舞台美術用語ハ〜ホ行
[ハ]
【刃】
大道具の張物同士を繋いで飾る時、繋ぎ目を目立たない様にする為に、一方の張物の端に
取り付ける薄い板状の物の事で、背後からの明かり漏れを防ぐ機能も持っています。

【パース】
元は建築の世界で発生したものですが、セットなどの完成予想図。図面ではなく実際に立ち上
げたイメージがわかるように人物なども描き加えられたもの。 

【ハーネス】harness【安全ベルト】
クライミングで、墜落落下安全確保のために使うベルト。レッグハーネスは腰や腿、ベストハー
ネスは胸にとりつけます。ハーネスはスリングベルトを一体化したもので、墜落時の衝撃を和ら
げることができる。最近、安全帯よりハーネス、フルハーネスを付けてルーフトラスやタワーに
上る照明さんをよく見かけます。


【ハーフミラー】
明るい側から見ると鏡状、暗い側から見るとガラス。

【パーマ】
転換のある舞台で、転換せず一度も動かさずに固定して物。

【パール】
鉄製のてこ。1.5m程度。「金てこ」ともいう。「木てこ」に比べて重く丈夫だが曲がりやすい欠
点がある。50cm〜1m程度の短いものは一端がくぎ抜き構造になっていることから「クギ抜き」
ということがある。

【場当たり】
仕込みの確認を目的とした部分的な稽古。通し稽古の前に行われる。

【排煙口】
劇場には客席・舞台のほか、各室や通路に法規上の排煙設備が必要です。ここでは、舞台最
上部にある排煙するための設備をいいます。舞台上で発生した火災や煙を客席などに波及さ
せないための役割を持つ設備のことをいいます。

【背景】scenery
広い意味では舞台装置を指す言葉ですが、一般には、舞台最後方に飾られる風景などが描
かれた張物、幕などのことをいいます。

【背景幕】
舞台の道具として使用してしまう幕を道具幕、背景幕といいます。 背景幕は、町並みや舞台装
置を文字どおりキャンバス(帆布)に書き込んでしまったものです。背景幕は木工製や鉄骨製
の装置と違って、持ち運びや設営作業の簡便さにその利点がある ます。 

【バインド線】
ビニール状の材質でコーティングされている針金。
吊ったり止めたりと用途は色々。

【馬鹿棒】(測棒) 
高さの測定に使う物差し代わりの棒。現場にある、手近な木材を使う。
よく使う長さに調整してある棒。いちいち長さを測らなくても、この棒をあてがうだけできちっと
長さが調整できる。その単一用途にしか使えないので、バカ棒。

【ハキ】(HAKI)
スウエーデン製の仮設足場資材。

【はける、はけ】
人物やセット、小道具などが、舞台や画面からいなくなること、あるいは見えなくなること。「ハ
ケる」「ハカす」と使います。「わらう」と同じ意味です。

【箱】(はこ)
ホール、会館などのことを指します。小屋とも言います。

【箱馬、箱足】riser
平台を支える為の脚。二重をくむ時に用いる箱型の台。
通常は1.6尺×1尺×6寸 、1尺×1尺×6寸。

【走り込み】
 二重屋体の襖、障子などの出入り口の裏側や、土手などの見えない部分に俳優の出入りの
ために同じ高さの台をおく。これを走り込みという。俳優の出入りするとき、上り下りが見えない
ための台。
 
【端太角、バタ角】(ばたかく)
仮設に用いる2寸、3寸角の木材。

【バタフライ】
パネルや人形に付いている直角三角形のベニヤ。
これが付いているおかげで、捻じれや強度も増します。

【ぱたん返し】
張り物の一部分に横軸(蝶つがい)を利用して上半分を前にひっくり返すことの呼名で、前と違
った場面が現わされる一つの手法である。
 
【破断荷重】
吊り上げに使用するワイヤロープやフックが破壊する重さ。

【発発】(はつはつ)
発動発電機の略です。小屋やスタジオ、送信所、中継所などの非常用発電装置のこと。
自動的に発動する自家発電機。

【発砲スチロール用接着剤】
関東ではカネスチック、関西ではカネダインを使う事が多い。
完全に乾く前なら位置の修正ができる。少し乾かしてから貼ると良い。

【鳩目】(はとめ)
ひもや管を通す穴に取り付ける環状の金物。スクリーン幕やターポリンにつけます。

【バトン】fly batten 、batten
すのこから吊り下がっているパイプのこと。
綱元で昇降させて、照明や幕などを吊る。照明(サスペンション)バトンと吊り物バトンがあり、
ただバトンと言った場合は大道具を吊るための美術バトンを指す。

