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02年に、そのスプリット盤のリリースを受けて企画されていたイースタンユースとのツアーは、あなたが急病で倒れ、緊急手術を受けるという事態となったため、残念ながらキャンセルになってしまいました。しかし翌年3月にリリースされたアルバム『アグリー・オルガン』は、とうてい病み上がりとは思えない、圧倒的な力強さが漲った傑作になったと思います。大病を患った経験が新作の内容に反映していると思いますか? また、人生における困難を乗り越えることと傑作を生み出すことに相関性はあると感じますか?

Tim:確かに関係することではあると思うけど、今作の場合はその限りではないと思うよ。アルバムのほとんどは手術の前に出来上がっていたからね。つまり、アイディアはすでに揃っていたというわけ。それに、僕はアルバムを作るにあたって、それほど早くエモーショナルなレベルで元に戻れたとは思ってないんだ。だから、作品のほとんどが出来ていて良かったよ。

では、その経験が今後の創作活動にどのように影響してくると思いますか?

Tim:うーん、多分影響はあると思うけど、どのようにっていうのは分からないよ。どんな経験に関しても、それが僕の音楽にどう影響してるのかは分からないんだ。それが分かってしまったら、曲作りが健全でなくなる気がするんだよね。だって、原因と結果が分かってしまったら、正直に書けなくなると思うんだ。純粋にいろいろ経験して曲を作るっていう生活を続ける方がいいと思うよ。頭に浮かぶものを自然に曲にして、曲にしてみてからやっと何について書いてるのかに気付くっていうね。

なるほど。『アグリー・オルガン』では、タイトル通り、オルガンの音が作品中の随所に登場しますが、こういうアレンジが先にあって、タイトルやジャケットが決定したのでしょうか? 通常のキーボードの音ではなく、独特の味わいがあるオルガンの音色が使われることになったのは何故なのでしょう?

Tim:オルガン・パートだけは、アルバム・タイトルを決めた後で書き足したんだ。そして、すべてのオルガン・パートを、あの独特で奇妙なオルガン・サウンドで統一したかったから、他のキーボードは適さなかったんだよ。

オルガンの他にも、トロンボーンやヴィブラホン、チューブラーベルズなどが印象的に使われていますが、こうした楽器の導入に関しても、やはり歌の内容/そこで表現したいことが決まってからその音色が必要になってアレンジが決まるという順番なのですか?

Tim:そうだな……まずはメンバー5人で、余分なものを取り除いた形から始めていったんだ。僕達のメインの楽器はベース、ドラム、ギター2本、チェロ、それとヴォーカルになるわけだけど、まずそれぞれのパートが完成した時点でレコーディングを始めたんだ。で、レコーディングを進めていく中で、他にどんな楽器を合わせたらいいかっていうアイデアを思いついていったんだよ。他の楽器を演奏してくれるゲスト・メンバーも同じスタジオで練習してたから、やりやすかったね。大体はそんな感じで進んでいって……あ、ティンパニを使った曲があるんだけど、それはレコーディングの前から決めてたよ。作曲の段階で、ティンパニが必要だってわかってたんだ。チャイムを使ったところでもそういうのがあったっけ。でも、その他はほとんどの場合、追加の楽器を使おうって決めたのはレコーディングが終わって編集の段階に入ってからだった。

楽曲を完成させていくプロセスをもう少し詳しく教えてください。

Tim:うん。僕の場合、作曲はアコースティック・ギターで始めることが多いんだ。アコギを弾きながら、面白くて新しいギター・パートを探っていくんだよ。で、その曲に合いそうなメロディを組み合わせていって、そこから続けて……ギター・パートが異常にシンプルでメロディが凝ってる時もあれば、その逆もあるんだよね……そうしながら、曲の構成やアレンジなんかの基本的なレイアウトをまとめていって、そこから先はバンドのメンバーとの共同作業になるんだ。どんな楽器を加えるかとか、みんなで話し合うんだ。テッドも僕と同じように、1からひとりで始めて、曲の原型を作るんだよ。

歌詞を書くのはあなたなんですか?

Tim:うん。僕とテッドだよ。

歌詞ができあがるタイミングは?

Tim:曲によっては、おおまかなアイデアが何ヵ月も前から頭にあったりするけど……でも歌詞をちゃんと書き留めていくのは、メロディがほとんど完成した段階からなんだ。メロディに合わせて歌詞を決めていく。それは毎回確実だね。

なるほど。アルバム中には、例えばハロルドという人物が登場しますが、これは実在する人間なのでしょうか?

Tim:いや、これは作り上げたキャラクターで、実際に僕の知り合いとかじゃないんだ(笑)。

どこから、この名前を取ったんですか?

