2003年8月17日→8月23日鹿児島(枕崎)一人旅
 
 
(11) そして博多へ。
 
 
 
2003年8月22日(金)、天気は相変わらずの晴天。今日は鹿児島の地を後に、博多へと向かいます。
 
今回の旅行、昨日までで日本最南端の駅を三つ訪れ、最終目的地[枕崎]の地も堪能してきました。こうなるとあとの日程はまあ、言ってみればおまけみたいなもんなんですが(笑)、でもまだあと二日間あります。それに今日はあの、JR九州の誇る豪華特急[つばめ]に乗るのです。油断は出来ません。
 
7時前に起床し、ホテルのレストランで朝食。洋食を戴きました。…が、思ったよりも食べれないものが多かった(ハムとか)。和食にしとくべきだったかなぁ(笑)
 
そして西鹿児島駅へ。これから博多へは、特急[つばめ]に乗って向かいます。JR九州の誇る、と言うよりはむしろ、今の日本の特急車両の中でも最高峰とも言われている車両です。そして今回、奮発してそのグリーン車に乗ります。言ってみれば日本の特急の最高峰の中の最高峰の贅沢を味わえるワケです。
 
8時を過ぎて、しばらくすると僕の乗る特急[つばめ]6号がホームに入線してきました。メタリックの車体が特徴的な787系。その顔立ちも従来の鉄道車両とは一線を画する独特のデザインです。
 
JR九州の最近の車両は、特急車両も普通車両も水戸岡鋭治さんというデザイナーの方がデザインを手がけられていて、外観も内装もそれまでの鉄道のイメージを覆す、斬新なものが多い様です。
 

西鹿児島駅ホームの看板。
こんなトコにまで西郷さんと桜島が…

ホームに入ってきました。
787系の特急[つばめ]。
 
と、僕の乗るグリーン車両の入り口近くには、客室乗務員のお姉さんが一人立っています。そしてグリーン車に乗り込むお客一人一人に対して「いらっしゃいませ」。深々とおじぎをしています。もしかしてこのお姉さん、このグリーン車専任の客室乗務員と言うことなんでしょうか。
 
さて、せっかくの[つばめ]。記念写真が欲しいところ。まだ発車まで時間もあります。そこで、客が引いたところを見計らって、お姉さんに頼んで撮ってもらいました。でも、このお姉さんが感じのいい、とっても綺麗でカワイイ人でした。正直言って、[つばめ]よりむしろお姉さんの写真を撮ろうとか、むしろお姉さんと一緒に写真撮りてぇとか思った位ですが。
 

[つばめ]の前で記念撮影(笑)

グリーン車のサイドビュー。
「TSUBAME」のエンブレム。
 
さあ、中に入ってみましょうか。ドアをくぐると、デッキの壁は一面木で覆われています。そして天井にはダウンライト。何とも重厚で高級感溢れています。デッキから客室へ入る、その手前にはドアがあってそこにはなんと個室が。一編成中に一部屋しかないこのグリーン個室。グループでの旅行ならばなかなか使いでがありそうです。
 
そしてグリーン客室。壁面や天井は白を基調にまとめられていて、なかなか明るい感じ。そこにシートの茶色とデッキから続く木目の部分とが重厚さを出しています。床はもちろん全面絨毯敷き。各座席にはスリッパまで置いてあります。グリーン客室内は、靴を脱いでこのスリッパでくつろげると言うワケです。そしてこのグリーン客室。二つの部分に分かれています。デッキから続く部分は普通の開放座席。運転室後ろはガラス戸で開放座席と区画を分かれていて、定員六名の[トップキャビン]というコンパートメント。
 

重厚感あふれるデッキ部分。
ここまで凝ったデッキは他に例がないです…

グリーン車客室。
豪華で、それでいて明るい内装。
 
座席に腰を下ろします。言うまでもないことですが、横幅・シートピッチ共に充分。リクライニングを全開にし、靴を脱いでスリッパに履き替えると、もうラクチン快適そのもの。座席背後のラックには、JR九州の出している小冊子も挟まっています。
 
さて、8:25。定刻通りに西鹿児島を発車しました。と、出発と同時に、先ほどのカワイイお姉さんが客室内にやってきて、切符の改札。そして客一人一人に飲み物の注文を聞いて回ります。そうです。この[つばめ]のグリーン車。ウェルカムドリンクのサービスがあるのです!! 僕はホットコーヒーを注文。他にもお茶などがありました。さすがにアルコール類は無いようですが(笑)
 
