Diary -Feb (1) 2002-
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15 Feb 2002 Friday |
バレンタイン・デイも無事に終わったと思ったら、今日はある女に追いかけられて困った。なんと彼女、全裸だったのだ。全裸といっても丸出しではなく、その身体に真っ赤なリボンを巻きつけて。「チョコよりあたしを食・べ・て(はあと)」 とか言いながら。「チョコじゃなくて、千・代・子を(はあと)」。 …島倉千代子かよ。 アリー my ラブのような幻覚に襲われている場合ではない。 *** そんなわけで今夜のアリー my ラブ。 デトロイトに発ったラリーのことを思い詰め、さまざまな幻覚を見まくる彼女。自分のアパートのルームメイトのレネのベッドに潜り込んでみたら、そこにいたのは事務所の同僚(♂)ジャクソン・デューパーだったというサプライズ。レネが1回目のデートで彼を引っ張り込んでエッチしてた訳なのだけれど、それってどうなのか。いや1回目でエッチすることじゃなくて。そうじゃなくてルームシェアする時って、ルールがあるべきでしょう? たぶん最大のルールは 「エッチは禁止」。 欧米ではルームシェアは普通だし、日本でもこれから3LDKくらいの大きな賃貸マンションを数人でシェアして暮らすスタイルが流行るかもしれない。ドラマの『フレンズ』みたいなもの。1人じゃ借りられないような物件に住めるし、リビングはいつも賑やか。食事も多めに作ってシェアする方が安く上がるしね。で、同性とシェアする場合でも異性とシェアする場合でも、最低限のルールとして 「エッチ禁止」 はアリだと思う。同性のルームメイトの場合なら、レネみたいに異性を連れ込んでエッチするのは×。異性のルームメイトの場合なら、ルームメイト同士のエッチは×。もし「ルームメイト」という関係をキープしたいのなら、事を面倒にすべきじゃない。 でもレネの場合ジャクソンに対して本気みたいだし、もしそうなったらルームメイト解消して出ていくっていう選択肢も見据えているようだから良しとしよう。問題はアリー。結局ラストではデトロイトからラリーが帰ってきていて、二人は熱い抱擁とキスを交わすのだけれど。どこをどう見ても、終わってる。終わってるよ。近距離遠距離に関係なく。 これから数週間、今シーズン終了に向けてストーリィが猛烈に加速する。 |
14 Feb 2002 Thursday |
バレンタイン・デイ。 もちろん部屋で "My Funny Valentine" を聴く。 もちろんチェット・ベイカーの "CHET BAKER SINGS" 収録ヴァージョンで。 なよなよした頼りないヴォーカル。力の入らないトランペット。それでもこのアルバムは僕を捉えて離しません。チョコレート好きなので、普段からよく明治や森永やロッテの板チョコを買い置きしてあります。チョコをかじりながら、脱力系ジャズを聴いてちょっとぼんやりする瞬間。チェットが歌います。 "Stay little Valentine, stay... Each day is Valentine's Day..." この上なくシンプルな夜。 でもこの上なく贅沢な夜。 すべての人にハッピー・バレンタイン。 |
13 Feb 2002 Wednesday |
つうかさ。 もし名前を付けるとすれば、洋楽系テキストサイトのオフ会なのかもしれないけど、どうカテゴライズしてもしっくりこない感じで。ぶっちゃけ、支離滅裂に面白かったわけです。 一応まこっつくんとその周辺、みたいな人脈になるようで。12月にも誘われてたんだけど(むしろ無理やり誘ってもらった)、その後水泡に帰す極めてムダな仕事に追われてとても顔を出せず涙を呑んだので、今回は意地で参加。相当主観を入れながら簡単にメンツを紹介すると。 まこっつくんは元気良くてサイコー。しまけんがよく「まこっつくん」と言ってるので勝手にくん付けです。ちょっといじられ過ぎ。しまけんはいつもどおり。みんなも彼についてはこれくらい簡単に済ませて、むしろ使える文体を軽やかに真似すると良いよ。