Mansun日記第14章 (1998年7月)

MANSUN BOOTLEGS REVIEW

MANSUN / ASTORIA, LONDON 1997

(bootleg video)

● Mansun、Mansun、Mansun見たいよー! 聴きたいよー! 行きたいよー! Mansun!!
◆ うるさい! 子供みたいにぎゃーぎゃー騒ぐな。
● だってMansunが見れないなんてー! 見なきゃ死ぬー! ぎゃー!!
★ チケット取れなかった日からずーっとこれなんだよね。
▲ というわけで、やむなくエアーズとポップビートへ行って、ブートレッグ買ってきました。
★ 「やむなく」って‥‥
◆ というか、意識したわけですらない。勝手に足が店へ向かって、はっと気がついたときにはMansunの最新ブートレッグを手にしているところがこわい。
● そんなんじゃやだー! ほんとのMansun見たい! 生きたPaulでなくっちゃいやー!
▲ いいよ。だったら●は外してみんなで見るから。
● だって、ブートなんてバンドは豆粒みたいで、ボヤボヤで、カメラがグラグラして、意味もなく天井撮してたり、時々人が視界を遮ったりするんだもーん!
★ もうオーディエンス・ショットのブートは買わないとか言ってたのに。
◆ だってそれしかないんだからしょうがないだろ。
▲ Mansunのライブは2本入っていたのだが、これはAstoriaでの1997年10月14日のライブ。もう1本はKilburn Nationalのだったんだけど、試聴したらこっちの方が画面が明るくて、Paulがはっきり見えたのでこっちにした。
◆ Kilburnはバルコニー遠いからね。どっちもアングルから言って、バルコニーから撮ってるでしょ。
● だから日本なら手の届く距離で見れるのに! そんな豆粒みたいな‥‥
◆ とにかく見よう。
● ‥‥Paulなんて‥‥(ビデオが始まるやいなや、黙ってモニタの前にぴたりと座り込む)
★ なんなんですか、この人は?
▲ おーっ! いきなり“Everyone Must Win”で幕開け! すげえ!
● これ、生で見たかったよー!
◆ Stoveはいきなり最初から裸じゃないか? 儲け儲け。
▲ この人、きれいな体してるねえ。あまり筋肉のついてない、なめらかな体つきで。
● それよりPaulが脱ぐのが見たいよー! だいたいこんなちっぽけな‥‥
◆ 待て待て、今アップになるから。
● ‥‥ボケボケの画面じゃ‥‥(声が変わる)‥‥かわいい!
★ やっぱりルックス的には今がいちばんね。
◆ お洋服は最近いつでも着ているアーミー・シャツ。
● この人もほんと服持ってないね。
★ Paulがギター持たずにマイクの前に立ってるの見るのも初めてじゃない?
▲ ギターがないと手持ちぶさたそうだ。
★ この困ったような様子がMary Chainに似てる。
◆ なんかむずむずした感じで、踊りそうで踊らないのな。続けて“Stripper Vicar”。ここからギターを持つ。
● ああ、かわいいかわいい。かわいいからもっと近くで見たい。カメラもっと寄れ!
★ それは無理だって。
▲ おや、Stoveは右肩に刺青が入ってる。
◆ そういや、刺青したって記事で読んだな。
▲ なんの柄?
◆ マペットだって。
★ こいつら、見かけによらずかわいいものが好きだなあ。
● Paulは? Paulは?
▲ わかんないよ。この人脱がないんだもん。
★ このビデオの裏の写真が唯一のヌードですな。NMEに載った写真で、上半身裸の背に‘VICAR’と書いてある。
◆ あ、ああー!
▲ Peter Greenawayの『枕草子』を思い出して悶絶しているな。
◆ これはやっぱりSuedeへのオマージュに違いない。
● 細いよなー、やっぱり。それに色白いなー。
★ でも小さくて細いなりに、ムチムチした肉質のしっかり身の詰まった体。この体型は私好み。
◆ それもBrettみたい。
● Brettはもっとゴツゴツして筋肉質だよ。こっちのほうがやわらかそう。
◆ あー、今度は“Mansun's Only Love Song”だ! 好きな曲ばっかり!
▲ だってMansunの曲で好きじゃないのなんてないんだもん(笑)。
● ぎゃ、Paulがしゃべった!
★ 日本じゃ、曲目紹介もすべてChadがやって、Paulは一言も口きかなかったのに。
▲ なんで本国じゃよそでやらないことをやるの?!
◆ いい声だよなあ。低音の美声で。
● うっとり‥‥

