Diary -Oct (2) 2001-


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31 Oct 2001
Wednesday

 アジア映画が熱い。という話は何回も書いているとおりですが、東京国際映画祭のような場に出かけると、その息吹みたいなものを直に感じられてとても新鮮です。タイの映画『ゴール・クラブ』もそうでした。

オットーとその仲間は、一攫千金を狙って、タイでは禁じられているサッカー賭博の掛け金の運び屋をしている。しかし、目の前の大金に目が眩んだオットーは、ある日仲間とともに掛け金を着服してしまう。それを知った賭博組織はオットーらを追い、彼らは組織と捨て身の死闘を繰り広げることになる…。タイ気鋭の監督ライウシリゴン・ギッティゴーンが、スピーディーな展開と映像で現代のタイにおける若者の姿を活き活きと描き出す。
2001/タイ 上映時間:1時間36分
監督:ギッティゴーン・ライウシリゴン 出演:トリラダナイ・スワンホーム スラッタナウィー・サウワプローン ボリワット・ユート


 確かに、特殊効果や撮影技術といった点で目を見張るものはありません。しかし、それを補って余りある躍動感。希望と絶望の崖っぷちで、毎日ギリギリの命を燃やしている5人の少年たちを鮮烈に追いかけるカメラと脚本。結論から言ってしまえば、タイで蔓延する賭博やドラッグに警鐘を鳴らす教育的映画なのかもしれません。でも、アジア映画に賢著な貧困の問題、もっというと貧富の差、富の偏在の問題を直視して抉り出すその在り方には、一度触れておいても良いと思います。

***

 バンコクの女の子のお話は前も書きましたよね。日本人向けのお触りバーみたいなところで一生懸命働いていた、タイ北部出身の女の子たち。身体を売って家族を養う自分たちの境遇に泣き暮らすのではなく、努めて明るく前向きに将来を思い描いていた彼女たち。元気にしているだろうか。

 映画祭から帰ってきて、仙川の商店街を歩きながら、半年ほど前にここのタイ料理屋でランチバイキングを食べたのを思い出しました。お客さんは全然入っていなかったけれど(そもそも仙川でタイ料理屋経営には無理があります)、いたって明るくニコニコと話しかけてきてくれた店員のタイ女性2人。食事は家庭料理のような味わいで、素朴なのに美味しかったのを思い出します。元気にしているだろうか。

 …お店の前に立ってみると、業者がお店を取り壊している最中でした。しばらく前に閉店して、それ以来空っぽだったそうです。ちょっと寂しい帰り道になりました。



30 Oct 2001
Tuesday

 仕事を休んで東京国際映画祭三昧。今日は朝、昼、夜と合計3本見る予定なり。普段仕事に行くのと同じくらいの時間に眠い目をこすりながら起きて、朝食を食べた後にお昼ご飯用のオニギリも作ります。具は梅干しと、以前喜多方に旅行したときに買ってきたシソもろみ。ちょっとカツオブシも振りかけたりして。

 自転車を飛ばして駅に向かい、新宿行きの電車に乗ってみると、10時過ぎだというのに妙に混雑しています。学生とか買い物主婦なのかな。通勤時間帯より混んでる印象。明大前で乗り換え、井の頭線へ。こちらは新聞も読める程度です。

 神泉で降り、さあオーチャードホールに向かおうと思った瞬間。「あれ? チケット持って来たっけ?」 そう、見事に部屋の机の上に忘れてきていました。あーあ。ボンヤリしてるからしょうがないですよね。疲れがまだ取れていないみたい。すぐに引き返し、切符を買って神泉駅再入場。通勤とは逆方向の井の頭線・京王線はいずれもガラガラでした。ゆっくり新聞を読むことにします。

 部屋に帰ってみると、不動産屋から電話が。何でも以前僕が買うのをやめたマンションがまだ残っている模様で、どうしてもまたご説明させていただけないかと言ってます。オーナーとして賃貸させた場合の収入保証額をシミュレートしたとのことなので、駅そばのモデルルームへ。いろいろお話を聞きましたが、マンション下が細い車通りなのがどうしてもネックなので、次回はキッパリお断りしなきゃ。でも「価格も上の者と相談させていただきます」とか言い出したので、どこまで値切れるか交渉してみてもいいかもしんない。

