第十九章 〜 スタート 〜
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歩きながら僕は呼吸の仕方をずっと思い出していた。どうやってするんだっけ・・・どうやっていつもしていたっけ。どんな息をしても苦しかった。自分から息を吸いこまないと、そのまま苦しくて倒れていたと思う。
「あのさ・・・僕・・・僕ね、バンドやろうと思う。違う、やる。やるって決めたんだ。磯野さんがどうとか、関係ないんだ。僕も自分を変えたいって思ったから。いつきと磯野さんと一緒に唄作ってみたい。ギター弾いたこと無いけど、やってみたいんだ。だから良かったら一緒にやって・・・やってみない?
・・・前に言ってくれたの覚えてる?僕だからやってみたいって言ってくれたの。僕もさ、僕も、この3人だからやってみたいと思ったんだ。いつきは東京に出てプロ目指すとか言ってるでしょ。僕はそこまで考えてないけど、やってみたいんだ。だから一緒に・・・一緒に・・・
やろう。自分を変えよう。」
僕は笑った。初めて磯野さんの前で笑った。一瞬だったし、見ていたかは分からないけど、僕は笑った。自分でも不思議なくらい、自然に笑ってた。
その後は学校へ着くまで、僕らは何も話さなかった。本当は話したいことだらけなのに、話せなかった。話したいことと、話して欲しいことが頭の中で溢れてた。その中で、僕はずっと泳いでいるようだった。頭の中を泳いでた。お互いに黙ったままだけど、二人並んで一緒に登校した。お互い、歩くスピードは一緒だったんだ。