Tim:“Harold Weathervein”はテッドが書いた曲なんだけど、一種の言葉遊びなんだよ。“Weathervein ”は、農家なんかの屋根に付いてる風見鶏(*weather-vane)と同じ発音で、それから……ほら、何かと敏感で、嵐が来たりするのを察知できる人っているよね? つまり、血管(*vein)で天気(*weather)を感じられる人って意味を含んでるんだ。実際はもっとこう、ちょっとしたことで怒りを爆発させてしまう、気まぐれな人のことを歌ってるんだけどね。

“Sierra”の歌詞には、特に激烈な印象を受けました。この曲の主人公の感情を歌うには、前半に自分達自身が出てくるような歌、続いて中盤に架空の人物が登場するナンバーを経て、聴き進むうちに現実と物語の境目を超越したような感覚にリスナーを叩き込むようなアルバム構成が必要だったということなのでしょうか?

Tim:えっと……アルバム前半は曲を書くということについての説明だってこととかを、全体を何度も聴いていくうちに気付いてもらえるといいと思っていて……聴いてすぐには分かりにくいと思うけど……うん、そうだね、君の言う通りだと思うよ。アルバムを最初から聴き進めて、前半にある曲を経てここまでたどり着くことで、この曲がもっとよく理解できると思う。そういう意味では、“Drift Wood: A Fairy Tale”も同じ感じだと思うな。

分かりました。ところで、ここ最近になって、アメリカのインディペンデント・ミュージック・シーンが非常に活発になってきているような印象を受けているのですが、カーシヴもその中で活躍する当事者のひとつとして、再びシーンが面白くなってきているなという実感を持っていたりしますか? あなた自身のインディー現況に対する雑感を聞かせてください。

Tim:質問する相手を間違ったね。僕が今興味を持っているのは、ビヨンセやマーヤなんかの方さ(笑)。彼女達のレコードを買うことはないけどね。もちろん、僕はサドル・クリークに所属しているバンドの大ファンだし、確かにここにきて、たくさんの良い音楽が出てきていると思うよ。

ブライト・アイズやイースタンユースの他に、共感できるバンドはいますか? この秋のツアーではブラッド・ブラザーズとも一緒に廻るようですが、彼らやマーズ・ヴォルタのようにメジャーのフィールドに切り込んでいこうという姿勢を持ったバンドについてはどのような見方をしているのでしょう?

Tim:それらのバンドのことは忘れちゃった。僕らメンバー全員、ブラッド・ブラザーズやマーズ・ヴォルタの大ファンだし、彼らはとても良いアルバムを作ったと思う。ただ、バンドがメジャーへ行くとかどうとかいう話には特に関心はないね。まあ、インディー・バンドが健全な理由からメジャーと契約するのはいいんじゃないかな。僕らの友達でもあるバンドがメジャーの世界で良い待遇を受けられることを祈っているよ。

アーティストとして今後の目標や野望などはありますか? 

Tim:うーん、ほとんどの目標はもう達成してしまったような気がするよ。音楽をやって生活していけるようになるなんて考えてもいなかったからね。だから全てに……感謝の気持ちでいっぱいなんだ。ツアーで色んなところに行くことも目標のひとつだったけど、ヨーロッパにはもう行けたし、これから日本にも行けることになって、本当に嬉しい。自分が日本に行ける日が来るなんて思いもしなかったな。望みがあるとしたら、今のこの状態を保つこと、それだけだよ。そしてクリエイティヴなソングライターであり続けたい、それ以上に望むことはないね。

最近はどんな音楽を聴いていますか? 最新のフェイバリットを教えてください。作品自体は昔の物でも今あなたがハマっているのであれば構いません。

Tim:この前、The Slitsを紹介されて聴いてみたんだけど、とっても良かったよ。

さて、この9月からは、去年のリベンジとなるイースタンユースとの全米ツアーが行なわれ、そして10月には今度こそ待望の初来日公演が予定されていますよね。どんなツアーにしたいと思っているか、抱負を聞かせてください。

Tim:いやー、そういうのは特にないよ、ほんとに。でも僕ら全員、日本に行って、イースタンユースの演奏を見て、新しいオーディエンスの前でプレイする機会を持つってことにエキサイトしてる。今回それら全てが実現できれば、それだけで大成功と考えていいんじゃないかな。

では最後に、来日公演を待ち焦がれている日本のリスナーにメッセージをください。

Tim:えと、こういうのって何を言うべきなのか分からないなあ。とにかく、日本のみんなと一緒に繰り出して、一杯やれれば嬉しいね。

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