 そんなわけで、再び渋谷に到着。さあ、1本は見逃しちゃったけど残り2本、平日の映画をじっくり堪能するとしましょう。

***

 ところで今週日曜日、すなわち11月4日の午後3時からNHK教育で、イラン映画『太陽は、僕の瞳』が放送されます。この映画については再三触れているところですが、本当に素晴らしい作品なので、心ある映画ファンでしたらぜひご覧になってください。メインストーリィである盲目の少年の心の描写に涙腺が爆発すること請け合いですが、その他に「イランにこれほど豊かで美しい自然があったのか!」ときっと驚かれることと思います。



29 Oct 2001
Monday

 東京国際映画祭のコンペティション部門を見た感想などを徒然なるままに。

 まず最初に見たのは、『春の日は過ぎゆく』でした。

「過ぎ去った女とバスは、追いかけるもんじゃないよ」
 映画中でおばあさんがぽつりとしゃべる台詞です。

 このシーンは会場でもどっと笑いを誘いましたし、終演後に監督と主演男女優を迎えてのティーチインにおいてもしつこく引用されていました。それだけ多くの人の印象に残ったということなのでしょう。自分も同じです。

 公式サイトからのあらすじ引用は以下のとおり。
 

仕事を通じて知り合った録音技師の青年(ユ・ジテ)と、離婚歴のあるラジオ局の女性ディレクター(イ・ヨンエ)。ともに“音”を求めて旅をするうちに、ふたりは自然と愛し合うようになる。ところが、愛に懐疑的な女性ディレクターは、青年が愛にのめり込むほど、その愛から逃れようとするのだった。ふたりが愛し合った時間は、春の日のようにはかなく過ぎ去り、やがて美しい記憶となってふたりの心の中に残るばかりとなっていく…。デビュー作『8月のクリスマス』が90年代最高の韓国映画と絶賛されたホ・ジノ監督によるラブストーリー。『リメンバー・ミー』のユ・ジテ、『JSA』のイ・ヨンエという、韓国で今もっとも注目を集める人気俳優が、切ない男女の関係を印象的に演じる。
2001/韓国、日本、香港/松竹 上映時間:1時間53分
監督:ホ・ジノ 出演:ユ・ジテ  イ・ヨンエ


 自分は韓国映画は『シュリ』を見た程度ですが、上記3人はその筋では非常に注目されているようで、舞台挨拶やティーチインは大いに盛り上がりました。特に『JSA』の女優イ・ヨンエはすごい人気で、フォトセッション時にはマスコミ関係者だけでなく、一般観客もステージ傍に駆け寄ってフラッシュを焚きまくり。撮影禁止なのにね。韓国からの留学生も多数見に来ているようで、舞台挨拶中の韓国語インタビューに、逐次通訳を入れることなくリアルタイムで会場のあちこちで笑い声が上がります。

 そのイ・ヨンエ演ずる「離婚歴のある年上女性ディレクター」が曲者。いわゆる「年上なのに何だか可愛い女」キャラ。ルックス的には広末涼子と大原麗子を足して2で割ったような印象。何となくイメージ伝わるかな? 微妙に青年を誘いつつ「ラーメン食べてく?」「泊まってく?」と語りかけて微笑まれると、自分だって誘惑されちゃうよ。でも青年が一途な恋にのめり込み始めると今度は距離を置こうとするのです。詳しくは語られないけれど、おそらくは離婚経験から彼女は「変わらぬ愛などというものはない、人は必ず心変わりする」と考えている様子。だから、青年と遊ぶ一方で他の男性とも付き合ってみたりもします。

