Mansun日記第12章 (1998年6月)

WIDE OPEN SPACE SINGLE REVIEW

● やったー! Mansun来日決定! 9月18日オンエア・イーストで!
▲ でも7月11日の発売日は仕事だから、朝から並べないし。
● 文句なんか言えた義理? うれしいうれしい、うれしいなっと!
◆ というわけで、待望のニュー・シングル“Legacy”も出たので、Mansunのシーン復帰を祝い、セカンド・アルバムを占うシングル・リビューと行ってみよう。
▲ 復帰たって、ずーっとツアーは続けてたし、ヨタ話は続けてるし、インターネットで見てるから、ちっとも離れてた気がしないけど。
● 生は見てない、生は!
◆ それでまずは前座から。日本にはないと言って嘆いていた、“Wide Open Space”のシングルを見つけたので、それから行ってみよう。
▲ 良かった。これはインターネットで注文するつもりだったんだよ。それが1枚たったの350円で手に入っちゃうなんて。《こいつ、それがどれだけラッキーなことか知りもしないくせに!》
H それもレアなCD2まで! これでMansunのシングルはほとんど揃ったことになるな。
● “Stripper Vicar”がない。
◆ あれは向こうでもレア・アイテムになってるんだよ。インターネットで捜したら、あることはあるがバカバカしい値段がついてる。再発の話もあるから、それを待ってるんだ。でも中味は“Japan Only EP”に入ってるし、少なくともB面はこれでほとんど網羅できた。
● 噂のあったB面集はどうなったの?
◆ あれは流れた。でもPaulはいずれ出したい意向らしい。ただ、全曲というんじゃなく、厳選した10曲かそこらにしたいそうで。
● あれを10曲にしぼるなんて無理だよ!
▲ そのため、Mansunのオフィシャル・サイトじゃB面の人気投票やってた。私ももちろん1票を投じておいたけど。なんでも選曲の参考にするんだって。
● 選べなんて無理だよ。ぜんぶいいんだから。
◆ だからやっぱりMansunのシングルはぜんぶ買い集めなきゃならんのだ。

MANSUN / WIDE OPEN SPACE CD1

◆ はい、それじゃ1枚目から。
▲ スリーブは例によって現代アート風。白地に黒と緑の。
● だけどなんだかぱっとしないんだよなあ。紙ジャケにプラスチック・トレイっていう組み合わせも嫌いだし。ここってデザイン誰よ?
◆ Stylorouge。
● Stylorougeってよくないのに。デザイナー変えればいいのに。
◆ せめて素材やデザインを統一してくれればと思うね。統一されてるのはロゴだけでしょ。
▲ でもって中はPennie Smithの写真というのはお約束。この写真はすでにネットからダウンロードして持ってる。
◆ Pennie Smithはすでに専属フォトグラファー化しているけど、いつも言うように、これも合わないんだよねえ。
▲ えー、でもClashは良かったよ。
● だから、これは前から言ってるけど、彼女の硬質なモノクロ写真はClashには合っても、Mansunには似合わないの。こういうブロンドのかわいこちゃんは華麗なカラーで撮ってほしいのに。
▲ これだってかわいいじゃん!

◆ 文句はこれくらいにして、音を聴こう。
● つい文句を言いたくなるのも、音のすばらしさに美術がついていってないと思うからなのよね。
◆ タイトル曲はアルバムと同じだからいいね。B面曲は“Rebel Without A Quilt”“Vision Impaired”“Skin Up Pin Up”の3曲。
▲ 全部初耳! Mansunの未聴曲が聴けるなんてそれだけでも感激。ありがたや、ありがたや。
◆ それじゃまずは“Rebel Without A Quilt”
● 『キルトなき反抗』って何? いつもながら変なタイトル!
◆ 待て待て。そういう時のためにインターネットがあるんだ。そこですでにダウンロードしてある、このシングルの歌詞集を呼び出すと。
▲ べつにキルトはどこにも出てこないねえ。
● じゃあ、なんの歌なの?
▲ レベルの歌としか。
◆ はっきり言って、この人の歌詞は“Stripper Vicar”を除くと、何がなんだかさっぱりわかりません
▲ “Stripper Vicar”だって十分わけがわからないよ。ウェブのQ&Aじゃ、「実はMavisが父親を殺したんじゃないのか?」と訊ねているファンがいたんだけど、Paulは「歌詞については説明したくない。想像に任せる」と答えていた。
● たまに説明すると思うと、でたらめばっかり言うしな。
◆ だから、こういうのは説明したら意味がなくなっちゃうんだってば。それより音を聴きましょう。