(しばらくビデオに見とれる)

◆ なんか言いなさいよ。
● だって、ほとんど私が見たままだから、もう今さら‥‥
▲ ブートレッグにしちゃけっこうきれいじゃない。音はひどいけど。
◆ だからちゃんと試聴して確かめて買ってるのだ。CDも買ったから音はCDの方で聴けばいい。
▲ 音はKilburnのほうが良かった。だけどあっちは真っ暗で、ほとんどシルエットでしか見えないのよね。
● これも暗いよー。明るい光の中で見たい。
◆ ステージが暗いんだからしょうがない。だったら昼間の野外コンサートのやつを買わなくちゃ。Glastonburyのビデオ出ないかな。
● それより生で見たいよー。
★ しっかし、いつもながら硬い仏頂面だねえ。
● Mary Chainのファンが何を言うか。終始直立不動で、自分の靴見つめながら歌う人よりましじゃないか。Paulはまだしゃべるし、けっこう動くし、アクションはちゃんと決めるし。
▲ 歌うときは悲痛な表情するし。あの苦悶の表情がいいわー。
★ そのアクションはいかが?
▲ かっこいい!
● これもManicsのファンが言っても説得力ないな。
▲ Manicsのアクションのどこが悪い!!
★ いっしょけんめなのはわかるけど、無理してる感じがするところがよく似てる。
● エンターテイナーではまったくないんだよね。でも「ロックバンドはかくあるべし」という理想を追求して、一歩も譲らないところがManicsそっくりだ。
◆ Mary Chainはそこのところはまったく放棄してるもんな。
★ 彼らだって理想主義者だけど、できないもんはできないんだい。
● もうなんでもいいわ。これだけ才能あってかわいければ。
▲ こう言っちゃなんだけど、Paulって実物より写真で見る方が見栄えがすると思わない?
◆ 生で見てもかわいかったです!
▲ それはそうだけどさ、Mansunの写真、特にライブのPaulってむちゃくちゃハンサムでかっこよく見えない?
★ それは私も感じてた。ライブ・フォトって撮りようにもよるんだけど、けっこう恥ずかしい写真ってあるよね。無我夢中でポーズ取るどころじゃないからだろうけど。だけど、この人はそれが1枚もない。変に決まってる。
● だってお顔がきれいなんですもの!
▲ それだけじゃないでしょ。Paulは音楽に命賭けてるだけで、ポーズなんか取らないんだけど。Neil Codlingと違って。
◆ Neilのあれはポーズじゃないし、顔だけのメンバーじゃない! だいたいNeilのライブ・フォトってマヌケに写ってるのがけっこうある。本物はあんなにきれいで賢そうなのに。
▲ やはりPaulが音楽にかける真摯な情熱が写真にもあふれ出るからじゃないか?
★ これまで見た中でステージでいちばんかっこよかった人って誰だろう?
▲ Joe Strummer以外いるかい!
◆ Mike Edwards!
● Roddy Frame! これは譲らないわよ。
★ みんな背高くて、むちゃくちゃスタイルいいのに加えてあの美貌。それにくらべ、お顔はともかく、Paulは小さいし、細いし、身なりも地味だし、無表情だし、決してステージ映えのするタイプじゃないのに。
◆ だから小さくても大物なのよ。
● わー! “K.I. Double S.I.N.G.”だ! これがライブで見られるなんて!
★ 楽しい曲なんだから、もう少し楽しそうに歌えばいいのに。そんな不倶戴天の敵に会ったようなこわい顔じゃなくてさ。
▲ 歌い終えると、ふてくされたようにマイクをポイと放っちゃうし(笑)。
★ ぺっとつば吐くし。お行儀わるーい!
◆ 普通なら、こういう態度はよっぽど機嫌の悪い証拠なのだが、この人はこれがふだんの姿だからなあ。
● でも、いやな感じを与えないでしょう。かわいいから。
★ 無愛想ではReid兄弟に勝る者はいないと思ってたけど、この人はそれより上手かもしれない。
▲ Rick Witterも相当なもんでしたよ。
★ でもMary Chainはシャイだからとか、Rickは神経質だからとか、だいたい想像がつくじゃない。それがこの人は何考えてるんだかさっぱり見えない。というのも、本当に無表情だから。
◆ でも歌ってるときはまだ表情があるよ。歌い終わったあとの完全にブランクな、仮面のような顔じゃなくて。
▲ ただし、苦しげに顔を引きつらせるか、こわい顔でにらみつけるかのどっちか(笑)。
● もう何をしてもかわいい! かわいいからいいのよ。
★ ほんとにもうなんでもよくなってる(笑)。しかしなんだねー、Take Thatみたいにブリブリにかわいぶる人も確かにかわいかったけど、ぶるどころかここまで徹底的な愛嬌なしで、これだけかわいいっていうのも‥‥
● 天性の素質だわね。
▲ 単なる惚れた弱みじゃないか?