さだをさんは持ちネタ豊富な上に各人への振りが実に的確で。聴いてる量と質があれだけ伴ってるのは凄い。アイバさんのテキストには憧れてたので会えて感動。Katze とか10年ぶりくらいに聞いたです(笑)。噂のファンサイトってコチラですね。ところでうちへのリンクコメント中で「ビルボードの情報やオCDのレビューが…」とありますが、オは要らんので消しといていただけますか、とかお願いしてみよう。セキネさん、後半眠そうだったけど大丈夫かな。プロレスネタで俄然目覚めるあたり、共感しました。せっきーさんはニット帽が似合ってたっす。この夜一番のヒゲ。セックス=スポーツ発言はまさしく名言。ウィンタースポーツ兼サマースポーツ時としてウォータースポーツ。個人競技ありペアあり団体戦あり。オリンピック種目になってないのが不思議なくらい。 しかし、最大の収穫がしのけん君であることは衆目の一致したところ。 だって16歳だよ。オレの約半分だよ。Soundgarden と Latin Jazz 語っちゃうんだよ。PCが両親の寝室にあるんだよ。書き込みも途中で切れるくらい命懸けだよ。ケータイのアンテナ鼻に突っ込まれて大出血だよ。あの後カラオケで Slipknot 歌ってさらに破格の壊れぶりを見せたとのこと。立ち会えなくて本当に残念だったけど、無事に帰れたのかちょっとだけ心配。オフ会デビューが悪い思い出にならないことを祈ります。みんなキミのことを可愛がってくれたんだよきっと。精一杯のやり方で。 いやほんと、マジ面白かったんで。自分ひとりだけ堅気のスーツ姿で、次の日も仕事だったので泣く泣く12時には帰りましたけど、金曜夜だったら朝まで遊んでも良かった。自分にとってネット遊びの一番面白いところは、会ったことない同士とか、普段全くバラバラの生活を送ってる同士が集まって、いきなりこんなコミュニティが成立してしまうところ。例えば「音楽」といったキーワードだけで、それまで知らなかった相手同士が自然と溶け込んでひとしきり盛り上がり、終わるとそれぞれまたネットの世界に散って行く。ここには妙に落ち着けて妙に和める場が、空気があります。 また行きたいな、と素直に思いました。 |
12 Feb 2002 Tuesday |
サイト閉鎖宣言? とんでもない。 サーバーの調子が悪かったようで、メインサイトのアップロード中に何回もエラーが出てしてしまい、時間がなかったのでそのまま出勤することになりました。当然のことながら、今朝からずっとアクセスできない状態になっていました。 まず、今日アクセスしてくださった全ての皆様、そして 「サイト閉鎖か?」 と心配してくださった方々に心からお詫び申し上げます。ゴメンナサイ。そしてありがとうございます。大丈夫、閉鎖はしません。 …今のところは。 小さなサイトではありますが、ここのところ毎日100〜150人くらいの方にアクセスしていただいています。いろいろなことを考えてアクセスデータ解析もつけています。すると、毎日実に様々なところからアクセスがあることに驚きます。 ご自宅から何回もアクセスしていただいているお方あり、あの有名企業のドメインでアクセスされているお方もあり。大学ドメインの学生さんも多いです。中央官庁(go.jp)のお方や遠く離れた地方自治体のお方もいらっしゃいます。さらには米国ドメインや ac.uk のような英国ドメインのお方までいらっしゃるのです。こうした方々が WINTER WONDERLAND を毎日のように訪問してくださるのは信じられないほど嬉しい一方で、プレッシャーで身が引き締まる思いでもあります。 掲示板に書き込んでくださったり、メールをくださったりする皆様にはとても感謝していますが、それは訪問者のごくごく一部に過ぎません。WINTER WONDERLAND はそれ以外にもたくさんの読者の皆様に支えられて成り立っているのであって、その一人一人に心からお礼を申し上げたいと思います。いつもアクセスしてくださる、まだ会ったことのない貴方へ。ちゃんと貴方のアクセスを毎日見つけて感謝しています。どうもありがとう。これからも応援よろしくお願いします。 *** 実は今夜は目黒でオフ会… というにはあまりにも面白い飲み会に行ってきたのですが、この件についてはまた明日。 |
