Diary -August 2002-


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31 Aug 2002
Saturday

 サイトのイメチェンのコンセプトは、例によって「できるだけシンプルに」でした。シンプルライフを身上としている割には最近買い物症候群に取りつかれてしまい、今週末も無印良品で「木製リラックスチェア」なんかを購入して部屋を一層狭くしては落ち込んでいる自分です。がしかし、ことホームページに関してはシンプルでありた。凝ったデザインや余計な装飾なんて要らない。できるだけユニバーサルで、何の変哲もないものに。要するに大切なのは文章/テキストなのですから。多少行間を広くしたり、色目をさっぱりと整えたりしたつもりですが、もし見にくいページやリンク切れなどを発見なさったお方はメールでお知らせいただければ幸いです。

 さて、ちょっと忙しくなりますので、9月29日までコンテンツの更新をすることができません。ちょっと遅め、かつ長めの夏休みとして大目に見てくださいませ。なお、BBSとメールはちゃんとチェックしていますし、書き込みもする予定ですのでご心配なく。ではでは♪



30 Aug 2002
Friday

 ちょっとサイトをイメージチェンジしてみました。きっかけはなんてことなくって、某読者の女の子が「黒背景に白字は読みにくいですよ」と言ってくれたから。昔から女の子の言うことには弱いのです。本当は黒背景に灰色文字だったんだけど、黙っておいてあげたよ。優しすぎるにも程がある。

 スタイルシートなるものを使ってみたとはいえ、細かい修正まで含めると膨大な時間を浪費してしまいました。本当は今そんなことやってる場合じゃなくて、やっつけなきゃいけない問題集が3冊、仕上げなきゃいけない論文が2本もある切羽詰まった状況なのですが、昔から慣れ親しんだ「試験前には突然いろいろな用事を思い出す」の法則に従って、今回もまた予想通りの展開になりつつあります。いかん、あと1ヶ月しかない。

 今日は1日夏休みをとったので、朝から近所の図書館に出かけて勉強してみたところ、非常にはかどりました。静かなので集中できそうなものですが、読みたい本がたくさん並んでいるので、ともすればそっちに気を取られそうになります。時間があった時にはちっとも図書館に立ち寄らなかったというのに、どうしようもなく切羽詰まった状況になるとこのザマです。まったく進歩しないね。周りの席では夏休み終了間際の中学生や高校生が宿題を片付けているらしき風情。要するにその状態から進歩しなかったのが自分、ということで。

 たとえば本当に気になる女の子の前では相変わらず何もしゃべれない。
 いやはや、進歩しないにも程がある。



25 Aug 2002
Sunday

「でさ、来週の金曜、空いてるか?」

 克哉の誘いはいつも唐突だ。ケータイが鳴ったと思えばいきなり用件に入る。また良からぬ相談かよ…と思いながら頭の中でスケジュールをチェック、「空いてるよ」とぶっきら棒に返す。本当はよく行くお店でDJの回すAORでも聴きながらゆっくりビイルを飲みたかったところだけれど、まあ、次回がない企画じゃない。

