Ratt


RATT & ROLL 8191


1991 WEA/Atlantic
1. Tell the World
2. You Think You're Tough
3. Round and Round
4. Wanted Man
5. Back for More
6. Lack of Communication
7. Lay It Down
8. You're in Love
9. Slip of the Lip
10. Dance
11. Body Talk
12. Way Cool Jr.
13. I Want a Woman
14. Lovin' You's a Dirty Job
15. Shame, Shame, Shame
16. Givin' Yourself Away
17. One Step Away
18. Heads I Win, Tails You Lose
19. Nobody Rides for Free


 L.A.メタル。

 おお、なんと都会的で猥雑な響き。そんな用語で括られたバンドたちが跳梁跋扈した時代がありました。80年代半ばのギラギラした米国西海岸。Ratt はその中でも、個人的にもっともハマったバンドでした。

 このベスト盤は、デビューEPの "RATT" から、この時代最後のアルバム "DETONATOR" までを時代順に押さえた1枚。代表曲は概ね押さえているものの、"DETONATOR" から5曲(14〜18)も収録しており、ややバランスが悪いかもしれません。ただ、こうして聴いてみても、どこか極めて一貫している独特のサウンドがあって。

 それを人は RATT & ROLL と呼びました。

 Warren DeMartini と Robbin Crosby のツインギターから繰り出される自在なリフ、そしてその上に乗っかるひどく特徴的な Stephen Pearcy のヴォーカル。声質が独特であるばかりでなく、この種のロックの歌い手としては音域が非常に狭い。したがって、大きく上下に振れるメインメロディを作ることができません。しかも、ドラムスの Bobby Blotzer は、人柄は最高でいつも人を笑わせる陽気な男ながらも、イマイチ単調なリズムしか叩けず、一聴すると似たような楽曲ばかりになってしまう危険性を孕んでいます。

 プロデューサーの Beau Hill はこれを逆手に取りました。「じゃあ、一聴すると似たような曲ばかりにしてしまおう!」。かくして、BPMが速くもなければ遅くもない、ミドルテンポでリフ主体、狭い音域で金属的なエコーをかけまくったヴォーカルを乗せた楽曲を並べ、曲間の空き時間を意図的に極めて短くしたアルバムを作り、全体として『ラットンロール』とブランド付けしたのです。結果は大成功。アルバム "OUT OF THE CELLAR" "INVASION OF YOUR PRIVACY" は爆発的なセールスを挙げました。Bon Jovi を前座に据えた全米ツアーも大盛況。

 ここで AC/DC のように開き直って、「よし、これでこのまま一生食い続けよう」とか考えていればその後の展開も違っていたかもしれません。が、いずれにせよバンドは新たな道を模索し始めます。上記路線を極端に押し進めた "DANCING UNDERCOVER" 以降、腰の据わらない試行錯誤状態に陥ってしまうのです。

 このベスト盤の後半は、そうした "REACH FOR THE SKY" アルバムと、Desmond Child まで引っ張り出して起死回生の一発を狙った "DETONATOR" アルバムからの楽曲で占められています。今から聴くとやや痛いサウンドですが、好きになろうとしてあの頃必死に何十回も聴き込んだアルバムだけあって、個人的には偏愛している楽曲たちでもあり。

 …ベスト盤は時として、隠しておきたい姿をも白日の下にさらしてしまう、ひどく残酷な存在でもあります。


お気に入りベスト3
1. Round and Round
2. Lay It Down
3. Way Cool Jr.
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