クラシック音楽館 :: チャイコフスキー :: 序曲・前奏曲

大序曲「1812年」変ホ短調 作品49


概要

愛国心あふれる序曲

 チャイコフスキーは演奏会用序曲を好んだ一人であるが,彼の場合はベルリオーズからの影響からか,それともチャイコフスキー自身が文学好きだったせいか,多くの作品が文学に題材を置いている(「ロメオとジュリエット」「ハムレット」など)。ただし大序曲「1812年」は,文学ではなくナポレオンのロシア遠征という,実在の史実を題材に使用している。

 この曲にはギリシャ聖歌やフランス国歌(のパロディー),ロシア民謡,ロシア国歌など,耳当たりの良い旋律が次々に出てくるので,接続曲のようなイメージが強かろう(実際,多くの解説書では接続曲または三部形式と表記されている)。しかし,実体はソナタ形式である。肝腎な第1主題部の第1の主題があまりに印象の薄い旋律であるために,そう見なされることが多いようであるが,チャイコフスキーは「序曲」と名のつく曲はすべてをソナタ形式で書いている(「くるみ割り人形」の「小序曲」も,ソナタ形式の変形で書かれている)。チャイコフスキー自身,意外と楽式にはうるさい人だったようである。

 この曲は,1812年のナポレオンのロシア遠征によって焼失したモスクワの中央大寺院が,70年ぶりに再建された祭典のために書かれたと言われている。フランス人はこの曲が嫌いだという話もあるが,私はフランス人に知り合いがいないから実際のところは分からない。

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