Diary -September & October 2004-
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30
Oct
2004 Saturday |
If I could walk on water... 今年はまったくどうかしている。週末にこれだけ雨が集中する確率を計算できるものならしてみたいものだ。雨そのものは嫌いじゃないし、静かに本を読んだ りするのには最適だけれど、洗濯物がパリっと乾かないのには閉口する。自転車で遠出したり、川沿いや公園を散歩したくなる季節なのに、それもできずに部屋 の中に閉じ込められっぱなしだ。 そう、自転車もいいのだけれど、最近急にまた歩きたくなっている。ウォーキングの楽しさを思い出させてくれたのはある友人で、サ イトのバックナンバーを遡ってご覧いただければお分かりのとおり、彼女は実によく歩く。主に一人で、時には友人と、いろいろな街を歩き、いろいろなお店に 入っていく。(そしていろいろな食べ物を食べる。) 自分の脚でしっかりと歩くことは、比喩的な意味も込めて、何か自分自身を確立していくようにつながる ような気がする。ウォーキングしている間は頭の中をいろいろな考えがよぎるが、これは脳に新鮮な血液が送られて活性化するからだという人もいる。β-エン ドルフィンが脳内に増加することにより、自然と気分が良くなるということらしい。文章に行き詰ったりした時に散歩すると、ふといい展開を思いついたりする のもそういう効果なのだろうか。 彼女と僕は、偶然共通の歩数計を持っている。オムロン社製のその歩数計は、ポケットやかばんに入れて持ち歩くだけで歩数と消費カロリーを自動的にカウン トしてくれる。デジタル時計代わりになったり、1週間分のデータを記憶していたりするのは当然として、特に嬉しいのは10分以上の連続歩行を「しっかり歩 数」として別計上してくれることだ。有酸素運動としてのウォーキングは、やや速足で、しかも一定時間連続して行わないと効果が出にくい。最低でも10分、 できれば15分以上続けて初めて脂肪が燃焼し始めるという種類のものだ。ウォーキングについてはオムロン・ヘルスケ ア社の総合情報サイトに詳しく説明されている。 真夏や真冬はウォーキングには適していない。逆にいうと春か秋がベストシーズンということになる。ひんやりした秋の空気の中、景色を眺めながら街中や ちょっとした自然の中を颯爽と歩くのは何とも言えず気持ちがいいし、意外な発見もあったりする。だからこそ、今日のような雨降りは残念なのだった。明日も どうやら無理らしいけれど、せめて来週は晴れますように。 *** ★『証拠死体』(パトリシア・コーンウェル著、講談社文庫) 『検屍官』シリーズの第2作目。自分じゃ絶対に買わない類の本だけれど、図書館で「ご自由にお持ちください」 コーナーにあったものだから、検屍官ケイ・スカーペッタのシリーズが部屋に溢れ返っている。 サイコ・スリラーのブームに乗ってデビュー作が大評判になったコーンウェルが、その勢いをうまく持ち込んで書き上げたなという印象。この手の本は冒頭で どれだけ引きつけることができるかが勝負だったりするものだが、いきなり怯えきった手紙文から始まり、それが何者かから逃げる美貌の人気女流作家のもの で、しかも彼女があっという間に殺されてしまうというツカミは悪くない。1作目に続いて相棒マリーノがいい味を出しているし、ケイのもとに15年ぶりに現 れた昔の恋人が攪乱要因になったりと、プロットはかなりよく練られているといえるだろう。 リッチモンドと並んで舞台の一つとなるマイアミの描写がわずかに出てくる(ケイ・スカーペッタの生まれ故郷でもある)。太陽が燦々と降り注ぐ楽園のよう なパブリックイメージの裏に隠されたダークな部分を、冷ややかに感じさせてくれたのは密かな収穫。マリーノが言う。