(曲流れる)

▲ おおお!
● ああー!
◆ これは‥‥
(全員しばし言葉を失う)
▲ 美しいギターだよなあ‥‥
● 美しい歌だよなあ‥‥
◆ いや、そういった美点はMansunの場合、ほんのおまけにすぎないんだ。この曲そのものの圧倒的な美しさと感動を前にしては。
▲ “Wide Open Space”は“Grey Lantern”アルバムの中でも屈指のお耽美ナンバーだと思うけど、そのA面より良くないか? もしかして?
● ああ、Mansunって久しぶりに聴いたんで、こんなにいいってこと忘れてた。
◆ 毎日聴いてるじゃないの!
● いや、新曲っていうか、聴いたことのない曲はっていう意味。というのも、毎日聴いてるとそれが当たり前に思えてくるじゃない。
▲ 私は聴くたびショックだけど。
● でもこれは久々のショック。
◆ しかもそれがB面!
● これだからMansunはやめられない。歌詞がキチガイでも許す。Paulが絶対笑わなくても許しちゃうんだよなあ。
▲ Mansunはそこがいいんじゃないか。
◆ 感動はさめませんが、とにかくあとが押してるんで、次の“Vision Impaired”行きます。
▲ これは一転してパンクっぽいというか、硬派のMansun。
● そんな言葉じゃ片づけられないわ。だってどんなパンクもこんなにかわいくてポップな、一度聴いたら忘れられないようなメロディ書けない。
◆ 間奏のオルゴールみたいなのもかわいいね。
▲ 後半のギターもむちゃかっこいいし。
● 完璧だ。
◆ そして“Skin Up Pin Up”。これはSci Fi Hi Fiからの彼らのセカンド・シングルだ。
▲ これもワイルドなギターがかっこいいロックンロール。とても自主制作盤とは思えないね。
● もうなんでもいいです(笑)。
◆ ほんと、Mansunのリビューっていうと、「いい、いい」ばっかりでバカみたいだけど、言葉にならないほどいいのよね。
● ああ、もう一度“Rebel Without A Quilt”聴こう。
◆ だめ。あとで聴きなさい。今は時間がないんだから。

MANSUN / WIDE OPEN SPACE CD2

◆ というわけで、次はCD2行きます。
● どうしても言ってしまうんだけど、どうしてペアなのに、デザイン統一しないの?
▲ いちおう絵はいっしょでしょ。
● だけど、同じ紙ケースなのに、どうしてわざわざ違う紙使うの? 1はザラザラ紙だったのに、こっちはツルツル紙で。1はプラ・トレイなのに、こっちは紙のポケットで。
◆ でも中はけっこう凝ってるんだよ。折り畳み式で写真と歌詞がついている。
● でもなんでポケットが2つあるの?
▲ CD1を入れろってことか?《こっちは「ハガキ」が入ってたんだよ》
● だったらあっちのケースは捨てろっての? そういうわけのわからないことしないでほしいんだよね。紙ポケットってすごく出しにくいしさ。盤面にさわらずに出すのがむずかしくて。触らなくても紙に擦れて細かい傷がついちゃうし。《この問題解決のため、私は紙ジャケCDはすべて不織布の袋に入れてます》
◆ 文句はいいから。こちらはやはり3曲のB面曲が入っている。“Gods Of Not Very Much”と、あとは“Moronica”“Lemonade Secret Drinker”のアクースティック・バージョン。
▲ はあ、“Realm Of Not Very Much”というサイト名はここから取ったんだな。名前に反してすごく濃いサイトだけど。
◆ それは曲も同じだ。これはロマンチックでドラマチックなほうのMansun。
▲ “Rebel Without A Quilt”ほどじゃないけど、これも美しいし感動的だな。
● プロダクションもむちゃくちゃ凝ってるし。ほんとにこれがB面なの?!
◆ 「SuedeのB面集は普通のバンドのベスト・アルバムに匹敵する」という言葉があったけど、MansunのB面は1曲でも普通のアルバム1枚に匹敵するな。
▲ アクースティックは?
◆ こちらはPaulの歌とChadのアクースティック1本で、まったく違うMansunの世界を聴かせる。
● 「本当にいい曲はアクースティック1本で演奏できる」という言葉もあったな。もちろんMansunは実演してくれなくても自明だが。
◆ しかも、よくあるバラードみたいなんじゃない、およそアクースティックでできそうもないような曲をわざわざ選んでやるからね。
▲ Mansunならフル・アクースティック・アルバムでもいいよ。