X JAPANのToshiはどこへ行った?

U、新興宗教に染められたアーティスト
 ミュージシャンを目指す若者にとってプロになるということは一つの大きな目標である。しかしいざメジャーのレコード会社と契約をし、インディーズからメジャーの世界に足を踏み入れるとそこは様々な制約のある息苦しい世界であることに気づかされるのである。インディーズ時代は自分達の思うままに活動できたわけだがメジャーの世界ではそうはいかない。「いついつまでに新曲を5曲用意しろ。」・「次のシングルでは○○の曲をカバーしろ。」・「全国ツアーは来年までなしね。」などと自分達の知らないところで勝手に話が進められていたりするのである。メジャーとはそういう厳しい世界なのである。

 例 GLAYがデビューの際に当時のドラマーが一方的に解雇された。ソングライターのタクロ   ーとボーカルのテル以外のメンバーは、「君たちは別にいなくてもいいんだから。」と言わ   れた。

   SHAZNAのセカンドシングルが一風堂の「スミレセプテンバー」のカバーだった。その後ド   ラマに出演させられたり、ボーカルのイザムがソロ活動を開始するなど。現在活動休止    中。(2003年ソロで活動再開!)

   スピッツのベストアルバム「RECYCLE」は、(ベストアルバムは出さないという)
   メンバーの意向を完全に無視して所属レコード会社が勝手にリリースした。

 そしてメジャーの世界で自分達の曲が売れたとなるとさらに状況は悪化する。周りを取り巻くスタッフの数は大幅に増加し、最早インディーズ時代のような好き勝手な活動は到底できなくなる。ミュージシャンは売れたことで様々なプレッシャーを抱え込む。新曲のレコーディング・プロモーション活動(売れるとテレビ出演・雑誌取材も増加する)・全国ツアー・曲作りの繰り返しという過酷なスケジュールを強いられるのである。何よりも売れた以上は売れる曲をリリースし続けなければならないのである。"シングルは名刺代わりである"とはよく言われることだ。こういった状況ではストレスは溜まる一方なので、彼らは酒を飲み、睡眠薬・鎮静剤・抗鬱剤などを摂取し、挙句の果てにはドラッグに手を染めるのである。しかしそれとは別に、心のより所を新興宗教(的なもの)に求めるミュージシャンもいるのである。日本において例をあげるならToshiの名が真っ先に思い浮かぶ。

<Toshi>
1、はじめに
 Toshiは、言わずと知れたX JAPANのボーカリストである。X JAPANはいわゆるヴィジュアル系の元祖であり日本の音楽シーンの頂点を極めたバンドである。しかし実情はドラマーであるYOSHIKIのワンマンバンドであった。ピアノの素養があった彼はほぼすべての楽曲の作詞作曲を担っていた。つまりToshiは提供される曲をただ歌うだけのボーカリストであったのだ。噂ではX関連商品の売上のほとんどをYOSHIKIが手にしており、他のメンバーとの収入格差はかなりのものであったそうだ。結局X JAPANは人気絶頂のまま97年に解散してしまうのだが、その際の理由は「Toshiの音楽性の違い」であった。記者会見の場にはToshiは姿さえ見せなかった。その後Toshiに洗脳疑惑がかけられるのである。「ToshiはMASAYAに洗脳されている!」とワイドショーや新聞・週刊誌上で一斉に報道された。MASAYAという人物はヒーリングミュージックを専門とする作曲家及びプロデューサーで、レムリア・アイランド・レコードという自主レーベルの代表でもあった。しかしそれだけではなく彼は自らを「自然界の子」と称し、自己啓発セミナーを開催するヒーラーでもあった。噂では、「壁抜け・空中浮遊ができる」・「2001年には人類は滅びる」などとうそぶいていたそうである。ToshiはMASAYAと共に頻繁にワイドショーに出演し、「洗脳されていない」と弁明を繰り返した。
 その後Toshiは表舞台から消え、ソロ・アーティストとして活動を再開するのだが、実際はMASAYAの作った曲を歌うだけであった。99年頃から彼は詩旅(うたたび)と称し全国を演奏して回っている。会場はXの頃のような大ホールではなくデパートの屋上・スーパーなどが中心である。最近では老人福祉施設や小学校なども回っているそうである。形態もバンドではなくアコースティックギター一本の弾き語りが中心である。そういった地道なライブは2002年でもう3000回を迎えたそうである。