「俺に言わせりゃ、フロリダのあの部分は切り離して、海に流しちまえばいいんだよ」。 ひょっとすると名言、なのかもしれない。 ★『もうひとつの恋文』(連城 三紀彦 著、新潮文庫) そんなわけで自分じゃ買わない類の本が山積みになっている部屋の中で手にとってみたもののひとつ。メジャーな直木賞受賞作『恋文』の姉妹編にすぎないらしいし、ついでにそっちは2003年に連続ドラマになっていて、渡部 篤郎や水野美紀、和久井映見といった出演者で話題になったようだけれど、僕は和物ドラマはまったく見ないので全然知らない(ついでに上の俳優たちもほとん ど知らない。水野美紀ってのはNHKでちょっとだけ見たことがある)。 だから作者もまったく知らなくて、推理作家なのか恋愛小説家なのかよく分からないけれど、文章は比較的軽い。都会のどこかに漂う男女の恋模様みたいなも の、それも例えば片岡 義男のような洗練系からは遥かに遠い、いわば鈍くさいタイプの独白体で書いてみましたって感じか。ただどれもこれも捻った仕掛けがしてあって、最後のどん でん返しでハッとさせるものがある。男と女とお金と生活と揺れる心と。ハラハラさせてくれた挙句の読後感は爽やかだ。あとがきで作者は言う。「子供の頃から映画ばかり見ていたせいなのか、誰かがちょっといい顔や仕草をすると、スク リーンのように四角く切りとって、記憶に残す癖があります」。そのセンスがきっと映画化やドラマ化につながっているのだろう。 *** BGMは Saki さんに聴かせていただいた Sevendust の "animosity"。全然知らないバンドの2001年のアルバムで、一聴した印象はかなりヘヴィなミクス チャーロックというか、ラップメタルみたいな感じだったのだけれど、聴き込むにつれてメロディラインが浮かび上がってきた。メタリックなナンバーもいいけ れど、"Xmas Day" のようなパワーバラッドの説得力が尋常じゃなく素晴らしい。アトランタ出身、ヴォーカルはブラックなのかな。Saki さん、いつもどうもありがとう。 |
24
Oct
2004 Sunday |
似非 似て非なる、と書いて「えせ」と読む。僕もよく「似非グランジ」とか「似非 Dream Theater」などと便利に使っている言葉の一つだ。ネガティヴなニュアンスが込められていることも多い。 今日は荻窪のラーメン二郎まで足を伸ばしてみた。店に一歩近づくや否や、「あの」懐かしい香りが漂ってくる。期待す るなという方が無理というものだ。確か昨年オープンした比較的新しい二郎だが、2人の店員も若者風だった。価格は「小」で600円、仙川店の最後の価格よ り10円高い。「温泉たまご」などのトッピングが可能なのも異なる点だ。だがここは何も手を加えず、オリジナルの「小」を賞味する。(ニンニクは少しだけ 入れる。) もちろん小といってもどんぶりから溢れんばかりの莫大な量であることは言うまでもない。食べている間にバイク乗りの女の子が隣の席に座って、 あの量を、凄い勢いでスープまで完食してしまったのには驚いたけれど。 …。確かに二郎だ。二郎の系譜上にあることは間違いない。だが違うのだ。似て非なるもの。ラーメン二郎仙川店で食べ慣れたあの食感とは、あのスープとは 何かが決定的に異なっている。細かいケチはいくらでもつけられるだろう。麺の硬さとコシに違和感があったり、スープの酸味とアブラのバランスに引っかかる ものがあったり。 だけれどもやはり最大の違いはそこに「松田さん」がいるかどうかなのであって、彼が天国に行ってしまった以上、あのラーメンはもう二度と味わえないの だった。これはとても小さな例で、僕らはこれからこの手の別れを嫌というほど体験していくことになるだろう。「そう言えば彼女はこのカウンターでいつもギ ネスを美味しそうに飲んでいたな」とか、「あいつ Squeeze の "Tempted" をかける時はいつもやたらご機嫌だったな」とか。僕らは二度と取り返しのつかない何かを日々失いながら、時間だけが止まることなく流れ続ける。 …秋は自転車に最適な季節だ。2時間や3時間のツーリングもへっちゃら。地図を見ながら、他のラーメン二郎にも少しずつ出かけてみようと思った。 |