11 Feb 2002 Monday |
ここのところ月曜日の朝日新聞がどうも怪しいので、今日も隅々までチェックした。 おかしい。一見、何も異常が見当たらない。破綻なき普通の新聞に見える。こんな当たり前のことで感動できるくらい、最近の朝日新聞には脱力させられてきたということか。 …と思ったら、あったあった。 あまりに何気に、巨大な見出しになっていたので見落とすところだった。オリンピック特集ページに、モーグルの上村愛子と里谷多英の豪快なエアの写真とともに。 「上村 大技愛し」 まあいい。愛ネタくらいは許してやってもいいだろう。 問題はむしろこちらだ。 「里谷耐え笑顔」 あああ。 朝日の駄洒落ネタここに極まる。 *** 一番ウケたのはやっぱり今日もテレビ欄 『はがき通信』。 投稿募集を見かけたことがないとか、電子メール投稿はできないのか、とか先日ツッコんだばかりだが、あたかもこのページを読んでいるかのごとく、朝日の担当者が軽やかに回答をよこしてきたのだ。 「電話番号をお忘れなく」 テレビ番組についてのご意見、ご感想をはがきでお寄せください。字数は約200字。宛先は(中略)。住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記してください。二重投稿はお断りします。 『はがき通信』 のコーナー名を守るため、頑なにハガキ投稿のみに限定しているのもどうかと思うが、絶句したのは 「二重投稿はお断りします」。名探偵コナン論争や 「いつかはオレも」 学生といった優れたネタを他社に奪われまいとする浅ましい心の表れか。しかし、上の文章にタイトルをつけるとどうして 「電話番号をお忘れなく」 になってしまうのか。どう要約してもそうはならんと思うのだが。担当者、200字要約が大の苦手とみた。 ははんなるほど。 『はがき通信』 担当者、労せずして投稿主婦の直電話番号をゲットかよ。 |
10 Feb 2002 Sunday |
今日は冷え込みました。世田谷区では小雪がちらつきました。13拍子で。 結局のところ特別なメニューにすることもなく、冬場の定番、鍋。 鍋のメリットはいろいろあるけれど、何といっても野菜をたくさん摂取できる。これ。白菜、春菊、ネギ、キノコ、大根その他、あれほど入れた野菜が、あっという間に半分以下の体積に。特にあれこれ考えなくても、適当にダシが出てなんとなく美味しく仕上がるのもいい。今日のメインは牡蠣だったのですが、これだけで十分美味しいスープになります。あとはダシの素や味噌やみりん、チゲ鍋の素などをちょっとずつ足しながら味を整えて。もともと薄味好きなのでこんなところかな。ひとり鍋は、当然明日の分が残ります。2日目はうどんなどを入れるのもいいね。 *** テレビを見るとソルトレーク五輪一色。今回は米国、時差が大きい。毎晩テレビに釘付けで睡眠不足になることは間違いなし。 でも、長野のときも睡眠不足だったような気がする。よく考えたら当然だった。時差がなければ、日中にリアルタイムでやっている競技は見られない。結局、夜中の録画番組で見ることに。気がつけば毎晩睡眠不足。つまり、僕らはオリンピック睡眠不足から逃れられない。 モーグルは見ていてとても楽しい。里谷多英の銅メダルの横で、ちょっぴり悔しそうな上村愛子。可愛い顔してるのに、子供の頃はいじめられていたらしい。いや可愛いからいじめられたのか。それとも子供の頃は可愛くなかったのか。まあ、今可愛いかどうかの判断だって人それぞれだろう。右手の薬指と左手の子指に指輪して競技に出ることの是非についても人それぞれ。 でも、競技場で 「愛子! 愛子!」 と連呼する応援だけはやめとけ。 …そのジャンケン、きっと終わらない。 |
9 Feb 2002 Saturday |