「じゃOKね。メンツに入れとくから。合コンの」

 てな具合に勝手にどんどん決めやがる。まったく、他人の都合ってものを考えたことが一度でもあるのかと問いたい。問い詰めたい。

「待てよ克哉、OKなんて言ってねえだろ。大体、相手は?」
「んーこれから適当に揃えるよ。何か希望ある?」
「そんな… 急に言われても」
「こないだの看護婦合コンどうだったよ?」
「あのシモネタ炸裂ぶりはちょっとひどかったね」
「だろ? あいつらもうやる気マンマンだったからさー」
「違うよ、シモネタ振ったのお前だよ」
「そうだっけ? じゃどんなメンバーがいいか決めなよ。看護婦は抜いとくからさ」
「ていうかさー」
「まあ俺に任せろって。お前の好みなんてもう大体分かってんだよ」
「ほんとかよ」
「色白でややぽっちゃり、どっちかっていうとおとなしめ系。普通に音楽の話ができてお酒も飲める子で、できればエッチ好き」
「最後のはちょっと余計だ」
「まあいいってことよ。そうそう、お前ロングヘアの子が苦手なんだよな」
「何で克哉が知ってんだよ」
「あれ? 誰かから聞いたけどな。元カノに髪の長い子がいて、今でもその子のことを思い出すからショートカットの女の子専門になっちゃったって」
「チキショー、誰だよしゃべりやがったのは」
「痛い話だよな」
「他人事だと思いやがって」
「まあ任せとけって。ちゃんとお前のタイプ入れとくからさ。じゃあな」

 かかってきたときと同じくらい唐突に、克哉の電話は切れた。

***

 合コン会場のお店で会った彼女は、素晴らしかった。

 ルックスとスタイルはほとんど俺の理想形だった。80年代洋楽の話題も弾み、ビイル好きという点も申し分なかった。フィル・コリンズの話が出れば即座にジェネシスの「インビジブル・タッチ」に展開し、マイク&ザ・メカニクス経由でポール・キャラック参加のスクイーズ "Tempted" の素晴らしさについて盛り上がる。加えて、ベルギービイルのフルーティな味わいとアイリッシュ・スタウトの頑固なビターネスを同次元で愛している女の子と出会えたのなんて初めてだった。2人の間に言葉で表現しがたいケミストリー/化学反応が起きる条件は、完全に揃っていた。


 …ただ一点。彼女の背中に伸びる美しく長い黒髪を除いては。
 俺は恐る恐る尋ねてみた。

「あ、あのさ、髪、もっと短いのかと思ってたんだ」
「そうなの? 私昔からずっとこうなの」
「いやその、綺麗な髪だとは思うんだけど、その、もっと短くても…」
「どういう意味なの? はっきり言ってみて」

 勇気を振り絞って言ってみた。

「実は俺、ショートカットの子が好きなんだ…」

 彼女の顔色が変わり、怒りが頂点に達するまで時間はかからなかった。


「許せない! 今の言葉、Ctrl+Z してよね! 直前まで戻して Ctrl+S してからやり直しだわ! 本当に信じらんない、私の自慢の髪にあんな酷いこと言うなんて… もうあんたなんか Shift+Del でゴミ箱行きよ! ぐだぐだ言ってると Alt+F4 で強制終了するからね! Ctrl+Alt+Del で再起動したらもうあんたなんかHDDの藻屑だわ!」


 茫然とする俺に、横から克哉が耳打ちしてきた。

「な、ショートカットの女の子用意するって言っただろ」



18 Aug 2002
Sunday

 最近観た映画もうひとつ、ティム・バートン監督の『マーズ・アタック』(原題 "Mars Attacks !")。ティム・バートンは非常に好きな部類に入る監督で、『バットマン』や『シザーハンズ』など何回観てもやっぱり良い。『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の独特のやり過ぎ感も良かったし、『ビートルジュース』の荒唐無稽さもたまらない。『バットマン』で何が好きかって、ゴッサム・シティの暗い空だったりする。暗雲が垂れ込め、映画全編を通してちっともクリアに晴れないあの空の表情こそ最高の役者だと思うわけなのですけれど。

 ですけれどしかし、やはりジョーカー役のジャック・ニコルソンの怪演を忘れることはできません。バットマン役のマイケル・キートンを遥かにしのぐギャラを獲得して驚異的なまでにぶっちぎれた演技を見せるニコルソン。そんな彼をティム・バートンが再び引っ張り出して、アメリカ大統領とラスベガスのホテル経営者の二役をやらせています。いかにも現実にいそうな、優柔不断で判断力に欠ける(しかし見た目の威厳だけはある)無能な大統領役が強烈です。役者が違う、とはこのことか。

