バジング(buzzing) その3

前述のように、金管楽器の音の高さは、バジングの周波数によって決まります。
では、バジングの周波数はどのように決まるのでしょうか。

バジングの周波数

振動が起こるためには、物体がちょっと変化したときに、それを元の状態に戻すような力(復元力)が必要です。
さらに、振動の周波数は、復元力の大きさによって決まります。復元力が大きければ、ちょっと変化したときに元に戻そうとする力がおおきいわけなので、すばやく元にもどります。 つまり、復元力が大きいと速く(高い周波数で)振動します。

前述のように、バジングしている金楽器奏者の唇では、復元力は、「唇の弾性」と「口腔内の空気の空気バネの効果」の2つです。
そして、「口腔内の空気の空気バネの効果」の大きさは、「口腔の体積」と「口腔内の(平均)圧力」で決まります。
結局、バジングの周波数(音の高さ)は、
唇の弾性(硬さ) ----  硬いほど、高い周波数になる
口腔内空間の体積 ----  体積が小さいほど、高い周波数になる
口腔内の(平均)圧力 ----  圧力が高いほど、高い周波数になる
の3つで決まることになります。

ただ、人間の肺は、定圧力源というよりは定流量源に近いので、 パラメータとして「口腔内の(平均)圧力」を使うよりも、「息の(平均)流量」を使うほうが自然です。 また、「口腔内の(平均)圧力」は、「口腔内空間の体積」と「息の(平均)流量」から計算できます。
したがって、トランペットの音響物理モデルでは、上の3つの代わりに
唇の弾性(硬さ) ----  硬いほど、高い周波数になる
口腔内空間の体積 ----  体積が小さいほど、高い周波数になる
息の(平均)流量 ----  流量が大きいほど、高い周波数になる
の3つをパラメータに使うことが多いです。当然、この両者は、同じことを言い換えたにすぎません。

奏者の感覚としては、「口腔内空間の体積」よりも「息のスピード」のほうが自然です。 「息のスピード」は「口腔内の圧力」と大気圧の差で決まり(ベルヌーイの定理)、 「口腔内の圧力」は、「口腔内の体積」と「息の流量」から計算できるので、 結局、
唇の弾性(硬さ) ----  硬いほど、高い周波数になる
息の(平均)流量 ----  流量が大きいほど、高い周波数になる
息の(平均)速度 ----  速度が速いほど、高い周波数になる
の3つをパラメータにすることも可能です。

つまり、トランペットの音の高さ=バジングの周波数 は、これら3つのパラメータによって決まるわけです。 パラメータのとり方は、上のようにいくつかの流儀がありますが、どれも言っている内容は同じです。


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last update : 2004/2/25

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