Diary -February 2004-


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27 Feb 2004
Friday

 僕はサプリメント・ジャンキーなのでビタミンB、C類、コラーゲンなどのサプリメントをよく飲んでいる。飲むのを忘れたからといって死ぬことはないし、 飲んでいるからといって毎日素晴らしく快適に過ごせるわけでもないのだけれど、それでも何となく飲んでいる。

 人生なんてサプリメントみたいなものかもしれない。
 でも人生ジャンキーはなんかちょっとやだ。


26 Feb 2004
Thursday

 良かれと思ってしたことが仇となってしまうことはよくある。よくあるからといって少しも慰めにはならないのであって、知人の出産祝いに書いたカードの件 では他の友人たちに大いに迷惑をかけることになってしまった。オフィスが離れているのでやり取りに時間がかかるとまずいと思い、手元にあったカードにさら りとメモして取りまとめ担当の子に送ったのだが、彼女は彼女で全員が書くためのカードを用意しつつあり、すれ違いが発生したのだ。僕は自分のカードにこだ わる気など毛頭ないので、破り捨ててくれても一向に構わないのだが、要するに協調する精神こそが大切なのだった。深く反省するとともに、もっと空気嫁と自 分に言いたい。空気嫁。

***

 妹が初めての海外旅行に出かけてきた。行き先はニューヨークで、完全な一人旅だ。僕は24歳で会社に海外勤務を命じられるまで日本を離れたことがなかっ たから、自費で旅行に出かけた妹は偉いと思う。海外に出かけるとよくあることだが、彼女も道を尋ねられたらしい。日本人的な感覚だと、どうして旅行者なん かに道を尋ねるのだろう、分かるわけないじゃないかと思いたくなるところだが、彼らにしてみればアジア系の顔をしていようとアングロサクソン系の顔をして いようと、在住者なのか旅行者なのかを区別することなどできはしない。とにかく近くを通りかかるやつをつかまえて道を尋ねているだけなのだ。僕なんかは道 を尋ねられるとちょっと嬉しくなる。その街の住人だと認めてもらったような気がして。でも結局は「Sorry, I'm a stranger here.」とか言って謝ることになっちゃんだけど。

 妹はわずか4泊でミュージカルを5本、オペラを1本見てきたらしい。特にミュージカルでは映画「X-MEN」でも活躍しているヒュー・ジャックマンを追 いかけて、実際に会ってサインを貰ったりハグしてもらったりしてきたらしい(写真を見てびっくり)。こうなると初めての海外旅行がどうとか関係ないね。本 当に好きな人が結果を手に入れる。地球なんて狭いんだからさ。初めて会った現地の人たちといきなりお茶したり、ショーウィンドーを眺めたり。エネルギー溢 れるNYから大きな影響を受けて帰ってきたんじゃないかな。この経験が彼女の世界を大きく広げてくれるといいなと思う。

***

 New York で思い出したのはU2。今頃になって知人からようやく "ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND" アルバムを聴かせてもらうことができた。…いい。すごくいい。冒頭4曲はシングルカットやライヴビデオなどでよく知っているけれど、アルバム全編を通して とてもみずみずしく、力が漲っている。U2とは83年くらいからの付き合いになるのだが、まさか20年後もこんなに素敵なロックを演奏しているなんてあの 頃は想像できなかった。いや、そもそも自分自身の20年後すら想像できなかった。でも僕は確実に20年歳をとったし、U2だってそうだ。なのにこの素晴ら しさはどうだ。アルバムの10曲目に "New York" という曲がある。アイルランド人の目で捉えるニューヨークの現実が描写されている。"But you've got an unquenchble thirst for New York." 僕もまた行きたくなってきちゃったな。

 もう数枚、他の友人に聴かせてもらっているアルバムがあるけれど、その感想はまた後日。


24 Feb 2004
Tuesday

 最近 Yahoo! JAPAN が気に入らない。

 検索したのはいいけれど、余計なものまで出てきやがる。
 検索結果の上に下に、びっしり並ぶスポンサーサイト。目に五月蝿いことこの上ない。
 この厚かまし さ、意地汚さ。すべては広告料のために、株価上昇のために。
 資本主義経済の醜さを露呈し続ける Yahoo! JAPAN、厚顔無恥なスポンサー。

