Mansun日記 第25章 (1998年10月)

NME Student Guide 1998

(1) 美貌について

◆ ひいー!
● きゃー!
◆ この目ェー!
● かわいいいー!! こんなにかわいくて何様だと思ってるんだ、こいつは!! 26にもなってこんなにかわいくて恥ずかしくないのか、貴様は?!
◆ 自分でなに言ってるか、わかってる?(笑) というわけで、(イギリスの)新学期恒例のNME Student Guide(注)はMansunが表紙だったのだが‥‥《大きい写真はギャラリーで見てね》

(注) 「大学生のための音楽ガイド」ってわけで、大卒(といっても、この場合、正規の大学だけじゃなくて((英国は大学の数が日本とは桁違いに少ないので))、日本流に言うと専門学校みたいなのも含む。要するに義務教育だけじゃないhigher educationを受けてる人ってこと)のバンドをフィーチャーし、学生時代の思い出を語らせたりする企画。

● またあれだ! あの「フランス人形顔」!
◆ これは絶対マスカラつけてるよね。
● うん。この人はマスカラつけたほうが絶対にかわいいとは前から言っていたが‥‥
◆ 私が最近、前はめったにつけなかったマスカラをいつもつけてるのはなぜだか知ってる?
● は?
◆ それはPaulを知ってからなのだ。実は私も、小顔に大きな目鼻立ちで、大きな丸い目も同じなのだが、色白で、顔そのものが薄いので、なんか薄ぼけてぼんやりした顔になってしまうというPaulと同じ欠点の持ち主なのだ。
● はあ?
◆ ところが、Paulを見て、これはマスカラひとつで解決できると知って、試してみたら本当にそうなの。あいにくまつげが濃くてびっしり生えてるPaulと違って、私はまつげも細くてまばらだけど、でもその違いは霊験あらたか。べつにこの年になって美人に見られたいとか、そういう欲望はとうに失せたけど、Paulを見ていたら、これは宝の持ち腐れだなあと思って。
● うう‥‥この思い上がった高ビーな発言は、オルターエゴの中でも極めつけのナルで知られる◆の言葉ですからね。そこまで思い上がってると思わないでね。自分がPaulに似てると思うなんて。
◆ 誰に言ってる? 似てるなんて言ってない。単に同じ欠点の持ち主だというだけで。
● それだけでも十分思い上がってると思います。
◆ だいたい好きな人と自分を同一視するのは当然のことじゃないか。次はカラー・コンタクト入れて、金髪に染めるっきゃないな。
● やめてくださいよー! Paulだけでもこんなにかわいいのに、Chadもこんなにかわいく写ってるから。(フォローになってないな)
◆ うん、ChadはPaulの後ろに隠れる感じで、ピントが合ってないのが惜しいが、彼も見るたびかわいくなるねえ。
● 髪を黒くして(胸毛の色からして、たぶんこれが地色)、前髪ばさっとおろしたのは正解でしたね。
◆ この人はこれでこのあごさえ(胸毛も)なけりゃ、ほんとに単品でも絶世の美少年なのに。
● あごだって最近目立たないよ。胸毛はあいかわらずはみ出してるが、クマみたいでかわいいし。
◆ (うつろなくせに)態度だけはでかいPaulに対して、いかにもナイーブでシャイそうなところがいいね。
● おまけにその2人が何やらあやしい雰囲気!
◆ ああ、いいなあ。これだからMansunはやめられない。