 2人の恋愛と破局に絡めて展開されるサイドストーリィが、青年宅の祖母の様子。だんだん記憶が定かでなくなり、徘徊したりする彼女が、失恋に泣き苦しむ青年(孫)の背中をさすりながら語る言葉が冒頭の台詞なのです。その直後、おばあさんは薄桃色の綺麗なチマ・チョゴリに着替え、晴れ姿のまま家から出て行きます。次のシーンはもうお葬式なのですが、おそらく出先で事故に遭うか何かして亡くなったのでしょう。

 監督がティーチインで語っていたのはこんなこと。2人の男女が出会い、恋に落ちて結婚し一生一緒に暮らすことが果たして幸せなことなのかどうか自分にはよく分からない。ハッピーエンディングの描写より、むしろうまくいかなかった恋愛が心の中でどのような記憶に変わっていくのか、その描写の方に興味がある。失恋から早く立ち直る秘訣のようなものはなく、ただ時間をかけるほかない。長い時間だけが、辛い失恋を美しい記憶に変えてくれる。

 見ていると、今年の7月にソウルを旅行した時の思い出が色々と蘇ってきました。青年と女性ディレクターが自然音を録音しながら韓国の田舎を回るシーンでの、美しい緑や静かな雪の様子、河原の水音などには、北朝鮮との国境付近へのツアーで見てきた大自然を思い出します。女性の声は、どの言語であっても美しく響くような気がしますが、イ・ヨンエの韓国語台詞を通して伝わってきたのも、とても優しく温かい思いでした。ただ、全体としては台詞や説明的な描写の占める割合は少なく、静かな映像に淡々と語らせるスタイルだったように思います。

 個人的には、かなり痛い映画でしたが、韓国映画の現在をちょっと覗いてみようかな、というお方にはオススメの1本です。日本では来年公開予定。



28 Oct 2001
Sunday

 雨の日曜日。
 こんな日にもっとも贅沢な時間の過ごし方のひとつは、映画を見に行くこと。

 今週から来週にかけて、出向く先は決まっている。渋谷のオーチャードホールを中心とするエリアで開催中の、第14回東京国際映画祭。今の職場に転職してきて最大のメリットのひとつがこれ。毎年招待券の余りが職員に配られるのだ。昨年は8本くらい見ることができ、その多くに心動かされた。今年も平日に休みを取りながら、都合7本見る予定。今日はそのうち最初の2本を見に出かけたというわけだ。

 井の頭線でオーチャードホールに行くには、終点の渋谷まで行くより、ひとつ手前の神泉で降りる方が早い。神泉で降りるとそこはすなわち円山町ラブホテル街である。雨のラブホ街。日曜午後。揺れる傘は、ひとつだったりふたつだったりするが、傘の中にはたいてい2つの人影がある。そうでないのは自分の傘くらいのものだ。自分だってこういう用事でもなけりゃ、この街を1人で歩くことはそうそうない。自分の前を歩く傘たちがすっとラブホの中に消えていくのを見ながら、「幸せであるように♪」とフライングキッズばりに祈ってみたりした。

 そうこうするうちにオーチャードホールに着いてしまう。ここは音響的には素晴らしいホールで、クラシックものにも耐えうる造りだが、映画上映用としては満点はつけられないかもしれない。長時間の鑑賞を想定した椅子周りの造りではないような気がするから。それでも招待券なのだから文句は言うまい。あとは映画に没入するばかり。上映前の紹介も昨年と全く同じ2人(1人は英語通訳)だった。ほとんど昨年と同じシチュエーション。デジャヴかと見まごうばかり。

 ただ昨年の東京国際映画祭は、ソロで見に来た訳じゃなかった。



27 Oct 2001
Saturday

 先週行われたイベントのために用意したEVIANのボトルがたくさん職場に余っています。持って帰っていいよ、と言われているのだがどうもその気になりません。というのは、EVIANに代表される硬水のミネラルウォーターは苦手なのです。