小劇場によっては、昇降バトンは無く、天井に固定してあります。その為脚立や、作業用イント
レが必要になります。
アメリカではpipebattenと呼ばれ、イギリスではbarrelと呼ばれている

【バナー】
舞台でいうバナーは、企業の名前とか商品の名前が書いてあります。
例として木製の看板とかターポリン幕などがあります。

【花道】(はなみち)
舞台の延長として、客席まで縦断している道。舞台に向かって左を本花道、右を仮花道とい
う。

【パネル】(張物)flat、scenery panel
ベニヤと木枠でできた平板の大道具。
大道具の張物の事をいう言葉で、シーナリー・パネルのことです。

【巾木】(はばぎ)
壁が床に接する基部に設けた横板。壁面下部の損傷、汚れを防ぐもの。

【ばみる】
言葉の語源は『場を見る』から『ばみる』と言われています。
舞台上の目印のこと。大道具を置く位置や役者の立ち位置などをテープを貼って分かるように
すること。

【はめころし/はめごろし】
本来あけたて(開閉)の出来るべき舞台装置の扉や窓の部分が、演出上その機能の必要が
無い場合に、書割りや見せかけだけで済ませてしまうことをいいます。また、窓などの動く必要
の無い側を固定することもいいます。

【腹起こし材】
木製パネルや鉄枠製パネルを床でつなげてから縦に起こすときに折れないように入れる縦に
つける材。

【バラす】
終演後、舞台上の物を撤去すること。

【パラペット】
英語のパラペットは平屋根、構造物の端に造られる低い壁を意味します。端の部分に立ち上
げられた手すり壁。

【梁】(はり)
会館や劇場のスノコの屋根やの床の重さを受け支えるために、柱上に渡される横木の総称。
材軸に対して直角あるいは斜めの荷重を受け、この荷重を支点に伝える細長い水平材一般を
いう。ビーム。

【張り出し舞台】thrust stage
会館や劇場の常設位置から客席側に仮設ステージを組むこと。 

【張物】
パネル。木で枠を作り、紙または布、ベニヤを張った物。壁や背景に使われる大道具。

【張りぼて】
 場面転換などの舞台操作や演技表現のため、本物に似せて軽く作った大、小道具。張り子、
紙の型抜きや竹組などの土台に、紙や布を張り重ねて作る。今は発泡スチロール、ウレタンな
どの新素材を使用することもある

【早替わり】 quick change
本来は歌舞伎の演出の一つで、同じ俳優が素早く変身することをいいます。衣装はもちろんメ
ーキャップ・結髪(かつら)まで替えることが多く、大道具なども含めて場面を全く異なったイメー
ジに転換させる場合に用いることもあります。

【早替え場】
衣装を素早く替えるための、舞台袖に早替えパネル(平台で代用するときもある)に暖簾をつ
け簡易早替えスペースを作ります。 近くの楽屋をフィッティングルームする場合もあります。

【ばん木/りん木】
重量物を仮置きするときに下に敷く木材。枕木や端太角(ばたかく)が用いられる。

【反響板】
正反、天反、側反などがある。コンサートや合唱などで使われる。普通はスノコから下がってい
る。フライズに収納される昇降式と舞台奥に収納される可動式があります。
正式名称は『音響反射板』。

【番線】
パイプや金物、木工を固定するスチールの針金。焼き番線、作り番線など。
8番〜12番をよく使う。番号の多いほど細い。

【パンチカーペット】
舞台に敷く薄くて加工し易いカーペット。
袖や舞台裏の足音を消すのにも使われる。
グレー、黒、赤などがよく使われるがカラーバリエーションは豊富である。

