~第二十二章 オリジナル~
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方舟が喋る。そういえば、僕も方舟の中へは久々に入る。相変わらず、白い服を着た警備員、そして真っ白の世界にいつきの和風の家がたたずんでいる。やっぱり何度見ても不思議な光景。ここだけ、別の世界のような、一軒の家が方舟に運ばれたような、言葉では表すことは出来ない光景。
「ね、不思議でしょ。本当に方舟みたいな暗号なんだ。それにさ、ここ、方舟の中にさ、ほら、あそこがいつきの家。」
カンナが見上げる先にいつきの家が立っている。そして久々にきた方舟の中は、相変わらず世界が鳴いているような、不思議な振動みたいな音を響かせている。この町に出来た方舟。僕は今日、友達としてでは無く、世界ズのメンバーとして初めて来た。方舟が迎えてくれているような音が響いていた。
「入ってよ。あっ、カンナさ、奥の部屋見てみ。かっこいいからさ。学校よりもいいアンプあるんだ。で、せいたろうは歌詞出しといてよ。俺、お茶持ってくる。あっ、扇風機つけといて。」
カンナは奥の部屋で部屋中のポスターを見ている。一つ一つ、覗き込んで、僕には読めない難しい英語も、まるで分かるように読んでいるように見える。