小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第二十一章 サマートライアングル

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第二十一章 〜 サマートライアングル 〜
P.4 

電気を消して蚊帳の中に潜り込む。
下の階から蚊取り線香の匂いがする。
細かい蚊帳の目の外に夏の大三角が輝いている。

天の川の中に浮かぶ三角形。三つの星。三つの星座。

懐中電灯で星座の本を開けてボーっと読んでいると7月にも夏の大三角が見えるのが書いてある。アルタイルが彦星。ベガが織姫。へー、七夕の星なんだ。そうなんだ・・・七夕?・・・そうだよ!二人にピッタリじゃないか!演奏の日に二人が付き合う!織姫と彦星の話、そのまんまじゃないか!そうだよ!奇跡だ!夏の大三角が僕ら!しかも織姫と彦星が入ってる!そうだよ!やっぱり僕らのことだったんだ!すごい!

部屋から出て空を見る。
夏の大三角が空に瞬いている。

空には星、そしてこの町には方舟、何か書けそうで、また鉛筆を置く。なにか違うんだよなぁ、言葉って難しいんだよなぁ・・・。

その夜、僕は生まれて初めて徹夜をした。

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