プロジェクトB〜挑戦者たち〜
第1章
東京、渋谷。
代々木公園の中には、ある池が存在する。
そこに浮かんでいる島は、「大森島」と呼ばれている。
これは壮絶な男たちの物語である―。
(夜明けの代々木公園)
2005年の10月最後の日―。
都内にある私立大学のビートルズサークルの引退式があった。
その日付が変わり、11月になった頃、そのビートルズサークルのある歴史も変わろうとしていた―。
男の名は大森たかし。青山学院大学ビートルズ訳詞研究会の会長だった。
このサークルでは毎年、文化祭で3年生の引退式が行われる。
その際、部員の数名が、徹夜明けで代々木公園の池に飛び込むのだ。
気温は10度前後。その後、病院に運ばれる者もいた―。
(旧・伊藤島)
その池に飛び込み、浮かんでいる島を目指すのだが、その島はかつて「伊藤島」と呼ばれていた。
過去に「伊藤」という人が最初に到達したからである。
しかし、大森は思った。
「俺は1年の頃から飛び込んでるんだ。伊藤さんは卒業してもうとっくにいない。しかも俺は自転車で渡ったんだ。それなのになぜまだ『伊藤島』なんだ」
飲み会の席で酒を煽りながら、大森は隣に座った次期会長の下田に愚痴をこぼした。
下田は、去年大森と飛び込んだ同志である。
「今年も飛び込んで、『大森島』にしましょう!」
下田は言った。
プロジェクトがスタートした瞬間だった。
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