● 中も見てよー、中も!
◆ なんだ、記事はたったの見開き2ページで、写真は小さいのが2枚だけか。美麗ピンナップは?! センターフォールドは?!
● だってそういう特集じゃないって(笑)。でもこの写真も超キレイ。特にこのモノクロ! 何なの、このお耽美ぶりっこは!
◆ 文字通り、ギリシア彫刻みたいっていうか、大理石で刻んだ彫像のようだねえ。
● これでもまだ「顔はべつに好きじゃない」なんて言える?
◆ うーむ‥‥
● こうやって下から見上げるアングルだと、本当に鼻の形がいいのがよくわかる。口だってすっごくセクシーじゃないか。
◆ しかし問題はこの目だよなあ。この人はたいていいつもトロンとした目をして半開きなので、めったに目を大きく見開くことがないんだけど、これは視線が上向きなので、いかに異常にでかい、きれいな目かがよくわかる。
● ライブでは時々おどけたように目をクリクリさせることがあるけど、それも異常にかわいいっすよ。
◆ ああ、たまらん! もうどうしてくれよう!
● どうもしなくていいです。ちょっとこれとくらべてみてよ!(同じStudent Guideに載っているUltrasoundのTiny Woodを指さす) 彼だって青い目の白人の男の子で、年の頃もいっしょなんだけど(ついでに化粧しているところも同じ)、これとPaulが同じ人間だなんて信じられる?
◆ それはいくらなんでもかわいそうっていうか。Tinyといえば、間違いなくロック史上でいちばん醜いシンガーじゃない。
● あんたの言い方のほうがよっぽど残酷だと思う。だったら、きれいな人とくらべてもいいよ。ここに載ってる女性シンガーでいちばん美人なのは(私はキライだが)Courtney Loveだと思うけど、それとくらべたって、Paulのほうがぜんぜん美人じゃん! Courtneyなんて鼻は不細工だし、口も不格好だし、頬はたるんでるし。
◆ だって彼女、厚化粧でごまかしてはいるが、もう相当な年でしょうが。それも不公平だよ。
● じゃ、これは? Damon Albarn。なぜか巻頭を飾る序文を寄せているんだが、似ているとかいう噂もあったし。
◆ けっ、けっ! なに、この不細工な薄汚いジジイ! Paulとなんかくらべただけでバチが当たる! こんなバカが学校なんか出てるのか?
● というわけで◆も納得。Brian Molkoなんて敵でもないし、勝ったね!
◆ もう全面勝利よ!
● って、なんのことかよくわからないが(笑)。

(2) Mansun as Students@ABooze Sex & Money

● それでかんじんの記事のほうは?
◆ “The Duffer's Guide To College With Mansun”というタイトルで、PaulとChadが自分らがいかに最低のしょうもない学生だったかということを語ってるんだけど、この特集そのものが冗談特集なんで、酒の失敗とか金欠病とかの、まあよくあるお決まりの話。
● えー、知りたい知りたい!
◆ やっぱり酒の話が多いねえ。経歴から考えて驚くことじゃないけど、Chadは大学行ったというより、学校のバー(なんてあるんだね)に通ってただけだそうだし、Paulも意識がなくなるまで飲むことはしょっちゅうだったそうだし、死に損なったことも何度もあるそうだ。
● へえー?
◆ まあ、よくあることで、若いうちなんてそんなものだろうけど。こんなエピソードがある。

Paul 「あるときぼくらは酒を切らしちゃって、飲むものがないから風邪薬を一瓶まるまる飲んじゃったんだ。次に覚えているのは、朝目がさめたら、壁にバドワイザーの瓶が刺さってて、Chadの背中にガラスの破片で‘Chad’って彫ってあった

● (一気に冷めて)それってどういうこと? もしかして薬で錯乱したPaulが、ビール瓶を叩き割った破片でChadの背中に名前を刻みつけたってこと?
◆ もしかしなくても、そうだろうねえ。
● それは「よくあること」じゃないよ! 下手すると死んじゃうよ!
◆ そうだよねえ‥‥うふふ。
● 何をほくそ笑んでるんだよー! あっ、そういえば体に字を書くというのは◆の性的オブセッション!
◆ しかも筆じゃなく、鋭いガラスで! まけにこれは疑似性行為だからして、この2人はやっぱりむふふ‥‥
● この鬼畜! 食屍鬼! これだからあんたと▲は! ここに▲がいなくてよかった。こんなの読んだらまたつけ上がるから。
◆ まあ、死ななかったんだからいいじゃない。今は2人とも酒とは縁を切ったようだし。
● 死ななきゃいいってもんじゃないでしょ! それはそうと、なんで風邪薬? そっちのほうもやってたのか?
◆ ドラッグってこと? ドラッグやりたきゃ何も風邪薬なんか飲まなくても‥‥
● そういや、Mansunのインタビューでドラッグの話が出たことは一度もない。酒のエピソードはいくらもあるようだけど。てことは、Mansunはドラッグ・フリー・バンド?
◆ だからそれもアルバム・リリース以前の「ご乱行時代」にはよくあったみたいだけど、今はきっぱり断ってるらしい。ついでに言うと、セックスもなしだそうだ。
● なんでそういうやつばっかり!