「100人の村」 を書いてからどうも身の危険を感じています。プログレヲタクの皆さんは割と冗談が通じる人が多い(むしろ自虐的にプログレ好きである自分を貶める傾向すらある)と思っているのですが、中には 「何ほざいとるんじゃゴルァ!」 と怒鳴りこんでくる人がいないとも限らないので… まあそんなことをプログレ好きの僕が書いても説得力ないんですけどね。 話は全然変わって、ここ6ヶ月くらいの買い物でもっとも感激したもののひとつが 『無洗米』。言葉が新しすぎて日本語変換がうまくいかないくらいですが、これホントに楽チンです。なんとお米に水を入れて、そのまま炊くだけ。洗う手間も然ることながら、これまで研ぎ汁で下水を汚染してきたことを思うとちょっとココロが痛みます。楽チン=味が落ちるのかといえばさにあらず。洗い流さないことから栄養分は豊富だし、ご飯の味も美味しい(ような気がする)ときているのです。じゃあこれまでのお米は何だったのか。 東京は午後から急激に気温が下がってきました。3連休は本格的な冬型のお天気になりそう。こんな時に限ってお米が切れる。というわけで明日は近所のスーパーで食材をいろいろ買ってこなければなりません。時間もたっぷりあるし、普段とはちょっと違うメニューに挑戦してみようかな? |
8 Feb 2002 Friday |
昔セックスした仲の元彼or元彼女と一緒に働く状況ってどうよ? ここ数週のアリー my ラブはまさにそんな状態。新キャラのジャクソン・デューパーはナイスルッキングなブラックガイ。でも実はリンをナンパして寝た仲でした。ところがカッコいいだけじゃなくて割と頭も切れる。ちょっと走り気味だけど、弁論も滑らかでかつ厳しいところ突いてくる。やり手なのです。 …そしてヤリ手でもある。 今日も裁判後、さっそく下のバーでレネを口説くデューパー。ナイスバディのレネも独りが長いから、これはコロリと落ちそうな雰囲気です。問題はリン。どう見ても面白くなさそう。表面ではとっくに彼と切れた様子を装ってるけど、未練がありあり。リンはいろんな意味でパーフェクトなキャラですが、このエピソードに関しては彼女の弱いところ、人間らしいところが垣間見えるのです。 レネやデューパーのようなアフリカン・アメリカンや、リンのようなアジア系といったマイノリティが、チョイ役じゃなくて重要なキャラを演じているところも、僕がこのドラマに惹かれる理由のひとつ。だってこの方がずっとリアルなアメリカらしいから。「ロズウェル」 に唯一不満があるとすればそこ。あれは徹底的にホワイトによるホワイトのためのドラマになっていて、マイノリティがほとんど出てこない。もっとも、ロズウェルのような街では地理的にブラックは多くないのかもしれないし、「異星人」 という究極のマイノリティが主人公だという見方もあるでしょう。 アリーだと登場キャラの多彩さに加えて、扱う事件もセクハラ訴訟や同性愛差別、果てはルックスが悪くて解雇されただの何だの、ありとあらゆるマイノリティ問題が白日の下に曝されて。あそこまで徹底してアメリカの抱える問題をデフォルメして見せてくれると、もはや痛快。セラピストが頻繁に出てきて、何かというとすぐにセラピーを受けに行っちゃうところもアメリカ的。もうトレイシー・ウルマンのセラピストは見られないのかな。 夢見るセラピスト。 |
7 Feb 2002 Thursday |
期末試験シーズンである。 この季節になるといつも決まってフランツのことを思い出す。彼は大学時代に同じクラスにいたプラハからの留学生だ。僕は彼に日本語を、彼は僕にチェコ語やドイツ語を教え合った。覚えの悪い2人は、結局片言の英語で意思疎通することになった。でも彼とは妙に馬が合い、身振り手振りを交えながら何時間も話し込んだことも1度や2度ではない。(そう、フランツは日本語の 「馬が合う」 という表現をとても面白がった) 僕はその頃バスケットボールをやっていたので、フランツを誘ってよく授業の合間に 1 on 1 をプレイした。僕はロングシュートを撃つのが好きだったが、フランツはドリブルで出し抜き華麗なレイアップを決めた。10分のゲームで負けた方が下北沢でビイルをおごるルールだった。実力はほぼ互角だった、と言いたいところだが実際はフランツの方がずっと上手で、僕は負けっぱなしだった。だが不思議と悔しさは感じなかった。 