KATE結成までの物語 〜第十三回〜 (1998年01月22日) 「オムニバス収録までの軌跡 その二」 ビックリハウス編集部から送られてきたカセットにはすでに東京のスタジオでレ コーディングされた他の水族館員達の歌声が収録されていた。それぞれ短いパートに もかかわらず、歌い方には個性が出るもので絶叫する人、渋くキメる人、と様々だっ た。集団下校も負けてはいられない!まだレコーディングの済んでいない部分には館 長こと鈴木慶一氏の仮歌が録音されていた。カセットテープをメンバーそれぞれに手 渡して、各自で本番までに歌の練習をすることになった。集団下校の3人+かんちゃ んの4人で一緒に歌うパートは2小節分だった。 本番当日。夜、私の家に全員集合した。ラジカセに練習用のカセットをセットして、 何度か練習をした。「どういう歌い方でいく?」「う〜ん、ハモるっていうのもいい よねえ。」「全員で絶叫とか?」「やっぱりトレードマークにもなっているから、演 歌調でいくのがいいと思う。」集団下校のメンバーが全員そろって歌うこと自体、ず いぶん久しぶりのことだったので懐かしさも手伝って、練習には非常に熱が入った。 そうこうするうちに編集部から電話がかかってきた。いよいよ本番だ。 「もしもし、こちらビックリ水族館担当の芝と申します。川瀬君のお宅ですか?」 「あ、ハイ!集団下校の川瀬です!」「こんばんは〜。みんなそろってる?」「ハ イ!」「送っておいたカセットで歌の練習はしておいてくれたかな?」「ハイ!準備 は完ペキです!」「よし、じゃあこれから始めるから指示に従って下さいね。えっと、 その前にまず館長と電話を替わりますからね。」「エッ?館長って…鈴木慶一さん と?!」「(モソモソ)あ、川瀬君?こんばんは、鈴木です。」ヒエ〜!なんと鈴木 慶一氏と電話で話すことになったのである。 「いきなり本番にいくからね。用意はいい?」「あっ、ハイ!い、いつでもどう ぞ!」「まずそっちにあるラジカセで、送ったカセットを再生してみてくれるかな あ。」再生ボタンを押す指がなぜか震えてしまった。ものすごい緊張感があたりに漂っ た。「もう少し、ボリュームを上げてみてくれる?あ、はいOK!じゃあ、次はカセッ トをかけながら全員で受話器に向かって歌ってみて。」あとからマスターテープとシ ンクロさせるために、バックで少しだけカセットの音が聞こえるように録音するらし い。う〜ん、さすがプロのテクニック。「ハイ!じゃあ、歌います。せーのー!」 「う〜ん、ちょっと元気がないかなあ。もう一回お願い。」計3回歌うことになった。 そのあいだウチの母親がそばでじっと一部始終を見ていた。 「よ〜しOK!ご苦労さま。いい歌声がとれたよ。」「ハイ!どうもお疲れ様でし た!」「これからすぐに編集作業をするからね。レコード出来たら送るから、楽しみ にしててね。」「ハイ!楽しみにしてます!」「じゃあ、電話切ります。おやすみ 〜!」「ハイ!おやすみなさい!」この間、約30分。あまりの緊張のために1時間 以上経っていたような気がした。あとから他のメンバーに「何で電話を替わらなかっ たんだ!オレも館長と話したかったぞ!」と集中砲火を受けた。確かに替わってあげ たかったのだが、ただただ緊張してしまってそれどころではなかったのだ。 (つづく) |