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by E-mail, 2003.7
text by Yoshiyuki Suzuki


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ネブラスカ州オマハ出身のカーシヴ。とにかく現在のアメリカン・インディー・バンドの中でも特筆すべき、本当に素晴らしいバンドだ。03年春にリリースされた『アグリー・オルガン』は、チェリスト加入後初のフル・アルバムとなるが、その劇的な音楽性は単なるこけおどしではない、真の凄みに満ちている。壮絶な歌詞とも合わせて、中心メンバーであるティムの狂的な才能に触れる機会をぜひ持っていただきたい。

「カーシヴでは、曲作りに最善をつくし、それを信じ、もしみんなに受け入れられない場合はそのことに対処していこうって決めたんだ」

まず初めに、幼少時代はどのような音楽環境に育ったのですか?

Tim:僕には兄貴と姉が大勢いて、小さい頃からたくさんの良い音楽と出会う機会を作ってくれたんだ。やがて、幼馴染みでもあるベーシストのマット(・キャビン)と一緒に、早い時期からヴァイオレント・ファムズやザ・キュアーを聴き始めるようになった。それと同時期に、両親からはサイモン・アンド・ガーファンクルとか、キャット・スティーヴンスといった偉大なフォークのソングライターを教えてもらったんだよ。

自分でもギターを持って歌おうと思ったきっかけはどんなことだったのでしょう?

Tim:13才の時、何かをやってみたくなったんだ。当時の自分は、友達とつるんだりすること以外には何もやってなかったし。で、姉の1人がギターを持っていたんだけど、それを借りて昼夜を問わず弾きまくり始めたんだよ。義理の兄がくれたソングブックに載っていたポール・サイモンの曲を練習しながらね。

よく聴く音楽や、影響を受けたアーティストは? 生涯のフェイバリット・アルバムなども合わせて教えてください。

Tim:普段は主にトップ40ものを聴くようにしてるんだ。自分たちが属するジャンルの他のアーティストから影響を受けてしまわないようにね。生涯のフェイヴァリット・アルバムかあ……ヴァイオレント・ファムズのファースト・アルバムは、本当に偉大なアルバムだと思う。

ヴァイオレント・ファムズのどんなところに惹かれるのでしょう?

Tim:ヴォーカルに信じられないくらい個性があるところだよ。それってすごく大事なことだと思うし、僕もそうなりたいんだ。意識的に他人のスタイルを真似する気はなくて、彼らみたいに自分の個性をヴォーカルに出すことで、オリジナルなサウンドを生み出せると思うんだよね。

そういえば先日、ヴァイオレント・ファムズのゴードン・ガノが、大勢のアーティストにいろいろなカヴァー曲を歌わせるアルバムを作ってましたけど、もし、ああいった企画に参加するとしたら何を歌いたいですか?

Tim:ヴァイオレント・ファムズの曲をカヴァーするんだったら“グッド・フィーリング”だな。実はグッド・ライフ(※ティムの別プロジェクト)として、その曲をカヴァーしようっていう話もあったんだよ。それと、ずっと前から考えてるんだけど、いつか女性ヴォーカリストの曲だけをカヴァーしたアルバムを作ってみたいんだよね。小さい頃からよく聴いてるポップ・シンガー、たとえばシンディ・ローパーやバングルズ、GO-GO'S、スザンヌ・ヴェガ、それにミュージカルの曲とか、特に『グリース』が好きなんだけど。そんな感じでカヴァー曲候補に関しては、実はもう長〜いリストができあがってるんだ(笑)。

それでは、カーシヴ結成以前の音楽活動についても少し教えてください。Slowdown Virginiaというバンドをやっていたそうですが?

Tim:マットと僕は13歳の時に、それぞれギターとベースを弾き始めて、僕はまだ若くて歌えなかったから、もう1人別のシンガーを加えて、March Haresというカヴァー・バンドを組んだんだ。そのうちにオリジナル曲も書くようになって、カセットを地元でリリースしたりもした。それから数年後には僕が歌うようになって、Slowdown Virginiaをスタートさせた。そのバンドはCD1枚と何本かのデモ・テ−プを作ってから解散することになり、その後カーシヴとして再出発したんだ。

カーシヴを結成するにあたって、あなたはどのようなヴィジョンを思い描いていたのでしょう?

Tim:カレッジへと進んだものの、誰もが『まだ音楽をやり尽くしていない』と感じていたので、カーシヴをスタートさせることにしたんだ。それ以前のバンドでは、まだ自分たちを真剣に受け止めていなかった。10代だったし、バンドをやるってことに関して人の目を気にしていたりもしたしね。で、カーシヴでは、曲作りに最善をつくし、それを信じて、もしみんなにそれが受け入れられない場合にはそのことに対処していこうって決めたんだよ。

あなた方はネブラスカ州オマハを拠点に活動していて、所属レーベルも当地を代表するサドル・クリークですが、地元にはどのような音楽シーンがあったのでしょう? その様子と、カーシヴが地元のシーンとどのように関わってきたのかを教えてください。

Tim:オマハには常に素晴らしい音楽が存在している……それほどよくないものも少しはあるけどね。バンド活動を始めた頃、そういった地元のバンドを観て、自分達もオリジナル曲を書くようにインスパイアされたんだ。僕らはこのシーンの浮き沈みをずっと見てきたけど、今はとても健全なコミュニティになっていて、たくさんの素晴らしいバンドがたくさんの素晴らしいショウを行なっている。

レーベルメイトでもあるブライト・アイズとは、お互いの作品に参加しあうなど、特に交流が深いようですが、彼らとはどのように知り合ったのでしょう? そして、彼らのことを同じミュージシャンとしてどのように評価していますか?