 もう少し奥ゆかしくなれないのか。もう少しおしとやかになれないのか。
 それとも検索サイトに大和撫子を求める俺が悪いのか。
 必要なのは、おもてなしの心 と譲り合いの精神。
 礼儀正しさと純潔を守る心。
 忘れかけた日本人の美徳を、今こそ取り戻そうじゃないか。

 そんなニーズに応えて、Yahoo! JAPANに代わる新しい検索サイトを作ってみました。
 無駄な広告やスポンサーなど見当たらず、余白の美を活かしたレイアウト。
 検索結果は控えめに整列 し、フォントはもちろん草書体。
 さっぱりした口当たりの奥に醸し出される重層的な秘伝の味わい。
 美しき日本の伝統がひっそりと息づき、利用者の心を清々 しくする検索サイト。
 その名も…



 「和風じゃぱん」。



 みたいな。


23 Feb 2004
Monday

 小泉今日子と永瀬正敏が離婚した。

 それだけならどうってことない。はっきり言えば、僕の人生には何の関係もない。日々たくさんのカップルが結婚し、離婚していく。僕の人生には何の関係も ないことだ。

 結婚9周年、10年目の節目の結婚記念日に離婚届を出したというのはある意味カッコいい。永瀬37歳、小泉38歳。何より気に入ったのは彼らが出したコ メントだった。小泉は言う。「夫婦であるという関係が、時に私達を不自由にさせてしまった気がする。今回の
ことはお互いが自由に生きるための決意」だと。よく言った。そう、時として夫婦という関係は2人の愛し合う男女を不自由にしてしまう。

 小泉は続ける。「決して悲しい報告と受け止めないでほしいの。9年間の結婚生活の中で私も永瀬くんもたくさんのことを学び、出会う前の私達よりも人間と して確実に成長し合えたと言える自信があるから」。たとえどんな結果に終わろうと、ある人を心から愛すること、そのことを決して後悔しないこと。それ以上 に素晴らしいことがあるだろうか。人は愛を通じて多くを学び、確実に成長する。小泉が言っていることはこれ以上でも以下でもないが、もっと言えば人生なん てそれ以上でも以下でもない。別の言い方をすれば、小泉今日子は結婚にまつわる全てを言い尽くした。

 彼女の言葉は軽いようで重く、浅いようで深い。「人生の中のある時期、私達は一緒に生きる必要があったと思う。その時間があったからこそ、今の私たちが いるのです。ただ、そのために家庭を築くということを忘れがちだったかもしれません。夫婦であるという
関係が、時に私達を不自由にさせてしまったような気がします」。

 人は人生の中のある時期を、ある人と一緒に生きる必要がある。間違いない。それは数年に渡る恋かもしれないし、一晩で終わる激情かもしれない。たとえ一 晩であってもその人と過ごす夜には意味があるし、数年間に及ぶ夫婦生活ならなおさらだ。彼女が言うとおり、そんな相手とはたとえ離婚しても同志としての信 頼関係はとても深いことだろう。道端を歩いている時も、コーヒーを飲んでいる時も、忘れているようであっても相手のことが頭から完全に去ることはない。そ れは一生を通して変わることなどないのだ。Burt Bacharach と Hal David が書き、Sandie Shaw や Naked Eyes が歌ったように、there is always something there to remind me なのだから。

 永瀬という男がどんな人間なのかはよく知らないが、彼の言葉もなかなか面白い。「家庭を築くという上で、少しだけ何かが2人に足りなかった……(略)ど こかいとこ同士のような関係になってしまいました」というのだが、いとこ同士という表現が興味深い。兄弟姉妹よりは遠く、赤の他人よりは近い関係。民法上 はいとこ同士でも結婚は可能なわけだが、永瀬がここで言いたかったのはおそらく「結婚なんて考えもしないほど身近な存在同士」という感覚なのだろう。

 彼らの離婚を祝福し、今後の人生に幸あれと乾杯したい。

 結局のところ、僕らは独りで生きる他ない。別の言い方をすれば、独りで死ぬ他ない。そんなことは生まれる前から決まっていたことだが、気づくのに遅すぎ ることはないだろう。僕らの世代だと小泉今日子のライフスタイルへの思い入れは決して浅くない。彼女がこれからより充実した人生を送るであろうことも想像 に 難くない。素敵な人生に乾杯。