コーヒーを飲んでしばらくすると、最初の停車駅に到着。と、その直前に先ほどのお姉さん、また客室に入ってきて、そしてその駅で降りる乗客の席へ来て「間もなく駅です」と言ったことを伝えている模様。やはりこのお姉さん、グリーン車専任の客室乗務員だったみたいです。そしてこの後も、客室内をこまめに様子を見て回っていました。思うに、グリーン車のサービスと言うのはこういったソフト面をいかに大切にするかが大きいのではないでしょうか。確かに、普通車に較べて大きなイスや静かな客室。そういったハード面も重要なのは間違い無いです。が、ではでかいイスさえ並べておけばグリーン車だと言えるのでしょうか。
 
グリーン車というのは、普通の特急料金の倍以上もする金額をわざわざ払ってまで乗っているわけです。ならばそれに見合うだけの「精神的な満足感」を与えるサービスがあって然るべきなのではないでしょうか。そこへ行くとこの[つばめ]。さすがに日本最高峰と言われるだけのことはあると素直に感心しました。これでこそグリーン車のサービスと言うものです。去年、JR北海道で[スーパー宗谷]のグリーン車に乗った時もそのサービスに感心しましたが、この[つばめ]は更にその上を行くでしょう。
 

つばめワイン。
甘酸っぱい恋の味(はぁ?)

コーヒーのカップにも、
「TSUBAME」の文字とイラスト。
 
博多までの道中、のんびりと過ごす車内。[つばめ]の車内ではオリジナルグッズも販売しています。僕も何種類か購入。ハンカチ・タオル・キーホルダーにピンバッチ…。かなり買いこんでしまいました(笑) どうせ買ったところで使うワケじゃないのにね…。
 
そして[つばめ]オリジナルの[つばめワイン]なるものを購入。「ワイン」と名がついてはいますが、実際には甘夏を使ったサングリアと言う果実種の一種。甘くて、ほんのり酸っぱくて…なかなか美味しい。
 
西鹿児島を出た直後はまばらだったグリーン車内。熊本辺りからはかなりの乗客があって、いつの間にか満席になっていました。今まで僕も、何度か色々な特急のグリーン車に乗ったことはありますが、満員になったのを見たのは初めてです。それだけこの[つばめ]、需要のある列車と言うことなのでしょう。
 
さて…快適そのものの[つばめ]の車内。なのですが…僕はこの時、自分の体調の異変に気付き始めていました。どうもお腹がムカムカして気分が悪い…。最初は二日酔い?とか思ったのですが、確かに昨日も沢山飲んだとは言えそこまでは飲んで無いハズ。第一、朝起きた時には何とも無かったですし…。コーヒー飲みすぎたのが良くなかったのかなぁ…。
 
でも、広いシートに座って大人しくしていれば快適そのもの。景色をボーっと眺めたり、備え付けの小冊子に目を通したり、目を閉じて軽くまどろんでみたり…。こうして、西鹿児島から4時間弱。12:15に博多駅到着です。九州随一の都市だけあって、駅もとても大きい…。
 
さて。電車を降りたところで更に体調が悪くなっていることに気付きます。歩くだけでフラフラします。これは明らかにおかしい…。二日酔いとか、コーヒー飲みすぎとか、そんな問題じゃないことだけは確か。ここに来て疲れがどっと出てきてしまったのかもしれません…。でも休んでいるワケにはいきません。と言うのも実はこれから、祖父の家を訪ねるのです。祖父・祖母と会うのは5年ぶり。そして家を訪ねるのはもうかれこれ10年ぶり位でしょうか。向こうもきっと楽しみにしてるハズ。それを裏切るワケには…。
 
フラフラのまま、駅で立ち食いうどんを食べ、地下のコインロッカーに荷物を預け、お菓子をお土産に買って筑豊本線のホームへ。ここでやって来た電車に乗ります。
 

福北ゆたか線を走る817系。
やたら都会的な雰囲気の電車です。

内装だってこの通り。
クール、かつスマート。
 
筑豊本線、現在は福北ゆたか線と呼ばれているらしいですが、昔祖父の家に行く時に乗った記憶では、旧型のディーゼルカーが走っているローカル線でした。でも今ではすっかり近代化されている様子。全線電化されて、最新鋭の817系と言う電車が走っています。ブラックフェイスがなかなかに都会的でスマートな雰囲気を漂わせているこの車両。車内を見ると更に驚き。特急車両でもなんでもない、普通列車用の車両なのにも関わらず、なんとイスが木と本皮で出来ているのです。白を基調にまとめた中に、ブラックをアクセントに使った内装は何ともスマートでクール。
 