16
Oct
2004 Saturday |
カウンセリング・インフェルノ 以前、気軽に「じゃあカウンセリングでも受けてみれば?」と言ったところ、相手は「見ず知らずの相手に気軽に相談なんてできない」と尻込みしたことがあ る。よく考えてみれば自分だって、非常にプライベートな問題などを相談するにあたっては相手を慎重に選ぶし、そもそも相談なんてせずに自分の中にしまって おくことも多い。 それにしてもアメリカの映画などを観ていると、どいつもこいつもすぐにカウンセリングを受けたがる。あれは一体何だろう。カウンセリングといっても何か 劇的な治療が行われるわけでもなく、要するにカウンセラーに悩みごとなんかをペラペラしゃべって、相手は相づちを打ちながらそれを聴いて、それでもって決 して安くない料金が支払われるというものだろう。うーん、納得いかない。 納得いかないのにはきっと訳がある。ひとつにはキリスト教社会においては、教会なんかで神父さんに懺悔を行う習慣があったりして、一定の役職にある人間 に対して悩みや苦しみを吐露することにそれほど抵抗がないのではないか。もうひとつは、日本にはカウンセリングの代用品があって、実は知らず知らずのうち に僕らは事実上のカウンセリングを行っているのではないかということだ。 よく言われることだが、米国などでは仕事帰りに職場の仲間で飲みに行くという習慣はほとんどない。定時になったらオフィシャルな付き合いはおしまいで、 そこから先は基本的に家族と過ごすためのプライベートな時間が始まるという。一見何の問題もなさそうだけれど、実際は先に述べたようなカウンセリング社会 になってるわけで、何か歪んでいることは確かのようだ。一方日本はといえば(というか少なくとも自分の職場などは)、めったやたらに職場の飲み会が行わ れ、仕事が終わったあとも同じメンバーで延々と仕事の問題点や愚痴などを語り合う、という不思議な風習がある。 ところがこの飲み会こそがカウンセリングになっている、ということらしい。いやな上司とか意地悪な同僚というのはどこの会社にもいるもので、飲みに行く と必ずといっていいほどそうした人々の噂話が始まるわけだけれど、そこで愚痴をぶちまけながら酒を飲むことによって、精神を病むほど追い詰められる前に 「俺だけじゃなかったんだなあ」と感じることによって、少しスッキリして家路に着くということが可能になっているというのである。結果として日本ではカウ ンセリングに通う必要が生じないのだと。 本当かどうかは知らないけれど、どうせなら美味しいお酒を飲みながら楽しく語る場所がある方がいいや。その意味で、昨晩行われた「80s Night」 もまた楽しいイベントでありました。参加してくださった皆さん、どうもありがとうございました。 |
12
Oct
2004 Tuesday |
物欲日記再び。 持っていなくても死なない程度のモノなら敢えて買うことはかなり少なくなった。それでもジレットが新しい髭剃りを出したと あらば買わないわけにはいかない。それくらいにジレット社製品(正確には同社の MachSyn3 シリーズ)には信頼を置いている。 今回リリースされたのは、上記シリーズの最新型で、先に欧米で大ヒットを記録している M3 Power というタイプだ。先日の英国/アイルランド旅行時にもあちこちで巨大な広告を見かけたことからして、髭剃り界における今年最大の話題商品といって間違いな いだろう。 何がすごいかというと、いわゆる安全カミソリでありながら、ボタンを押すと内蔵電池でヘッドが微小振動するというところだ。それじゃ電気カミソリだろ う、とツッコミたくなるところだが、実際の振動感覚はむしろ電動歯ブラシのそれに近い。