 昔は水なんてどれだって同じだと思っていました。それこそ水道水で全然構わないとも思っていました。変な話ですが、2年前まで住んでいた新宿区市ヶ谷で飲んでいた水道水はそこそこ飲めたのに、今住んでいる世田谷区上祖師谷の水道水は、どうにも飲めないのです。貯水タンクなど、建物ごとの個体差もあるかもしれません。いずれにせよ、とにかく今はミネラルウォーターのボトルを部屋に常備していて、飲み水やコーヒー用にはそれを使っています。

 そんな自分のお気に入りは、『森の水だより』。日本コカ・コーラ株式会社ということもあってたいていのお店で手に入りますし、価格も手ごろ(むしろかなり安め)ということもあって、重宝しています。口あたりの自然なまろやかさもいい感じ。これでコーヒーやお茶を淹れて飲むのもよいけれど、実はお水そのものを、じっくり味わいながら飲むのも結構好きだったりするのです。



26 Oct 2001
Friday

 四国は高知からcotaさんというウェブマスターがいらしゃったので、迷わず歓迎オフ会を開催。多少の出入りはありましたが延べ参加者は cotaさん、ぶぎーさん、ryoさん、しまけんさん、けいさん、小川ボさん、se2さん、winter の都合8名に膨れ上がりました。

 それはやっぱりcotaさんのお人柄なのでしょう。「まだ見ぬ強豪」的イメージが先行しておりましたが、期待を裏切らぬ素晴らしいキャラクターで、音楽話その他に大いに花が咲きました。上にリンクしたホームページにもあるとおり、氏は病気と闘っておられます。微力ながら陰より応援しております。

 ぶぎーさんはおとなしそうに見えましたが、渋いところで突っ込んでいて流石です。サイト拝見しましたが、トップページに更新される短いテキストはかなり深いですね。ryoさんはサイトのイメージどおり、スマートで繊細そうなお方でした。かなり幅広い音楽を聴いていらっしゃいます。しまけんさんはまあ、ああいう方ですから。いやマジで。相変わらず鋭すぎてサイコーっす。けいさんは新幹線終電間に合ったんでしょうか? いつもどおり各方面の音楽に造詣が深くて驚きっぱなしです。映画 "ROCK STAR" ネタは大いに気になりました。掲示板で映画オフでも企画してみようかな。小川ボさんとse2さんはそれぞれ途中参加になっちゃいました。お仕事その他お疲れさまです。次回はぜひ早い時間から参加できますように。


 友あり遠方より来る。また喜ばしからずや。
 普段ネット上ですれ違っているメンツと集まるのは、実に面白いもの。
 次回もぜひよろしく。



25 Oct 2001
Thursday

 海ノムコウではイチローが大活躍するも、マリナーズはリーグ優勝ならず。海のコチラではヤクルトが4年ぶりの日本一、近鉄はまたしても日本一ならず。それはつまり、12球団で唯一日本一を経験していない状況の継続。継続は力なり。by Z会。

 どうも昨今のプロ野球で気になっていたことが。

 それは審判のストライクコール。「ストラーイク!」と言って右手側を向いて何かを指差しポーズをつける風習、アレはいったい何なのだ? 昔はあんな感じじゃなかったはず。メジャーリーグに恐怖の頭脳改革されちまったのか? 高校野球を見てみたまえ、古き良き「正面向いたまま天に向かって右手親指を突き上げる」ストライクコールが大事に守られているってのに。


 流されるも良し、留まるもまた良し。
 自由意志で自ら選び取った結果でありさえすれば、ね。



24 Oct 2001
Wednesday

 ホワイトハウスも炭疽菌騒ぎ。その一方で英国では、さんざんテロ活動を行ってきた IRA がついに武装解除するという。昨日書いた英国のオトナの態度が収めた成果だろうか。でも、イスラムを考える時に避けては通れないイスラエル建国問題に、英国が1枚噛んでいた事実を忘れるわけには行くまい。

***

 ところで『アリー・my・ラブ』、ちっとも最終シーズンじゃないんですけど。

 第5シーズン、むしろますます多彩なゲストを迎える方向で。例えばマライア・キャリー。Matchmaking Service をやる役で訴訟に巻きこまれるらしいのだけれど、これって結婚斡旋人? ツヴァイとかそういうのかな? マライア自身の主演映画 "GLITTER" は酷評されているみたいだけれど、こういうテレビドラマへのチョイ役出演ならいいかもしれません。

