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artist : LAMBERT, HENDRICKS & BAVAN
title : 『 AT BASIN STREET EAST 』
recorded date : 1962年9月6、7、8日 (Basin Street East, New York City)
label : RCA RECORDS
tracks ( cd ) : (1)THIS COULD BE THE START OF SOMETHING (2)SHINY STOCKINGS (3)SLIGHTLY OUT OF TUNE (DESAFINADO) (4)DOODLIN' (5)COUSIN MARY (6)APRIL IN PARIS (7)FEED ME (8)ONE NOTE SAMBA (9)MELBA'S BLUES (10)THIS HERE (11)SWINGIN' TILL THE GIRLS COME HOME
tracks ( analog ) : 未確認
members : DAVE LAMBERT,vocal ; JON HENDRICKS,vocal ; YOLANDE BAVAN,vocal ; PONY POINDEXTER,soprano saxophone ; GILDO MAHONES,piano ; GEORGE TUCKER,bass ; JIMMIE SMITH,drums.
producer : GEORGE AVAKIAN
related website : 未確認




 アルバムの話の前にメンバー交代のいきさつをライナーよりちょっと紹介(誤訳があるかもしれませんが、合っている筈と思います)。

 本来ならば「LAMBERT, HENDRICKS & ROSS」なのに「LAMBERT, HENDRICKS & BAVAN」。本グループの紅一点アニー・ロス (ANNIE ROSS) がロンドンで病気のため脱退してしまったからだ。そのアニーの代わりに加入したのが、丁度ロンドンにいたセイロン(スリ・ランカ)人の女優ヨランダ・バヴァン(別のライヴの司会者は「ベヴァン」と発音していたけど、ジョンは「バヴァン」と紹介している)。彼女はこの10年程前に日本で歌手をしていたこともあるそうな。

 彼ら (L, H&R) はヨーロッパ・ツアーが終わったらアニーなしでアメリカに戻り、アメリカでの契約を果たすために代役を立てなければならなかったので、元々L, H&Rのファンでいくつかの彼らのアレンジを覚えていたヨランダに白羽の矢を立てた。ヨランダはニュー・ヨーク公演に間に合ったものの、彼女の歌を全然聴いたことのないジョンとデイヴはその日のステージをあきらめようとしていた。しかし、すぐに彼らの賭けが成功だったことが分かったのだった (彼女はバッチリやってのけた) 。

 こうして加入した彼女だけど、見方によっては音程が悪くモタモタした印象(それも悪くはないけど)のアニーよりも、スマートな高音で全体をスッキリ聴こえさせ、かえって芸人ジョンの才能を引き立てているんじゃないだろうか。彼女なりのトボケた味もあるし。僕は元々アニー信者じゃなく、むしろジョンの天才ぶりに重きを置いて聴いていたので、この交代劇はさほどショックじゃないのだ。

 では、そろそろ本題のアルバムについて。


(1)THIS COULD BE THE START OF SOMETHING  ▲tracks
  タイトルに違わずドキドキワクワクする(1)。彼らの弾むような歌に続くポニー・ポインデクスターの溌剌としたソプラノ・サックスによるソロがまたイイ。再び彼らの歌になるのだが、ここからの展開が更にイイ。いつの間にか背中にフックを引っ掛けられ、一気に空まで持ち上げられていくような上昇感。もうこの時点でアニーの代わりが誰かなんて吹っ飛んでしまう。オトボケ3人組が一致団結してキメる瞬間がたまらない。


(2)SHINY STOCKINGS  ▲tracks
 (2)はヨランダのヴォーカリーズのお手並み拝見といったところ。やはり元々ファンだっただけに、結構やってくれます。後半のテ−マ部分もナカナカのもの。


(3)SLIGHTLY OUT OF TUNE (DESAFINADO)
(8)ONE NOTE SAMBA  ▲tracks
 続く(3)は(8)と同様アントニオ・カルロス・ジョビン 《(8)の冒頭でジョンは忠実に「ホビン」と発音している》作曲の、ボサ・ノヴァの名曲。(3)ではジョンの歌をフィーチャーして残り二人は控えめなハーモニーに徹している (楽器のメンバーもハモってる模様) 。ここでのジャストな音程じゃなく頼りないハーモニーが、かえってボサ・ノヴァ的かも (ちょっと下手かな?) 。でもどちらかと言えば、オトボケな3人を巧く利用したアレンジの(8)の方がいい。彼らの中ではかなりジャズ・“コーラス”・グループということを感じさせる仕上がりになっている。ジョンは後の自身のソロ・アルバム (『 FREDDIE FREELOADER 』) でもボサ・ノヴァ (「IN SUMMER」、原題「ESTATE」) を取り上げているところを見ると、結構ボサ・ノヴァ好きなのかなと思う。この人が付けたボサ・ノヴァの英詞も多いのではないだろうか。

(4)DOODLIN'
(5)COUSIN MARY  ▲tracks
 ホレス・シルヴァーの(4)を挟んで、ジョン・コルトレインの(5)。曲が曲だけにテーマ部分の歌詞は「ジョン・コールトレーーィン」。でもなぜかしっくりきてしまう。作詞はジョン (もちろんヘンドリックスの方) 。そして、そのジョンのここでのスキャットが凄い!もう“舌”と言うより“ベロ”が、レロレロレロレロと暴れるうなぎの如き様相を呈しているのだ。しかし、レロレロの直前 (1分20秒) と直後 (1分32秒) で残響の質感が微妙に変化しているところを見る (聴く) と、3日分のテイクで良いものを繋いだのかもしれない。'62年当時のライヴ盤でこういう切り貼りが行われていたかどうかは定かではないけれど、耳を信じるならそう考えざるをえない。


(6)APRIL IN PARIS
(7)FEED ME
(9)MELBA'S BLUES
(10)THIS HERE
(11)SWINGIN' TILL THE GIRLS COME HOME   ▲tracks
 何回も「ワン・モア・ターイム」とやるので終わりそうでなかなか終わらない(6)、弾むような(7)、前述のボサ・ノヴァ(8)、中盤に彼ららしい工夫が施されたブルーズの(9)、これまた中盤似たようなアレンジになるボビー・ティモンズの(10)を挟み、いよいよ芸人ジョンの真骨頂にして本ライヴのハイライト(11)の登場!
 この曲での、デイヴ・ランバートのソロの後に展開されるジョンの約2分半におよぶ“有名ベーシスト模写スキャット・ソロ”が凄い!始めは自分のアドリブで突入していき、途中からパーシー・ヒース、ポール・チェインバース、レイ・ブラウン、チャールズ・ミンガスと順を追うごとに過激になっていく(というより羽目を外していく)様が面白い。ジョンの芸人魂を見せ付けられるトラックだ。


 前から思っていたのだが、ジョン・ヘンドリックス (ボビー・ウォマックもかな) の声って、ハクション大魔王のブル公の声に似ている。


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