Steve Perry
GREATEST HITS + FIVE UNRELEASED
1998 Sony/Columbia |
1. Oh Sherrie 2. Foolish Heart 3. She's Mine 4. Strung Out 5. Go Away 6. When You're in Love (For the First Time) 7. Against the Wall 8. Forever Right or Wrong (Love's Like a River) |
9. Summer of Luv 10. Melody 11. Once in a Lifetime, Girl 12. What Was 13. You Better Wait 14. Missing You 15. I Stand Alone 16. It Won't Be You [Writing Demo] 17. If You Need |
元カレからプレゼントされた指輪を、恥ずかしげもなく指にはめている女の子がいる。 「だって別れた時点でもうこれはただの『モノ』になったんだもん」 確かに、そういう正当化もアリかもしれない。だが、元彼女の名前を刻み込んだ歌を録音してしまい、それがソロアーティストとしての最大のヒットだったりするとそうはいかないだろう。コンサートでは敢えて歌わないという選択もできる(マーケティング的には賢明ではないけれど)。でも世間はそれで許してはくれない。MTVで、FMで、有線で、忘れたころにエアプレイされて街に自分の歌声が響くのだ。元彼女の名前を熱唱する自分の歌声が。嗚呼。 想像するに余りあるそんな苦境に陥っている人は意外と多くて、"Oh Sherrie" が US#3/84 の大ヒットになった Steve Perry もそのひとり。確かに恋愛は作曲活動の最大のモティヴェーションかもしれないけれど、若気の至りで彼氏/彼女の名前を織り込むのだけはやめておけ。Steve からの最大の忠告。 それはさておき、これはジャーニーの「声」としてあまりにも有名な彼のソロ活動を編集した1枚。といってもソロアルバムは2枚しかない。84年の "STREET TALK" と94年の "FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE" だ。このベスト盤の収録曲もこれら2枚からの選曲がメインで、あとはサントラ収録曲やアウトテイクらしき未発表曲で構成されている。 *** 彼は演奏家じゃないし、決して優れたコンポーザーでもない。ここに収められている楽曲たちも、原石としての鈍い輝きがなくはないが、これにタイトなリズムセクションとキーボード、そして宇宙一伸びやかなギターソロを従えてみっちりアレンジし直したら、きっと何百倍も輝きを増すんだろうなと思わせるものばかりだ。要するにジャーニーでやってくれたらなぁと言ってるんですけど。 それでもやっぱりアメリカン産業ロック界を代表する『声』の持ち主。まさに声だけで最後まで聴かせてしまう説得力を持っている。70年代後半から80年代にかけて全米のラジオ局を席巻したジャーニーでの数々のヒット曲で聴かせた伸びやかなハイトーンの『産業声』は、その後のロックヴォーカリストたちに決定的な影響を与えた。ある種のモデルとして、彼らはこの先行者を必死にコピーした。Steve がいなかったらきっと James LaBrie もあのようなスタイルに行き着くことはなかっただろうし、ということは Dream Theater も "IMAGES AND WORDS" をリリースできず、これに影響を受けた数多のドリシアフォロワーも生まれなかっただろう。 その時歴史が動いた、といっても過言ではない。 だから例えば場末の商店街の有線放送で、彼が熱く "♪Should've been gone..." と "Oh Sherrie" を歌い始めるとき、僕はいつも人生の無常を感じずにはいられないのだ。 お気に入りベスト3 1. Foolish Heart 2. You Better Wait 3. Missing You |