 その一方で、水野真紀が自民党の後藤田正純衆院議員と結婚すると報道されている。性格最悪と言われる彼女だが、そんなことも僕の人生とは何の関係もない ことだ。結婚するなら幸せな時間を過ごすといい。不自由を感じるようならいつでも自由になるといい。そうこうしている間にも人は次々と結婚し、離婚してい く。いったい人は何故結婚なんてしようと思うのだろうか。そんな法的な縛りで誰かを独占できるとでも思っているのだろうか。独占された相手が幸せに感じる とでも思っているのだろうか。相手が幸せでなくても、自分は幸せになれるとでも思っているのだろうか。生まれる(かもしれない)子供の気持ちになってみた こと はあるのだろうか。


22 Feb 2004
Sunday

「TVで『ワイルド・シングス』を観たよ」
「出たー。1998年、ケヴィン・ベーコン製作総指揮&主演、他にはマット・ディロンにデニス・リチャーズ、ネーヴ・キャンベル、ついでにビル・マーレ イってやつだね」
「80年代に中高生だった世代としてはケヴィンとマットの共演って絵的にかなり美しいね」
「特にマット・ディロンは一度かなり沈んでるからね。復活後の作品はどれもなかなか悪くないと思うよ」
「うん。個人的にはデニス・リチャーズのファンでさ。最初にB級怪作『スターシップ・トゥルーパーズ』を観て完全にKOされちゃったんだ。その後も 『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』でほとんど意味もなく物理学者役で登場するんだけど、とにかくお色気ムンムンのセクシー路線」
「『スターシップ・トゥルーパーズ』はDVDとかで持っておきたいオールタイム級の大馬鹿映画だね。個人的にはディナ・メイヤーも良かったかなー」
「そんなわけで若手H系女優として圧倒的存在感を誇るデニス、この『ワイルド・シングス』でも高校の指導教師マット・ディロンをお色気全開で誘惑するエロ 女子 高生役で、すごいことになっちゃってる。で、共演がネーヴ・キャンベルなんだよね。未見なので全然知らないんだけど、一般的には『スクリーム』シリーズ でものすごく知られてる子らしい」
「ドラッグ漬けのダメダメ女子高生役なんだけど、彼女の存在が効いてるよね。いろんな意味で」
「そうだね。ケヴィンとマット自体はまあ期待通りの演技かな。といっても2人とも前半は完全に猫かぶってるので、途中から大暴れし始めると本性発揮の危な さ満載。あとは胡散臭い弁護士役のビル・マーレイかな」
「これもある意味隠し味になってるね。法廷シーンなんか超胡散臭いし。ここに至るまでにほとんどの観客が騙されちゃう」
「大どんでん返しのサスペンス映画ってことになるんだろうけど、とにかく展開が速いのと二転三転する真犯人探しでジェットコースター級に連れ回される映画 だね。一瞬たりとも気が抜けないっていうか」
「最後までハラハラドキドキの連続で、ほーんと面白いよね。どんでん返しのどんでん返し。この手の映画って大抵始まってすぐに犯人が分かっちゃうものだけ ど、これは本当に分からないから。でも…ちょっとやり過ぎかな?」
「ちょっとね。さすがに最後の30分とかはドタバタの連続でもう誰の台詞も信じられなくなってきて、さっさと結論見せんかい!って気持ちになっちゃうかも しれない」
「エンドクレジットに被せて丁寧に種明かし映像も出てくるしね」
「それはともかくデニス・リチャーズまじ可愛いよ」
「結局それかい。とっくにチャーリー・シーンの奥さんだって知ってた?」
「えっマジすか! もうダメポ… でもチャーリー・シーンなら許せるかな」