Paul 「それほどたくさんセックスした記憶はないな。裸だけはふんだんにあったけど。それも今ほどじゃないね」

● それってどういう意味よ?! 今はもっと裸に取り囲まれてるってこと?
◆ みたいね。
● だからそれはどういう意味じゃい!
◆ グルーピーのこと言ってるんじゃない? ただ、彼はグルーピーには目もくれないので有名だけどね。
● なんか変だぞ。この人って、セックスに関してはドキッとするようなこと平気で言うくせに、自分は関与してないような顔して、人ごとみたいにあっさり言う
◆ だからゲイじゃないかと思ったんだけど‥‥でも彼がセックスのこと話す時って、どうも女の子のこと念頭に置いてるみたいで。
● そういや、「ガールフレンドはいますか?」っていうファンの質問にも「みんないるよ」と素っ気なく答えていたな。
◆ あのしれっとした顔ででしょ。どうもこいつの言うことはすべて真に受けられない。
● まだゲイだと期待してるのか?
◆ だってガールフレンドなんて単に「女の子の友達」とも解釈できるじゃない。あとね、Paulが一文無しだったという話の中で、NMEが‘the noble student art of prostitution’のことは考えなかったのかと訊いたら‥‥
● 何よ、それ?
◆ つまり金のために体を売ることは考えなかったのかということ。
● げっ! 何がnoble artだ?! それって向こうの学生さんにはそんなによくあることなのか?! 買うぞ、私は!!
◆ 何が「買うぞ」だ! 少しは自分の立場ってものもわきまえなさいよ!
● だって10代のPaulだったら買う! 職なんかなげうってでも買う! 何があっても買う!
◆ そしたらPaulは「ぜんぜん、これっぽっちも、頭の隅をかすめたこともないね」だそうだ。
● なんだ。残念でしたね、ホモじゃなくて。
◆ べつに残念とは言わないが‥‥。それに何もホモが嫌いだと言ってるわけじゃなくて、もともとこの人はセックス拒否の姿勢を貫いてるんだからして、金のために体を売るなんて論外でしょ。だいたいホモ嫌いなら、ゲイ差別に対してあんなに怒るわけがない。
● しつこいね、あなたも(笑)。

(3) 軍服と化粧の話

◆ えーと、次のお題はと、コスチュームだな。
● ここでのお召し物は、さすがにあのシャツはもう着てなくて、毛皮の裏のついたオリーブ色のパーカ。
◆ この人のいるところは、いつでもどこでも冬なのね。
● そういや、いつもやけにあったかそうな格好しているな。たぶんこの写真を撮ったのは真夏だと思うんだが。寒がりなんだろうか?
◆ だいたい、パーカ着て、ボタンを上まできっちりかけた上、フードのひもをきっちり結ぶ人ってあまりいないと思わない?
● そういや、そうだ。でもあごの下で蝶結びにしたところが変に子供っぽくてかわいい。私もまねしよう。
◆ この何がなんでも見せない、さわらせないっていう禁欲的な感じが変にそそるんだよね。
● そういう意味で言ったんじゃないが。
◆ あちこちにポツポツ穴があいてるところから見て、明らかにこれは中古の軍用品だな。
● そういや、あのシャツはChesterにある軍用品店で£1.50で買ったんだって。
◆ あ、それも共感! 私も最近古着屋で200円とか300円の洋服買うのにはまってるんだ。
● あれはいいよね。1回着て気に入らなきゃ雑巾にしても惜しくないし。
◆ そのくせ、古着のほうが気に入って、置き場所がなくなり、何万もした服を捨ててる始末。
● とにかく私もだけど、この人も着るものにお金まったくかけてないのは一目瞭然ね
◆ 値段より気に入るかどうかなんだよ。
● しかし、いくら気に入ったからってそればっかり着るのは‥‥朝起きて何を着ようかと迷う手間はないけど。なにせ着たきりだから。
◆ いくらなんでも寝るときぐらいは着替えると思う。
● とにかく最近はミリタリーってところは統一されてるのね。
◆ それも私好み! でもこの手の顔の男の子が着ても似合うとは知らなかったな。
● これだけ顔が良ければ、お洋服なんかなんでも‥‥
◆ いや、服は重要よ。Manicsを見なさい。あの情けない格好。
● 前のが情けなくなかったとは思わないが‥‥(笑)
◆ でも軍服はすてきだったじゃない!
● ほんと好きねえ。
◆ 実を言うと、そういう格好した男の子も好きだけど、自分で着るのも好きなの。私が着ていちばんうれしいのはブラック・レザーとミリタリーなのだが‥‥
● と、ボンデージでしょ? 「女王様」◆としては。
◆ べつにあんなもの着たいとは思わない。あれは胸がないと似合わないし。
● だったらべつにミリタリーも似合うとは思わない。
◆ うん、この年になって、しかも女だと、迷彩服着て外歩くのはちょっとね。しかたないから家で着てるけど。
● それでも着るあたりが根性ですな。
◆ それに本物の放出品買う勇気もないから、もっぱら模造品だし。どっちみちアメリカ軍のものはいやだけどね。
● でも英国軍の軍服ってかっこわるい。
◆ どうせなら旧ソ連軍のがほしいのだが。Manicsみたいだし。そういやインタビューの中で服装の話もしてた。