★ しかし、せっかくのライブなのに、音楽評はやらないでいいの?
◆ それは次のCDでやる。
★ オーディエンス評とかは?
▲ ワヤクチャに盛り上がってますな。さすが。
● 私もあの中にいたかった!
▲ でも、ボディ・サーフィンはしてるけど、ステージ・ダイブする人がいないね。
◆ それはステージ前にどでかいガードマンが4、5人陣取って、上ろうとするやつは片っ端からつまみ上げて、フロアに投げ返してるから。
▲ すごい警備体制じゃないか。
◆ それだけ人気も過熱してるってことでしょ。
★ ふーん? やっぱり近くには寄ってほしくないタイプなのかな?
◆ 音楽に専念したいだけよ。
● しかしこういうところのガードマンって、よくまあプロレスラーみたいなのこれだけ揃えてるな。
★ でもポニーテールのお兄さんなんて、ずっと踊ってるし、こぶしを突き上げて観客あおるし、まるでバンドのお囃子部隊みたい。

★ でも愛想がないのは事実だね。何かもうひとつ色気がほしい。
◆ 色気というと、PaulとChadがいやらしいことするとか?
● あんたはそれしか考えられないの!
★ 何もそういうんでなくてもさ、ライブってのはやっぱり何かむだな遊びがほしいんだよ。
▲ これだけの演奏してまだ不足なの!
★ いや、視覚的に。
● Paulがいるだけで十分じゃない。
★ でも4人とも演奏だけで手一杯って感じじゃない。なんのためにいるのかわからないメンバーというのも、ライブじゃなかなか楽しいということは、BezやNeilを見てればわかるじゃない。
◆ NeilはBezじゃない! しかし今ひとつ乱れ足りないという気はするな。これでPaulが乱れてくれれば、私は何も言うことはないのだが。《とかなんとか言ってたがー‥‥この1年後には‥‥》
▲ 乱れるどころか、クールそのもので。
● あ、ほらやってるじゃない! “Take It Easy Chicken”の間奏部でPaulが寝転がってギターを弾いたりして。
◆ おお! やれ! やってしまえ!
● あれ、どっか行っちゃった、と思ったら、ステージから下りて観客に愛嬌ふりまいてるじゃないか! こんなのも日本じゃやらなかった!
▲ 愛嬌っていうか、ふりまいてるのはペットボトルの水だよ。客に水ぶっかけてるだけじゃないか?
★ それもあの無表情でだから、まるで観客を追っぱらってるように見える(笑)。
◆ どうやらこれが終曲らしいな。手をぴんと後ろにのばして、ペコリと頭を下げる大げさなおじぎがかわいい。
▲ しかもあのむっとしたような仏頂面で(笑)。
◆ 礼儀正しいんだかなんだかわからない(笑)。
● あー、終わっちゃった! アンコールはないの?!
◆ えー、そんなはずはないが。日本でもそうだったっけ?
▲ 覚えてない。
● わーん、やっぱり不満だよー! もっと見たいよー!
★ それよりちゃんとしたオフィシャル・ライブ出してほしいな。
◆ Paulによるとビデオは撮ってるんだそうで、いずれは出す予定もあるってさ。
● いずれなんて待てない! いま見たいー! 本物見たいー! それよりあれ1匹ほしい!!
★ あれってPaulのこと?(苦笑)
● ほしい! くれー!!
◆ 無理なことを(笑)。

