ABBEY ROAD - Beatles Tribute Concert
@ 東京厚生年金会館
こんな触れ込みのコンサートに行ってきました。 ポール・マッカートニーが唯一承認するオフィシャル・トリビュート・バンド ビートルズ・トリビュート・コンサート 出演: アラン・パーソンズ トッド・ラングレン アン・ウィルソン(ハート) ジョン・エントウィッスル(ザ・フー) デビッド・パック(アンブロージア) 日程: 東京 11月10日(土) 東京厚生年金会館 開場5:00PM/開演6:00PM どうでもよいことですが、ホールのご案内電光掲示板には「ビートルズトリュビュート」と書かれておりました。右上写真をご参照くださいませ(前日会場に足を運んだ時に撮ってきたものです)。トリュ。 割とこだわるところなのですけれど、自分は1970年の5月11日生まれです。ということは、生まれた時点で既にビートルズは解散しています。「ビートルズ後」の世代です。洋楽を真剣に聴き始めるのは小学6年生くらいからですが、その前にジョン・レノンも死んでしまっています。これはもう完全に「ビートルズ後」の世代です。 だから、この日のコンサートもビートルズの曲を聴きに行ったわけではありません。もちろんビートルズの曲には好きなものがたくさんありますし、ポップミュージックのさまざまな可能性を切り開いた革新的なグループだったことも否定しません。でも「ビートルズさえ聴いてりゃいいんだ」とか「ビートルズを超える音楽は存在しない、それ以外はクズだ」なんておっしゃる方々とはあんまり近しい関係になりたくはないのです。(ウソみたいなお話ですが、多かれ少なかれそういうタイプの人々もいらっしゃるらしいです!) でもこの日のコンサートのお客さんの大半は、心から音楽を大切にしている人たちのようでしたし、結果としてショウも盛り上がって、自分も非常に楽しむことができました。個人的には参加メンバーがそれぞれ「ぜひ一度ライヴで観ておきたい!」という人たちばかりだったので、ずらりと並んだメンバーにすっかり圧倒されてしまいました。 18時過ぎ。暗転した場内、ステージ上にメンバーが出てきて楽器を構えます。お目当ては Ann Wilson (HEART) だったのですが、最初はどれかよく分かりませんでした。が、中央で小山の如くそびえ立つ巨体がそれだと気づいた時には言葉を失ってしまいました… "A Girl In Trouble (Is A Temporary Thing)" (US#35/84) で知られる Romeo Void の Debora Iyall かと思いましたよ。(…ってまた一部にしか通じないネタを…) 主要メンバーの配置は、ステージ向かって左側から John Entwistle (THE WHO), Ann Wilson (HEART), Todd Rundgren, David Pack (AMBROSIA), 一番右端が Alan Parsons (ALAN PARSONS PROJECT)。この他にドラマー、ギタリスト、キーボードが各1名。 威勢よく始まったオープニングは "Magical Mystery Tour"。エンジンをかけるには好都合のナンバーでしょう。バンドと観客の両方にね。John Entwistle / David Pack / Alan Parsons のおじさん3人組は年齢相応(?)に落ち着いたファッション。まあ、ちゃんとジャケット着てる David Pack とタイトなパンツに先の尖ったキャメル色のブーツ履いてる John Entwistle みたいな違いはありますけど。AOR者とロケンロー者の違いかな? でも何より目立ってたのは極彩色のプリントのヒラヒラ服で上下固めた Todd Rundgren でしょう! Steve Vai の "PASSION & WARFARE" のジャケットみたいなイメージ、といえば伝わるかなぁ? ひとしきり盛り上がった1曲目が終了し、Alan Parsons がステージ右端のキーボードに移動。ABBEY ROAD スタジオを実質的に支配した音の魔術師の右手がシークエンスするフレーズは、Alan Parsons Project の名盤 "EYE IN THE SKY" の1曲目収録のインスト、"Sirius"。もうこの時点で個人的に興奮度が頂点に達します。なぜならばメドレーで続く2曲目はアレに決まっているから。そう、"Eye In The Sky" (US#3/82)。 David Pack のリードヴォーカルは、オリジナルの Eric Woolfson のソフトな味わいとはまた異なった大人の味わい。2番のヴァースでハイノートになる部分もキレイにヒットして、さすがは元 AMBROSIA の Vocal/Guitar。でも何より豪華だったのは大好きなコーラス部分。だって、 ♪I am the eye in the sky, looking at you I can read your mind I am the maker of rules, dealing with fools I can cheat you blind And I don't need to see any more To know that I can read your mind, I can read your mind の最終部分 "I can read your mind..." に被さる "♪Looking at you〜" ってコーラスがあるじゃないですか。あそこだけ Ann Wilson に歌わせるんですよ。"♪Looking at you〜" だけ。Ann のこんな贅沢な使い方ってあるんでしょうか。ヴォーカルパート終了後に熱く展開されるギターソロも David Pack の独壇場で、意外なまでの相性の良さを感じさせる Alan Parsons Project レパートリーでした。 さあお待たせ、お次は Ann 姐御 の出番です。両足を踏ん張って巨大な肉体を支え、激しいギターリフに乗って歌い出したのは HEART 初期の大ヒット/ハードナンバーの "Barracuda" (US#11/77)。