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「ブル〜ン。ビリバシ。バシ」 ミシンの音が教室中に響いている。 その中でコスモスはひたすら眠り続けた。 正確に言うと眠ったふりをしていた。 「あじちぃっ」前の席のマリがミシンで手を切った。 「だいじょうぶ?」マリの親友夏美が声をかけると コスモスの体が無意識に反応した。 直立不動で立ちすくむコスモスをサヤカは冷めた目で追い マリは大きなお目眼をクリンクリンさせて見ていた。 マキマキは無反応を装った。コスモスは力つきた。 全てがイヤになった。全てが嘘だとは断定出来ないが 自分だけは嘘だとポケットの中は閉じたまま閉じたまま。 ピンセットが宙を舞った。夏美も倒れ込んだ。 ふたりはそのまま保健室に運び込まれた。 気がつくとコスモスは天井を見ていた。 窓からは夕焼けの飛行機雲が差し込んでいた。 光が目に入ったコスモスは全身を震わせた。 何かに触れた。夏美の胸だった。 コスモスは夏美の瞳をジッと見ていた。 頭の中では祭りに行けなかった言い訳を必死に考えていた。 夏美が目を覚ますとふたりの目がバッチリあった。 30秒見つめ合うとコスモスは無我夢中で叫んだ。 「マスクメロン食べよう」と。 つづく |
校内には空襲警報が鳴り響いていた。 宇宙(お空)が堕ちてきたのだ。 コスモスは自己嫌悪に苛まれつつも カバンからマスクメロンを出して半分夏美に渡した。 マスクメロンを食べるふたりは全てを拒絶せず メマイは微動だにしないまま全体的にカオスだった。 空襲で学校は粉々に砕け散った。 ある意味全ての無秩序だ。 燃えさかる炎の中で夏美はせんこう花火に火をつけた。 そこには未来の希望だけが点火し 後ろめたさだけで空想を廃除出来るほど 現実は甘くなかった。 コスモスは微妙な液体で自分自身を篩い落とした。 「一緒に帰ろうよ」夏美が照れくさそうに言うと コスモスは夏美の手を握りしめ保健室を後にした。 コスモスは無重力的に引きつけられた十字架を 漸く降ろすことが出来た。 宇宙は終わり全ての幻想を紐解いた先には 何も残らない太陽だけが存在していた。 お月様は何も知らないまま何も知らないまま過ぎ去った。 ・・・1990の夏だった。 おわり |
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名前 | 朝霧コスモス | 性別 | 不明 | この小説はフィクションです。この小説に出てくる個人名、団体名、企業名などはすべて架空のモノです。同じような名前が実在したとしても一切関係ありません。 |
年齢 | 13才 | 職業 | 中学2年生 | |
星座 | 水瓶座 | 血液型 | 不明 |