Paul 「学生バーといえば、覚えてるのはお揃いのラグビー・シャツを着て、片手に持ったビールを振り回しながら、『うおー!』とか叫んでる奴らのことだけだな。それでぼくは黒づくめの服を着て、Doc Martensをはいて、にじんだアイライナーと、大きなイヤリングをして、反対側のすみっこに座ってたわけ。でもChadはもっとひどかったよ。あいつときたら、ぼうぼうのあごひげに編み込みをして、髪は尻まであった。誰もが彼のことは浮浪者だと思ってた」

● ううっ! Chadが正気に戻ってよかった!
◆ でもPaulはさりげなくかっこつけちゃって。黒づくめにDoc Martensなんておしゃれじゃない。
● 学生時代からお化粧してたのかね。だったら今もいつもしなさいよ。
◆ 私も化粧男は数多く見てきたけど、これだけ似合う人はいなかったと思わない? つまり私は基本的に支持してきたけど、男が化粧すると、程度の差はあれ、ある種の化け物になってしまうじゃない。
● むしろそれをねらった化粧もある。Robert Smithとか。Manicsもそうか?
◆ あのDavid BowieでもBoy Georgeでも素顔のほうがきれいだった。
● Georgeの素顔なんて見たことないぞ。
◆ ほら、15才の時の写真見たじゃない。
● ああ、あれはかわいかった。
◆ あのNeil Codlingですら、化粧はちょっとやめてほしいと思ったもん。
● だって、あの顔で化粧までするとやりすぎって感じで。すると、化粧したほうが美しいってのはDavid Sylvian、Johnny Dean以来ですかね?
◆ しかも彼らは塗り壁状態だったけど、Paulはまったく化粧っ気を感じさせずに、ナチュラル・メイクでこんなにきれい。しかもあの2人は化粧をやめたとたん、ルックスも崩壊しちゃったけど、Paulはスッピンでもこんなにきれい。
● 男が化粧すると、不必要に塗りすぎるからオカマみたいになっちゃうからね。この人はマスカラだけでしょう?
◆ 時々アイライナーやアイシャドーも塗ってる。ほら、「Midge Ure時代」がそうだったじゃない。
● この上アイライナーまで入れるのは、やっぱりやりすぎだと思うけどな。
◆ でも最初に買ったMMの、ゴールドのシャドー入れたやつはきれいだったじゃない。
● お化粧の才能もあるのかな?
◆ ていうか、顔の造りの問題だと思うな。こういうつるっとした、きれいだけど無個性な人は化粧したほうが映えるのかもしれない。これはやっぱり天然の女顔のせいだな。というわけで、次のお題はこれだ。