いやもう、まさか2001年に彼女の声でこの曲を聴けるとは思っていなかったので、すっかりバンザイモードです。しかも全盛期と比較してもほとんど遜色ない素晴らしいハイトーン。非常に音域の広い難曲ですが、さすが本家本元だけあって見事に歌いこなしてくれました。これを聴けただけでも来た甲斐があったというもの。ちなみに HEART のビートルズ関連音源としては、1980年リリースの "GREATEST HITS/LIVE" に "I'm Down / Long Tall Sally" のライヴ録音が収録されています。Ann は90年代後半から本格的に肥満の状態に陥りました。いろいろとプレッシャーなどもあったことと思いますが、喉がしっかりしていて安心しました。HEART 名義で再来日することがあったらぜひ見に行きたいな。 続いては AOR のイメージが強い AMBROSIA の David Pack をフィーチャーした "Biggest Part of Me" (US#3/80)。"How Much I Feel" (US#3/78) と並んで最大のヒット曲の1つですが、心地良い AOR グルーヴに、会場も右へ左へ揺られている感じ。キーボードを弾きながら、"...♪ Make a wish, baby〜" のコーラス部分を綺麗なファルセットで再現する彼と、ハーモニーに加わる Todd Rundgren。これまた好きな曲だけに、とてもいい演奏を聴けて感激です。David Pack の参加については関連性がよく分かりにくかったのですが、AMBROSIA の初期のプログレッシヴな作品は Alan Parsons がエンジニアを務めていますし、1977年に "Magical Mystery Tour" のカヴァーを全米39位のヒットにしていることから、ビートルズとのつながりもあるんですよね〜。 さてさて、お次は Todd Rundgren。派手派手の素っ頓狂な衣装を着て、"Let the fashion show begin..." なーんてうそぶく彼ですが、歌い出した "Hello It's Me" (US#5/73) はこれまでCDで何回も聴いてきたとおりのヴォーカルと旋律で、比較的オリジナルに忠実なアレンジだったように思いました。Todd Rundgren といえば、何だか気まぐれで変わったことばかりしている人、という印象がありまして、実際この夜のライヴも1人で妙な動きやジョークっぽいアクションをハチャメチャに決めまくっていて、観ているだけで可笑しかったのですが、やはり歌とギターは素晴らしかったです。ギターソロなども、ひどくセンスの良いフレーズばかりで。例えばタンバリンの叩き方1つとっても、「ああこの人は素晴らしくリズム感のいい人なんだなぁ」と思わせる手首のスナップ。これまで Alan Parsons とつながりがあったかどうかは分かりませんが、このツアーで一緒に移動している間など、音楽談義で相当盛り上がっているんじゃないかと想像。 そして John Entwistle。実は The Who はほとんど手付かずでして、彼を見るのも生まれて初めてなんじゃないか?と思ったくらいなのですが、アレを忘れていました。そう、『THE BEST』と題して来日したスーパーバンド、Keith Emerson + Simon Philips + John Entwistle。確かもう1人は Jack Bruce か誰かの予定だったのがドタキャンで、よく分からない人に差し替わっていたような記憶あり@代々木体育館。そんなわけで史上2度目の遭遇だったわけですが、この人はやっぱスゴイですね。骨太で重いゴリゴリのベースライン。しかも運指がめちゃめちゃ速い! ソロの見せ場では飄々とした顔で超高速タッピングまでカマしてくれて、Dream Theater の John Myung くらいで驚いていてはイカン、と痛感させられる凄いベースでした。いやマジで。 この後はビートルズのカヴァー大会。悪いわけがないでしょう? David Pack がリードをとった曲は正統派カヴァーに仕上がりがちなので、印象としてはどうしてもその他のメンバーが歌った曲の方が強くなってしまいます。例えば Todd Rundgren がジョージ・ハリソンになりきって歌う "While My Guitar Gently Weeps" での陶酔ギターソロや、ある意味ギャグのような "You've Got To Hide Your Love Away"。後者では "HEY!" の部分を会場全体で歌います。(ドラムセットの後ろに "HEY!" と書かれた大きな紙が飛び出す趣向。) Ann Wilson の "I'm Down" や "Maybe I'm Amazed", "Hey Jude" あたりも良かったなぁ。そして滅多に自分で歌うことのない Alan Parsons までが、アコギを弾きながら "Blackbird" を歌います! 確かにか細いヴォーカルではありましたが、大きくハズすこともなくきっちり聴かせてくれました。まだ終わってないのにお客さんから拍手が沸いちゃったのはご愛嬌。Alan と Ann といえば、"Fool On The Hill" で2人揃ってフルートを吹いていたのも印象的。Alan は途中でリコーダーに持ち替えて Ann のフルートと掛け合っていました。静かなこの曲でも Todd がひとりで飛び跳ねたりグルグル回ってたりして、何だか異常なテンションの高さ… そしてアンコールは "Golden Slumbers" - "Carry That Weight" - "The End" の黄金メドレー。Paul McCartney もライヴで再現することがありますが、この日の演奏も Paul 版に引けを取らない見事な仕上がりだったと思います。芸達者なベテランたちによる、実にエンターテイニングな夜でした。良いヴォーカリストを3人も揃えると、やっぱりいい歌モノライヴになりますね。みんなまだまだ現役で頑張ってほしい、と思わせてくれるコンサートでした。 (November 2001) Special thanks to se2 さん |