20 Feb 2004
Friday

「もう発泡酒は飲まないとか言ってたくせに買ってんじゃん」
「いいじゃんたまにはよー。新製品のチェックも大事なんだよ。それにこれ発泡酒じゃねーんだよ」
「え、そうなの?」
「そうだよ。サッポロ Draft One は発泡酒よりさらに麦芽が少ない『雑酒』なんだよ。税金がさらに安くて本体価格も下げることができたという商品」
「ほんとだ、原材料もすごいことになってる。ホップ・糖類・エンドウたんぱく・カラメル色素。これだけかよ」
「それでいてアルコール分は5%あるんだけどね。ていうかこの口当たりはヤバいよ」
「まずくて飲めないとか?」
「薄いながらもビールっぽい雰囲気は醸し出してる。それはいいんだけど、何も残らないんだよ」
「すーっと入っちゃう?」
「そう。すーっと。よく水みたいなお酒だとか言うじゃん。Draft One の残らなさはマジ水にかなり近い。ある意味水以上かもしれない」
「まあビール党が好んで飲むものじゃないかもしれないけど、スポーツの後とかにあんまりこってりした黒ビールとか飲むわけにもいかないから、シチュエー ションによっては使えるかもね」
「そうだね。麦芽なしでここまでやったという到達点みたいなものかな。でもうひとつお店で拾ってきちゃったのがキリンの Honey Brown。こっちは従来どおりの発泡酒」
「缶のデザインはなかなか悪くないね」
「そうだね。原材料クレジットは麦芽・ホップ・大麦・米・コーン・スターチ・糖類、とここまでは普通だけどその後になんと蜂蜜!」
「はちみつ味なの?」
「そうでもない。直接にはちみつの甘さを感じることはないんだけど、全体的に口当たりがまろやかになってるような気がする。発泡酒って麦芽が少ないからど うしても独特の半端な味になっちゃうじゃん。あの居心地悪さをかなり抑えてくれてる感じ」
「冬場に飲むビール系飲料としてはいいかも」
「うん。個人的にはちみつが好きで、トーストにつけたりヨーグルトに入れたりして日常的に使ってるから、その意味でもこのまろやかな甘さは歓迎だなー。な かなか悪くなかったよ」
「でもやっぱりベルギービール飲みたいね」
「そろそろね」


15 Feb 2004
Sunday

 とか何とか言いながら、チョコレート下さったお方には深くお礼申し上げます。チョコそのものが好きなもので。何かこう、元気が出る食べ物ですよね。身体 の深いところに火をつけてくれる感じ。

 チョコレート映画『ショコラ』については以前書きましたが、今日はバレンタインデー絡みということで、録画してあった『SLEEPLESS IN SEATTLE』(邦題:めぐり逢えたら)を見ました。しかし… うーん、有り得ない展開。ラブコメなんてものはそもそも有り得ないおとぎ話なんだと言えばそれまで。それにしてもこのラストは何なんだ。先に見ていたら NYに行ったときもエンパイア・ステート・ビルには近づかなかったかもしれない。なんてね。

 『YOU'VE GOT MAIL』でのトム・ハンクスとメグ・ライアンの共演はこの映画以来、ってことだったんだね。それでラブコメファンには話題になっていたわけだ。全然知ら ずに観たわけですが、メグよりトムの出演時間がずっと長くて、妻に先立たれた男性(子供あり)をテーマにした映画なんだなーと思いました。最近でこそイチ ローらの活躍で日本での知名度が上がったシアトルですが、この映画の頃はあまり街の様子を知る機会はなかったように思います。

 原題はよく知っていたので、グランジが大音量で流れるシアトルでうるさくて不眠症になる映画だとばかり思っていました(嘘)。むしろチャートファン的に は Celine Dion 初期のヒット "When I Fall In Love" (US#23/93) を生んだ映画として知られますが、どうやらエンドクレジットで流れるらしく、TV放映では聴けませんでした。それにしてもトム・ハンクスの声優が江原正士 (ジョン・ケイジ!)でメグが水谷優子(ビバヒルのアンドレア!)って一体どうよ。


13 Feb 2004
Friday

 お気づきかもしれませんが昨日からまたタイトルをつけるのをやめました。ある読者のお方のリクエストに応えて復活していたものですが、気の利いたタイト ルをつけるのがどうしても難しくて。逆に洒落たタイトルを与えてもらえればそれに見合ったテキストを書く自信はあるのだけれど。世の中うまくいかないもの ですね。

***

 今日が13日の金曜日であること以上に重要なのが、明日がバレンタインデーであることだ。街はどこもチョコレート売り場に変貌し、買い求める女性たちで ごった返している。チョコ業界に踊らされた日本ならではの不可思議な光景だ。なぜ女性が男性にものをあげるのか、そして男性はもらったチョコの数を競うの か。そこに隠された性役割分担の問題の根深さに気づかないまま、明日はあちこちで「チョコ」の所有権移転が盛大に執り行われる。

 チョコの数が気になりますか? 最近ではひとつももらえない幼稚園生が泣き出しちゃったりするらしいから、やっぱり気にはなるのだろう。でもたくさんの人に愛されることにどれほどの意味 があるのだろうか。世界中に30億人を超える女性がいたとしても、本当に好きな、そして好いてもらいたい相手は1人しかいないはずではないか。それ以外の 女性全員からチョコを貰ったとしても、残念ながらあまり意味がない。チョコの海に溺れて死ぬだけだ(絵としてはちょっと面白いけれど)。

