プロジェクトB〜挑戦者たち〜


第2章

 いささか急ではあったが、持ち前の腰の低さで大森が説明した結果、多くの部員は快く了承してくれた。
 突発的にスタートしたプロジェクトは数時間後に成功かと思われていた。

 しかし、それをよく思わない二人がいた。



 タニガキとハマやんと呼ばれる二人の1年生部員だった。
 「俺たちは大森会長は好きだけど、B研の方がもっと好きだ。B研の伝統は守るべきだ。キリンさんも好きだけど、ゾウさんの方がもっと好きなんだ。だから『伊藤島』存続を懸けて俺たちは戦うんだ。」

 しかし、二人だけでは心許ないと思った二人は、「アニキ」と慕う先輩に相談をした。
 その先輩は、やはり今年で引退するまさやんとジョージの二人だった。



 相談を受けた二人は、黙ったまま煙草をふかしながら耳を傾けていた。
 普段は無口なハマやんが一気に喋り終えた後、しばらくの沈黙を経てジョージは一言こう言った。
 「すまん・・・。」

 「明らかに分が悪すぎる。それにおまえらが全て間違ってるとは言わない。でも俺たちは大森と同じ3年生なんだよ。あいつらを裏切るような真似は出来ない・・・。」
 と、まさやんが続けた。

 「すみませんでした。でも俺たちは二人だけでも戦います。」
 そう言い残して、タニガキとハマやんは席を立った。

 ジョージのサングラスの奥には涙が光っていた。

 もう一つのプロジェクトも水面下で静かに、しかし確実にスタートした―。


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