第十九章 〜 スタート 〜
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「あのさ、俺もせいたろうも名前で呼んでんじゃん?だからさ、今日から磯野さんのこと、かんなって呼んでもいい?俺らのこともいつき、せいたろうでいいからさ。苗字で呼ぶなんて友達じゃないし、メンバーじゃないよ。」
いつきが笑顔みたいな真顔で磯野さんに話しかけた。さっきまで笑っていた僕は、口だけ妙に開いたまま、それを見ていた。メモ帳にゆっくりと書いた文字はやっぱりすごい綺麗な字だったんだ。
『 自分を変えるためにも、お願いします。 』
「ほんと!やった!おい、せいたろう!やったぞ!」
「う、うん!よかったじゃん!」
「なに言ってんだよ、お前も今からカンナって呼ぶんだよ!同じメンバーなんだから!」
「ぼ、僕も?」
そうして、初めての練習の日に、初めて出来た女の子の友達を、初めて名前で呼ぶことになった。初めて続きだけど、僕ら笑いあってた。いや、僕は本当に嬉しかった。