西川研究会 3年 細田 真衣子
05/23/06
音楽療法(Music Therapy)について
1.定義
0.はじめに
「2500年前の古代ローマの時代から、音楽が人の心ばかりか、からだの不調をも癒すらしいことは広く知られていました。当時の医学レベルは、今と比べれば未熟そのものですが、それを補うように、医術のなかにごく自然なかたちで取り入れられていたのです。(中略)本来医学は、「病を治す」以前に「患者を癒す」ことを使命としていました。しかし、現代の医療は、医の本質からどんどん遠ざかっています。」(日野原 2002)
1.音楽療法の全体像
定義:
J. Alvinの定義「音楽のもつ、生理的、心理的、社会的働きを心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質、行動の変容に向けて、意図的、計画的に使用すること」(篠田 2001)
種類:
○受動的音楽療法(聴く)
○能動的音楽療法(歌うことを中心に楽器を使った演奏など)
○レクリエーション的音楽療法(グループの活動)
適用領域:
○精神科 −慢性分裂病患者 →ADLを高める
○小児科 −心身障害者(成人も含む)→ADLを高める
○内科 −慢性透析 →透析中出現する各種心身の症状の軽減
−高血圧 →血圧の安定
−脳血管障害リハビリ →リハビリの促進/精神機能への好影響
−老人性痴呆 →ADLを高める
−☆末期患者 →心身の苦痛を軽減/ADLを高める
/一過性の呼吸苦の改善
○心療内科−☆うつ病 →内部発散誘発/情緒安定
−☆各種神経症 → 〃
−☆不眠症 →入眠促進
○外科 −外科手術前の基礎麻酔時
○歯科 −治療時 →心身の苦痛緩和
○疾病予防−ストレス対策として →心身の緊張を緩和し、疲労を回復させる
<注>☆は薬物の使用量を減ずることが可能
2.日本における現状と問題点
現状:
「今日、日本の各地において、学会認定音楽療法士の指導の下に、諸総合病院、老健施設リハビリテーション施設、心身障害者施設、特別養護老人ホーム、認知症施設、難病施設、ホスピスまたは緩和ケア病棟(PCU)など広範囲の施設で、音楽療法が拡がりつつある」(日野原 2005)
問題点:
○まだ発展途上であるということ
「20世紀の半ば頃から米国で始められたが、それから英国や南米、次いで欧州に普及
した。」それに対し、日本では「専門職としての音楽療法士の教育は約5年前からであ
る。」(篠田 2001)
音楽療法士は、まだ国家資格として認められていない
↓
○“学会の認定による”資格の中身は…?
「東京音楽療法協会」⇔「日本音楽療法学会」??
○癒しブーム、モーツァルトブーム
3.緩和ケアについて
末期ケア terminal care
緩和ケア palliative care
全人的痛み total pain …身体的な痛み
不安やうつなどの精神的痛み
人間関係の問題や経済的負担などの社会的痛み
人生の意味や死への恐れなどの霊的な痛み
「ターミナルケアにおける音楽療法の目的は、このような末期癌患者の全人的な痛みを少しでも和らげ、クオリティ・オブ・ライフを高めることである」(山本 1993)
<方法を変えながら進められる適切な治療> 積極的治癒治療 末期の支援
(C. Saunders 1990)
4.今後の予定
−緩和ケア(palliative care)の現場状況の把握
− 〃 の研究状況の把握
−ホスピスに関する勉強⇒可能であればフィールドワーク
−モーツァルト効果について
−音楽心理学について
(参考)
○日野原重明『生きかた上手』ユーリーグ株式会社、2002年、162〜163頁。
○篠田智璋 『新しい音楽療法 実践現場よりの提言』音楽之友社、2001年
○日野原重明「ナースの理解すべき音楽療法の種類とその適用−第1回」、『看護』第57巻、2005年
○山本一成 「ターミナルケアと音楽療法」、『心身医学』第33巻、日本心身医学会、1993年、25〜28頁
○C. Saunders「死に向かって生きる 末期癌患者のケアプログラム」(武田文和訳)、医学書院、1990年
○ジュリエット・アルヴァン「音楽療法」(桜林仁、貫美行子訳)、音楽之友社、1995年
○新倉晶子他「がん患者の倦怠感緩和に効果をもたらす音楽療法―その方法と効果―」、『看護技術』第51巻、第7号、2005年
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