 他にも無駄に豪華すぎるキャスト。マイケル・J・フォックスなんかも出てきますが、凶悪な火星人にかなりあっさり撃ち殺されるし。ピアース・ブロスナン演じる大学教授のハズシ具合もティム・バートンらしくて最高。ついでに、テレビ放映だったので吹き替えが小杉十郎太、これすなわちビバヒルのディラン・マッケイ(あるいはアリー my ラブのリチャード・フィッシュ)だったりするわけで、もう腹を抱えて笑いっぱなしです。大統領娘役には、スター・ウォーズ新シリーズのアミダラ女王役で今をときめくナタリー・ポートマン。この子本当に可愛いですねー。個人的にはタランティーノの『ジャッキー・ブラウン』他で光ったパム・グリアーの起用が嬉しかったです。本当は彼女の70年代のブラック・ムーヴィーをいろいろ観てみたい。

 まあストーリィの方はかなり下らないエイリアン襲撃もの、下らなすぎてむしろ最高です。たとえば『インディペンデンス・デイ』の胡散臭さに耐えられない自分などは、ティム・バートンのこのブラックな皮肉の方がずっと馴染みやすいみたい。エグさと下世話さという点では『スターシップ・トゥルーパーズ』の描写の方が無駄に素晴らしかったかな。

***

 テレビで放送する映画が好きなんですよね。

 もちろん映画館に行けば大画面、ドルビーサラウンドの音響を思いっきり楽しむけれど、年に何回も映画館に行けるほど裕福じゃない。かといってレンタルビデオは何だか好きになれない。結果として、テレビで映画を見ることになるのです。

 吹き替えについては賛否両論あるでしょうが、自分は日本独特の文化として割り切ってます。何本も観ていると、次第にお気に入りの声優ができてきたりして、それはそれで楽しみが広がります。また、深夜に放送している映画などは吹き替えなしの字幕つきだったりします。

 トイレに行くタイミングがあるのも良い。映画館で長めの映画観てるとトイレに行きたくなるのは自分だけなのかな? また、密かにシーンがカットされていたりするのも良い。テレビ放映に際しては、時間調整のために微妙に「切られる」シーンが出てきます。映画館で観て、何気ない場面が印象に残っている映画の場合、TV放映時にそれが出てこなくて非常に気になってしまうことがあります。あれは自分の記憶違いだったのか。いや、そんな事はない、確かにこちらを振り向くシーンがあったはずだ。そんな時、テレビ局が「切ってよし」の判断を下したシーンと自分の好みとの価値観の相違について思いを巡らせる瞬間もまた、良いのです。



16 Aug 2002
Friday

 最近観た映画から。

 まずは長いこと観てみたいと思っていた 『ハムナプトラ』。原題 "THE MUMMY" とのギャップが気になりましたが、一度幕を開けてみると、こりゃもう爆発的に面白い映画ですね。徹底的に分かりやすい。ほとんど想像通りに事件が起きて、ジェットコースターに乗せられたようなテンポのよいアクション展開。あっという間に引き込まれて、最後まで一気に観てしまいました。これはすごい。米国ではボックスオフィスのトップ常連になったシリーズで、カルト的なファンもいると聞いたことがありますが、それもなるほどと思わせてくれました。

 古代エジプトのミステリアスな雰囲気や、CGを思い切り使って見せる派手な映像は、アメリカ人にとってはエキゾチック&エンターテイニングなのでしょう。日本的な感覚だとちょっとその人気ぶりを想像しにくいかもしれませんが、頭を空っぽにして楽しめる映画でした。特に主演の女優、ロンドン生まれのレイチェル・ワイズが超可愛くて、一瞬でファンになりました。当然ながらイギリス英語。兄役のジョン・ハナー(スコットランド生まれ)と合わせて、いいキャラだったと思います。ヒーロー役のブレンダン・フレイザーも良かったのですが、彼はひょっとしてコメディものなんかでいい演技をしてるんじゃないのかな。ちょっと見てみたいと思いました。TV放映での吹き替えが、例によって(というべきか…)ビバヒルのスティーヴ役あるいはウィル&グレイスのウィル役、堀内 賢雄さんだったので、どうにもスティーヴやウィルの顔がちらついて困りましたけど。

