エイコ
chapter 07
ガガガガガガガガガガガガガ
掘り起こしている。何かの工事だ。黄と黒の柵の向こうでドリルで穴を掘っている。つるはしをふるう人もいる。
ガガガガガガガガガガガガガ
見る見るうちにアスファルトは剥がれ、瓦礫に変わっていく。
バババババババババババババ
砕く音と音の間にオートバイのエンジンのような音が混じる。
ガガガバババガガガバババガガガバババ
見ると赤い色をした80センチ四方の箱が震えながら唸っている。その箱にはコンセントがいくつか付いていて、そこからドリルへとコードが向かっている。どうやら、発電機のようだ。そう言えば露天のたこ焼き屋でも見た気がする。店の脇のポータブルテレビが付いていたのを思い出した。そうか、家庭用品ぐらいならこの発電機でもまかなえるんだ。エイコはさっきの腹立ちが収まっていくのが分かった。今のエイコにはどうでもいい事になっていた。今すべき事はただひとつ、
「電話しなくちゃ!」
カズミが段々興奮していくのが分かった。エイコの話に現実味を感じたからだった。エイコはいきなりこう切り出したのだ。
どうせなら私達がライブを企画しようと。それもライブハウスではなく、どこか違う所で。アンプやらドラムやらの機材はスタジオで借りればいい。エイコがこだわっていた電源も昼間見た工事用の発電機で何とかなるのではないかと。
そして、演る場所とその資金だ。
「普段パンクなんか見た事もないような人達がいるような所でやったら面白いんじゃない?」
「例えば?」
「ほら、皇居前広場とか。あのイギリスのバンドみたいにさ」
「アンタ、もめたいの? お巡りと?」
「ウン、ちょっと」
エイコはククッと笑って続けた。
「まあ、それはともかく、新宿とか銀座なんかの歩行者天国とかね」
「うん、それなら原宿は? あそこなら踊ってる子達もいるし」
「あ、それいいかも。今度の日曜にでも見に行ってみようか?」
「うん。で、この話他に誰かにした?」
「ううん、まだ誰にも」
「じゃあ、知り合いに声かけてもいいかな? 今度の出入り禁止の件でムシャクシャしてる連中も結構いるし、スタッフも人数いたほうがいいんじゃない? ミクだってやりたがると思うわ。それにお金の事だってあるし」
「そう、その事だけど、バンド単位じゃなくてメンバー一人一人から均等にカンパしてもらうの。勿論スタッフも同じ金額。10個のバンドに出てもらうとしてメンバーが4人だったら40人。でスタッフが8人だったら48人。一人千円として、んーと、4万8千円か。足りるかなぁ?」
「でも実際にいくらかかるのか調べたの?」
そうだった。機材を借りるのに、どの位の費用がかかるかまだ調べていなかった。
「とりあえず、まずはスタッフを集めようよ。それでみんなで相談してみようよ」
「わかった。じゃあ私、発電機の事、詳しく調べてみる」
「私は機材の方やっとく。じゃ今度の日曜日までに」
「うん。ミクには私から連絡しとく」
エイコはすぐにミクの電話番号を回し始めた。