Foreigner


RECORDS


1982 Atlantic
1. Cold As Ice
2. Double Vision
3, Head Games
4. Waiting For A Girl Like You
5. Feels Like The First Time
6. Urgent
7. Dirty White Boy
8. Juke Box Hero
9. Long, Long Way From Home
10. Hot Blooded



 フォリナーと言えば産業ロック、産業ロックと言えばフォリナーというくらい、両者は分かち難く一体化してしまっている。敬遠するもしないも、まずはこのベスト盤を聴いてからにしてみようよ。

 現在ではいくつも編集盤が出ている彼らだけれど、一番最初に出たこのディスクは何といってもタイトルとジャケットがいい。ベスト盤だからもちろん "BEST OF..." や "GREATEST HITS OF..." でもいいのだけれど、洒落たタイトルが付いているとそれだけで嬉しくなる。ポール・キャラックの "TWENTY-ONE GOOD REASONS" なんて最高の洒落だけれど、フォリナーの簡素極まる "RECORDS" だってカッコいい。

 ここに収められた10曲は、いずれも大ヒットした「レコードたち」でありヒットチャートに刻まれた「記録」でもあるわけで。しかも8曲目の "Juke Box Hero" とも引っ掛けたジュークボックスのジャケットデザイン。しかもよく見ると、ジュークボックス内に入っている曲はこのベスト盤の曲目と一致しているという芸の細かさ。初期の4枚のアルバムから選曲された、というより単純にヒット曲をずらずら並べただけ。それも大ヒットばかり、演奏のクオリティも申し分ないとくれば、文句の付けようもなく。アンチ産業ロッカーの不評をますます買いそうだけれど。

 やはり "Waiting For A Girl Like You"(US#2/82)の存在は彼らにとっても大きかったと言わざるを得ない。チャート史上に燦然と輝く不滅の記録、10週連続第2位の悲劇的なこのバラードで、「フォリナーはバラード」 というステレオタイプが出来上がってしまったと考えられるから。だが実際には全然違う。このベスト盤でも聴かれるように 『ガール・ライク・ユー』 以外の曲はほとんどソリッドなハードロックで、しかも相当にカッコいい。なのにこれを境に、彼らのシングルは明らかにアダルト・コンテンポラリーになり、たまにカットするハードな曲はヒットしにくくなってしまう。
(例:"Reaction To Action"(US#54/85))

 全10曲、合計39分38秒。
 やや短めとも思えるこの収録時間が、実はダレさせずに一気に聴かせる名編集。特に95年にリリースされた盤は Ted Jensen のリマスタリングによる生々しいサウンドでかなりお勧め。概ねシングルエディットで収録されているのも好印象だが、一点だけ注意すべきなのは、"Hot Blooded" が82年ツアーからのライヴ録音であること。ファンサービスなのだろうけど、シングルヒット曲だけ集めるチャートファンにとっては冷たい仕打ち。この1曲のために、ベスト盤に加えてアルバム "DOUBLE VISION" を買わされた人も多かったという。

 そして気付く。
 こうやってアルバムを買わせるのが、Foreinger の戦略だったのかと。見事に彼らの 「産業」 に乗せられてしまったのかと。そしてさらに気付く。微妙にトップ40ヒットが漏れていることに。それは例えば "Blue Morning, Blue Day"(US#15/79) や "Break It Up"(US#26/82) で、なんだ結局アルバム "4" も買わなきゃならないのかよ! と地団駄踏んでも時既に遅し。買って買って買いまくる、それが産業。そんな教訓を与えてくれる意味でも、できるだけ早いうちに出会っておきたい名ベスト盤と言えるだろう。


お気に入りベスト3
1. "Cold As Ice" 邦題 『冷たいお前』
2. "Urgent"
3. "Double Vision"

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