(4) Being a Girl

● うーん、いわゆる女顔というのではないし、私はそういう男の子は本来あまり好きじゃないのだが‥‥
◆ だって、これは男の顔じゃないよ! この子にきっちり化粧させて、髪型も女の子みたいにして、性別不詳の衣装着せてみなよ。Brian Molkoなんてメじゃなく女らしいよ!
● たしかに女装は危険なほど似合いそうだが‥‥。これまでも「男の美とは何か?」というのではさんざん悩んだけど、ここまでいくとどう考えればいいのか‥‥
◆ それでなんでこんなに女っぽいのか考えてみるに、小顔に、抜けるような色白、ほっそりして小作りな顔の造作、華奢なのに丸みを帯びた小柄な体型といろいろあるが、やっぱり決め手はあの目だな。
● あんな目した人、女にもいないよ。やっぱり人間の目とは思えなくて、お人形みたいとしか。性別不詳なところもお人形みたい。それより私が気になるのはこの幼さ。こういう女の子みたいなっていうか、お人形さんみたいなかわいらしい男の子というのは、実は白人にはけっこういるんだよ。12才以下なら
◆ なるほど。そういや、少年ぽさのことを言うのを忘れてた。
● 少年どころか赤ちゃんみたいだよ! 女装どころか、よだれかけさせて、おしゃぶりくわえさせても異様に似合うよ
◆ うっ!(想像して似合うのに愕然とする)
● なのにこの人、これで26才なんだから! 26才といえば、Roddyは目元の小じわが目立ち始めて、どっと老け込んだ頃なのに!
◆ あー、ここで恨みがましくRoddyを引き合いに出すのは、やめたほうが。
● だって事実だもん。その代わり10代のRoddyは誰も太刀打ちできない美しさだったからいいけどさ。だけどなんでこの人、こんなに保ちがいいの?
◆ 保ちがいいっていうより、単なる童顔なんじゃないか?
● 26才でこうなんだから、この人が16才のころはどんなだったか‥‥ああー!(想像しただけで悶絶する)
◆ どっからどう見ても女の子だったでしょうね。少年時代、オカマとバカにされていじめられたのもよくわかるっていうか。しかしこの手の童顔は年とったら悲惨かもね。Roddyみたいに元々がすごくきれいな人は、いっそほんとのジジイになってしまえば、きれいなジジイになるかもしれないけど。
● なんで? 誰がいる?
◆ Paul MacCartneyとか。もうひとりのMacもそろそろ化けの皮がはがれて化け物と化しつつあるし。
● あの人たちは童顔は童顔でも、ファニー・フェイスを逆手にとったかわいこちゃんでしょう? Paulこそこれだけ整った顔立ちなんだから、化け物になんかならない!
◆ それもそうか。
● とは言っても、この美しさはよく保って2年だろうから、今のうちに楽しんでおかないと
◆ そっちのほうが残酷じゃないか!

