Bangles
GREATEST HITS
1990 Columbia |
1. Hero Takes A Fall 2. Going Down To Liverpool(UK#56/86) 3. Manic Monday (US#2/86, UK#2/86)) 4. If She Knew What She Wants (US#29/86, UK#31/86) 5. Walk Like An Egyptian (US#1/86, UK#3/86) 6. Walking Down Your Street (US#11/87) 7. Following (UK#55/87) |
8. Hazy Shade of Winter (US#2/88, UK#11/88) 9. In Your Room (US#5/89, UK#35/88) 10. Eternal Flame (US#1/89, UK#1/89) 11. Be With You (US#30/89, UK#23/89) 12. I'll Set You Free (UK#74/89) 13. Everything I Wanted 14. Where Were You When I Needed You |
2003年5月に公式ツアーとしての「初来日公演」を果たしたバングルスのグレイテスト・ヒッツです。89年10月に解散を表明し、90年にリリースされたこのディスクが彼女たちの置き土産… になるはずでした。まさか再結成して21世紀に活動再開するなんて、その頃は思ってもみなかったなぁ。 いろいろな意味でとても丁寧に編集されたベスト盤だと思います。 (1) 全米・全英チャートにおける全てのヒット曲を収録。 (2) 3枚のオリジナルアルバムから万遍なく選曲した上で発表順に配置。 (3) シングルB面曲、未発表曲はベスト盤の最後にボーナスとして収録。 (4) バンドの歴史と背景を簡潔に説明する輸入盤ライナーノーツ(英文)。 (5) 控えめながら可愛いフォトをあしらったアートワーク。中にもう1枚バンド全体フォトあり。 何だか当たり前のことを書いているようですが、こういうところで手を抜いてファンをがっかりさせるベスト盤も実は多いのです。リリース順の収録については賛否両論あるでしょうけれど、アーティストの思い入れやレコード会社の都合で勝手に並べ替えられるより、できればこうして順番に並べてほしいと思っています(あるいは新しいものから逆順に)。購入した上で聴き手が好きな順に並べ直すのは自由、あるいはブックレットの隅にアーティスト側のメッセージとして「できればこの順番で聴いてみてくださいね。5→9→3→11…」などと追記するのは自由だと思うのですけれど。 さてさて、バングルスのメンバーは次のとおり。 Susanna Hoffs - vocals / guitar Debbi Peterson - vocals / drums / guitar Vicki Peterson - vocals / lead guitar Michael Steele - vocals / bass ライナーノーツによればバングルスの結成は1980年のこと。ガレージロック姉妹 のデビーとヴィッキーがLAのフリーペーパー「Recycler」に載っけていたメンバー募集広告を見て、フォークロック小娘スザンナが電話をかけてきたのがきっかけとか。後にベースのマイケル・スティールを加えて完成するこのバンドが、まさか80年代で最も成功するガールズ・グループになるなんて、多分彼女たち自身も思っていなかったでしょうね。 物足りない部分がないといえば嘘になります。でもそれは彼女たちのせいじゃない。僕は来日公演を観て、とてもストレートなロックバンドであること、そして全メンバーが素晴らしいヴォーカリストであることに気づきました。しかし彼女たちのヒット曲は必ずしもそれを反映しているわけではないのです。80年代という時代を反映した軽めのサウンドにきらびやかなシンセサイザー、もちろん僕も好きな音なのですが、60年代ロックに傾倒していたバンドの本質とはちょっと違うみたい。何せ「ヤードバーズのロックをフェアポート・コンヴェンションのヴォーカルでやる」のが目標だったというのですから。また後期に向かうにつれて、スザンナ・ホフスのリードヴォーカル曲が増えていきます。彼女が歌う曲がシングルヒットしやすかったのは事実だけれど、線が細くて音程が不安定な彼女のロリータ声を引き立てたのは実はデビー/ヴィッキー/マイケルの鉄壁のコーラスワークだった。 そこに気づくとベスト盤の聴き方が変わってきます。装飾過多のキーボードを頭の中で捨てながら、ドラムスとベースと2本のギター、そしてほぼ全曲のバックで大活躍する一糸乱れぬコーラスワークに耳がいく。当然ながらリードに比べればオフで録られているわけですが、集中して聴くといかにリッチで複雑なコーラスアレンジがなされていたかに驚くばかり。ひ弱な女の子バンドかと思って甘く見ていた自分が恥ずかしくなるくらいです。 1stの "ALL OVER THE PLACE" からの2曲は今でもライヴで演奏されますね。"Going Down To Liverpool" ではデビーがドラムセットから降りてきて、アコースティックギターをかき鳴らしながら楽しそうに歌う曲です。2nd "DIFFERENT LIGHT" になると一気に垢抜けます。プリンス作の "Manic Monday" のキャッチーなメロディは一度聴いたら忘れられないし、ジュールズ・シアーの "If She Knew What She Wants" も豊かなハーモニーで爽やかにアレンジ。元気でポップな "Walking Down Your Street" がトップ10に入れなかったなんて信じられないくらい。マイケル・スティールがリードをとるアコースティックでメランコリックな "Following" も渋いのですが、個人的には長年まともに向かい合ってこなかった87年全米年間#1ヒットの「エジプシャン」の魅力にようやく気づいたのが大きいかな。ビデオのせいで完全にノベルティだと思い込んでいたのですが、よくよく聴くとギターもかなり弾いているし、コーラスの入り方も絶妙。こういう決め曲を持てたというのは彼女たちにとって大きかったことでしょう。(それにしても、作曲の Liam Sternberg って、RATT のデビューEPの制作やってるあの彼なの??) サイモン&ガーファンクル大好きの彼女たちがハードにカヴァーした「冬の散歩道」を挟んで発表した 3rd "EVERYTHING" では、成熟したポップバンド然とした音を聴かせますね。確かに産業ライターチームの Steinberg & Kelly と共作した「胸いっぱいの愛」と「恋の手ほどき In Your Room」の出来は群を抜いてます。前者はポップ史上に残る名バラードになったし、後者のお色気振りまきっぷりいったらもう。フックで "♪Feel good! In your room〜" と声を振り絞るスザンナの可愛さは犯罪的です。それは否定しないのですが、デビーが歌うシンプルでソリッドな「いつでも BE WITH YOU」の魅力が多くの人まで届かなかったり、このベスト盤が初出となった "Everything I Wanted" のようなカッコ良すぎるロックがアルバムから漏れてしまったりしたのはやや残念。ライヴを観る限り、彼女たちが本領を発揮するのはこういうロケンローだったのに。 *** 短くも美しく燃えたバングルスというバンドの80年代が、この1枚に詰まっています。同じ時代を生きた方ならきっと聴いたことのある曲があるでしょうし、「バングルスってどんなバンドだろう?」と思って初めて聴くファンにも安心してお勧めできるベスト盤です。 お気に入りベスト3 1. Eternal Flame 2. Manic Monday 3. Walk Like An Egyptian |