博多を出てしばらくは、市街地の中を走っていきます。なるほど、近郊路線の様を呈しています。でもしばらくすれば、辺りは山・川・田畑…田園地帯に風変わり。車両は新しくなっても、風景まではそんなに変わっていないのかもしれません。
 

福北ゆたか線の車窓。
田園地帯を走り抜けます。

飯塚駅。
まさに片田舎の駅と言った風情。
 
途中で乗り換えたりしながら、博多から50分ほどで飯塚駅に到着。ここからバスに乗ります。…と、様子がおかしい。駅前にはバス乗り場なんてありません。もしや…と思い駅員に尋ねてみると、バス乗り場があるのはこの[飯塚]ではなく、もう一つ向こうの[新飯塚]でした。やられた…(苦笑)
 
仕方なくタクシーで、新飯塚のバスセンターへ。そして、バスセンター前に薬局を見つけたので駆け込みます。もう体の方は限界寸前。この暑さも手伝って、体中だるくてヘンな汗も出てきます…。ここで効きそうな、1000円の栄養ドリンクを購入。と、薬局のおばさん。「これも一緒に飲むと効きますよ」と、錠剤を二粒、タダでくれました。感謝…。ホント親切な人が多くて助かります。
 
そしてバスに乗って、田舎道を走ること約20分。とあるバス停で降り、坂道を上がります。と、そこには迎えに来てくれた祖母の姿。何とか無事に、辿り着くことが出来ました。時間はもう15時を回っていたでしょうか。お昼に博多に着いたのに、結構時間がかかってしまったなぁ…。
 
10年ぶりに訪れた祖父の家。何一つとして変わっていませんでした。家そのものも、そして周りの風景も。数件の民家がある以外は何も無い、緑だけの、純粋な里山の風景。それは幼い頃の記憶にある景色と全く同じもの。思えば、ここの風景こそが、僕にとっての「原風景」とも言えるのかもしれません。僕が日本の里山の風景だとか好きなのは、きっとここの景色が記憶の奥底に植え付けられているからなのでしょう。
 

祖父の家の周りの風景(1)
純粋な里山の風景。

祖父の家の周りの風景(2)
正しい日本の景色。
 
祖父と、祖母と、三人でビールを飲みながらのんびり過ごす昼下がり。時間の流れがとてもゆったりとしているのが分かります…。そして、本当に久々に会ったのに、何の気兼ねもなく過ごせる。やっぱり、血の繋がった親戚ってイイもんだなぁ。そんなことも思いました。
 
本当は、2時間位いて夕方には博多へ戻ろう。そう思っていたのに、結局夕食も戴いて、夜21時位までいたでしょうか。しきりに「泊まっていけ」 そう言ってくれる祖父と祖母。でも「ホテル取ってあるから…」 泣く泣く断る僕。最後、帰る時には本当に大泣きしてしまいました…。何て言うんだろう。久しぶりにあったのに、変わらずに凄く優しくしてくれたのがとても嬉しかった。それは、血の繋がった親類だから当たり前なのかもしれないけど…でも…。
 
今回の旅行。目的地は鹿児島だから、最初は予定になかったこの訪問。でも、日程を延ばしてまで来て本当に良かった。また、またいつかきっと会いに来るよ…。
 
 
 
 
 

夜の新飯塚駅。
人影もまばら…

帰りの電車も817系。
その本皮&木造りのシート。
 
タクシーに乗って新飯塚の駅へ出て、そこから電車で戻ります。ところで、祖父の家に居た時は薬が効いていたのかかなり良くなっていた体調。帰りの電車の中でまた疲れが…。
 
そして博多駅からホテルへと向かう際、道が分からずに迷ったりして、更にまた悪くなる体調。今晩の宿は[R&B博多駅前]。駅からそう遠くないハズなんですが…ちょっと裏通りにあったせいかなかなか辿り着けませんでした。そんなワケで、着いた時にはもうダウン寸前(笑)
 
部屋に着くなり、さっさとパジャマに着替え、シャワーも浴びずにそのままベッドへ倒れこんでしまいました。いつもなら、「ホテルの部屋でビールを飲んで…」となるのですが、もうそんな元気なんて全くありません。本当にヤバかったのだと思います(笑)
 
さあ、こんな状態で明日はどうなるコトやら…。どちらにしろ、今回の九州旅行。泣いても笑っても残すところあと一日です。
 
 
 
 
 
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