● しかし私も長年美少年コレクションを続けてきたが、ちょっとこの手はなかったなあ。
◆ 幼くて女っぽいといえば‥‥Mark Owen?
● ちがーう! Markがかわいかったのは、主としてあの笑顔や性格のせいでしょう? あの子が暗い性格で仏頂面してたら、ちっともかわいいとは思えなかったはず。最近ちょっと変わったようだが。そうじゃなくても、私はMarkなんて変な顔だし、Robbieのほうが絶対かわいいし幼いと思ってたけど。
◆ 確かに、Paulときたら、根はむちゃくちゃ暗いし、このブスッとした無表情で、これだけベチョベチョに甘ったるいかわいさだもんなー。だったら笑ったらどんなにかわいいかと思いきや、そうでもないのが不思議だけど。
● あんなキューピーさんみたいなあどけない顔して、なんでこれだけ厭世的な暗い性格してられるのか不思議。
◆ フランス人形の次はキューピーさんですか(笑)。だったら、同じ根暗美少年ってことでJim Reidだ。
● Jimはいちおう、あれでも「男」でしたよ。
◆ でもいい年して異常に幼かったし、愛らしかった。Jimがデビューしたのもこれくらいの年でしょう?
● もうちょい若かった。でもタイプが違うとしか。
◆ だったらIan McCullochだ。女っぽさでも愛らしさでも、Paul以前にNo.1だったのはあの人だから。
● それは私も異論がないが、Macのあれは十二分に意識してブリブリにぶってるじゃない。私にはあのわざとらしさと不必要な色気が、かえってうっとうしくてあまり好きになれなかった。天然ぶりっこという点ならJimなんだけど。
◆ Paulだって意識してないとは言えないでしょう。あの顔で“Being a Girl”なんて曲を書くことからして。
● でもぶってたら、ここまで無表情じゃいられないと思う。
◆ 意識しすぎて硬直してるとか。
● 硬直もしてないよ。Jimじゃないんだから。
◆ わからんなー、この人は。ほんと何を考えてるんだか。
● これまでで、いちばん何を考えてるのかわからなかった美少年はGreen Gartside(Scritti Politti)なのだが。
◆ ああ、似てるかもしれない。“Six”のリビューで書いたように、彼の書く詞も似たところあるし。顔や性格はぜんぜん似てないけど。これは余談だが、非常に優れたScritti PolittiサイトであるThe Archeology of the Frivolousのウェブマスターは中国人の女の子(チャイニーズ・アメリカンだと思う)なんだけど、彼女がGreenのファンになったのは、彼女の好きな日本の少女マンガの主人公がGreenそっくり、というか、Greenをモデルにしているらしいからなんだって。
● へえー? それってどのマンガだろう? Sylvianを使ったのはけっこう思い当たるんだけど。だったらPaulを主人公にしたマンガもあっていいな。
◆ これを少女マンガの絵にしてみると‥‥(想像する)
● 『綿の国星』のチビ猫とか。
◆ どういう意味だ!
● 『キャンディ・キャンディ』とか。
◆ それも女の子でしょうが!
● だって少女マンガの典型的男の子って、あごや鼻が異様にでかくて、身長3mあって、Paulにはぜんぜん似てないんだもの。どうしてもキラキラ星目で、ちっちゃい鼻がつんとしてて、金髪たてロールの女の子になってしまう。
◆ 「少女マンガのような美少年」という言い方はよくしたけど、たしかに今どき少女マンガでもこれだけベタな美少年は恥ずかしくて描けないよなー
● でも少年マンガの顔じゃ絶対ない。
◆ 私は吾妻ひでおの「中島くん」に似てると前から思ってるんだが。
● 中島くんって誰だ?
◆ ほら、『スクラップ学園』の。これがまつげの長い女顔の、吾妻の典型的美少年キャラで、いつもうつろな無表情で何考えてるんだかわからなくて、まじめな優等生なんだけど変ってところがそっくり。
● 確かに似てるかもしれないけど、あれは典型的「メガネくん」でしょう? Paulがメガネかけたところなんて見たことない。サングラスならあるけど。
◆ かければいいのに! 見るからに近視眼っぽいし、似合うと思うわ。これでメガネがあれば! ああ!
● やだそんなの。だったら『ストップ!! ひばりくん!』とか。
◆ げっ! 似てる! あれで髪のばしてスカートはけばそっくり! 『ひばりくん』実写版(ついでに白人版)が撮れる!
● でも表情が‥‥
◆ だから表情さえあれば似てるよ。
● そこがいちばん無理なんじゃないさ。
◆ 笑うのは無理としても、この人がいちばん生き生きして(それも程度問題だが)いたずらっぽく目をキラキラさせてる時って、見るからに小悪魔っぽく見えるけど、そこがひばりくんに似てる。
● もう思いこみだけで物を言ってるな(笑)。
◆ とにかく人間離れしてきれいなことだけは間違いあるまい。
● しかもなあ、美貌だけじゃないもんなあ‥‥これが本物の天才だなんて、先に顔を知ってたら絶対思わなかったよ。天は二物を与えずなんて嘘ばっかり!
◆ ▲だったら才能は顔に出ると言うんだろうけど。
● ほんとにこれだけの才能の持ち主だったら、顔はTiny Woodみたいなんでも好きになったと思うけど、それがこんな美少年だなんてできすぎよ!
◆ だから運命なんだよ。彼とは赤い糸で結ばれてたとしか。

(5) 番外−Richey Edwards

◆ Mansunから話はそれるけど、この特集を手にとって仰天したのは、巻頭にRicheyが載ってたことなんだよね。
● あー、このRicheyもきれいですねえ。やつれてるけど。
◆ なんで今ごろ?と思ったら、5年前の記事の採録だったんだけど。
● それは読んだんじゃない?
◆ これは読んでない。4年前のNickyが載った号は読んだけど、捨てちゃったんだ。私がこれを保存するようになったのは3年前からで。
● 捨てるなよー!
◆ それで、PaulとChadはコレッジでは完全な落ちこぼれだったようだけど、これを読むとRicheyがいかに優等生だったかわかる。とにかく他の学生にも社交生活にもまったくなじめず、ひとり黙々と勉強するだけの生活だったようだけど‥‥

「ぼくが大学に行ったのは勉強するため、学ぶためだ。仕事につきたくなかったから、肉体労働はしたくなかったからだ。だけど、他のほとんどの学生は3年間楽しむために来ていた。ぼくにはこれは許されないことに思えた。大学に入ったとき、ぼくは童貞だったし、酒も一滴も飲まなかった。出るときは酒は覚えたけど、童貞のままだった」

