Michael Jackson
HIStory : PAST, PRESENT & FUTURE, BOOK 1
1995 Sony/Columbia |
Disc: 1
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Disc: 2
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主として Disc 1について。 とはいえこの "HISTORY" をベスト盤として評価するのにはいささかためらいがある。マイケルのベスト盤が長いこと待たれていたのは確かだが、新作とカップリングの2枚組という形態でしかリリースしなかった点は、賛否が分かれるところだ。 否定派は当然の如く、大型化・高額化を批判する。曰く、自分が欲しいのは過去のマイケルのヒット曲集であって、こんな訳の分からん新作なんか要らない。曰く、2枚組じゃ高過ぎて買えない。 しかしここでマイケル側の気持ちを汲むならば、アルバムタイトル/サブタイトルのとおり、これは「彼の歴史」なのであって、旧作集を踏まえ、新作を併せて聴いてもらうことで初めて Michael Jackson というアーティストの「過去・現在・未来」が一望できる、という素晴らしいパッケージだと見ることもできる。 *** …できるはずだったが、やはりベスト盤部分を1枚に押し込むのには物理的に無理があった。また、新作部分も好き嫌いが別れる作風であると言わざるを得ない。Disc 2 の曲名を見ても分かるとおり、マスコミの好奇の目に晒されたマイケルの非常にネガティヴな感情が表れた楽曲が多く、聴いていて爽やかになれるものとは言いがたい。 というわけで、コアなファンにとっても、初めてマイケルを聴いてみようというビギナーにとっても、どうにもこうにも帯に短したすきに長しといった感が否めないパッケージなのだ。 ベスト盤にあたる Disc 1 の選曲は "OFF THE WALL" から3曲、"THRILLER" から5曲、"BAD" から4曲、"DANGEROUS" から3曲。チャートヒットをコレクションするマニアばかりでなく、ごく一般的な洋楽ファンでも「あの曲が入ってない」と思い当たるものがいくつもあるだろう。それだけヒット曲の多いモンスターアーティストであるわけなのだけれど。しかも、リリース順ではなく敢えて並べ替えられた曲順。ここに積極的意味を見出すことは難しい。これで「HISTORY」だと言われても、正直ちょっと困る。選曲者側もすごく苦労したんだろうなってことは分かるけれど。 とはいえ、もし好意的に評することができる部分があるとすればそれはその音質だろう。特にCBS時代の初期のCDをお持ちの方であれば、冒頭の "Billie Jean" のイントロダクションの生々しさだけで買い!と言っても過言ではない。全般に音圧が増し、細部の表現力も劇的に鮮やかなマスタリングが施され、マイケルの息継ぎが聞こえてきそうなリアルな手触りを楽しめる。もともと "OFF THE WALL" 以降の諸作は、腕利きスタジオ・ミュージシャンたちを要所に配した名演奏の集合体であるわけで、そうした名手の小技に聴き惚れるのもまた一興かもしれない。 お気に入りベスト3 1. Billie Jean (何百回聴いてもシビれるイントロ) 2. Rock With You (永遠に続いてほしいグルーヴ) 3. Thriller (やっぱりビデオクリップ。効果音の生々しさもね) |