【パンチングメタル】
薄い鉄板に丸い穴を空けた板。

【バンド台】
鉄枠を組み合わせてボルトで固定します。天板は、40ミリのコンパネやアクリル板など。

【半丸】(はんまる)
 お客さんに見える方の面だけを立体的に作った物を差していう。 

【半回し】
回り舞台や回転盆を90度回すことをいいます。

[ヒ]
【ピアスビス】
鉄やアルミ用のビス。

【引栓】(ひきせん)
順番に止め金具を外して幕を振り落とす技法です。幕の上部を紐のついた竹や鉄製の栓で固
定し、きっかけにより紐を引くことで道具幕が落ちる仕掛け。
道具さんが舞台袖を走って紐を引く。

【引綱】brail line 
吊物機構を手動で操作する場合の、昇降させる為の太めのロープのことで、カウンター・ウェイ
トの受け枠を介して、簀の子の元滑車と下滑車(底車)の間でループ(円環)状になっていて、
ロープは前後2本の組になっています。手前のロープを引くと吊物は降りてきます。反対に奥
のロープを引くと吊物は上がります。

【引抜き】
舞台における衣装の早替わりの手法です。数枚の衣装を前もって着込んでおいた俳優が、舞
台上で演技しながらきっかけで上の衣装を素早くはぎとり、一瞬のうちに別の衣装に替える事
をいいます。

【引き幕】
舞台に設営される開閉式の幕を総称して「引き幕」と呼びます。
引き幕にはその 用途によって様々な名称がありますが、多くは舞台全体を観客の視線から隠
す という目的の為に使われます。
 
【引き枠】stage wagon
平台などにキャスターをつけ、大道具等を乗せて転換がスムーズに出来るようにした台車の
事。

【引割】
幕がセンターから左右へ開閉する幕。大道具を左右に引き込んで、場面を転換させること。

【引割幕】
舞台中央から左右に引き開ける幕のことで、緞帳の代わりとして使用することが多いのです
が、大きい舞台の中間に設置される中幕や、大黒幕にも用いられることがあります。

【人吊り】
宙吊り、フライングともいいます。ハーネスを着けワイヤーロープで吊ります。事前の点検整備
をかなり慎重にやらないと事故になります。用途によりハーネスにも幾つか種類があります。

【ビット】 bit
電気ドリルの先端に取り付ける刃などの総称。穴あけ用の刃をドリル・ビット、ネジ廻し(+、
−)を ドライバ・ビットという。

【ビティー足場】(イントレ)
鳥居型をした鋼製の枠組足場。
標準部材が数多くあり、能率よく足場が組める。リース会社のものは全国共通のサイズ。

【一尋】(ひとひろ)
水の深さ、縄などの長さの単位。
一尋は6尺(約1.8m)。左右に広げ延ばした両手先の間の距離から出た長さ。

【ひな壇】risers
階段状に組まれた舞台もしくは客席。

【ビニテ】
ビニールテープの略語。ばみりに使用。
蛍光のものを使用すると暗転中でも目印になる。

【平台】(ひらだい)platform
舞台で高さを出すための台。箱馬と組み合わせて使うことが多い。サイズは3×6(さぶろく)、
3×9、2×6、4×6、4×8などがある。舞台上に段差をつける場合に使われる台。
高さは舞台用は通常4寸、映像関連は3寸5分〜5寸。

【平土間】(ひらどま)
パンチなどを張っていない、素のままの舞台面。

【平舞台】
二重舞台は床を二重につくるのに対して、舞台床をそのまま使用して、背景や切り出しなどを
直に飾る飾り方。 

【平目】(ひらめ)
張り物や切り出しのように平面的な作りの道具を総称して「平目」とよびます。 

【白録】(びゃくろく)
高さが7寸(21cm)奥行8寸(24 cm)、長さ2〜6尺(60〜182 cm)の箱段。箱馬より高さや幅が
小さく長さがある。道具で使う階段など、いろいろ兼用できる一段を、緑青(ろくしよう)の粉末の
色、白っぽい緑色、で塗ったことから、一段の階段を白緑と呼ぶ。

【表具】
作り物の道具やパネルを化粧すること。経師ともいいます。

【開き足】
舞台構成システムの部分の一つで、「平台」を支えて定式の高さにする足の事をいいます。収
納の便のため蝶番で畳める様に作られています。

高さが1尺7寸(中足),2尺4寸(高足)のものなどがあり,脚立のように開いて使用します。長
さは平台の大きさに合わせて,3尺,4尺,6尺などになっています。 

【ピン】
舞台上に一人残り演じること。または、ただ一人残った状態。

[フ]
【フィート】
1フィート = 304.8 mm
フィートとは足の意味で、歩幅から来ているようです。日本の尺貫法の尺(303mm)も歩幅からき
ているため、ほぼ同じ長さです。日本の歩幅が1.8mm短いのは足の長さの差でしょうか?
  