● その酒がなあ、けっこう命取りだったなー。むしろ童貞捨ててやりまくってくれたほうが良かったのに。

「教育を職業と結びつけて考えたことはなかった。歴史の学位を将来何かに役立てようなんて思わなかった。ぼくが興味が持てる科目というだけで十分だった。他の学生は『今日はすごい勉強したぜ。山ほど本を読んで』なんて言ってたけど、ぼくはそういうのは勉強とは思わない。すてきな図書館に行って、一日中本を読んでいるというのは、楽しみであり、特権というだけだ」

◆ なんかこの人、ミュージシャンなんかにならないで、一生大学に残って勉強してたほうが幸せだったかもね。やっぱり向いてなかったとしか。
● 私も学校には向いてないんだがなあ。
◆ そしたら少なくともあんなことにはならなかった。
● でもそうしたらManicsもなかったわけでしょ?
◆ なんというか、人の犠牲のもとで楽しませてもらったようで気が引けるね。

「大多数の学生は大学から追い出されるべきだ。1週間に2コマ以上休んだ学生は除籍にすべきだ。それのどこが悪い? そうでなければ、大学というところは3年間酔っぱらって遊び呆けるだけのところになってしまう。学びに来たんでなければ、さっさとやめるべきだよ」
「大学当局者はもっと厳しくあるべきだ。規律を正すことを恐れるべきじゃない。大学ではすべてが自由だ。学生はなんでも好きなことをして、なんでも好きなものを着れる。やらなきゃならないことといったら、週に10コマの授業に出るだけじゃないか。それがそれほどの重荷かい? 学校へ行ってすばらしい図書館で勉強することもできるし、家に帰って勉強することもできる。勉強さえしてれば、あとはなんでも好きなことができる。それができないやつはとっととやめてしまえ!

◆ えー、なんと言いますか、まこと学生の鑑というか(笑)。
● ところが私はどっちかというと劣等生のほうが好きという矛盾!
◆ 自分がそうだったからでしょ。でも、正直いってこんなのが現実にいたら気持ち悪い(笑)。
● とりあえず、私はこれだけきれいな男の子なら歓迎だけど。
◆ でもこんな人だからこそ、自分を切り刻むしかなかったんだな。
● やっぱり勉強好きの学生なんて不健全よ。こういう人こそ大学でアホになることを学ぶべきだったんだ。
◆ それが結論なの?(笑)
● ところでRicheyの隣にいる、この生物はなんですか?
◆ これはThe FallのMark E Smithよ。
● あー、びっくりした。写真を2枚並べてあるから、もしかしてこれがRicheyの現在の姿かと思って卒倒しそうになったではないか。Richeyも死体みたいに見えたけど、こっちはどう見ても死後3か月はたってる。
◆ もともと宇宙人だったけど、年とったらよりすさまじいものに変貌しつつありますな。

● ちょっと宇宙人の死体で終わらせるのはあんまりよー! ほかにMansunないの? 本紙は?
◆ 本紙は見事に無視を決め込んで、ギグ・ガイドにライブ写真が載ってるだけだな。
● それでも写真だけは載っけるところがいやらしい。
◆ ‘The Chester jesters sail to exercise tracks from their latest“Six”album’というキャプションもイヤミたらたらでむかつく! 何が「道化者」だよ! 何が「練習」だよ!
● ほんと嫌われてるわね。でもこの写真のPaul! ちょうど前髪を手で払いあげたところなんだけど、初めて見るPaulのおでこ!
◆ 初めてじゃないでしょ。「Midge Ure時代」はオールバックだったじゃないか。
● うーん、おでこもかわいいけど、やっぱり前髪はたらしておいてほしいな。それとハゲないでほしいな。
◆ あとはSelectだけど、こっちも見事に無視。やっぱり出たじゃないか。なくなったとか嘘言いやがって。
● Mansun載せない雑誌なんかつぶれてしまえ!
◆ でもManicsが表紙なんだもん。写真もきれいよ。
● 今さらManicsなんかきれいに撮ったってしょうがないじゃないか。
◆ ひどい言い方。でもまるで申し合わせたかのように、こっちもライブ・デイトのところにはMansunの写真が載ってる。
● ふん! そんなんでごまかされるか。あとはMMに期待だな。というわけで、このあともまだまだ続く。