***

 もうひとつは、クリス・タッカーとジャッキー・チェン主演の 『ラッシュ・アワー』。第2作の方から先に観ちゃってましたが、1作目をTV放映してたので録画しておいたものです。内容は説明するまでもないと思いますが、スピーディな脚本が小気味いいアクションコメディで、特にクリス・タッカーの台詞回しの面白さがかなりいい感じです。でも一番面白かったのはやっぱりラストのNGシーン集。

 久しぶりにサントラを引っ張り出して聴いてみました。Jay-Z の "Can I Get A..." の印象が強いですが、他にも Case & Joe や Dru Hill など、懐かしいヒットが多いです。4年経って完全に市場を制覇した Ja Rule が "Bitch Betta Have My Money" でまだまだ迫力に欠けるフロウを聴かせていたり、Charli Baltimore f/Cam'ron & Noreaga が "N.B.C." なる曲をやってたりするのもいい感じ。オーガニック・ソウル系のGrenique "Disco" は妙に印象に残る曲で、今でも時々頭の中に流れることがあります。曲間に盛んに挿入されるクリス・タッカーの甲高い声のスキットも、映画の雰囲気を伝えていて◎ですが、映画中で効果的に使われていて笑いを誘った Edwin Starr の "War" (「黒い戦争」)は収録されていません。ジャッキーの英語がたどたどしいのを逆手に取ったいいシーンだっただけに、ちょっと残念でした。



13 Aug 2002
Tuesday

 29対7。

 あるいは7対29。どっちにしても、容易に忘れられない数字です。僕の世代に近い皆さんならきっとそうでしょう。あれは1985年夏の甲子園。桑田と清原を擁したPL学園最強時代、対戦したのは東海大山形。打線爆発したPLの最多得点・最多打点・最多安打・最高打率、両チーム計の最多得点・最多安打という1試合の大会記録が今日でも燦然と輝いています。当時の東海大山形のエース、藤原選手は今35歳。今日の朝日新聞の全国高校野球選手権大会ページに載っています。ちょっと照れたような笑顔の写真で。

 被安打21、失点20を記録した藤原選手は卒業後、川崎製鉄で数年プレーした後理容専門学校に3年間通って資格取得、今では家業の理髪店を継いでいるとのこと。甲子園での大敗は不名誉な記録かもしれませんが、時は流れて結果オーライ。投げ合った桑田は今日も巨人戦で先発し、マジック点灯に貢献。打ちまくった清原はケガで戦列を離れているものの、絶大なカリスマ性を誇る日本一の千両役者バッター「キヨさん」として君臨。三者三様の人生、それぞれに味わい深く。

 そうそう、PL対東海大山形の試合では、確か9回くらいに1塁手の清原が選手交代で一瞬マウンドに立ち、なんとピッチャーを務めた記憶すらあります。オールスターでイチローがピッチャーになるのとはちょっとわけが違う。瀕死の重症を負った東海大山形のプライドをずたずたに傷つけ、まさに安楽死を宣告した瞬間でした。この試合が永く語り継がれる理由のひとつ。

 もうあれから17年も経ってしまったのかと思うと、軽く眩暈がします。それでも「29対7」と聞く度にすぐにあの夏に引き戻されてしまう。他にも29:7とか、29.7%とか似たような数字の並びを見ただけで。


 あるいは "25 Or 6 To 4" とか。


 …ちょっと無理がありました。
 今夜も「長い夜」になりそうですが、うちのあたりは朝夕少しずつ風が吹いて涼しくなってきました。皆さんの近所ではいかがですか?



