ALIVEの歴史は古くもないが新しくもない - 第二話

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「ハイ、スタジオM3rdデェス」電話が鳴る度に気になる声が貸しスタジオのロビーに響く。声の主はユナイテッドのギターであり、このスタジオの店長でもある大谷さんだ。彼は、当時高校生だった私達の憧れの存在。日本のヘビーミュージックの第一線で活躍している人が目の前に居る。大谷さんが柏の人間という事も、ここの店長をやっている事も、以前誰かから聞いて知っていた。私達は勇気を振り絞り、大谷さんに話しかけた。
 ユナイテッドやガーリックボーイズが好きで、自分達もラウドなバンドを目指している、という事や、
よくその類いのライブに行っている、などといった事を話し、子供ながら自分達をアピールし、大谷さんはそんな私達の話を熱心に聞いてくれた。それに、聴いている音楽も似ていたし、大谷さんにとっては、その頃柏であまりうるさい音楽をやっている若い連中が居なかったからか、私達が打ち解けるのにそんなに時間は掛からなかった。他のスタッフの人達も私達に良くしてくれて、有りがたい事にその関係は今でも続いている。
 バンド名はどうする?と、あっちゃんだったかゴッチンだったかに聞かれ、考えるのもオックウだったので以前やっていたコピーバンドの名前「ヌンチャクは?」の回答に、二人共苦笑いしながらも「良いですよ」と言ってくれた。こういう時年上は何かと都合が良い。
 良いスタジオ、良いレコード店、話す度に深まる互いの信頼感。最高の環境の中、バンドは始動した。まずは自分達の好きなバンドのコピーをやって、各々のスキルを探り合う。ココバット、ブルータルトゥルース、エントゥームド、エクストリームノイズテラーてな具合に。その時はまだ飯泉良平(リョウヘイ、Dr)が入る前だったので、ドラムマシーンを使ってプレイしていた。その中から、自分達に合うスタイル、アイディアを頂戴する。そんな作業を経てから、オリジナルの楽曲を生み出す作業に切り換える。私が今まで生きて来た中で、この頃が一番物事に熱中していたんじゃないだろうか?クソ真面目だったなあ、みんな。
 これを書いていて気付いたが、今、私はあの時の大谷さんと同じ年齢になっている。

つづく


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