<続>異国見聞尺八余話 (4)
第3回ロッキー尺八サマーキャンプ 倉 橋 義 雄
今回のキャンプは大いに盛り上がって、ズバリ大成功。主催 者の世界尺八協会コリー・スペリー氏は大満足、笑いが止まら なかった様子。 講師陣は常連のライリ・リー、倉橋義雄、マイケル・グールド、 デビッド・ウィーラー、平岡洋子(箏三絃講師)各氏に加えて、 今回初めて東京から柿堺香氏も迎え、ますますゴーカケンラン。 今回のキャンプの特徴は、初めて日本人の受講者を迎えたこ と。北は山形、南は愛媛から10余名の猛者がコロラドの空の下 に勢揃い。うち2人はうら若きヤマトナデシコ、すっかりキャ ンプのアイドルと化していた。 さっそく、その2人に突撃インタビュー。まずはNさんから。 「参加して良かった?」 「もちろん。刺激になったし、何よりも日常生活から解放され て気分が良かった。だから、思ったよりしっかり練習したよ。」 「疲れた?」 「昼間しっかり練習したあと、夜は10時過ぎまで過酷なイベン トでしょ、眠くて体力の限界だった。でも、緑に囲まれて、た くさんの個性的な参加者に出会って、ある意味ではのんびりで きたと言えるかな。」 「講師の先生方はどうだった?誰がカッコ良かった?」 「箏の平岡洋子先生ね。合奏練習のとき、テンポに乗れない 尺八おじさまに、大きな目でにらみをきかせながら、正確なリ ズムで力強い音色を響かせて、常にリードの姿勢を崩さなかっ たのが、カッコ良かった。」 「うーむ、なるほど。では、あの、クラハシヨシオ先生は?」 「クラハシ? ああ、あの人ね。あの人、カッコ悪いけど、 女性には優しかったよ。」 「日本の尺八を勉強するために、わざわざアメリカまで出か けるなんて、おかしいね?」 「どうして?単なる楽器練習の合宿でしょ。日本だアメリカ だとこだわるほうがおかしい。それに、このキャンプでは、何 だか独自の世界ができあがっていたみたい。アメリカの中の東 洋を感じるときもあった。」 「さて、貴女のキャンプ最大の収穫は何?」 「それはサンライズランチの食事。野菜中心の食事は日々新 たな体を作り、役目を果たしては別れを告げ、すがすがしい毎 日を送らせてもらった。」 「どういう意味か、よく分からないのですが・・・・」 「つまり、快食・快便・快眠。分かった?」 ふむふむ、なるほど。では次は箏三絃を練習するために参加 したMさん。箏三絃の参加者は彼女だけ。彼女には、いきなり 核心に迫る質問をしてみよう。 「カッコいい人いた?」 「いましたよ。ライリ・リーさん!ヒゲと姿勢がバツグン。」 「ふうん。ほかには?」 「カナダから参加した70歳のおばさん。」 「あ、シャーリーさんね。サッソウとして、若々しくって、 いやあ、ステキな人だったねえ。ほかには?」 「倉橋義雄さん。」 「貴女は正直でいい人だねー。彼のどこがカッコ良かったの?」 「朝から酔っぱらっているのか日に焼けてるのか分からない 肌の色。紋付袴がバッチリきまる体型。それから・・・・」 「だ、黙れっ!」 「ほめているんです。日本人のおじさんたちが、みんな実に 生き生きしてたことが印象的でしたよ。ステキだったし。」 「いやー、それほどでも・・・・」 「それからスキンヘッドの人が多かったことが面白かった。 でもぜんぜん恐くなくて、私に煎茶道を披露してくれたアメリ カ青年なんか、スキンヘッドに刺青まであったけれど、とても シャイだった。」 「貴女、変なことばかりに感心して・・・・キャンプでいちばん 感動したことは何だ?」 「朝の散歩。空気の香りがすがすがしくって。」 「ちょいとネーさん、尺八とか箏のことを話してよ。」 「とにかく楽しくって、尺八に対する認識も変わったよ。三 曲合奏の付録のように思ってたけど、見直した。尺八ソロも正 面から聞けるようになったし。日本のものに対する固定観念が ない土地だったから、かえって尺八や箏の新たな魅力が見えて きたのかな。尺八の参加者との仲間意識も高まったことだし、 次回からは<ロッキー尺八箏三絃キャンプ>にしよう!」
|