 より多くのチョコを求める男がいる一方で、上のような考え方をする男もいる。だからこそ Whitesnake の "Is This Love" の如きバラッドが存在する価値がある。男って単純なようでなかなか難しい生き物なのだ。

***

 それにしても先週の「ザ・ ホワイトハウス2」は実によく出来ていた。1時間弱の放送時間中に複数のストーリィが並行して展開するスリルは米国TVドラマならではだが、先週 はどうも普段とは別の脚本家だったのではないか。議会で進行するひとつの事件をめぐって居残りする羽目になったCJとサム、ジョシュが、それぞれ父親や母 親にメールを書く。ホワイトハウスでの近況を伝えるそのメールは三者三様ながら、いずれも親への暖かい気持ちに満ちたものだった。ドラマとしての完成度が 高くてとても満足。それにしてもCJ役のアリソン・ジャニーが「アメリカン・ビューティ」に出演していたなんて初めて知った。そしてロブ・ロウの代表作は やっぱり「セント・エルモス・ファイアー」なんだね。


12 Feb 2004
Thursday

 9月に仕事で出張したベオグラードの話に戻ろう。旧ユーゴスラビアは欧州の火薬庫と呼ばれていた。第一次世界大戦も第二次世界大戦もバルカン半島が火種 になっている。その理由は世界地図を見れば歴然だ。欧州とアジアの中間にあって、宗教・民族が複雑に入り組んでいる。ちょっと点火すればすぐに燃え上がる よう運命付けられたエリアだったともいえる。

 北からはドイツに、南東からはオスマン=トルコに攻め込まれ、100回も破壊されつくしたベオグラードの街。特に15世紀以来500年もの間トルコに支 配された影響であちこちにイスラムの名残が感じられ、いわゆる西欧の都市とは決定的に異なっている。ユーゴスラビア崩壊後、近年ではボスニア=ヘルツェゴ ビナで血で血を洗う壮絶な内戦が起こったのは記憶に新しい。隣近所同士が20万人もの人を殺し合う情景など想像し難いし、民族浄化のための集団レイプに 至ってはもはや言葉がない。99年にはアメリカ軍及びNATOがベオグラードに対して徹底的なピンポイント空爆を行った。そのピンポイント性たるや驚くべ きもので、市街地を車で行くと両脇の官庁が見事にひとつひとつ破壊されているのだった。不発弾も多いらしく、敢えて再建されぬまま無人ビルとして放置され ている。随行してくれた日本大使館員によると、各国から援助をもらうための分かりやすい「証拠」として残してあるのだという。

 だが、空爆対象とならなかった建物や繁華街は比較的もとの姿を留めている。特にこれといった観光資源があるわけでもない都市だが、中央部にあるカレメグ ダン公園には足を運ぶべきだろう。公園になってはいるものの、本来は丘の上にそびえる要塞だ。カレメグダンとは戦場、Battlefield といった意味だが、城壁に囲まれた要塞の跡を見せつけられるとなかなか重いものがある。要塞内部は軍事博物館になっている。バルカン半島の歴史は戦争の歴 史であるわけだが、欧州とオスマン=トルコに挟まれて戦争を繰り返してきたこの地域の歴史をたどることができる展示になっている。膨大な量のトルコ軍の武 器や防具、サラエボ事件の生々しい写真や解説など、軍事マニアにはたまらないスポットだろう。

 外に出て城壁の上に登ってみた。丘を囲むように2つの大河が流れている。ドナウ川とサバ川だ。これらの川の合流点に位置したことがベオグラードの戦略的 重要性であり、悲劇でもあった。遥か南に広がる緑の大地に目を凝らす。かつてあの方向からオスマン=トルコの大軍が攻め寄せてきた時、このカレメグダン公 園にはセルビアの軍隊が結集して身構えていたはずだ。自分が立っていたまさにこの場所で、数百年前に確かに存在した情景が目の前にちらつく。 何百万人もの人が殺されていった歴史。人は人を殺さずにはいられない生き物なのだろうか。この瞬間にも世界のどこかで誰かが誰かを殺している。