フィート→ミリ換算表 
  2 ft= 610mm
  4 ft= 1219mm
  6 ft= 1829mm
  8 ft= 2438mm
  10 ft= 3048mm
  12 ft= 3658mm
  14 ft= 4267mm
  16 ft= 4877mm
  18 ft= 5486mm
  20 ft= 6096mm
 
【フィックス】
はめ殺しのこと。物事の固定。

【フェルト】FELT
毛氈。羊毛や合成繊維で毛で織った布です。

【フェルトカーペット】
熱、圧力、水分を加え加工した羊毛を染色して作られる敷物。

【蒸かす】
 高くする。

【舞台】
役者が芝居を演じるところ。

【舞台奥】up stage
舞台後方のことで、舞台前方(downstage)に対応する呼び名です。ヨーロッパの古くからある
劇場では舞台の床は後方が高く僅かに傾斜しているためにup、downと表現されています。
また後舞台と同義に使われることもあり、その部分を使って主舞台の奥行を深くして「奥舞台
より登場」などということもあります。

【舞台機構】
舞台空間の床やフライズ(舞台上部空間、簀の子)などに設置された恒久的な構造物のこと
で、迫り、回り舞台、移動装置、吊物機構を指します。それらの動きを演出効果を上げるため
に利用する場合と、舞台装置を支え、その転換を迅速に、省力化させる目的に使う場合があり
ます。駆動する方式としては手動・電動・油圧があるが、空気で動かすこともある。

【舞台操作室[盤]】
舞台機構を機械的に、また電気的に操作、運転するための制御ボタンやスイッチが集中して
いるスペースまたはパネルのことで、通常は舞台下手にあり、舞台の見通しを良くするために
一段高くする場合が有ります。

【舞台装置】stage scenery
上演される演目の脚本や演出方針に沿って、その演目にふさわしくデザイン、制作された大道
具や小道具などの全体のことをいいます。

【舞台袖】(=ふところ) side stage
観客席からは見えない舞台の下手、上手の空間のことをいいます。「ふところ」とも呼ばれてい
ます。

【舞台端】(ぶたいはな/ぶたいばな)
舞台最前端部分のことで、舞台と観客席の境界をいいます。框(かまち)または雨落ち(あまお
ち)と呼ぶこともあります。

【舞台監督】
実際の舞台でスタッフ、キャストの総指揮を担当する。舞台上の全てをリアルタイムに管理
しているため、この人の言うことは絶対。

【舞台転換】
演目、シーンによって幕、大道具、背景、舞台装置などを換えることをいいます。

【舞台美術】
舞台における、演出に必要な視覚的要素を総称する言葉です。舞台装置(大道具・小道具)の
ほか、演技者の衣装・かつら・メークアップ・舞台照明まで含まれる表現です。

【舞台開き】
新しく設けた舞台を披露し、初めて演技すること。

【舞台前】down stage
舞台の前部分のことをいいます。「エプロン・ステージ」または「前舞台」と同じ意味に使われる
こともあります。一般には舞台の緞帳より前方の部分のことを指す言葉です。

【舞台面】
舞台の上に現れる情景・場面。

【フットライト】
足元から上方を照らす。

【葡萄棚】gridiron/grid
「簀の子」のことをいいます。以前、関西地方では竹を格子状に組んだ物を使用していたため
に、その姿から葡萄棚というようになりました。略して「ぶどう」ということもあります。