MANSUN / HE MAKES ME BLEED

◆ 続いては、MansunのブートレッグCD。これはポップビートで買った。
● ポップビートってどこ?
▲ ほら、西新宿のビデオ・マーケットの下。
★ あれはナツメロ専門店かと思ってた。
◆ 確かに西新宿のブートレッグ街はZepとかStonesとかのオールディーズが多いんだけど、ここはエアーズの姉妹店だから新しいものがあるだろうと思って行ったらやっぱりあった。
▲ 私、インターネットでブートを売ってるところ捜したんだけど、どこにもないんだよね。少なくともサーチには引っかからない。やっぱり違法だからだろうか?
◆ インターネットなんかより西新宿で捜したほうが早いって。ここは世界的に有名なブートレッグのメッカなんだから。
★ これっていくらぐらいするの?
◆ 2800円。まあ妥当な値段でしょ? この円安で正規の輸入盤も、ものによっては2300円ぐらいするからね。
◆ ビデオが3500円くらいね。店が多いせいか、ブートレッグ価格も安定してきて、だいたい正規品と変わらない値段で買えるようになった。それにブートはめいっぱい入ってるから(これもトータル・タイムが73分)、むしろ正規品よりお得なくらい。
▲ でもブートレッグというのはアーティストの権利を‥‥
● だからいつも言うように、出さないから悪い。
◆ ライブ・テープも録ってるそうだよ。でもアルバムとして出すつもりはないって。シングルのB面とかに入れていくつもりだって。
▲ どうして最近の人はライブ・レコードを出さないのかねえ。
● そういう態度だからブートレッグが蔓延するのだ。

◆ そこでこれは、最も新しい(といっても、ポップビートにはこれ1枚しか入ってなかったのだが)Mansunのブートレッグ。インターネットで調べたら、Mansunのブートは1997年に“Desperate Icons”というのが出ているのだが、これは本当に新しいらしくて、どこにも何も書いてなかった。
● しかし、何も考えてないタイトルだなあ。レーベル名もだけど。
▲ いいじゃない!
★ 血ならなんでもいいと思ってるな。
● スリーブのPaulもかわいいわー。
◆ この写真はもう持ってるもんね。そうだ、あとで私のMansunフォト・アーカイブ見よう。とりあえずこれは3つのギグのコンピレーション。いちばん新しいのが1998年3月28日のNew Castleのものでこれが9曲、それから1997年10月13日のはlive sessionsと書いてあるから、ラジオかもしれない。これが3曲。それに1997年5月24日のManchesterのギグから4曲の計16曲。
▲ (インターネットを調べて)最後のやつはManicsのサポートをやったときので、Radio 1で放送されたものだ。
★ やっぱりラジオからの録音なんだろうか?
▲ 2番目のもラジオ・セッションだと思うけど、放送年月日が合うやつがないぞ。
◆ とにかくギグにしろ、ラジオ・テレビ出演にしろおびただしくやってるからね。
● soundboard recordingと書いてあるけど、どういうこと?
◆ デジタル録音って意味じゃないか?