能書きによればこの微小振動が寝ているヒゲを立たせ、ワンストロー クで驚きの深ぞりを実現、ということになるらしい。本当かどうかは明日以降確かめるとしても、ガジェットとしての価値は異様に高いといえるだろう。意味も なくOn/Offボタンを押しまくる子供のような自分がここにいる。 *** 【マーケット動向】 日経平均: 11,201.81円 (-147.54) / TOPIX: 1,126.80 (-13.26) 連休明けの東京市場は日経平均株価にして150円近い下落。原油高を嫌気する向きもあるだろうし、混沌としたダイエー再建問題の行く先を見極めたい向き もあるだろう。無理に勝負に出ることなく、じっくりとキャッシュポジションを高めながら、売られすぎた銘柄を物色して仕掛け時を探るのが正解なのではない か。 |
11
Oct
2004 Monday |
Murphy's のドラフトを1パイント。 …飲みたいと思っても、東京で飲めるお店は限られる。ちなみに Murphy's というのはアイルランドのスタウトで、現地ではシェア2番手か3番手といったところではないか。ダブリンのパブではあちこちで飲めたのだけれど、日本では ギネス以外のスタウトは抹殺されているのでほとんどお目にかかれない。個人的な感想としては、ギネスより後味がわずかにまろやかで、つい2パイント目をお 代わりしたくなる。 そもそも輸入の缶もあまり見かけないけれど、生で飲めるスコティッシュ・パブを発見したのでご紹介。なんと吉祥寺の東急百貨店裏にあった。Ullapool というのがお店の名前で、店長(割と若い)がスコットランドに惚れこんで作ったお店らしい。カウンターとテーブルのほかに、英国の家庭の暖炉前を思わせる スペースもあって、小さいながらも心温まる内装で落ち着く。Murphy's のほかに、Bass Pale Ale や Abbot Ale も生で飲むことができるし、まだ食べたことはないけれどフィッシュ&チップスはかなり美味しいようだ。 吉祥寺に好きなお店が増えるのは嬉しいことだ。ビール好きの仲間たちとぶらりと出かけてみたい。 |
9
Oct
2004 Saturday |
金木犀の香り 台風22号が関東地方を直撃している。今この瞬間、滝のような雨が僕の部屋の玄関の扉に叩きつけている。こんな大雨の中でも、僕の住むマンションの周り は柔らかい金木犀の香りに包まれている。 主張が強いわけではない。どちらかというと微かな、優しい香り。夜風に乗って、静かに街全体に漂っていく。そんな金木犀の存在自体が、気に入っているの かもしれない。僕の部屋の目の前にも、小さな金木犀が1本植えてある。山吹色の花がいっぱいに咲き始めて、柔らかい香りを放っている。願わくば、この台風 で花がすべて落ちてしまいませんように。 何度か書いてきたように、僕は金木犀の香りが大好きで、できれば一年中この香りに包まれていたいと思うくらいだ。でも実際には無理で、結局一年の間で初 秋のこのひと時しか味わうことができない。とっておきたいけれど、とっておくことができないから、一層愛してしまうのだろう。儚ければ儚いほど、強く惹き つけられる。例えば明け方の夢のように。例えばビールの泡のように。 *** さて飛行機が落ちることを想定しながら飛行機によく乗る自分がよく読む本といえばこれ、『墜落!の瞬間 ボイスレコーダーが語る真実』(マルコム・マクファーソン編 著、ヴィレッジブックス)。この本は、墜落事故機のボイスレコーダーに録音された墜落前30分のコックピットでのやり取りをテープ起こししたノンフィク ションだ。 紹介されている墜落事故は、アメリカン航空1572便、アエロペルー航空603便、ラウダ航空004便、パシフィック・サウスウェスト航空182便、中 華航空140便、ユナイテッド航空232便など28件。