第二十一章 〜 サマートライアングル 〜
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音楽室も使えなく、いつきともカンナとも会わない日。
特に夏休みですることも無い。ギターを弾いていたけど、母さんからうるさいと言われて練習も出来ないから外に出てみた。相変わらずとても暑い。
あぜ道を一人歩いていると、ヘルメットをかぶった人たちが方舟の方を指差したり山の方を指差したりしていた。僕が不思議そうに見ていると、少し太った責任者みたいな人が話しかけてくる。
「君、この町の子でしょ?」
「・・・はい」
「君のうちはあぜ道だらけのこの道を車で通ったりするの?」
「あの・・・僕のうち、車無いので。」
「そうかぁ、でもお父さんやお母さんは車が欲しくなるんじゃないかな。もうすぐ大きな道が出来るんだよ。」
「えっ?道?」
「そう、大きな道だ。もちろんコンクリート。何年も前から工場側から要望があったんだけどね。いや、県としても町としても考えてはいたんだけど、ようやく国からも許可が下りたんだよ。良かったね、これからは他の町に行くのもバスだけじゃなくなるぞ。夢のマイカー時代がようやくこの町にも来るんだ。」
「そう・・・なんですか・・・」
「はっはっは、まだ分からないか。」
「・・・すみません。」