 もっと驚いたのは、第5シーズンでは Jon Bon Jovi が複数回にわたって出演し、アリーとの間でロマンスに発展するらしいってこと。彼もまた本業のバンドの外で俳優活動をコンスタントに続けてますね。この他にもエルトン・ジョンやジャクリーン・ビセットらが出演予定。ますます快調な "Ally McBeal" なのでした。よかった。しばらくは僕のソロ生活の楽しみがなくなることはなさそう。

 ちなみに Ally 役のキャリスタ・フロックハートは最近、養子をもらって育てています。とても充実しているとのこと。そういう親子の在り方も、もちろんありでしょう。要は子供の人生は子供自身のものであって、親の所有物なんかじゃないってこと。小さい時からそこさえクリアになっていれば、どんな関係であっても構わないと思います。でもそこがクリアでない人も、確かにいるんです。キャリスタ、貴方は大丈夫だよね?



23 Oct 2001
Tuesday

 朝日新聞朝刊の投書欄に、いたく同感する文章がありました。

 ロンドン在住、47歳のその女性が言うには、今回のテロ事件に際し、アメリカ側に加担している英国だが、その態度は米国民のそれとは大きく違っているとのこと。伝統的に、感情的になったりパニックに陥ったりするのを良しとしない英国では、人々は比較的冷静に普段どおりの生活を続けているとあります。

 私は95年〜96年の1年間、仕事の都合でロンドンに住みましたが、最も印象的だったのは、さまざまな肌の色や宗教や文化が混在している街の様子でした。誤解されやすいのですが、ロンドンは決してホワイトの街ではありません。むしろ、イスラム系やインド系や自分たち東洋系やブラックで溢れかえった、移民の街であり人種のるつぼです。

 それはかつて7つの海を制覇した歴史から来るものでしょう。そして歴史が深いが故の、異民族に対する寛容さ、懐の深い対応ぶりを、何かにつけ感じさせられたものでした。端的に言って、生まれて初めて海外に出たというのに、ヒースロー空港に降り立った瞬間、全く違和感なく英国の空気に馴染んでしまったのです。

 空港や郵便局では、ヒゲを伸ばしターバンを巻いたイスラム教徒もたくさん働いています。マクドナルドに行けば、若いブラックの女の子が愛想よく対応してくれます。自分の住んでいたフィンチリーの街では、コンビニの店員はたいていインド系でした。もちろん、ソーホーの中華街周辺には強力なアジアンコネクションがあります。

 さまざまな人間がいること。
 地下鉄(チューブ)に乗っても、誰かしら自分と違う人間が隣に座っていること。

 それは不安になる要素なんかじゃなくて、逆に安心できるよりどころでした。さまざまな人々が、社会の中で持ち場について、お互いの違いを認め合いながら、自分自身の流儀も大切にしつつ、微笑みをもって暮らしている。そんな社会の在り方の一端を垣間見ることができた日々は、その後の自分の生き方に大きな影響を与えています。

***

 最後に、リンクさせてくださいというオファーをいただいた『時間の器』というサイトをご紹介します。管理人の「りん」さんの文章は優しくて、それでいてゴマカシがなく、とてもストレートに私の心に飛び込んできます。例えば声高に何事かを主張するテキストは、少なくとも私にとっては小うるさいだけ。でもりんさんはそうではなくて、淡々と日常を描写したり、ご自身のものの見方をそっと紹介してくれたりして、そのセンスがたまらないのです。しかも、Bryan Adams 好き。よいお方に決まっているのです。よいサイトに出会うことができました。ありがとうございます。

 ちなみに WINTER WONDERLAND はリンクフリーですので、別に許可は要りません。ご自由にリンクしていただいて結構です。ただ、ご報告いただけるととても喜びます。時にはこの『時間の器』のように、こちらから相互リンクさせていただくきっかけになることもあります。