中には、僕の中学校のカナダ人英語教師が乗っていて、ソ連(当時)戦闘機に撃墜された大韓航空 007便や、御巣鷹山に墜落した日本航空123便、また、スペースシャトルチャレンジャー号などのボイスレコーダー記録もある。 コックピット内の会話は専門用語が多いし、和訳に伴って本来の迫力が失われたのではないかと思わせる部分もないとはいえない。それでも、上空で異変に気 づき、墜落する機体の中で大パニックに陥りながらも必死に操縦桿と格闘するパイロットたちの素の発言集として、強烈なインパクトのあるドキュメンタリーな のは間違いない。 … 管制塔「ユクラ27ヘビー、状況を伝えてください」 操縦室<墜落直前まで、スティック・シェーカーが鳴り続ける> 副操縦士「ユクラ27ヘビー、旋回して緊急着陸します。機首を下げろ、機首を下げろ、機首を下げろ」 管制塔「27ヘビー、了解」 機長「墜落するぞ」 副操縦士「駄目だ!」 機長「ああ、クソ!」 副操縦士「オーケー、落ち着け、落ち着くんだ。27ヘビー、緊急事態……」 管制塔「緊急配備につけ、緊急配備につけ……」 副操縦士(機内放送で他の乗員へ)「墜落するぞ!」 機長「落ちる! 落ちる!」 テープ終了 乗客乗員全員死亡。だが実際にこのように緊迫してくるのは墜落寸前のことで、ボイスレコーダーが記録している前半部分は、多くの場合、何とものんびりし た雰囲気だったりする。そしてまた、墜落原因の多くは人災としかいいようのないもので、出発前のごく単純な確認事項を見落としていたとか、操縦桿に器具が 挟まって前に倒せなくなっていたとか、そんなことだ。だがパニックに陥り、地上接近警報音が鳴り響くコックピット内では、どんなに簡単な解決法も思いつく ことができず、迫り来る地表を目の当たりにして絶叫するほかないのだった。 もちろん、最後まで最善を尽くして体勢回復を試みる操縦士もいる。落ち着いた語り口で極力冷静に、的確な指示を行う機長もいる。日本航空123便の例も そうだろう。後部隔壁に致命的な破損が発生してから数十分飛行を続けたボーイング747型機内の恐怖は筆舌に尽くしがたいものだったに違いない。蛇行し、 落下し続ける機内で数人の乗客が家族にあてて遺書を書いていたのはご存知のとおりだ。油圧系統が故障し、操縦不能となった巨大な飛行機を、機長ら操縦士た ちは必死に制御しようと試み続けたそのやり取りが、克明に記されている。飛行機に呼びかけるように「がんばれ、がんばれー」と叫び続ける彼らの肉声が、墜 落を覚悟したような機長の「どーんといこう、がんばれ」というセリフが、重く胸に迫ってくる。 よく言われることだが、飛行機事故が起こる確率は自動車事故とは比べ物にならないほど低く、圧倒的に安全な乗り物であることは間違いない。だがその安全 性を過信している人なら、この本を読んでみて認識を多少改めることになるだろう。また、極端な飛行機嫌いの人にもお勧めしたい。飛行機が落ちる理由のほと んどは、整備不良や操作ミスも含めたヒューマンエラーだ。機体そのものに非があるわけではないことも理解できるだろう。 この本を読むのに最も相応しいシチュエーションはといえば、僕がしたのと同じように、どこにも逃げられないエコノミークラスの客席の中で、長いフライト の途中に読んでみるというものだ。間違いない。 *** 【マーケット動向】 日経平均: 11,349.35円 (-5.24) / TOPIX: 1,140.06 (-1.78) 今週は前半に今年最大級の上げ幅を記録しただけに、後半は利益確定の流れや驚異的な高騰を続ける原油価格動向を見極めようとする傾向が強かったようで す。10月8日のNY株式市場も続落しており、来週以降の株価動向が気になるところ。米国は大統領選挙が終わるまでは不安定な相場が続くのではないかと思 います。 |
27
Sep
2004 Monday |
