~第二十二章 オリジナル~
P.12
初めてだった。本よりも短い文章、教科書に載ってる作品を読んでも、クラスメイトの作文を読んでも、夏休みの宿題で本を読んだ時も、カンナの歌詞よりもっと、もっと、長い文章を読んでも景色なんて見えなかったのに、見えた。たった数分前まで僕の人生でそんな景色なんて想像も出来なかったのに、急に浮かんだ。もちろん見たことも無い景色のはずなのに鮮明に。カンナといつきが僕を空から見る様子も鮮明に。二人の顔、1ミリも無いくらい空の高い所に行っても瞳が見える。お互いに何か言おうとしているのが分かる。でも言葉が出てこない。そして世界の向こう側へ。
「なんかね、僕・・・この人の気持ち分かるんだ。言えないって気持ち。なんて言うのかな、お互い分かってるのに言葉が出てこない気持ち。なんか分かるんだ。それがさ、なんか凄い分かるんだ。」
正座をしていたカンナがメモを見せてくれる。
『ありがとう。作ってよかった。』
「やっぱり僕最初でよかった。カンナの後なんか見せられないもん。」
「うん・・・やっぱすっげぇ。二人とも。すげぇ・・・」
「じゃぁ、いつきの見せてよ。今日さ、カンナと話してたんだけど、ピストルズみたいな歌詞なんじゃないかって話してたんだ。いつきらしい歌詞なんだって楽しみにしてたんだよ。」
「俺、書いてないよ。」
「はは、だからさ、早く見せ・・・えっ?」