 街の人たちは決して明るく陽気には見えなかったが、かといって落ち込んでいるようにも思えなかった。夜は大使館員たちと代表的なレストランに食事に出た が、グラッパのような強い酒をあおっていい感じに酔うことができた。アドリア海沿いのモンテネグロでは美味しいワインもできるという。食事は肉中心で、や や濃い目の味付けながら日本人でも十分に楽しめる。日本からは観光目的で出かけることはあまり考えにくいが、もしチャンスがあれば出かけてみるのもよいだ ろう。空港でパスポートにスタンプを押してくれるが、「セルビア=モンテネグロ」なんて国名は書かれていない。もちろん「ユーゴスラビア」でもない。ただ 「ベ オグラード」とだけ記されている。国名のスタンプを作ったってどうせまた数年で使えなくなる。数え切れないほどの戦争と国名変更を繰り返してきた国の 知恵なのかもしれない。

 ベオグラード航空のパリ行き便はなんとダグラスDC-9だった。先進国ではとっくに見かけなくなった古い機体だ。おそらくどこかの国から安く払い下げら れたのだろう。猛烈な振動と騒音で今にも空中分解し てしまうのではないかという恐怖に囚われながら、僕らはシャルル・ド・ゴール空港までの短い空の旅に出た。さよならベオグラード。君たちが生まれる街を選 べな かったのと同じように、僕も生まれる街を選ぶことができなかった。誰だって一緒だ。生まれたからには持ち場で何とかやっていかなくちゃならない。チャ ンスがあれば、僕がベオグラードを訪れたように、ストイコビッチが日本を訪れたように、他の世界に足を踏み入れることができるかもしれない。過去を捨て、 その世界で新たな生活基盤を築くことができるかどうかはまた別の話だけれど。


10 Feb 2004
Tuesday

「発覚」

 どうでもいいことですが、自分用のメモとして。結局すべての問題は自分が使っているVAIO PCG-FX55Z/BP という機種に固有のトラブルだったことが判明しました。

 簡単にまとめると、WINDOWS UPDATE で自動的にインストールされる XP SP1 等により、この機種には不具合が生じるようになっていたのです。またまたフリーズが連発するようになったのですが、先ほどVAIOのサポートページから BIOSアップデートをダウンロードしてBIOSを書き換えたところすべてのトラブルは解消。これまで大切なドキュメントを書いている途中で何度もハング アップし、二度と頭の中から取り出せなくなってしまったアイディアが山ほどありますが、BIOSアップデートさえしておけばよかったのです。そうすればそ もそも今回の再インストール作業も不要だった。何てこった。

 VAIOサイトで自分の機種のアップデートページを日々確認していなかったのが悪いと言われればそれまでですが、WINDOWS UPDATEは自動的にインストールされちゃうし、これってそもそも機種自体に欠陥があったってことなんじゃないの? まあこの手の電子機器に「完璧」なんていう概念はないし、その場その場でパッチを当てながら対処していくしかないってのも理解はしますが、少しだけ割り切 れない気分。まだ僕と同じように「VAIOがフリーズしまくる。壊れたのかな?」と悩んでいる人は多いような気もするのです。


9 Feb 2004
Monday

「欧州の火薬庫にて」

 今回のPCのシステムリカバリで一番残念だったのは、昨年9月の欧州出張時の写真が失われてしまったこと。トップページのTEABREAKコーナーではまさにこれからが佳境というところだったのに。ミュン ヘンの写真も然ることながら、もっと残念だったのはベオグラードで撮ってきた写真たちなのでした。

 ベオグラードはかつてのユーゴスラヴィアの首都です。現在ではセルビア・モンテネグロという国名になっていますが、これは要するにセルビア共和国とモン テネグロ共和国という2つからなる連合国家です。連合国家といっても通貨も違いますし、モンテネグロは3年後に独立する権利を留保しています。つまり少し も一体化していない。このあたりが複雑に絡み合った民族問題の反映であり、それはまさに旧ユーゴの歴史そのものであるわけですが、ここでは多少端折って、 ベオグラードという町で僕が受けた印象などを少しずつ書いてみようと思います。今日はここまで。


6 Feb 2004
Friday

「形あるものは全て壊れる」

 ということは頭ではよく分かってるつもりだったのだけれど、自分のPCがクラッシュしてみるまではなかなか信じられないものです。OSの再インストール なんて生まれて初めての体験。もっとも、このVAIOくんは購入当初からやたらフリーズしやすくて、基本的に毎回フリーズしては強制電源切断を繰り返して いたので、再インストールで軽快かつ滑らかな動作になってくれたのでよしと割り切りましょう。