Goodbye is forever. 僕は海外旅行に出る時に、飛行機が落ちることや事故や事件に遭って命を落とすことをかなりの程度想定しています。命を落とす場合、財産を残しても役に立 たないので保険には一切入りませんが「この場所に戻ってくるのは最後かもしれないな」と思うと、最後に食べておきたいものというのはあります。 僕の場合、それはラーメン二郎仙川店でした。もちろん、出発日前日の15日夜にも出かけました。定休日でもないのにシャッターが下ろされた同店には、 「都合により暫くの間休業いたします」との張り紙がしてありました。 「何かおかしいな」という気持ちが、旅行中もずっとつきまとっていました。 …もうご存知の二郎ファンも多いかもしれませんが、仙川店長の松田さんは突然亡くなっていました。約40歳、まだまだ若かったというのに。僕が最後に食 べたのが9月4日、ネット上の情報を総合すると翌5日が最終営業日だったようです。 この Diary でも何度か触れましたが、実際にはもっともっと激しいペースで通っていました。週に2〜3回なんてザラで、可能であれば毎晩食べに行ってもいいくらいに好 きでした。味はもちろんのこと、松田店長の不思議な人柄に惹かれていた部分があるのも事実です。どうやら彼は慶応大学の卒業生で、在学中に二郎の味に惚れ こみ、修行の末にのれん分けさせてもらったとのこと。ほとんどしゃべらず、淡々とラーメンを作り続ける彼ですが、職人としてのこだわりを常に感じさせてく れました。だからこそ、500円台であれだけ充実した食事をさせてくれるお店に感謝しながら、毎晩のように長い行列に加わり、暑い日も寒い日も二郎を食べ 続けてきたのです。 仙川に住む大きな魅力を、ひとつ失ってしまいました。 まだ降りたままのシャッターの前で手を合わせながら、いつか松田さんの弟子やアルバイトだった人たちが、お店を継いでくれる日が来ることを静かに祈って います。松田さん、毎晩たくさんのラーメンを作ってくれてお疲れさまでした。どうか天国で静かにゆっくりと休んでください。 |
26
Sep
2004 Sunday |
Irish September ロンドンとダブリンを一週間ばかりぶらぶら歩いてきました。特にダブリンは初めての街だったので、それなりの感慨がありました。東京の11月くらいの肌 寒さだったかな? ギネスビールの Storehouse を見学して最上階のパブで出来たて(と称する)ギネスを飲んだり、U2もビデオを撮影したというキルメイナム刑務所を見学したり、ぶらりと入ったお店で適 当に食べ物を頼んでみたり。 ちょっとした心の洗濯ができたようなので、また明日から頑張ります。 |
15
Sep
2004 Wednesday |
I'm Gonna Cry Myself Blind. 先週の日曜日に、世田谷文学館に佐野洋子さんの絵本の原画展を観に行きました。 大人になってからほとんど絵本など読んだことのない自分が出かけたのは、もちろん招待券が当たったからです。世田谷文学館に出かけたのは2回目ですが、 世田谷ゆかりの作家に関するものをたくさん集めた常設展を見るだけで、この世田谷がいかに文学者たちに愛された土地だったかが分かります。 佐野洋子さんといえば、『百万回生きたねこ』が最もポピュラーな作品でしょう。僕も直接読んだことがあるのはそれだけでしたが、この日 は館員のお方の説 明(ギャラリートーク)を聞きながら、展示されている各作品についていろいろなお話や解釈を聞くことができました。 すぐれた絵本が持つ力はとても直接的ですね。絵と文章が、読む者の心にすーっと入り込んできます。よくよくお話を聞いてみると、原画の周辺を巧妙にトリ ミングしてあったり、背景を敢えて書き込んだり敢えて書き込まなかったり。子供たちがなぜあれほど絵本に夢中になるのか、自分もそうだったはずなのに、 すっかり忘れていました。 その中で特に印象に残ったのは、『空とぶライオン』。不覚にも、文学館のギャラリーで、ハンカチから滴るほど涙を流してしまいました。 僕が演じ続けてきたのはまさにこのライオンだったようです。 もう、本当に疲れきってしまいました。 いつまでもこんな生活ができるとは思いません。この辺でちょっと立ち止まって深呼吸してみなくちゃ。気分転換するために、しばらくロンドンとダブリンを 歩いてきます。それでは9月末に再会しましょう。 |