12 Aug 2002
Monday

 テレビは非常に危険な箱で、疲れている時ほどなぜかボンヤリ眺めてしまうものです。週末の夜もさっさと眠ろうと思っていたら、深夜にNHKで広瀬香美のファーストライヴを放送していたので、ついつい最後まで観てしまいました。

 広瀬香美という歌手は…、と書きかけて果たして本当に「歌手」と言い切っていいのかどうかちょっと迷う。本人も長いこと自分は「歌手」ではなく「作曲家」だ(あるいはそうありたい)と思い込んでいたフシがあって、たまたま自分で作詞作曲した歌を歌っているけれども、本業はあくまで歌を作ることの方だから、コンサートをするなんてとんでもないと思っていたらしい。しかしご存知のように冬になる度にスキー用品メーカーのCMタイアップで大ヒットを連発、なぜかコンサートをやらない歌手として、妙な理由で注目を集めてしまうことになります。周囲の期待もあり、ようやく重い腰を上げて「最初で最後の?」と銘打ったコンサートを行うことになったわけです。

 「ロマンスの神様」「DEAR...Again」「ピアニシモ」「ゲレンデがとけるほど恋したい」「愛はバラード」「真冬の帰り道」「幸せをつかみたい」「I Wish」「ストロボ」などなど、大ヒット曲ばかりですから、きっと皆さんも一度くらいは聴いたことがあるのではないかと思います。僕自身は彼女のソングライティング能力を非常に高く評価していて、非常にキャッチーなメロディをベースに、さらにひとひねりして強烈に印象に残す技術に長けている人だと思っています。さすが、David Foster 先生をフェイバリットに挙げるだけのことはある。特に上記の「幸せをつかみたい」のぐいぐい引っ張るメロディラインと、高く高く伸び上がる素晴らしいサビの展開には聴く度に圧倒されます。しかもブリッジを挟んで最終セクションでのコーラスでさらにもう一段伸びる(「♪スリルと/感動の/アドベンチャー」)部分など、見事歌い切ったらさぞ気持ちいいことでしょう。

 そんな訳で、本人の謙遜とは裏腹に、パンチの効いた伸びのある歌唱も楽しめる広瀬香美ではありますが、残念ながらと言うべきか、彼女はアイドルのようなルックスを持っているわけではありません。この日のコンサートでも、何度も衣装替えをしたり、ショートパンツにノースリーヴで走り回ったりする姿はやや痛々しくさえありました… ま、本人と会場のファンたちが満足していればもちろんそれでOK。ただ、大ヒット曲に混じって歌われた新しめの曲たちにあまり冴えが感じられなかったのはちょっと残念。99年に大沢たかおと結婚(入籍)した広瀬香美、その楽曲がその後急激に冴えなく感じられるのはどうしてなんだろう。

 思えば彼女の初期のヒット曲の歌詞は異様なまでに「幸せ」にこだわっていました。それも「結婚」という幸せに。そもそも結婚と幸せがイコールで結ばれるものかどうかはアヤシイところですが、広瀬香美の歌にはこれでもかとばかりに「いい男をゲットすること」イコール幸せという概念が敷き詰められています。ある種の女性層をターゲットにして音楽で商売する場合に、何が求められていてを分析して何を売るかを考えるマーケティングは極めて重要ですが、ひょっとすると広瀬はマーケティングじゃなくて本気で結婚=幸せにこだわっていたのかもしれない。とすれば結婚後の、おそらくは幸せな状態にある広瀬香美の音楽の質がそれまでとは異なってくるのも当然でしょうね。どっちにしろ僕は彼女の歌詞にはほとんど共感したことがなくて、メロディとコード進行だけを聴いている感じなのですが、そのメロディが自分に引っかからなくなってきたのはちょっと残念なことでした。