2、Toshiの楽曲について
 ToshiはX時代に四枚のソロアルバムをリリースしている。そして解散後、レムリア・アイランド・レコードから何枚かのシングルとアルバムをリリースしてきている。今回研究にあたってX時代のソロアルバムはすべて手に入れた。しかし、レムリア・アイランド・レコードはインディーズレーベルなので、そこから出ているToshiのCDは大手レコード店では流通しておらず、どうやらネット通販がメインのようだ。Toshiのホームページを見ると確かにネット通販はしている。しかしその値段を見て驚いた。例えば、2002年11月に出た二枚組みのニューアルバム「Perfect Love」にはアレンジ違いヴァージョンの同一曲が多数収録されており実質は全部で2曲しか収録されてないと言える。それにも関わらず、送料込みで3700円もするのだ。これはぼったくりである。インディーズCDは基本的にメジャーのレコード会社の流通を通さないために、価格は抑えられているものである。一枚のアルバムで相場は2000円から2800円といったところだ。なのに3700円である。これはやりすぎだろう。今回のアルバムなんて二枚組みで実質二曲しか収録されていないのだ。二枚組みの意味はないだろう。研究のために買おうと思っていたのだが結局断念した。レムリア加入以降の楽曲はHP上での試聴と一部掲載されている歌詞を手がかりにして分析していくことにした。

2−1、X時代のソロアルバムの楽曲について
 ToshiはX時代に四枚のソロアルバムをリリースしている。タイトルは古い順に「made in HEAVEN」・「MISSION」・「GRACE」・「あおい宇宙の旅人」である。四枚通して聴くと明らかに四枚目のアルバムだけが毛色が違う。最初の三枚のアルバムは普通のロックアルバムで、歌詞も普通のラブソングばかりである。しかし四枚目のアルバムはほとんどヒーリングミュージックと言ってもいいほど静かな曲ばかりなのである。歌詞もかなり宗教っぽくなっている。実はこの四枚目のアルバムはリリースが97年なのだ。つまりXが解散する少し前だ。ということはこの時期にはもうToshiはMASAYAに会っていたのかもしれない。このアルバムだけ明らかにそれまでとは違っているのである。以下にこのアルバムの楽曲の中から特に宗教っぽいと思われるフレーズを並べてみた。X時代の過激なToshiからは想像もつかない表現である。

「はるかに響く鼓動は生命の源へ還る(略)繰り返す魂の旅は永遠に」(楽園)
「一人静寂の闇をさまよえば静かに鼓動はそれでも生きよと告げる」(Birthday Eve)
「やがてすべては一つになる その時代まで続く旅の道連れに(略)」(天使のメヌエット)
「はるか遠い日の宇宙の約束 永い眠りから目覚め蘇る」(あおい宇宙の旅人)
「誰かに助けてほしくて…救ってほしくて…愛してほしくて…」(さまよえる地球人)
「果てしなき宇宙のアートに心ぬくもってゆく」(星の舞踏会)
「生まれる前の心へ還ってく」(Simplicity)
「溢れ出すよ 地球の奇跡」(Passion of Love)
「生命へと未来へと繋げる我が故郷」(ガイアの祈り)

2−2、洗脳後のToshiの楽曲について

 「いくらスターになっても、賞賛や人気を得たとしても人生を捨ててしまいたいほどのむなしさ や苦しみの中、この詩歌に生命救われ、今はそんな楽曲とともに人生を旅するなかで、今ま でには経験できなかったようなかけがえのない体験をさせていただいておりますことは、本  当は何よりも幸せなことなのではとも思います。」

