3. ユーフォニアムの分類

 現在私達がユーフォニアムもしくはユーフォニアムパートとして扱う楽器は様々な形状をしています。改良を加えられ、同じ名称でも時代や地域によって示す楽器のタイプが異なる事もありますので、楽器を分類するには以下の方法が考えられます。

3 - 1. 楽器の構造からの分類

1. アップライト

 構えた時に上を向いたベルが奏者から見て右側にくるものです。アップライトベルと呼びます。
 この形状の楽器は、トップアクションと呼ばれるバルブの配置がなされます。3本もしくは4本のピストンのすべてが水平方向に並び、ピストン操作に右手のみを使う並列式のタイプと、右手で操作する3本のピストンが水平方向に並び、4番ピストンは左手で操作するサイドアクションとよばれるバルブがあります。コンペンセイティングを採用する機種は、このサイドアクションのバルブと組み合わせる事がほとんどです。
 主にフランスや英国で製造された楽器にその源を辿る事が出来ます。現在、日本で最も普及しているのはこのタイプです。

2. オーバル(ロータリー)

 卵形または楕円形、長円形のベルで、フロントアクションと呼ばれる楽器の中央にバルブが配置されるデザインですが、ロータリーバルブがほとんどです。構えた時にベルが奏者から左側になり、行進時に前方がよく見えるように、この楕円形が奏者の構える位置とバランスよくデザインされており、大変美しいスタイルをしています。
 これらは東欧のメーカーが製作した楽器等にその源を辿る事が出来ます。

3. ベル・フロント

 上方に向かうベルが途中から前方に曲がり、客席を向く形状で、バルブはフロントアクション・トップアクションのどちらもありますが、そのほとんどはピストンバルブです。これらは米国のメーカーの製作した楽器に、その源を辿る事が出来ます。

4. フロントベル

 肩に乗せて担ぐ型もありますが、トランペットのような形状の楽器もあります。どちらもベルが前方に向いている状態で演奏をします。マーチングで主に使用されます。
米国のメーカーの製作した楽器等に、その源を辿る事が出来ます。

5. オーバー・ザ・ショルダー

肩に乗せたベルが奏者の後方に向く形状の楽器(Over the Shoulder design)です。行進時に後方に向かって音がよく聞こえるように工夫されたと考えられます。1860年代に米国で製造されたオーバー・ザ・ショルダー・サクソルン(Over the Shoulder Saxhorn)と呼ばれた楽器が現存しています。

3 - 2. 管の太さから見た分類

 ユーフォニアムは管の太さによって、おおまかな分類をする事が出来ます。楽器名を使用すると混乱が起きますので、管が細い順に、細管、中細管、太管、というように分類をする事が出来ます。

 イタリア語を用いて、Flicorno Tenore(細管)、Flicorno Baritono(中細管)、Flicorno basso(太管)というような表記を行なう事も出来ると考えます。

例えば、現在の日本ではFlicorno Tenore(細管)は「バリトン」、Flicorno Baritono(中細管)は「細管のユーフォニアム」、Flicorno basso(太管)は「太管のユーフォニアム」と呼ばれている楽器がこれに相当し、分類する事が出来ると考えます。

3 - 3. 楽器の名称による分類

 同じ名称でも時代や地域によって示す楽器のタイプが異なりますので特に注意が必要です。

 例えば、バリトンBaritone(英)、バリトンBaryton(独)、バリトン(日本・明治、旧海軍軍楽隊)等と楽器名の後に国や地域、時代、使用した団体等を記入しますが、示す楽器のタイプはそれぞれ異なっています。

3 - 4. 総合的な分類

 前項1〜3の分類方法を総合して、ユーフォニアムの詳細な分類や記録をする事が出来ると考えます。

 例えば、テナー「日本・明治○○年、○○商社輸入カタログ、アップライト、3本ピストン並列式、Flicorno Tenorに相当」
バリトン「Baryton、○○製、アップライト、3本ピストン並列式、Flicorno Tenorに相当」
ユーフォニオン「日本・昭和○○年・○○楽隊、アップライト、4本ピストン(3本並列+サイドアクション)、Flicorno Baritonoに相当」
バリトン「Bariton、○○製、オーバル、4本ロータリー、Flicorno Tenorに相当」
小バス「日本・大正、○○社製、製造番号○○、Flicorno bassoに相当」
ユーフォニアム(日本・昭和、○○製、4本ピストン、コンペンセイティング(3本並列+サイドアクション)Flicorno bassoに相当」


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