小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第二十章 ライト&シャドウ

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第二十章 〜 ライト&シャドウ 〜
P.7 

メモを取り出そうとしているカンナを尻目に僕も出店の方へ走った。出店は思ったより混んでいた。手前の焼きそばでは、いつきが注文した焼きそばを手にとるところが見えた。話しかけたくても人の流れでとてもいつきのところまで行けなかった。そしてようやく、少し奥の神社入り口に杏飴屋さんを見つけた。すごい行列だったけど、カンナにもあげたくて、行列に並ぶことにした。

周りはおじいちゃんから赤ちゃんまで沢山の人で溢れていた。クラスメイトの女子が卒業生だと思う男と一緒に歩いていたり、若いカップルも浴衣で歩いている。この時にいつも僕は寂しくなる。友達がいない自分。恋人もいなければ笑ってもいない自分。でも今は違う、いつきがいるし、カンナもいる。3人でいられる今が楽しかった。

ようやく杏飴を買うと、人に当たらないように何とか鳥居のところに来た。でも二人はいない。辺りを見渡しても見当たらない。しばらく提灯の灯りが揺れていると、後ろの方でいつきの大きな声が聞こえた。
神社の奥で二人を見つけて走って近づくと声がいつきの聞こえる。

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