***

 歌い手も変化するし、聴き手である僕の環境も変化していく。常に変化しあう存在同士が、どこかで一瞬交差してその歌に心動かされたり、同じ音楽でも異なる状況下で全然心に響かないことだってある。音楽に限ったことではありませんが、不思議なものです。そういう不思議な偶然を、もっともっと大切にしていきたいな。

***

 不思議な偶然のひとつなのかどうか、ほとんど衝動的にPCを買い換えてしまいました。SONYのVAIO、PCG-FX55Z/BP。17万円前後なり。DVD-ROM付きですが、果たしてどの程度のクオリティで観ることができるのかは不明。さっそく何かで試してみたいっす。これまで愛用してきた IBM ThinkPad i-1200 は中古屋さんに売られていきます。飾りっけのないマシンでしたが、頑丈で、キーボードのストロークが抜群に良いラップトップでした。良い持ち主に出会えますように。そして新しいVAIOとはこれからじっくりとお付き合い、よろしくお願いします。



10 Aug 2002
Saturday

 睡眠の大切さを思い知るのは、会議中に居眠りしてしまう時だ。

 (これは大切な会議なんだ、絶対に眠っちゃいけない、いけない、いけない…)とか思っているうちに、こっくりこっくりと居眠りモードに突入。恥じることなく告白すれば、僕は日常生活のほとんどあらゆる状況において、瞬時に居眠りモードに切り替えることができる。特技、と言えればカッコいいのかもしれないが、切り替えたくない場合においても強制的に切り替わってしまうことが多々あって、正直言ってちっとも使えない特技だ。むしろ迷惑極まりない。

 ところが今週は極端に忙しくて、2回も3回も終電を逃してタクシーで帰る時間まで残業していたのだけれど、こうなると妙なもので、ちっとも居眠りしないのです。それどころか非常にテンションが上がってしまい、普段の数倍の勢いでコトバが出てきたりする。深夜に帰宅してもすぐには眠れず、昂ぶる神経を治めるまで3時4時までテレビを見てしまう。結果、睡眠はますます短くなり、ほとんど寝ないまま出勤するパターンの繰り返し、また繰り返し。

 これも数日間なら耐えられる。今の自分ならせいぜい2週間くらいだろう。もし3週間以上に及ぶのであれば、一瞬の気の緩みでそのまま身体が壊れてしまうこと請け合いだ。ハイテンションなだけにひとたび崩れると悲惨。廃テンション間違いなし。僕は比較的睡眠ジャンキーで、何も考えることなく(目覚ましも設定することなく)たっぷり眠れるぞと思って眠ること以上の幸せはほとんないのではないか、と思っているので、今はとにかくぐっすり眠れる時間がほしいです。豊富な睡眠があってこそ充実した読書や恋愛や音楽鑑賞が可能だ。いわんや仕事をや。


 …なんてことをぼんやり考えながら無言で自宅に向かう深夜2時のタクシーは、ちょっと切なかった。来週は居眠りしないですみますように。



4 Aug 2002
Sunday

 僕の住む街は仙川といいます。毎年夏に 「おらほ仙川夏まつり」 という夏祭りが行われていますが、これまで不思議と足を延ばすチャンスがありませんでした。そこで今年はやや意識して参加。昨晩のことです。

 お祭り自体は8/1(木)から3日連続で行われていましたが、やっぱり最終日が一番盛り上がる。商店街駐車場を全部使ってのステージショーと、駅前の商店街を練り歩くパレードの2本立てです。パレードには白百合女子大学のチアリーディング部と、桐朋学園大学のブラスバンドという、仙川を代表する2大学のメンバーをはじめ、和太鼓の鼓響比翼会や、浅草サンバ祭りにも出場するサンバチーム「バルバロス」などが参加。中でもサンバは大人気でした。あのリズムが大音量で流れてくると、誰だって踊りたくなってしまうもの。そういう時、肌の露出度がどうこうなんて議論は正直願い下げ。事実、ほとんど全裸に近い状態で踊ってるお姉さんたちにいやらしさは全くなくて、とても健康的なカッコよさが溢れてました。