22 Oct 2001
Monday

 ぺたっ。

 PCのデスクトップに、ペタろうが貼られた。ペタろうというのは、付箋紙ソフトの一種だが、LAN上でショートメッセージを送るのにも利用できるという代物。むしろ後者としての価値が高い。ような気がする。事実うちの職場でも、メールソフトで文章書いて送るほどじゃないちょっとした用件は、ペタろうで送るのが普通だ。送られてきたメッセージは、PCのデスクトップに付箋を貼ったように、ぺたっと出現する。

「金曜日の『アリー my ラブ』見ましたか?」

 差出人の女の子は、うちのオフィスでも一番の海外ドラマファン。『ロズウェル』の魅力も彼女から教えてもらった。今じゃすっかり毎週釘付けだ。彼女にじゃない、『ロズウェル』にだってば。

「見たよ。ロバート・ダウニー・Jr.がいい感じだったよね」
「RDJr.はもっとオジサンになったかと思ってたけど、予想よりはずっと若かったのでビックリです。第4シーズンって、最終シーズンですよね? 最後はやっぱりハッピーエンディングなのかな」

 えっ、最終シーズンなんだ。知らなかった。ネタバレサイトは見ないようにしてたから。慌てていくつかアリー関連サイトを覗き、さらさらと返事を書く。

「そうみたいだね。第4シーズン第23話のタイトルが "THE WEDDING" みたいだから。幸せな結婚… 何だかコンサバティブなオチ。アリーだからこそ、結婚だけが幸せになる道じゃない、っていうラストもありだと思ったのに」
「コンサバなオチですか… でもアリーは結婚願望というか、『パートナーと永遠に』願望が強いキャラだから、それでいいのかも」
「なるほどね」
「実は私、先週の土曜日に簡素なお見合いをしたんです。生まれて初めての。それで思ったんですけど、コンサバなオチも、結構難しいなって」

 おっと。そっちに話題を振るか。

「ふうん。僕は前から思ってるんだけど、お見合い結婚って面白いシステムだよね」
「そうですか? 恋愛結婚よりいいって意味ですか?」
「ていうかね、恋愛結婚って、基本的にお互い惚れ合って、この人が一番だって思って結婚するわけでしょう。つまり100点を付けた同士が結婚する。でも実際に一緒に暮らすと、いろいろと見えてくる。つまり減点が始まる。最初が満点だから、後は下がる一方なんだよね」

 ペタろうは休む間もなく飛び交い続ける。

「珍しい考え方ですね。お見合いは違うってことですか?」
「お見合いじゃ外側しかわからないじゃん。外見とか職業とか年収とか表情とか。何となく良さそうな人だからってことで結婚する。だから最初は80点とかさ。結婚してみて、アラも見えるだろうけど、いいところも見えてくるかもしれない。つまり80点が90点や95点にアップする可能性もあるってこと」

 ペタペタペタ。
 ペタペタペタ。

 …キーボードを打つのがいくら早いとはいえ。



 ちっとは仕事しろよな(笑)>オレ



21 Oct 2001
Sunday

 ついこないだまで僕の見ていたNHK海外テレビドラマは以下のとおりでした。

 ★サブリナ
 ★ロズウェル 星の恋人たち
 ★2人は最高! ダーマ&グレッグ


 これに新しく加わったのが、待たせて待たせてようやく始まった『Ally McBeal』の第4シーズン。第1話を録画したビデオをやっと見ることができました。

 いやぁ、いいっす。相変わらず面白い。キャリスタ・フロックハートの前髪をカットしたスタイルもキュート。今シーズン最大の話題の1つ、ロバート・ダウニー・ジュニアの登場もいきなりカマしてくれます。もっとも、彼が越して来たオフィスが「セラピスト:トレイシー」のところだったのは残念。それはすなわち、トレイシー・ウルマンの登場はもう期待できそうにないから。でもきっと、もっといろいろなゲストが顔を出してくれるのでしょう。

