第二十章 〜 ライト&シャドウ 〜
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「よし、世界ズそろったな、行こうぜ。もうすぐ踊り始まるんじゃないか?」
いつきはカンナの服について何も言わなかった。僕は、僕が?何も思わなかったと言えばウソになるけど、それは一瞬で忘れるようにした。だって、カンナが何を着ようと、それは磯野かんなそのものなんだから。
この町のお祭りは山のふもとの神社で行われる。提灯が揺られて人の影は伸びたり小さくなったり、近づくたびに子どもたちの声も大人たちの踊りの声も段々と大きく響いてくる。
「すっげー!結構人いるんだな。店なにあるかな・・・二人ともはぐれるなよ」
「分かってるよ。ちょ、ちょっと、先いかないでよ?僕だって何か買いたいんだから。」
何人かクラスメイトとすれ違う、いつきには声をかけて離れていくけど僕らには何も無い。いや何も無い訳じゃない。やっぱりカンナは皆が振り返って見ていた。出店の人も通り過ぎるたんびにのれんをくぐるように見上げていた。僕はポケットに入れた髪留めをいつ渡そうか、ドキドキしてた。