【懐】(ふところ)
舞台両翼にある舞台装置等を格納できるスペース。

【踏み面】(ふみずら)
階段の段の上の面や、台などの上部の水平面のことをいいます。蹴込み(けこみ)に対する言
葉で「踏み込み」ということもあります。

【プーリー】pulley
クライミングで荷揚げなどに使う滑車。普通の滑車より小型軽量で、ロープの途中を掛けること
ができる構造になっている。

【フライング】flying
役者などをワイヤーロープなどで吊って動かすこと。またそのための装置。
『ピーターパン』や猿之助がやってるあれ。

【フライングスピーカー】
イントレやレイヤー、トラスやバトンから吊るスピーカーシステム。

【フライ・ギャラリー】fly gallery
舞台の側方と後方の壁の上部に設置されている作業用通路の事です。
「キャットウォーク(catwalk)」とも呼ばれています。各種作業の足場、ギャラリー・スポットの設
置場所、カウンター・ウェイトの掛けはずし作業の場所、フライ・ブリッジへの昇降連絡通路など
として使われます。舞台の規模によっては数段設けられることもあります。カウンター・ウェイト
の積み下ろし作業をする場所を特にローディング・プラットフォームといっています。単に「ギャ
ラリー」ともいいます。

【フライズ】flies
舞台上部空間のことで、通常は客席からは見えないプロセニアム開口部より上部の吊物、照
明器具などが吊り込まれている部分を指す言葉です。ある場面で舞台一杯に飾ってあった背
景が、次の場面で不要になって上に吊り上げられた時に、客席から完全に隠れるだけの充分
な高さが必要な空間です。

【フライ・ブリッジ】fly bridge
大劇場の舞台設備で、人が乗って作業ができる橋形の吊物設備です。長さは舞台間口とほぼ
同じ、幅は80cm前後で、ボーダーライトや多数のスポットライトが取り付けられています。演出
上では雪や花びら、落ち葉などを散らしたりする場所でもあります。略して単に「ブリッジ」という
ことが多いです。

【フラット】flat
舞台装置のうち、立体的でない物のことで、平面の張物、切出しのことをいいます。ふつう「平
目(ひらめ)」といいます。

【フラットバー】
鉄枠の組み合わせでバンド台を作るときに、鉄枠の骨にコンパネを乗せた際、ズレないように
するプレート。

【プラットフォーム】platform
舞台装置のうち、台(二重)で構成された部分をいいます。

【フランジ】flange
トラスの両端に鍔(つば)状に張り出した継ぎ手部分。 

【フランス蝶番】
軸部がなつめの実の形をしていることからなつめ蝶番ともいう。扉の開閉が軽く、耐久力があ
り、意匠的に使われる。

【振り落とし】
バトンから吊った幕を一気に落とし、幕で隠れていた舞台装置を出す仕掛け。
ツノ付きのバトンで吊るしておき、きっかけでバトンの端の綱を引くとバトンが返り、ツノが下に
向いて幕は外れて振り落とされる。

【振りかぶせ】
見えない幕を一気に下ろす仕掛け。
バトンから吊ってあった幕や布を落として舞台上の道具などにかぶせることで隠し、一瞬にして
消えたという状態。

【振り竹】
振り落とし、振りかぶせをする為のツノ付きのケタ吊り状のバトン。以前は竹を用いていたので
振り竹と呼んでいます。今では、手動式、電動回転式、電磁弁式、引き栓式があります。

【プリリグトラス】
収納トラスと言われるもので、トラスのなかに照明器材を収納して運ぶことができ、使用時には
ワンタッチで器材を下げて使うという画期的なものです。この方式は現在も使われています。

【ブリッジ】bridge
大劇場の舞台設備で、人が乗って作業ができる橋形の吊物設備です。長さは舞台間口とほぼ
同じ、幅は80cm前後で、ボーダーライトや多数のスポットライトが取り付けられています。演出
上では雪や花びら、落ち葉などを散らしたりする場所でもあります。「フライ・ブリッジ」というの
が正しい言い方です。

【フルボディハーネス】【フルハーネス】
レッグループタイプのハーネスとベストハーネスを一体化した形。ルーフトラスなど高所作業に
着用します。

【プロセニアム】proscenium
舞台の「額縁」のことで、プロセニアム・ステージの形式の劇場では、これで舞台と観客席とを
区分しています。このプロセニアムの向こう側にイリュージョン空間を創り出すのです。

【プロセニアム・ステージ】proscenium stage
舞台形式の一つで、「オープン・ステージ」に対する言葉です。客席と舞台の間に「プロセニア
ム・アーチ」という額縁を持った劇場のことをいいます。