 一方、大駐車場に数千人を集めてのステージショーは、中学生のバンド演奏や阿波踊り、パレードが終わった白百合のチアリーディング部やサンバチーム「バルバロス」が次々にステージ上でパフォーマンス。会場も盛り上がります。それにしてもたくさんの人、人、人。仙川という街が近年とても多くの人を惹き付けているという印象はありましたが、これほどまでとは。特に小学生、中学生くらいの子供がたくさん来ていたのが印象的。自分が子供だった頃にも、街の夏祭りはやっぱりそれなりのイベントで、特別にお小遣いをもらって早くから出かけて行ったものです。人ごみの中で同級生に会ったり、一緒にジュースを飲んだりたこ焼きを食べたり。金魚すくいがうまくいかなくてベソかいたり。密かに好きだった女の子が浴衣で来ていて、学校で会うのとは違う色っぽさにドキドキしたり。夏祭りというのはそういう場であったし、見る限り2002年の仙川においてもそういう場であり続けているようです。よかった。どう見ても中学生の男の子と浴衣の女の子が、仲良く焼きとうもろこしなどを食べながら、ステージを楽しんでいる。夏祭りというのはこうでなくてはならない。

 で、午後9時頃そのステージでは何が行われていたかというと、ジョーダンズのお笑いライヴでした。これはちょっとサムかった。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、メンバーの片方、三又の金八先生の物真似がほとんどネタのすべてという芸の狭さ。あと、長州力のマネも結構うまいんですけど、如何せん30分の野外ステージを持たせるには弱すぎるのです。ツッこむ山崎もワンパターンだし、残念ながら旬を過ぎたお笑いコンビだなあという印象を拭えませんでした。まあ、企画サイドにも都合がいろいろあったことでしょうけど、もし可能であれば 「爆笑オンエアバトル」 で活躍しているクラスの、例えばハリガネロックとか、テツ and トモとか、スマイリーキクチとか、いつもここからとか連れて来れれば最高だったんですけどねー。田上よしえさん呼んでくれたら前の晩から泊まり込んで場所取りますよマジで。なーんて。

 ジョーダンズが去った後は、仙川の COOL DANCE CLUB のメンバーたちによるダンスパフォーマンス大会。これがもう、白の衣装をまとった女の子たちがうじゃうじゃ舞台に上がってきて、数十人規模で一糸乱れぬ素晴らしいダンス! SPEED やアムロ以降、この手のヒップホップ系のダンスクラブは大人気と聞いていましたが、やっぱりみんな楽しそう。自分的には、クラブ専属のDJがプレイするヒップホップのセレクションが気に入りました。Naughty By Nature f/Zhane の "Jamboree" の夏っぽさ! House of Pain の "Jump Around" のイントロには一気に体温が上がりますし、Rakim の "Guess Who's Back" のトラックにはいつも飛ばされる。野外の巨大PAで聴くヒップホップは、部屋で小さな音量で聴くのとは全然違うカッコよさなのでした。

 そうこうするうちに時計は10時を回り、夏祭りも大団円。数千人はいたかと思われた参加者が、一斉に会場をあとにします。みんな帰るのは早いんだね。会場の隅で寂しそうに立っていた浴衣姿の女の子が目に留まりました。今風に浴衣の両袖を肩までまくり上げて、綺麗な両腕を露出したまま、誰かを待っているようでもあり、誰かに待たれているようでもあり。その誰かが僕でないことは100%疑いがなかったけれど、その子の姿は強く印象に残りました。狭いようで広い街。あるいは広いようで狭い街に住む住民が、1ヵ所に集まってほんの一瞬だけ日常を忘れる夏祭り。夏はまだまだ続きますが、何かが確実に終わろうとしている。

 時節柄、今年も心をよぎったのは、やはり高浜虚子のあの一句。

 「浴衣着て 少女の乳房 高からず」


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