●New Lyricon WindSynthesizer-Driverについて

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■新旧Lyricon比較

●New Lyricon WindSynthesizer-Driver

■新Lyricon

 

●Lyricon WindSynthesizer-Driver

■旧Lyricon

 Lyriconを新しく開発するにあたり非常に神経を使った事のひとつとして、「旧Lyriconのデザインはそのままに」というものがある。懐古主義ではないものの、やはり「Lyriconはこうでないと……」という意見が多数を占めたからだ。

 キャビネットに詰め込む設計の関係上、短辺の長さと高さ(深さ)が変わったが、可搬性は以前と同様であり、見た目も極力似せるようにデザインされた。

 では、新旧Lyriconでは機能上何が変わったのだろうか?
 簡単に言うと旧Lyriconは、スティックから得た「キー」、「リップ」、「ウィンド」の情報をCV/GATE出力する「電圧制御機器の塊」であるのに対し、新しいLyriconは「デジタルとアナログのハイブリッド」というものである。

 CV/GATEでの制御は音源によっては非常にフレキシブルな制御が可能になるが、所謂ビンテージシンセでもVCFとVCAの両方を同時操作できる音源が少ない。その上、現行品が非常に少ないことや、あっても大半がモジュラーシンセでありシステムが大掛かりになる等の問題もはらんでいる。
 かといって、MIDI制御ではデジタル特有の特性から、CV制御のような滑らかさは望むべくなく、本来アナログでなければならないブレスの持ち味を活かすことはなかなか難しい。

 そんなMIDI時代の問題を全て解決するために新Lyriconが採った方法は「EXT.IN」。つまりMIDI情報はnoteのon,offとnote No.やベンドなどの音階・音程情報のみに的を絞りデジタル出力させ、その外部音源のOUTPUTから取り込んだ音をDriverに内蔵されたVCF,VCAでアナログ駆動させるというものだ。

 これならどんな音源にも対応でき、かつアナログ制御で滑らかな表現も可能と一石二鳥。さらに音源が持つ受信可能なコントロール・チェンジをモジュレートしたり、ヴェロシティで効果を付けたりと多彩なコントロールが可能で一石三鳥にも四鳥にもなる。

 このデジタルとアナログの良い所だけをハイブリッドした新Lyriconは、過去の優れたアナログ表現と現代のニーズという相反するものを合わせ持ったハイテク・アナログ機器として生まれ変わったのだ!

 

■スティックの機能向上

 進化したのはキャビネット側だけではない。スティックも当然時代に合わせて進化している。

 まず大きく変わったのはキーの追加だろう。

●キー部分拡大図

■キー拡大図

 まず、人さし指の上に先端が切り欠けたようなキーが増設された。これは『ポルタメント/モジュレーションキー』で、ポルタメント機能を持つ音源なら手元でポルタメント操作が可能になった。「なんだ、それならCASIOのデジタルホーンにも付いてるじゃないか」という声が聞こえてきそうだが、そこは満を持して登場したLyriconである。ぬかりはない。なんとこのキーだけは他のキーと違い圧力センサーになっているため、押す深さ(強さ)によってポルタメント・タイムを決定できるようになっているのだ。ポルタメント・タイムは圧力によってリニアに可変可能なので、望みのタイムを探りながら変化させられるし、CC#1(モジュレーション)にも変更可能なので、使用する音源によっては物凄い武器になる。

 そしてもう一つ大きく変わったのはオクターブキー。

■オクターブキー

 旧Lyriconでは4オクターブの音域しか出なかったが、新方式のオクターブキーは5つのキーを駆使することにより8オクターブもの音域をカバーできることとなった。デザインも人間工学を徹底的に考えられたエルゴノミクスなもので、操作感は特筆モノ。運指表は以下のとおり。

 あと見た目でちょっと違うというのがキートップに嵌められた白蝶貝である。これはルックスがクールになるだけでなく、ツバの水滴による滑り止め効果という点も押えられていてなかなか渋い改良だ。

 また、旧スティックに比べキーとボディとの間がせまくなったことにより、ストロークの短いカチカチとした感覚のキーはさらなる素早いパッセージが可能に。無論楽器らしく、キーステイに付けられたコルクを削ったり厚くしたりすれば自分の好みのストロークに調整することも可能。

 キーは全てnote No.に対する+−の集合体(bis、オクターブ、ポルタメントキー除く)なので無限の替え指なのは従来どおりだ。

 さらに改良はマウスピースにまで及んでいる。
 旧Lyriconは市販のテナーサックス用マウスピースを改良してあったが、これをオリジナルなものに変更し、コストを抑えることに成功。とは言うものの、基本的なデザインはブリルハートの9番で、正式にノックダウン生産の許諾を受けられたため、くわえた感じは従来のままだ。

 さらに、リードはファイブラセル社に専用のものを受注。ひとつひとつ職人の手によりセッティングされたリードレバーと共に自然な音程操作を約束してくれる。

 適度に重いスティックは前後重量バランスの良さとホールド性の良い親指フックでストラップレスも可能。また、椅子のキャスターどころか象が踏んでも断線しないよう特別に発注されたケーブルは、ステージでのリスクを大幅に軽減してくれる。

 このようにスティックに関しても新しいLyriconは旧来の良さを残しつつ、発展改良されたものだと言えよう。

 

■その他特記事項

 全ての操作はスライダー・ツマミとスイッチのアナログ方式。これは賛否両論分かれる所だと思うが、通常頻繁に変更が行われるのは音源側であり、Driverの機能は固定させたらそのまま動かすことはあまりないはず。それに、「一目瞭然」という言葉が表すよう、この手のアナログ方式は非常に分かりやすい。よって「アナログ過ぎる」と嘆くよりも、ツマミとスイッチのアナログ感覚をぜひ堪能して欲しい。

 リップ・ウィンドの設定が細かく設定可能な所もいい所だ。特にスライダーの可動幅は広く、指先のちょっとした感覚による微調整も楽に行える。

 メインとなるロー・パス・フィルターは人気のMOOGタイプ『-24db』とOBERHEIMタイプ『-12db』の切替え可能。キレの良いカットオフはブレス制御に最適である。

 電源は無論非ACアダプタ。これは機材地獄に苦しむ人間にとっては非常にありがたいチョイスである。こういう細かい部分まで気遣われているのは流石Lyriconと言った所か。

 さらに専用オッシレータ・モジュール『Lyricon-micro voice』もあり、往年の音がオール・イン・ワンで楽しめるのも魅力的だ。


→2.New Lyricon WindSynthesizer-Driverマニュアル


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