからも何曲も書けると信じているから、そうできる時間が必要なだけなんだ。どんどん進化していけると思うし、それがこのバンドの素晴らしさだと思う。長期の目標としては、どれだけ成功できるかということになるな。アルバムがリリースされた国ではアルバム自体成功しているし、ファンも獲得できた。これまでの俺達のファンは左よりの革新的なキッズ達だったけど、もっと真ん中にいるキッズ達にもファンになってもらいたい。俺の言いたいことわかるかな? 次のアルバムは違うことをやって、また彼らの興味を引くようなものにしたいんだ。

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