 問題は失われたファイルやデータ類ですが、ホームページのデータはサーバからダウンロードして回復できました。Outlook Express のメール過去ログやアドレス帳なんかはしょうがありませんね。この際過去を忘れて再出発ということで諦めよう。本当に必要な相手からはまたメールが来るに 違いない。VAIOにはDドライブのパーティションが切ってあって、実はそちらに保管していたデータは無事でした。こんなことならプログラム類や保存デー タの類は全部こっちに入れとくんだった。

 一番痛かったのはホームページビルダーが消失したこと。HTMLタグがさっぱり分からない僕はこれまでビルダーにすっかり依存していたわけですが、PC の環境再構築とあわせてWYSIWYG型のホームページ作成ソフト(しかも無料で使えるもの)を探す必要に迫られました。いくつか候補が見つかりました が、結局今この日記を書いているのは Netscape Composer、FTPソフトは定番のFFFTPになりました。多少使い勝手が異なりますが、無料ソフトに文句は言えません。少しずつ勉強していくこと にしましょう。サイトをご覧になっていて何かおかしな表示などに気づいたお方はぜひお知らせくださいませ。


3 Feb 2004
Tuesday

「まるっきりパラダイス」

 先週末から掛け布団・掛け毛布・敷き毛布が新調されたのでした。特に掛け布団は羽毛布団で、これまでの綿布団と比べるとまるっきり「天国」です。綿には 綿の良さもあるのだけれど、やはり「重い」「ベッドから布団が落っこちやすい」などの難点もあり、羽毛の軽さ・暖かさには驚くばかりです。ここ数日の睡眠 の質は明らかに高まってる感じ。(睡眠は量も大切だけど質が肝心だからね)

 睡眠っていいですよね。一日が終わって布団にもぐりこむ瞬間ほど心安らぐ時間はないんじゃないかな。もうこれから何も考えなくていいんだ、ただ目覚める まで眠りさえすればいいんだという解放感。時にはもう目覚めなくてもいい、このまま永遠に眠っていたいと思うくらいに。一生の1/3近くを睡眠に充てる僕 らはもっともっと眠りを大切にすべきでしょう。ぐっすり眠る GOOD SLEEP。

 古い布団を捨てるのに世田谷区じゃ粗大ごみシールを買う必要があるのでした。掛け布団と毛布を合わせて400円。自分で言うのも何ですが、よく干してよ く手入れしたので、本当に布団がなくて困っている人であれば十分活用してもらえるコンディションだとは思います。何とか有効に使っていただきたいという気 持ちもあるのですが…


1 Feb 2004
Sunday

「如月」

 今日から2月です。早いものですね。

 1月30日に2つ行事をこなしました。ひとつは David Lee Roth の来日公演@渋谷公会堂。詳しくはまた Monthly Texts にレポートしましょう。もうひとつは下北沢 Revolver での産業Nightで、選曲は(こちらもあとでレポートしますが)ざっくりこんな感じにしてみました。

【第1部】
1. Just Like Paradise -David Lee Roth
2. Two Tickets To Paradise - Eddie Money
3. Back To Paradise - Styx
4. Trouble In Paradise - Huey Lewis & The News
5. Almost Paradise - Mike Reno & Ann Wilson
6. My Paradise - The Outfield
7. Prisoners In Paradise - Europe
8. Paradise City - Guns N' Roses
9. A.D.1928 〜 Rockin' The Paradise - Styx

【第2部】
1. Too Late To Say Goodbye - Richard Marx
2. Honeymoon In Beirut - Rick Springfield
3. Power of Gold - Dan Fogelberg
4. You're Driving Me Out of My Mind - Little River Band
5. Jane - Starship
6. One For The Mockingbird - Cutting Crew
7. Don't Treat Me Bad - Firehouse
8. Nobody Said It Was Easy (Lookin' For The Lights) - Le Roux

 というわけで、第1部が「楽園特集(まるっきりパラダイスつながり)」、第2部はリクエストその他という感じでした。お越しいただいた皆さんどうもあり がとうございます。また次回がありましたがどうぞ遊びに来てください。2月は21日にベルギービールオフも予定しています。

 それではまた週末まで。


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