 これはToshiのオフィシャルホームページのトップページに書かれてある彼の最新のコメントである(2002年12月現在)。このように、レムリア・アイランド・レコード加入後のToshiは明らかに変わってしまった。過去を全否定しているのだ。そして「そんな楽曲」というのはもちろんMASAYAの書いた曲のことである。彼のホームページを見ると「MASAYA最高!」みたいな内容の事がつらつらと書かれている。MASAYAから曲をもらう度に「(MASAYAから聴かされた時)涙が出て止まらなかった」としつこいくらいに言っている。完全に彼はMASAYAに傾倒していることがひしひしと伝わってくる。
 ではレムリア加入後のToshiの楽曲(=MASAYAの楽曲)はどんなものであるのかを見ていこう。ホームページから確認された曲は以下の11曲であった。タイトルだけ見ても実に宗教っぽい。

「愛の詩をうたいたい」「大空を飛ぶ鳥のように」「君はいないか」「奇跡の子」
「森と風の旅人」「すべての中に君を見ている」「虹は消せない」「INOCHI… 」
「自分〜抱いてやりたい〜」「Perfect Love」「伝えて」

 さて、次に各楽曲の歌詞を見ていきたかったのだが、よくホームページを見てみるとほとんど載っていないではないか。残念ながら歌詞分析はできなくなった。

3、Toshi語録集
 そこで代わりにホープページにアップされているToshiのインタビュー記事や日記から宗教的発言及び洗脳疑惑を裏付ける発言をひたすら紹介していくことにする。

「MASAYAのアルバム『胸いっぱいの言えぬ想い』をCDウォークマンでかけて、『世界よ止ま  れ』を聴きました。なんだか涙があふれました。」
 
「MASAYAのアルバム『胸いっぱいの言えぬ想い』をかけると、最初の曲『世界よ止まれ』が流 れてくると同時に涙も流れてきました。」

「世間では「あの洗脳の?」とか「あの宗教の?」とかいまだにマスコミに逆洗脳され、誤解さ  れている方が多くいる」

「ありのままの自分が許せず、理想を掲げてそれを追い求めるがゆえに戦い続けてきた苦し く空しい人生に,本当の気づきと本物の癒しを与えてくれるかのような素晴らしい楽曲達で  す!MASAYAからのアドバイスで、今後はそんなMASAYAメロディーを僕自身でピアノやシ  ンセサイザーを弾いて、更にレコーディングエンジニアリングも自分でやりながら、真の癒し の音楽のアルバムを制作していく予定です。」

「毎日毎日様々な人々にサポートを頂きながら旅ができて、好きな歌が歌えて、本当のことを 伝えることが出来て、CDを買って頂いて、そこからまた旅に出て…。なんて幸せなんだろう と思います。」

「『すべてはひとつ』とMASAYAから伝えてもらった」

これらの発言を見ただけで十分Toshiが洗脳されていることはお分かりいただけるだろう。まず彼のすべての思考回路において「MASAYAありき」なのである。自分らしさというものを捨ててしまっているようだ。彼はX時代のソロアルバムでは自分で作詞作曲を担当していたのだ。なぜにそこまでにMASAYAの曲を歌うことにこだわるのだろうか? これでは洗脳と言われても仕方がないだろう。

4、まとめ
 こういったToshiの発言を見ているとなんだか悲しくなる。あまりにも変わりすぎだ。もうX時代のような熱いライブパフォーマンスは見れないのだろうか。今のToshiはMASAYAの操り人形みたいだ。僕にはMASAYAのすごさなんて全然分からない。そんなにすごい人ならもっと有名になってもいいはずなのに、僕はMASAYAの名前を、Toshiを通じてしか聞いたことがない。結局ToshiはMASAYAに利用されているだけではないのか。かつては音楽シーンの頂点に登りつめたボーカリストなのに。今の彼は見ていられない。今これを書いている一週間後に彼は、僕の家から五分の小さなホールにミニライブをしにやってくるそうだ…

【お詫びと訂正】
本文中で「Toshiはレムリア・アイランド・レコードに加入している」と書いたが、実際は加入しているわけではないようだ。彼のCDは彼の個人レーベルからの発売だそうだ。しかし楽曲がMASAYAの手によるものであることは変わらない事実である。