KATE結成までの物語
〜第十五回〜

(1998年02月08日)

「Short-Pants」

 1985年10月26日。集団下校は解散と同時に、新たなプロジェクトを始動させた。
名前は『Short-Pants』。“バンド”である。集団下校の構成員であった田辺、和多
野、川瀬、そして第4のメンバーだったかんちゃん、中学時代の同級生でヘヴィメタ
系ギタリストの前川の5人編成。集団下校は非常にユニット色が強かったため、典型
的な“バンド”というものにトライしてみたい!というのが主な理由であった。

 基本的に前川(ギター)、私(ベース)、かんちゃん(シンセ)の3人で作曲とバッ
クトラックのレコーディングをして、オケが上がったところで田辺、和多野、川瀬の
3人でヴォーカル録りといった、完全に分業スタイルだった。これが果たして“バン
ド”だったのかどうかは、この際問題にしないでおこう。この頃になるとかんちゃん
も作曲に対して“何かがつかめた”というだけあって、非常にキャッチーでポップな
曲を作り出すようになっていた。まあ、どうせ高校の部活動や勉強もろくにやらない
で音楽漬けの生活を送っていたからに違いないのだろうが…。だが、確実にかんちゃ
んの作曲の才能は開化し始めていた。

 1985年の12月に入った頃に私の家で田辺と和多野を呼んで、3人で『Short-
Pants』のミーティングが開かれた。「とりあえず、まず一曲作ってみようよ。」「何
かモチーフがあるといいなあ。」「う〜ん…」「日用品とか?」「近所のアブないオッ
サンとかオバチャンのテーマ曲とか?」「それはヤバイぞ!」「う〜ん…。ママチャ
リとか?」「ギャハハ〜、ママチャリかあ。どっから出てくるんだよ、それ。でもい
いなあ。」(ちなみにローカルな言葉なので解説しておくと、ママチャリとは婦人用
の自転車のことである)作詞は言い出しっぺの田辺が担当することになった。

 後日、開かれたミーティングのときに田辺が歌詞の走り書きを持って来た。「おお
〜、いいじゃん!」「ポップだよ、これ。」「学校の授業中に考えたんだぜ。」さら
に煮つめて完成した歌詞をかんちゃんに渡し、曲を付けてもらった。

 「出来たぜ〜!」年が明けて1986年1月7日。かんちゃんから電話が入った。早速、
デモテープをその場で聞かせてもらった。う〜ん、とてもポップ!集団下校の曲とは
まったく雰囲気の違うものだった。これはイケる!
・3月16日、4月1日 前川、かんちゃん、私の3人でオケ録り
・4月2日 田辺、和多野、私の3人でボーカルとコーラスの録り
こうして記念すべき『Short-Pants』の第一作目が完成した!

「ママチャリ・ブギ」作詞:田辺、川瀬 作曲:関東

今日も元気にお買い物
ちょっとそこの八百屋まで

 他の自転車 どんどん抜かす
 ほほを伝わる風が最高!

ママチャリ、ママチャリ
ママチャリ・ブギウギ!

今日も一日ご苦労さん
明日もいろいろお買い物

 どこのお店で 何を買おう
 にっこり微笑む僕のママさ

ママチャリ、ママチャリ
ママチャリ・ブギウギ!


(つづく)

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