【フロント・ステージ】front stage
舞台前部のことをいいます。一般には舞台の緞帳より前の部分のことを指す言葉です。

【プロンプター・ボックス】 prompt box/prompter's box
主にオペラ劇場で、舞台上の俳優や歌手に小声でせりふや歌詞、きっかけなどを教える役の
人(プロンプター)が隠れる場所で、ふつうは舞台最前部中央の床に小さな切り穴を設けて、客
席からの視線の邪魔にならないように、またプロンプターの声が客席に洩れないように小さな
覆いをつけた場所のことをいいます
イギリスでは、舞台の上手側にプロンプターが居る決まりが有り、現在でも上手をプロンプト・
サイド(P.S)、下手をオポジット・プロンプト・サイド(O.P)と表す場合があります。ただし、アメリ
カでは下手、上手が入れ換わって、下手をプロンプト・サイド、上手をオポジット・プロンプト・サ
イドといいます。

【プロンプト・サイド】 prompt side/略記号P.S
イギリスの比較的古くからある専門劇場で使われていた」用語で、プロンプターがいつも座って
いた方向から生まれた、舞台の「上手」を指す言葉です。アメリカでは普通、「緞帳」の操作を
行なう場所が下手側にあり、プロンプターもその近くに」いるため、この言葉は「下手」を意味し
ますので注意が必要です。

[ヘ]
【平面図】ground plan 
舞台セットの水平切断面の投影図。

【へたる】
すわる。疲れる。よわる。ゆがむ。

【別珍幕】
別珍はvelveteenから転じた語で、綿ビロードの一種。パイル織物に属し、布面に別糸で短い
ケバの横パイルを作った織物のこと。足袋(たび)、鼻緒(はなお)に用いられて、貫八別珍とイタ
リア別珍の2種類が使われています。

【ベニヤ】
木材の薄板。単板。

【へび】
紗幕などしわになりにくいドロップを乳紐(ちちひも)で縛ること。

【蛇口】
ワイヤーロープの切口をほどけないように編むこと。

【ぺラ】
波ベニヤのこと。

【ベルクロ】
マジックテープのこと。

[ホ]
【保安鎖・保安ワイヤーロープ】
バトン等に吊り下げた照明器具落下防止の為に、灯具のアームとバトン等の間に掛ける鎖や
ワイヤーロープ。

【方杖】
支えること。ヤラズともいいます。
垂直に建ててある大型パネルや鉄枠パネル、単機のイントレタワーやローリングタワーを転倒
防止対策として鉄管(スチールパイプ)で方杖をとります。

【防炎加工】
劇場火災を防ぐための措置の一つで、主に幕・地絣り(じがすり)などの布類と、張物などに使
用する着火しやすい木材類(薄手の合板など)に薬品で加工して不燃または難燃性の処理を
することをいいます。舞台で使う大道具の幕や装置の材料には、この加工を施した物を使用し
なければなりません。

【防火区画】
火災発生時に被害を局部にとどめるために、建物を部分的に耐火性の壁面で区切ることをい
います。一般には法令で1500uごとに定められていますが、劇場の客席部分については緩和
されています。またスプリンクラーの設置によっても緩和措置がとられています。

【防火シャッター】
火災発生時、舞台と客席を仕切るために設置された、耐火性の防火戸のことです。プロセニア
ム開口部を完全に遮断する寸法が必要で、フライズに十分の高さがあれば一枚物で吊り込む
ことが出来ますが、場合によっては二分割したり、奈落とフライズの両側に仕込んだりする場
合もあります。

【防火シャッター】
プロセニアム型のホールでは、舞台で出火した場合を想定して客席と舞台を仕切る防火シャッ
ターが大臣柱間に設置されている。所によっては壁面緞帳と兼用している場合もある。

【防火扉】iron curtain/fire curtain
防火区画の開口部を遮る耐火構造の扉や、シャッターなどをいいますが、劇場特有の客席と
舞台を遮断する防火シャッターを指すこともあります。

【棒レベル】
水平を見る為のレベル器。

【細引き】
細めのロープ。本来は麻を撚りあわせて作った細い綱のこと。舞台装置などに仕込んで遠隔
操作するときに使う、通常は黒い紐。

【ボーダー】border
本来的には「一文字」、「水引幕」、あるいはそれに類する「カットクロス」などの舞台上部を観
客の視線から遮る物を指します。わが国では一文字幕と組み(ペア)になったボーダーライトの
普及以後、ボーダー・ライトを単にボーダーと呼ぶことが多いです。