 この第1話でも効果的に使われていた、アリーのオフィス特有のユニセックス・トイレ。このドラマを初めて見たという友人が、どうして女子トイレにオトコが?と首を傾げてましたが、ファンならご存知のとおり、このトイレは番組になくてはならない空間。男女共用トイレという摩訶不思議なスペースでぶちまけられる本音と、意表を突くアクションの数々を楽しみにしているファンも多いのでは? ロンドンのシティあたりでもこれを採用するオフィスが増えつつあるというような記事を、AERA で読みました。

***

 実は、先週金曜夜に、生まれて初めて女子トイレに潜入してしまいました。
 いや別にそういうんじゃなくてですね。たまたま仕事の打ち上げでオフィスでワインを空けまくってたら、トイレに行ったまま帰ってこなくなった女の子がいて。声はするけど、意識朦朧として個室から出てこれなくなった女の子を、深夜1時までかかって介抱してようやく助け出しましたですよ。やっぱり同僚みんな疲れが溜まっているみたい。

 ちなみにうちのオフィスの女子トイレには、「音姫」がついてることが判明。面白がって、5回くらい音を鳴らしてしまいました。こういう、社会にとっての「余剰」「過剰」な設備について、場所をあらためて多少じっくり考察してみたい気持ちもあります。



20 Oct 2001
Saturday

 現在10月21日(日)午前4時。タガが外れたまま夜をぶっ飛ばす週末。

 仕事のピークが過ぎたのをいいことに、銀座で10年来の友人たちと飲み、食す。1人は結婚し、1人は英国から帰国し、1人は女の子が生まれた、お祝いには事欠かない状況。

 引き続き、女の子が生まれたばかりの友人宅@青葉台へ。もっとも、赤ちゃんと奥さんはまだ病院なので、彼は独身生活状態。思えば、彼が学生時代に1人暮しをしていた向ヶ丘遊園の部屋に押しかけて、一晩中しゃべったりしてたものだ。10年なんてあっという間に過ぎてしまうんだね。

 青葉台のマンションは、快適そうな空間だった。あんなソファがほしいな、とも一瞬思った。でも本当にいいなと思ったのは家でもソファでもなくて、その「中身」だった。ここに暮らす、3人の幸せな家族。

 一休みして、午前3時過ぎに彼に車で送ってもらう。246号を順調に飛ばし、環八を抜けて仙川へ。カーナビの声が、やけに大きく響いた。BGMの「ヌイグルマー」の痛すぎる歌詞に、ドライバーの温かい心遣いを感じて涙がにじむ。

 僕はこれからスーツに着替えて、午前5時には京王プラザホテルのロビーに立っていることになっている。ハノイ市長を成田空港に送り届ける仕事、これが終わればいよいよ一連のハードワークから解放される。じゃ、行ってきます。

 長い間 WINTER WONDERLAND の更新が遅れて失礼しました。これから少しずつ復活いたしますので、どうか今後ともよろしくお願いします。



18 Oct 2001
Thursday

 串だんごが好きです。

 あまり甘いものは好きではないのですが、和菓子は甘さ控えめのものなら好きです。ただしあんは好きで、あんぱんや大福も比較的よく食べる方かもしれません。

 串だんごについては、みたらし系の方が好きです。よくスーパーでも3本120円くらいのパッケージで販売されていますね。スナック菓子を買うくらいなら僕はむしろお団子を買ってきて、コーヒーをじっくりとレギュラーで淹れます。洋 meets 和。深く強いコーヒーの香りに、頭を空っぽにできる瞬間。心の底からリラックス。

 ところで串だんごを食べる時、串がのどに刺さりそうでいやだなあ、とずっと思っていました。が、ある人にそれは変だ、そんなことは起こり得ないと指摘されてやっとわかりました。あなたの串だんごの食べ方はどちらですか?

