Lisa Loeb @ 渋谷AX
2003年5月26日（月）、渋谷AX。  4日前にバングルスの素晴らしい復活ライヴを観たばかりのこの会場で、今度は一転してギター一本のアコースティック・ソロ・ツアーです。歌うのはリサ・ローブ。しかし2つのライヴの間には決定的な共通点があった！ それは… Hello Kitty だったりするわけですが。バングルスのギタリスト、ヴィッキーが着用していたのはキティちゃんの黒色チビTシャツでした。そしてリサも… いや、右のアルバム "HELLO LISA" のタイトル及びジャケットをご覧になればすべてお分かりでしょう。ジャケ中の手鏡ではご丁寧にメガネキティまで描かれてるくらいだし(笑)。これは昨年リリースされた "CAKE AND PIE" アルバムが不発に終わったため、一部編集し直すとともにレコード会社を移籍して再発売した作品です。もちろんライヴでのリサもキティちゃんの黒Tシャツ着用、ステージ中央には巨大なキティぬいぐるみが置かれていました。彼女曰く、キティは8歳のときから大好きなキャラクターで、一番大切な友人なんだって。 さて、ライヴの感想を簡単に。結論から言えば、彼女の声の素晴らしさと、アコースティックギターの弦の響きにすっかり酔うことができました。最初から最後まで、ギター1本で歌い通すリサ。厳密に言えばアコギばかりではなくて、2曲ほど冗談でぞうさんギターを弾きます。ぞうさんはご存知ですよね？ フェルナンデス社の大ヒット商品、ZO-3。アンプ＆スピーカー内蔵のチープなエレキです。まあこれはご愛嬌として、ほぼ全編で聴かれたアコギのプレイは想像以上に上手かった。アルペジオがメインですが、ピッキングは正確で、しかも曲の抑揚を見事に表現し尽くしています。全体的に手慣れた雰囲気が感じられたのは、ひょっとしてデビュー前にこの手の街角でのアコギ弾き語りみたいな下積みがあったってことなのかな。静まり返った会場の隅々までに、アコースティックの弦の澄んだ響きが伝わります。なんてかっこいい音！ リズム楽器でもありコード楽器でもありメロディ楽器でもあるアコギのカッコよさを堪能しちゃいました。もちろん彼女の歌う歌詞の一言ひとこともしっかりと僕らの耳に届きます。彼女の綺麗な英語の発音が伝えてくれる詞は、ちょっと皮肉屋さんだったり、ちょっと寂しげだったり。自分独りしか立っていないステージで、実に堂々と自作の歌を紡いでいく彼女を眺めながら、「今この瞬間、自分は本当にいいライヴを観ているなあ」と何度も実感したものです。 歌と演奏の良さも然ることながら、曲間のMCも本当に面白かった。彼女、意外なくらいジョーク満載でよくしゃべるのですよ。オジー・オズボーンの物真似なんて爆笑もの（似てたし！）。スタッフの日本人女性をステージ袖から呼び出して、しゃべりをいちいち通訳させるのですが、この女性がまた濃い関西弁で、それも何だか笑えました。観客からどんどん声がかかり、リサもそれに反応してリクエスト曲を演奏するなど、リラックスした和やかな雰囲気で進行したのも好印象。特に大ヒット曲が出ているわけでもないのにこれだけ会場が埋まっているというのは、きっと純粋にリサ・ローブという歌手が好きな人たちが集まったということなのでしょう。キティちゃんTシャツ＋色落ちしたジーンズというひどくカジュアルなリサのスタイルが、ただでさえ近いステージと観客の距離をさらに近づけてくれたような気がします。アコースティックギターが大きく見えてしまうくらいにちっちゃくてキュートなリサですが、Tシャツから覗く二の腕は太く逞しかったし、さり気なく恋人の Dweezil Zappa のことに触れてみるなど、なかなか侮れません。（プチショックだったよ！） ざっくりまとめると、1st "TAILS" からの選曲も、最新作からの曲も、質感的には全然変わってませんでした。要するに、彼女自身は最初からずっとマイペースで何にも変わっておらず、例の "Stay (I Missed You)" が映画「リアリティ・バイツ」に乗っかって爆発的ヒットになっただけのことだったのだと。これもまた十分に「今のアーティスト」としてのスタイルなのだと思いました。正直に告白すると、これまで僕は彼女のことを胡散臭いと思っていたところがあります。エセ知的女性を演じてるだけなんじゃないかと。メガネフェチを誘惑するあの黒ブチメガネも、実は伊達メガネなんじゃないのかと。しかし彼女は「本物」だった。（ついでながらメガネもかなり強い度の入った近視用でした。） 自然体で、それでいてとても魅力的なぽっちゃり娘のリサは、よく通る声と確かな弦さばきで、小粒でもピリリと辛くて後味の良いライヴを観せてくれたのでした。大満足。イーハ！（←観てないと分からないすね(笑)） ＊＊＊ Lisa Loeb Acoustic Solo Tour set list 1. Wishing Heart 2. Do You Sleep? 3. Take Me Back 4. Taffy 5. Truthfully 6. Everyday 7. Hurricane 8. Jake 9. Alone（ZO-3(エレキギター）を演奏） 10. The Way It Really Is（同上） 11. Did That 12. Drops Me Down 13. You Don't Know Me 14. Guessing Game 15. Someone You Should Know 16. Kick Start 17. I Do <Encore> 18. Stay 19. Underdog <Encore 2> 20. Sandalwood (July, 2003) |