Tim:僕らは彼らと同じ学校に通っていたし、コナーと彼の家族とは一緒に育ったようなものんだ。だから、みんなとても愛しているよ。コナーはとても優れたソングライターで、そのハイスタンダードな歌詞で僕らに影響を与えていると思う。

「ブライト・アイズのコナー・オバーストが新世代のボブ・ディランだとするなら、それに対して、カーシヴのティム・ケイシャーは新世代のジョン・レノンだ」なんていう論評もどこかで見かけましたが、このような言われ方についてはどう感じますか?

Tim:評論家先生にそう言ってもらえるのは嬉しいけど、メリットがあるとも思えないね。その種のコメントは、ハイプってやつを生み出すための誇大キャッチコピーを作ろうとしてるような人々に関係するものだと思う。

カーシヴは、セカンド・アルバムを完成させた後、しばらく活動を停止してしまいますよね。その原因はなんだったのでしょう?

Tim:僕は自己破壊的な性格だと見られてきたりもしけど、実際、僕にとって長い間ひとつのことに専念するのは大きな葛藤を伴うものなんだ。いったん解散したことは、その良い例だね。でも、その時の経験を通じて、カーシヴが僕の人生において最高のものだってことに気付かされたよ。

再結成して最初に制作された『CURSIVE'S DOMESTICA』では、いっそう音楽性の幅を広げていこうという意志が色濃く作品に反映しているように感じられるのですが、この時あなたの中ではカーシヴの新たな音楽的展開はどれくらい意識されていたのでしょうか?

Tim:再結成した時点で、自分たちの音楽を可能な限り革新的にすることが重要であり、アルバムごとに音楽的な成長をし続けていきたいんだってことを、メンバー全員が意識してたと思う。

続く5曲入りEP『BURST AND BLOOM』からは、チェリストのグレッタが加入しますが、ここで通常のロック・バンドにはあまりいないチェロという楽器を編成に加えようと思ったのは、どのような考えがあってのことだったのでしょう。

Tim:僕らは、それまでの自分達のサウンドを再構築するためにも、新たな要素を必要としていた。その点でチェロは、ムーディーでドラマチックな音楽を完成させるためには完璧な楽器だと思えたんだ。

同EPの1曲目“SINK TO THE BEAT”では、最初の方の歌詞が独白調になっていますよね。これはヒップホップの影響だったりするのでしょうか? また"They got a good fan base,they got integrity,they've got a D.C.sound, Shudder to Think,Fugazi and Chapel Hill around the early 90's. This is the latest from Saddle Creek〜" というラインなど非常に興味深いのですが、こういう歌詞を書いてみた動機はどういうものだったのでしょう?

Tim:自分の受けた影響を正直に晒すのって危険なことだけど、だからこそやってみたんだ。自分をそこまで正直に描写するなんて、ほとんどのソングライターは怖がってやらない。でも音楽の中で正直になればなるほど革新的なものが作れると僕は思ってるんだ。僕らの歌詞の多くが自虐的なのはそのためでね。正直言ってあまりポジティヴな自己イメージをもってないから、ああなるわけなんだ。

次に、イースタンユースとのスプリット盤『EIGHT TEETH TO EAT YOU』を制作しますよね。これにはどういう経緯があったのでしょう? イースタンユースについてどのように評価しているかも合わせて聞かせてください。

Tim:イースタンユースは本当に凄い音楽を作り出していると思う。とりわけ、日本語で歌ってる点については、心から尊敬するよ。特に英語が支配的な音楽産業界においてそうするってことは、自分たち自身の文化に対する素晴らしい誠実さの証明だよね。彼らは、ワシントンD.C.のハードコアと、日本の音階――詳しくは知らないんだけど、おそらくは日本の伝統的な音楽に基づいたものだろうね――その両方から影響を受けた、まさに“東洋と西洋の出会い”というべき、独自の音楽解釈をやってのけている。僕らはアメリカのリスナーに向けて、自信を持って彼らを紹介するために、ぜひ彼らとのスプリット作品をリリースしたいと考えたんだ。

スプリット盤に収録された楽曲を聴くと、チェロを使ったアレンジが『BURST AND BLOOM』よりも大胆に効果的な形で実現できているように思います。あなた自身はこのスプリット用に完成させた4曲にどのような手応えを感じましたか?

Tim:スプリット用にレコーディングした4曲は、チェロが入ることを念頭において書いた最初の曲だったんだ。だから『Burst and Bloom』の時よりも、チェロのパートがもっと明確にアレンジされているってわけ。

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