(1) ヨコくわえ型
(2) タテくわえ型

 そう、世間一般は(1)らしいのですが、なぜか自分は(2)の方法で食べていたのですね。あははは。最初の1個目・2個目あたりは大丈夫ですが、3個目(場合によっては4個目)のあたりでは串の先がのどの奥に刺さりそうになるわけです。危険キケン。

 ついでにいうと、飲み屋で焼き鳥頼んだときに、気を利かせたつもりかすぐに串からバラして1つずつ箸でつまんで食いやがるヤツいてますね。あれはいかがなものかと。やっぱり焼き鳥は豪快かつ大胆に串から食ってこそビイルもうまいもの。by オールドファッションド焼き鳥ファン。吉祥寺の大好きな「伊勢や」で焼き鳥食べたくなってきました。

 ええと、どこを探してもコトワザ駄洒落はありませんので念のため。



17 Oct 2001
Wednesday

 もうだめだ、溺れ死ぬのだ。

 …そう思った瞬間に、再び樽が流れてくるのが見えた。今度こそ、助かった! 神さまありがとう!

 よく見ると、それは樽ではなく米俵だった。似て非なる存在。それを「似非(エセ)」という。そんなことどうでもよろしい。俵につかまって生き延びることができさえすれば。僕はそれこそ必死になって俵につかまろうとした。しかし、どうして米俵が水に浮いているのか? その時一瞬でも疑問に思っていれば、その後の展開は異なっていたに違いない。

 十分に米俵に近づいたと思ったその瞬間、突然米俵がしゃべった。「ねえ、そんなにアタシにつかまりたいワケ?」

 驚きのあまり水中で僕の手足が硬直した。それは水の冷たさのみに起因するものではなかった。よく見るとそれは俵ではなく、タワラちゃんこと田村亮子だった。ところで彼女は誰がどう見たってヤワラちゃんではない。田村亮子を見て条件反射的に「タワラちゃん」と思ってしまうのは自分だけではあるまい。特にオリックスの谷選手との熱愛(ってホントかい)発覚後は、ますます「谷+ヤワラ=タワラ」の公式ができあがってしまっている。

 いずれにせよ僕の身体は正直で、気がつくと、一旦は引っ込めた手を恐る恐る彼女に差し出していた。溺れて死ぬか、タワラちゃんに腕を差し出し、腕ひしぎ逆十字固めを食らいながらも生き延びるか、選択肢は2つに1つ。諺にいうとおりだった。

 …溺るる者はタワラをもつかむ。



16 Oct 2001
Tuesday

 鈍い振動が足元から脳天へ突き抜けた。

 僕の乗っていた船が岩礁に衝突したことは火を見るより明らかだ。その証拠に、甲板は早くも斜めに傾いているし、あんなに下にあったはずの海面がぐんぐん迫ってくる。ゴムボートを準備している余裕なんかない。僕は意を決して海に飛びこんだ。

 しかし飛びこんでからはじめて気がついたのだが、僕はあまり泳ぎが得意な方ではない。しばらく浮かんでいることはできると思うが、せいぜい10分が限度だろう。この冷たい海で力尽き、鼻腔から海水をいっぱい吸いこんで、肺を水浸しにして窒息するのか。リアルな恐怖感に、海中で全身が総毛立った。

 何かつかまるものを探さなければ。
 しかし目に入るのはどれも小さな浮遊物ばかり。バッグとか棒切れとか、ガラス瓶の類だらけだ。つま先の方から脚がしびれ始めた。

 その時、遠くから大きな樽が流れてくるのが見えた。助かった!
 空っぽの樽、それもあの大きさなら、何とかつかまりさえすれば沈んで溺れることはないだろう。僕は樽に近づこうと、手足をバタバタさせて必死に泳いだ。

 しかし、どんなに近づこうとしても手が届かない。樽はくるくる回転して、波に漂うばかりだ。そうこうしているうちに潮流が変わったのか、樽は次第に僕から離れ始めた。おい、待ってくれ。頼むから行かないでくれ。必死の叫びもむなしく、樽は遠くに過ぎ去った。絶望のあまり手足が急速に重く感じられる。もう泳ぐこともできない。諺にいうとおりだった。

 …過ぎた樽は泳がざるが如し。




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