【ボーダーライト】border light
舞台上部に横につながって吊るしてあるライト。

【ポータル】portal
プロセニアム開口部の高さと間口を調節出来る機能を持つ建築的構造で、舞台のプロセニア
ム開口部分を、上下に動くポータルブリッジと、左右に動くポータルタワーによって調節する機
構です。大規模なポータルにはブリッジ、タワー共にスポットライト等の照明器具が取り付けら
れています。上演される作品に適切な大きさの開口部を作ります。「インナー・プロセニアム・ア
ーチ」とも呼ばれています。

【ポータブルステージ】
ステージフロアを折り畳めて簡単に移動できる移動収納可能な簡易ステージ。

【ボックスセット】
張り物によって背景、側壁または天井が構成される室内場面のこと。
 
【ボックスラダー】
アルミ製の梯子状ボックス。通常、照明器具を吊ります。

【ポップアップ】
人の力で舞台下の奈落からタレント、アーティストを舞台面まで勢いよく飛ばしガイドレール付
き昇降装置。

【骨】flat
本来は張物の芯や枠(骨組)のことを言いますが、一般的には、張物その物もこういいます。

【ホリゾント/ホリツォント】 Horizont<独>/cyclorama<英・米>
舞台の最後部の天空を表す幕または壁のことをいいます。客席から見える舞台奥の壁面を一
様の円筒状に幕(または壁)で覆うものをルントホリゾントといいます。構造物の一部としてのド
ーム状の壁面のものはクッペルホリゾントといいます。
現在の劇場では舞台開口部と平行で平らな幕、又は壁が多くなっています。照明によって青
空、夕焼け、夜空など無限の奥行を感じさせる効果が得られます。ホリゾント幕の不要時の収
納にはフライズに吊り上げる方法と、縦に巻き取る方法とがあります。

【ポリコード】
ポリエスチレン繊維で加工されたロープ。耐久性、摩擦に強いロープです。

【ホリゾント幕】horizont curtain
舞台の後方を遮蔽して、観客の視界を制限するために、一様の丸みを持った曲面のパノラマ
式の大幕で、主として大空の効果を与えるために工夫されたものです。
日本で一般的に使用されているタイプは舞台最後部に開口部と平行か、または左右両端のみ
を多少湾曲させたホリゾント幕です。ふつうは淡いグレーのキャンパス地の布を使用していま
す。幕でも壁でも、ホリゾントに物を立て掛けたり手で触れるなどして、汚したり傷つけたりする
ことは禁物です。「ホリゾント・カーテン」ともいいますが、独語と英語を混合した日本製の言葉
です。

【ホリゾント・ライト】
舞台奥のホリゾントを照らすライト。アッパーホリとローホリがあります。

【盆】ターンテーブル
舞台面を回転させる装置。回り舞台のこと。和物の廻り舞台ではこの上に道具を仕込む。

【本雨】
通常、降雨のシーンは音響や照明の効果によって行ないますが、必要によっては本物の水を
降らせる事があります。それを「本雨」といいます。

【ボンジョイント】
パイプとパイプをつなげるジョイントピン。

【本花道】
舞台上手側に仮設される「仮花道(かりはなみち)」に対する呼び名で、舞台下手側の本来の
「花道」のことをいいます。

【本番】
映画界からの言葉で、テレビ・ラジオでよく使われている用語です。生放送の場合は本放送の
ことを、録画・録音などの場合は最終録画(音)のことを指します。今では、広く観客の前で興
行として上演することもいいます。

【本火】
本物の火を使うこと。たとえば、幽霊狂言に出てくる人魂は焼酎火。差金の先に細かな金網で
包んだボロ布を下げ、それにアルコールをしみ込ませておいて火をつけるのだ。また四谷怪談
の大詰、お岩の幽霊が炎に包まれた提灯の中から出てくる様も見もの

【本舞台】
本来は、歌舞伎舞台で下手の大臣柱と上手の大臣柱の間の部分を指すことばです。現在で
は花道に対して正面の舞台を指します。
プロセニアム劇場ではプロセニアムの内側を本舞台といいます。

【本回し】
盆(廻り舞台)の回し方。下出しともいいます。下手から上手の方向に回すこと。反時計回し。

【本水】
本物の水を使うこと。当然ながら涼を呼ぶ夏狂言に多い。






  



舞台美術用語マ〜モ行