◆ とにかく音を聴こう。
▲ ああ、やっぱ音いいわー。私はブートレッグCDってめったに買わないんで知らなかったんだけど、最近のブートって、昔みたいに会場にテレコ持ち込んで盗み録りしたのとは違うのね。
★ ラジオのエアチェックとも思えないよね。
▲ いや、これはやっぱりラジオじゃないかな。デジタル録音ならこれくらいきれいに取れても不思議はない。
◆ だったらテレビもデジタルで録ってくれよ。マスターが画質悪い上に、NTSC変換でぐちゃぐちゃになっちゃうんだから。
● それよりいつも言うように、誰かBBCに忍び込んでマスター・テープ盗んできてほしい。
★ でもほんとに、これなら正規のライブ・アルバムと変わらないね。
▲ やっぱりこれってアーティストの権利侵害だと思うな。
● とか言いつつ、ManicsやSuedeのもほしいと思ってるでしょ。
▲ 私は‥‥いらない。聴けばつらいし。
◆ 私も絵のつかないSuedeなんて。
● でもほしいでしょ。
◆ 誘惑するなー!
★ これはさっきのビデオとまるきり同じセットですね。
◆ だから絵はあっちを見て、音はこれを聴くの。

★ それじゃいよいよ音楽評を。
◆ だからMansunの音楽に関しては、完璧という以外言いようがないんで。
★ お言葉ですが、それはライブには当てはまらないと思うな。
▲ なぜ?!
★ だって自分の見たコンサート評でも不満もらしてたじゃない。
◆ それはほれ、ガキが邪魔だとか、PAの真ん前だったとか‥‥
★ でも、本当にすばらしい演奏ならそんなことはどうでもよくなっちゃうはず。Mary Chainなんか生きるか死ぬかの状態だったけど、痛いとか苦しいとかまるで感じる暇なかったもんね。
● 結局Mary Chain自慢がしたいだけか。
★ だってEMFなき今、最高のライブバンドはMary Chainだもの。
◆ Suede。
▲ Manicsと言いたいけど、私は見てないので。
★ ほらね、ライブの力量からいうと、MansunはMary ChainやSuedeにはまだ遠く及ばないわけよ。
◆ だったら何がいけないのよ?
▲ 荒さはあるな。
★ Paulの歌はすごくむらがあって、信じられないほどうまいときもあれば、いきなりフラットするときもあるし。
▲ この人はすごくテクニックも持っているシンガーなのだが、ライブだとそもそも声を出すことがしんどそう。やっぱり体がないせいか、がんばっても途中で力尽きちゃう感じ。
● そこがかわいいんじゃないよー。
◆ だって、あんな低い声の人が、こんな高いキーで歌ってるんだぜ。七色の声も嘘じゃない。“Everyone Must Win”のエンディングの高音のスキャットを聴いてよ。
▲ あれはビデオのほうが声が出ていた。
★ だからムラなんだって。曲のアレンジも異議あり。あの凝ったスタジオ録音を4人だけでやること自体が無理あるんだから、アレンジも大幅に変えてやればいいのに。
▲ だから、ライブじゃストレートなギター・ロックに徹して‥‥
★ でも元々が単純ロックとはかけ離れてるんだから無理があるよ。Chadが弾きまくることによってカバーしようとしているけど、Chadのギター自体、ストレートなギターじゃまったくないし。
● だったらどうしろって言うのよ?
▲ キーボーディスト入れる。
◆ いやそんなものじゃ生ぬるい。オーケストラをステージに上げる。
★ 無理だよー!
◆ Massive AttackやDivine Comedyはやったぞ。
★ それだって毎回じゃないでしょ。私はアクースティックもぜひライブに入れるべきだと思うな。曲の良さと、声の美しさをしみじみ味わえる部分がほしい。
▲ しかしChadのギターに文句は言えまい。
◆ ほんと、この人は本当にうまい。これが素人さんとはとても思えない。
● Paulだってうまいよ。
★ Chadはギター・ヒーローとしてもっと喧伝されてもいいね。
● 今どきのバンドにはめずらしく、Mansunにはけっこうギターソロがあるんだけど、これがもうしびれるようにいいの。
◆ Andieもうまいし、Stoveはまああれでいいし。
● 結局なによ、文句があるのはPaulの歌だけってわけ? この人は偉大なソングライターで、リリシストで、プロデューサーなんだから、おまけにこれだけ歌えるだけでも感心してほしいわ。しかもギター弾きながらだし。
★ それはそうだ。というところで批判はおしまいにしてあとは楽しむことにしよう。
● だったら最初からいちゃもん付けるな!
★ Mansunのリビューというと、「いい、いい」ばっかりでバカみたいなので。いちゃもん付けるとしたらそこくらいしかないんだもん。
◆ 無理に付けなくてもよろしい!
《とかなんとか言ってたがー‥‥この1年後には‥‥》