下北沢の 『いえすたでい』 という飲み屋はもう存在しない。だがその頃僕らが一番足繁く通ったお店は、間違いなく 『いえすたでい』 だ。いつも黄色のポロシャツを着た中国系の店員のお姉さんは滅多に笑うことがなく、ひたすら事務的にオーダーを取る。怒っているわけではないのだが、愛想が良くないのだ。今思えば彼女なりに日本での暮らしに悩みを抱えていたのだろう。しかし悪ふざけが好きなフランツと僕は、どちらが先に彼女を笑わせることができるかで賭けをした。結果はまたしてもフランツの勝ちで、僕は彼に生ビイル大ジョッキ(この店では 『生大』 ではなく 『大生』 といった)をおごるハメになった。彼がどうやってお姉さんを笑わせたか。いや、それを書くのはやめておこう。フランツの名誉のために… …フランツの名誉。 そう、彼には名誉がかかっていた。プラハからの留学生枠は1名だけ。フランツには好成績が期待されていた。このプレッシャーは言葉じゃ表現できないよ、と彼はしばしば僕に向かってつぶやいたものだ。あの悲しそうな目つきを忘れることができない。学業についていえば、彼は努力家ではあったが天才ではなかった。一般教養は概ね得意だったが、専攻すべき法律分野となると彼の頭には突如スメタナの 『我が祖国 第二曲 "モルダウ"』 やドヴォルザークの 『新世界より』 が大オーケストラ編成で鳴り始めて邪魔をするようだった。法律分野の中でも、行政法や行政学には抜群の冴えを見せて官僚制度を鋭く糾弾する一方で、訴訟法についてはからっきし駄目だった。ゼミで扱った明らかな冤罪事件、故なく逮捕され刑を宣告された審判のケースにも彼は首を傾げるばかりだった。 期末試験の最終日、彼ががたがた震えていたのを思い出す。ウールのセーターもダッフルコートも着込んでいるというのに、その顔は青ざめ、額からは脂汗を流していた。 「大丈夫かい、フランツ?」 「う、うん… 何とかね。…今日終わったらまた 『いえすたでい』 で飲もうな」 「そうだな。じゃあ、待ってるよ」 だが彼は来なかった。 のみならず、これがフランツと交わした最後の言葉になってしまった。 3月になってから発表された試験結果は、僕にとっては満足のいくものだった。決して真面目な学生とは言えなかった自分だが、憲法、国際法、そして民法第3部で優、行政法で良上、刑法その他でもなんとか良の成績をもらえたのだ。もう就職も決まっていたので、あとは単位をそろえて卒業できさえすれば良かったのだが、僕は意外な好成績に舞い上がっていた。だから、クラス担当の教授から呼び出しを受けた時には心底驚いた。「君に話がある。あとで来てくれたまえ」 ひょっとしてあれは採点ミスだったのか? 実は単位が足りなくて卒業できなかったのではないか? 駄目だそれは困る、だってもう就職先近くの賃貸マンション契約して敷金礼金も払ってきちゃったんだから。弁償してもらえるんですかどうなんですか? そんなことよりあと1年も学生やらなきゃいけないんですか!? 最悪の事態が頭の中を駆け巡る。教員室のドアを開ける自分の手に目を落とすと、血の気を失ったそれはまるで誰か他人の手のように見えた。…が、僕を待っていたのは教授の意外な言葉だった。 「君、フランツと仲が良かったようだね」 「ええ、まあ…」 「どこにいるのか知らんが、彼にこの試験結果を手渡してくれんかね」 「居所は僕も知らないんです。それに、それは個人情報だしちょっとまずいんじゃ」 「いや、いいんだよ。彼はそもそもここに来るべき留学生などではなかったのだ」 「そんな… 一体どうして」 「君もその成績表を見てみれば分かるよ。ほら」 教授が手渡したフランツの期末試験の科目別成績表を見て僕は驚愕した。 あの時全身に走った電撃的なショックを、僕は一生忘れることはないだろう。 「可 不可 可 不可 可 不可 可 不可 可 不可 可 不可 …」 …フランツ・カフカかよ。 |
6 Feb 2002 Wednesday |
