7. ユーフォニアム・アンサンブルについて

ユーフォニアムによる室内楽(アンサンブル)は、金管アンサンブル、ユーフォニアム・テューバアンサンブル、ユーフォニアムアンサンブル等があります。

1. 金管アンサンブル

本来アンサンブルの楽器の組み合わせや編成というものは、柔軟であって良いものです。
フィリップジョーンズ・ブラスアンサンブルの来日に触発されて、日本においても大編成の金管アンサンブルが1980年頃にブームを呼び、ユーフォニアムも他の金管楽器とともに編成に加わる事が出来ました。筆者もアーサー・ブラス・コンソートという金管アンサンブルのメンバーで、Tp2、Hr、Trb、Eu、Tubの6重奏から10重奏以上の様々な編成による演奏を経験しました。この編成にはピアノやマリンバ、ドラムセットやラテンパーカッションが加わった編成もあり、大変楽しい経験をしました。

近年はアンサンブル・コンテストの影響もあるのでしょうか、金管8重奏等の大きめの編成においては、各音域の楽器の配置について、様々な編成を見る事が出来ますし、ユーフォニアムが複数パート担当する編成も見られてとても興味深いです。

最近筆者が感心したのは、アンサンブルコンテストでセルパンを使用した中学校の演奏を聴く機会がありまして、これには驚きましたが、このように様々な楽器を使用して、その組み合わせの中から多彩な表現が可能になり、その中でユーフォニアムが他の楽器と共に活躍をする機会が増えればよいな、と思っています。

現在よく見られる金管5重奏(2Trp., Hr., Trb., Tub.)は、オーケストラの金管セクションのメンバーをそのまま集めて行なう事が出来る。オーケストラの休みの日や演奏旅行の移動日に練習や演奏会、講習会を持つ事が出来ます。ですからオーケストラプレーヤーと受け入れる側の双方にとってのメリットが大きいのです。

世界で一流のオーケストラプレーヤーが演奏する金管5重奏はその曲の質も、その曲のアレンジを手がける作品数も圧倒的に多いですし、その中から名曲が生まれます。その楽譜が普及する事によって、それに憧れる学生も様々なレベルで演奏にチャレンジして、結果、アンサンブルの技術が向上します。このアンサンブルは、オーケストラの金管セクションの基本形でもあり、音形や音色、曲のスタイルや音程等を整える意味でも大変効果的です。ここにユーフォニアムが加わる事の意味の大切さを、認識して頂きたいと思います。

金管のアンサンブルの形態を音楽の歴史から見ると、現在の編成への移行はそんなに古い事ではありませんし、北欧や英国の金管アンサンブルなどではユーフォニアムの加わる編成がポヒュラーな地域もあります。

ですから、この編成でなければいけない、と固定概念にとらわれる事なく、ユーフォニアムの参加した金管アンサンブルの演奏を皆でもっと楽しむ事が大切ですし、このような団体が増える事を希望しています。

2. ユーフォニアム・テューバ・アンサンブル

ユーフォニアムとテューバによるアンサンブルで、ユーフォニアム_2、テューバ_2の4重奏が最もポピュラーな編成です。「ユーフォニアム・テューバ・カルテット」「ユーフォニアム・テューバ・アンサンブル」等と呼びます。

ユーフォニアム・テューバ・アンサンブルは1967年に米国のテューバ奏者、ウィンストン・モーリス(Winston Morris)氏が米国テネシー工科大学音楽学部の約30名のユーフォニアム・テューバの学生の為にアンサンブルを結成し、継続的な活動を始めたのがその始まりです。

日本では1975年に「東京バリ・テューバ・アンサンブル」と呼ばれたアンサンブルがパイオニアとして活動を始めました。「バリチュー」との愛称で呼ばれ、日本各地に「バリ・テューバ」と呼ばれるアンサンブル団体が設立されました。ちなみに筆者も高校時代に「藤沢バリ・テューバ・アンサンブル」をテューバ奏者の堤拓幸氏らと結成し、演奏会を開催した想い出があります。演奏会で使用した楽譜は当時の東京バリテューバの先生方から頂いた楽譜がほとんどで、「東京バリ・テューバ・アンサンブル」は日本におけるユーフォニアム・テューバ・アンサンブルの啓蒙・普及に多大な貢献をしました。筆者も1987年から正式なメンバーとして、「東京バリ・テューバ・アンサンブル」の演奏会やCDの録音に参加出来た事、楽譜係として資料を保管した事を誇りに思っています。

アンサンブルの名称についてですが、個々の団体名と分類上のアンサンブル名は異なります。「TUBIUM」と呼ばれるユーフォニアム・テューバ・アンサンブルがありますが、この「TUBIUM」とは戸田顕氏による造語で、「TUB(A)+(EUPHON)IUM」それで「TUBIUM」というわけです。「バリチューのテュービアム」ではなく、「ユーフォニアム・テューバ・アンサンブルのテュービアム」が正しい呼び方です。
 このように、「バリチュー」「バリテューバ」「テュービアム」というのは団体名や愛称もしくは商標で、アンサンブルとしての分類上の正式名称は「ユーフォニアム・テューバ・アンサンブル」です。

3. ユーフォニアム・アンサンブル

ユーフォニアムのみ、もしくはユーフォニアムを主体としたアンサンブルです。ピアノや打楽器を編成に加え、ユーフォニアムのデュエット〜8重奏程度の編成がよく演奏会で取り上げられます。
英国のチャイルズ兄弟による、ピアノの伴奏によるユーフォニアムのデュエットも有名です。
日本における大編成のユーフォニアム・アンサンブルとしては、1991年にユーフォニアム・カムパニーが発足し、その後「国立音楽大学ユーフォニアム研究室」「洗足学園ユーフォニアム合奏団」等の大学の団体が継続的に演奏活動を続けています。


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