13
Sep
2004 Monday |
スターリンは岡田真澄に似ている。 というのが昨晩のNHKスペシャルを見た感想。ショスタコーヴィチもアシュケナージもどっかにすっ飛んじゃったよ。 *** さて、前回引用したパウエルのルールはいかがだったでしょうか。 個人的には7番の「誰かの代わりに選択することはできない。誰かに自分の選択をさせるべきではない」というのがお気に入り。しかしこの8原則は、実は株 式投資のルールとしても使えるところがミソ。 僕らは投資した会社の株価に一喜一憂しがちです。しかしたとえ一瞬下がっても、その会社の本質がしっかりしていれば、中長期的にはどうってことのない 話。それこそルール1(朝になれば状況はよくなっている)のとおり。 だからこそ、ルール5(選択には細心の注意を払え)なのであって、投資すべき株を選ぶ際には、身体がもうひとつあったとして、今勤めている会社の他で一 番働いてみたい会社を選ぶのと同じくらいに慎重にならなくてはなりません。大事なお金を投じて、そのお金に働いてもらおうとしているわけですから当然です よね。 そしていったん資金を投じたならば、かつその決断の正しさに自信があるならば(自信がなければ投資してはいけません)、それをくじくような事実が目先に 現れて消えようとも、いちいち気にしてはいけません。最初に言ったように、大事なのはその会社の本質的な成長性や収益性を表すデータ(株式では「ファンダ メンタルズ」といいます)です。流言飛語やちょっとした季節変動に影響されて狼狽売りしてしまうようでは、中長期的な成長を見届けることはできませんか ら。 もっとも、ルール8(小さいことをチェックせよ)も大事なポイント。ファンダメンタルズをじっくりチェックして、これはおかしな兆候だと確信できたら迷 わず売ることも大切です。永遠の塩漬け株を抱えてしまうか、最小限の損切りで次の投資先を探すことができるかの違いは、あまりにも大きいからです。 |
7
Sep
2004 Tuesday |
コリン・パウエルのルール 残業過多で文章をまとめる時間がないものですから、今日は以前読んだコリン・パウエルの自伝『マイ・アメリカン・ジャーニー』から、彼自身の信念に基づ く8つのルールを引用して終わりにします。自伝自体も、特に幼少時から軍人時代までの記述はなかなか興味深いものでした。下記のルールにも、ベトナム戦争 を戦い抜いてきた一人の生存者としての鋭い指摘が盛り込まれています。 ジャマイカ系黒人というマイノリティでありながら、国務長官まで上り詰めた彼の処世訓は、こんな感じです。 1. 何事も、思っているほどには悪くない。朝になれば状況はよくなっている。 2. まず怒れ。そしてその怒りを乗り越えよ。 3. 自分の地位とエゴを同化させてはいけない。さもないと、立場が悪くなったとき、自分も一緒に落ちてしまう。 4. やればできるはずだ! 5. 選択には細心の注意を払え。それが現実になるかもしれない。 6. 良い決断をしたら、それをくじくような事実にもくじけてはいけない。 7. 誰かの代わりに選択することはできない。誰かに自分の選択をさせるべきではない。 8. 小さいことをチェックせよ。 |
5
Sep
2004 Sunday |