僕は運転免許を持っていますが、もう何年も車を運転したことはありません。これはもっぱら中古CD屋さんにCDを売るときの身分証明書。乗り物としては、むしろ自転車のユルいスピード感覚が好きなのです。 僕は週末、しばしば自転車で近所の街をぶらぶら走ります。車と違って小回りが利くので、普段歩かない路地にも簡単に入り込めます。閑静な住宅街を走っていると、あちこちで日向ぼっこする猫たちにも出会います。近くにある調布市立の図書館分館に立ち寄ってしばし静かに読書。本や雑誌はめったに購入しませんが、図書館からは常時10冊くらい借りています。そのまま商店街へ向かい、前カゴいっぱいに食材を買い込んで帰宅。夕食の下準備をしたら、再び自転車へ。シューズと着替えを積んで、駅前のスポーツジムでひと汗かいてこよう。 速すぎると見えなくなる。 遅すぎても気付かない。 陽射しが強い日は暑いし、突然の雨には濡れちゃいます。でもそうやって肌で自然を感じられるのは、車との大きな違い。地球にやさしくて、適度な運動にもなる。身体全体で風を感じて走り続けたい。このスピードで。 ちなみに、最寄りの京王線仙川駅まではうちから徒歩8分くらいの距離ですが、朝夕の通勤には自転車を使いません。日中ほとんど机に向かう仕事なので、歩くチャンスを大切にしたいのと、行きは晴れていても帰りに大雨が降ったりする可能性があるから。遅刻しそうになりながら駅まで自転車を飛ばす人たちもいますけど、これは自分だけの小さなルール。朝ちょっと早めに家を出て、新鮮な空気を吸いながら住宅街を歩いて駅へ向かう7分間は、仕事モードに切り替えるためにとても必要な時間なのです。 |
5 Feb 2002 Tuesday |
何だか最近、宝石の置き引き事件が多くないか? 電車に乗っていて、網棚にカバンを置いていて1億円相当を盗まれた宝石商が続出している。読売新聞の記事を読んで、ははんと気が付いた。宝石を盗まれると、盗難保険が下りるのだ。宝石販売業者は大抵保険に加入している。世の中はこのとおり不景気で、宝石のような高価な装飾品は特に苦しい状況だ。頑張って値引きして販売するよりも、1億円分盗まれたとして保険を請求する方が利益が大きかったりするのだという。 何たることだ。 無論、すべての盗難事件が保険の補償をあてにした注意散漫によるものではないかもしれないが、1億円もの高価な商品を入れたカバンから目を離して居眠りしたり、ぶらぶら買い物に行ってしまったりするとは理解に苦しむ。もっとも1億円なんて言われても、全然実感が湧かず想像すらできないけれど。 保険会社は宝石盗難保険の新規契約を渋ったり、保険料を上げたり、あるいはこのジャンルから撤退する動きを見せているという。結局回り回って一般の(盗難に遭わない)宝石商の皆さんに迷惑がかかることになるわけだ。一体何がどうなっているのか。 *** こうなってくると、もはや誰が勝ち組で誰が負け組なのか判然としない。それどころか、勝ち組負け組を論ずること自体が無意味に近い。賢者曰く、人生に勝ち負けなど存在しない。だが局地戦は存在する。そして局地戦は面白い、と。 勝ってもつまらない勝ちがある。負けても納得できる負けもある。 負けだろうと何だろうと、俺は自ら海図を書き、船長として運命の海に漕ぎ出す。 *** それは後悔のカケラもない航海。 更改したココロを日記サイトで公開。 アジアにあるのは黄海アラブのは紅海。 『渋谷○○堂』 それはもちろん公会。 キミは許しを請うかいそれとも 誰かを恋うかい? きっと… 誰かを恋う。 2月14日まで、あと9日。 |
4 Feb 2002 Monday |
あんまり叩くものだから、朝日新聞も恐れをなしてしばらくおとなしくしていたようだ。 しかしながら週明け、こちらがすっかり油断しているところに奴が牙をむいた。 耳をつんざく朝日の咆哮が、西新宿のコンクリートジャングルに響き渡ったのだ。 しかも国際面で。 「タイ国王が下腹部手術」 タイ国営放送が3日夜伝えたところによれば、同国のプミポン国王(74)は同日、下腹部の手術のためバンコク市内の病院に入院した。手術は夕方に約1時間かけて成功裏に行われ、国王は元気だという。 …やっちゃった。またやっちゃったよ朝日。 プミポン国王といえば、その独特の語感から日本人にも非常に馴染みのある名前である。