★ あと、聴いてると胸焼けがしてくる。これはレコードでもそうだけど、濃すぎて。
◆ 悪い?
▲ Mansunはつい全身全霊を傾けて聴いてしまうからな。
◆ だって聞き流せるタイプの音じゃないもの。
● ねえねえ、またさっきのビデオ見返してみたんだけど、演奏内容はあっちの方が断然いいよ。少なくともPaulの歌は。
▲ ほんと?
● うん。ぜんぜんフラットしないし、だいたい声がのびのび出てる。
◆ やっぱり出来不出来はあるもので。
★ そういうむらがあるところがやっぱり若いな。
◆ だってあのBrettだってあるんだぜ。
● ファルセットののびなんて、とてもあんな小さな細い体から出てるとは思えないほど力強いじゃん! やっぱり歌うまいよ!
▲ それより、なんで歌がこんなにはっきり聞こえるの? これ、ポータブル・ビデオで録ってるわけでしょ。会場にいたって、これだけきれいに聞こえなかったよ。
◆ リキッドルームは単にPAに近すぎたというだけじゃなく、ミキシングにも問題あったようだな。
● そうよ。PAに張り付いて見たことは何度もあったけど、だからってよく聞こえないってことはなかったもん。
▲ ほんとだ。やっぱりうまいわ、この人。
● だいたい、Mansunのライブによくも文句なんか言えるわね。どんなに演奏がうまくたって、曲がヘボかったらちっとも楽しくない。こんな夢のようにすばらしい曲を、作曲者自ら演奏してくれるなんて、それだけでも夢みたい。ありがたくて涙が出るー!
▲ それは言えてる。いいよ、やっぱり。Mary Chainのライブみたいな円熟した老練さはないかわり、本当に今がいちばん脂がのりきった、旬のバンドの音がする。
◆ 聴いてるうちに、だんだん頭の芯がしびれてきて、ほかのことはどうでもよくなってきちゃうのよね。Mansunも麻薬だなあ。
● それにこの色っぽさ! 特にPaulのボーカルの。
★ それって本人を前にした生のライブじゃ特に感じなかったのが不思議なくらい。
◆ だってかんじんのボーカルがよく聞き取れなかったんですもの。
▲ 私は感じたよー! 本当にしびれるように色っぽい声をした人だ。
● 本人もよ。Suedeみたいに色気ふりまかなくても、ただ仏頂面でマイクの前に立ってるだけでも、チビりそうに色っぽかったよ。
◆ しかし実際疲れた。やっぱりMansunはいいってことで次のコーナー行きましょう。
★ いいかげーん!