○リー my love ○の中に正しいカタカナ1文字を入れよ。 誰もが「ア」だと思ったその瞬間、明らかにされた正答は… なんと、「ポ」。はぁ? 「ポリー my love」ぅ? 酷すぎる邦題をあてがわれただけでなく、なんと日本未公開に終わっちゃったんですね、この "Along Comes Polly" は。2004年上半期を代表する全米ヒットコメディだったのに、ビデオ発売のみとは残念な。ていうか有り得ない。だって主演にベン・スティラー&ジェニ ファー・アニストンですよ。そればかりか助演にデブラ・メッシングまでクレジットされていたのに。誰かって? 『ウィル&グレイス』のグレイス・アドラー 役ですよ。トホホ。これだけ揃えても日本じゃ動員を見込めないっていうんだろうか。 ま、映画自体はどうってことないラブコメみたいです。慎重派で潔癖症の保健調査員(ベン)が、奔放な女性(ジェニファー)に振り回されるという設定。 Showbiz Countdown などでは、トイレが溢れて大パニックに陥るベン・スティラーの素っ頓狂な演技が放送されてましたっけ。お下品ネタを自虐的に演じてみせるのは『メリーに 首ったけ』以来の定番ですが、彼がやるとほんとに地みたいですよね。笑えるというべきか笑えないというべきか。(もちろん笑えます) 気になるのはベン・スティラー本年のもう1本の大ヒット、『スタスキー&ハッチ』の行方。まさかこっちも未公開のまま終わるなんてことはないですよね? 好きな俳優なのに評価が盛り上がらなくて少し残念です。 *** ★『山の郵便配達』(TV録画) ハリウッドから中国の山奥に大移動。数年前に大ヒットした本作のTV放映はずっと楽しみにしていたもの。一言でいえば、これが実に清々しく、心温まる映 画なのでした。 「家族の絆」的テーマって、気合いを入れて映画にしようとすればするほど薄っぺらくなってしまう。僕なんて家族とか夫婦とかいう仕組みそのものにいつも 胡散臭さを感じているものだから、そこを妙に持ち上げられるともう違和感バリバリで。 でもこの映画はそう感じさせないのです。舞台は中国の深い山村、登場人物は老いた郵便配達員の父と、その仕事を継ぐ若い息子の2人、プラス彼らが連れて 歩く忠実な犬。これが最後の配達になる父親と、初めての配達になる息子。想像を上回る規模の大自然の中、文字通り山を越え、川を渡って小さな村を回りなが ら郵便物を配達する過程で、父子が少しずつ心を通わせていきます。村人たちとの交流や少数民族の美しい娘との出会い、さらには労働の大切さ、仕事に取り組 む姿勢といったテーマを淡々と描き出していくのです。 ただそれだけの映画だというのに、いったい何なのでしょうか、この静かな感動は。何日もかけて山奥の配達を終えて帰ってきた2人を出迎える母親の優しい 笑顔に至るまで、すべての瞬間がいとおしく思えるのです。老いた父が語る少ない言葉の中に、彼の人生が凝縮されています。だからこそ僕らの心を打つので す。 日本郵政公社職員のみならずすべての公務員に、さらには今自分が何のために働いているのか、仕事って何なのか、そんなことに改めて疑問を感じるように なっているお方に、ぜひお勧めしたい映画だと思いました。 |
4
Sep
2004 Saturday |
モーニングコーヒー 土曜日の朝に、フィルターでゆっくりとコーヒーをドリップする。BGMはAFN810kHzのクラシック・ロックで。例えば Sammy Hagar や .38 Special が流れる中、深い香りを味わいながらカフェインが身体中に浸透するのを実感するひととき。 長い間忘れていた感覚でした。仕事上でのひとつの目標だった試験に何とか合格できた今、もう少し自分を取り戻せるような生き方をしてみようと思っていま す。目先の案件を片付けるのにはもうしばらくかかりそうですが、それが済んだらサイト更新の頻度も上げていく予定です。 ここに至るまで、いろいろなお方から応援や協力をいただき、どうもありがとうございました。今後ますます精進していきたいと思います。 |
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