ミポリンのお兄さんだとか、リポビタンの従兄弟だといっても違和感がないくらいだ。プミポン。その彼が、手術をしたのだという。ここはぜひブラックジャック風にオペと言っておきたい。プミポンのオペ。しかしその部位が謎めいている。「下腹部」。約1時間かけて(しかも夕方に)成功裏に行われる手術って何だよ! 謎めき過ぎだよ! いくつかの可能性が考えられる。 まず、タイ国営放送が正確な情報を入手できず、速報として大雑把な部位を伝えたという可能性。いくら何でもあり得ない。というか、貴方もオレもそんな答を期待してはいない(笑)。ならば、タイ国営放送は比較的正しくニュースを伝えた(「国王が前立腺を手術…」)が、朝日のバンコク特派員が 「いくら何でも有り得ねー。オレの耳を疑う」 とか何とか言って、適当にボカした原稿を送ってきた可能性。なくはない。だが、正解はまず間違いなく日本の編集者の独断と見た。暴走するテレビ面の人気ぶりに焦りを感じた国際面デスクが大博打に出たのだ。「どうせ誰も見ちゃいねえ。一発ウケを狙うぞゴルァ!」 それはともかく、テレビ面 「はがき通信」 欄は今日も最強だった。 もう誰にも止められない。 「いつかはオレも」 「ぐるナイ」(金曜、日本)の 「ゴチになります」 は、芸人たちが、新鮮な笑いを提供しながら、数万円分の料理を惜しげもなく食べる。これほど将来を考えさせられる番組はない。コンビニの弁当を片手に見ながら、いつも思うことは 「いつかはオレも…」。文字通り 「ハングリー」 精神をかき立ててくれる。 (東京都・****・学生・19歳) キミほど将来を考えさせられる学生はない。 新鮮な笑いを提供してくれてホントにありがとう。 |
3 Feb 2002 Sunday |
朝起きてみたら、雨が降っていた。 その瞬間、今日の日記の書き出しは決まったようなものだった。 「朝だ。雨だ。」 クールな日記になるはずだった。間違いなく。 しかし…… 僕のPCが変換したのは、 「浅田飴だ。」 クールとニッキになってしまったYO! パッションも発売中。コラ。 *** 雨の降る週末は、決して嫌いじゃない。自分の部屋で静かに読みかけの本のページをめくったり、ビデオに録画しておいた映画を見たり、平日の喧騒に紛れてゆっくり考えることのできなかったあれこれに思いを巡らせる雨の週末。どちらかと言えば好きな方だ。BGMにはトッド・ラングレンが良く似合う。 ある道を選び,ある道を捨てることを決めた人のことを思いながら、時間だけが過ぎていった。僕もビイルを1杯だけ飲んで眠るとしよう。 |
2 Feb 2002 Saturday |
海外ドラマネタ3題。 ★アリー my ラブ 先週この Diary で予告したとおり、バリー・マニロウがゲスト出演。"It's A Miracle" (US#12/75) や "Somewhere Down The Road" (US#21/82)、"Even Now" (US#19/78) などを歌ってくれました。80年代初めに洋楽を聴き始めたときに 『君は Lookin' Hot』 とか 『君は恋フレンド』 などが日本で大ヒットしていて、エアチェックなどを通してずいぶん聴いた好きなアーティストです。アップもバラードも実にいい曲を書きますし、声がまたいいんですよね〜。最近はいわゆるダサいアーティストの例として、ジョークのネタに使われることも多い彼。Dean Koontz の小説で主人公が 「恥ずかしいんだけど、実はバリー・マニロウが好きなんだ」 と語るシーンがありましたが、この日の 「アリー my ラブ」 でもジョン・ケイジが似たような台詞をしゃべってました。バリーは歌だけじゃなくてセリフもありましたね。6話ほど後にスティングが出る予定なので楽しみ。 ★ロズウェル 星の恋人たち ニューヨークが舞台の回。エンパイアステートビルや地下鉄やイエローキャブなど、昨年12月に旅行したばかりの風景が次々と画面に出てきます。24時間眠ることのない、緊張感を解く暇のない街でした。20代だったら住みたいと思ったかもしれないけど、今はたまに遊びに行ければいいって感じの街。むしろロンドンに住みたい。一生。 ★2人は最高! ダーマ&グレッグ 今週でいったん最終回。次回は2003年春から放送の予定だって。 まったく境遇の異なる両親を持つ、まったく性格の異なる夫婦のドタバタコメディ。両親との衝突や、夫婦間のトラブルを面白おかしく描いて大好きなドラマでしたが、しばらくお休みに。今週はダーマの浮気疑惑が晴れて、グレッグと仲直りのハッピーエンディングだったけれど、最後に車が事故ったのでちょっと後味悪し。このまま来年春まで寝かせておくのかと思うとツライです。ちなみに来週からは 「2人は親友? ウィル&グレイス」 という同傾向のカップルコメディがスタート。弁護士ウィル(実はゲイ)の声優が堀内 賢雄さんなのはいいのだけれど、脇役のカレン役の声がまた安達 忍… ドナちゃんかよ! ★おまけ:爆笑オンエアバトル ロズウェルとダーマ&グレッグの中間にあって、最初は眠気を振り払うのに必死だったけれど、昨秋くらいから猛烈にハマっています。今やこれなしの週末は考えられないくらい。今週は贔屓の 田上 よしえ が出演で嬉しかったのですが、個人的には少し物足りなかったかも。応援しているだけに辛めに評価しちゃうけど、彼女の壊れ具合と声色は他の追随を許さない独自の世界です。 |
1 Feb 2002 Friday |
『ノッティング・ヒルの恋人』(Notting Hill) 誰かを好きになったり誰かに好かれたりすること以上に面白いことはないと考えているので、後味の良いラブコメディは大好き。この映画もそのひとつ。テーマは極めて古典的な "身分違いの恋" 物語。悲劇に終わればロミオとジュリエットですが、こちらはもちろんハッピーエンディング。ロンドンのノッティング・ヒルという街を舞台に描かれる、書店経営の冴えない英国男とハリウッドの人気女優の恋。 「冴えない英国男」 を演じたら右に出るものがいないヒュー・グラントは完璧なキャスティング。僕はジュリア・ロバーツにはほとんど引っかかるものがないので、むしろヒュー・グラントのルームメイト役、リース・イーファンズのギリギリな演技ぶりが面白かった。ひょろ長い手足にヌーボーとした風貌。ちょっと抜けてるマイペース男なのだけれど、リース本人がウェールズ出身で第一言語もウェールズ語と聞いて妙に納得。実はここ2年、東京国際映画祭で彼の出演作を立て続けに観ている。2000年が 『ジャニスのOL日記』、2001年が 『ヒューマン・ネイチュア』。いずれも強く心に残るすっとぼけ演技。 でもぶっちゃけた話、キャストはこの際どうでもいいや。僕にとってこの映画の一番の主人公は、ノッティング・ヒルの街さらにはロンドンの風景そのもの。週末にはポートベロに市が立つあの街の、有名な中古レコード屋に通い詰めた頃を思い出す。だから映画に映し出される一見どうでもよい断片的映像にいちいち反応。例えばベイクド・ビーンズの缶詰でありスーパー TESCO の買い物袋であり、タブロイド誌の Daily Star であり The Sun であり、The Ritz や The Savoy といったホテルなどに。泊まったことはないけれど。 映像の技術的なことはよく分からないけれど、恋に破れた(と一時は思った)ヒュー・グラントが、ノッティング・ヒルの目抜き通りを歩いて通り抜ける間に、街とそこに住む人々の過ごす四季(雨〜雪〜日差し…)を描写したワンカットのシーンが印象的。あとはヒュー&ジュリアのカップルを取り巻く 「普通の人々」 の設定が絶妙で、それも好印象の理由のひとつ。ヒューの妹や友人たちは、皆それなりに不幸を抱えてはいるけれど、前向きで心のきれいな人ばかり。彼らの暖かいサポートが、間違いなくラストにハッピーエンディングをもたらすのです。 TV吹き替え版で見ていたら、ややぶっ飛んだヒュー・グラント妹役の声をあてていたのが 『2人は最高! ダーマ&グレッグ』 のダーマこと雨蘭 咲木子さんだったので、どう見てもダーマだったことは内緒にする方向で。 …マシュー・モディンがカメオ出演してたとは… |
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