ご覧の通り私は、人名や地名、バンド名などの固有名詞は日本語でも英語のまま書いています。この日本語・英語まじりの文章というのは見た目もスノッブでいやらしいし、すごく読みにくいのは百も承知なんですが、ここでちょっと弁明させてください。
「マンサン」や「ポール・ドレイパー」はまだいいんだよね。だけど私はどうしても「オアシス」とは書けない。だって口ではOasisと言ってるものを、なんで書くときだけ「オアシス」にしなきゃならないんだー! かといって、これを「オウェイシス」と表記したら、それこそキザったらしくて見ちゃおれないし。
でもOasisをオアシスとしか知らない人は、なんでトリビュート・バンドがNo
Way Sisなのかわからないだろうな。(「ノーウェイシス」でNo Oasis 「Oasisじゃないよ」になるわけ)
まあ、オアシスは外来語として定着してるからというんならまだ納得が行く。だけどそれならなんで「スウェード」なわけ? 「スエード」でいいじゃない。原音重視なら「スウェイド」だし。だいたい日本語で「スウェード」なんて言う人いるのか?
それを言ったらRadioheadもそう。日本語なんだから「ラジオヘッド」でいいじゃない。私はてっきり日本じゃそう読むんだと思ってて、人に言って恥かいた。それも「レイディオヘッド」じゃなくて、「レディオヘッド」と変になまるところがまた気持ちが悪い。
でもバンド名は一般名詞が多いからまだいい。最悪なのは人名で、これになるともうむちゃくちゃ。「カート・コバーン」って誰?? そんな人はいないのよ。つづりからいっても、耳で聞いても、はっきり「カート・コベイン」なのに、どこでこんなになまっちゃったんだろ? たしかに昔ジェームズ・コバーンという人はいたけれど、つづりはぜんぜん違ったはず。私は朝日新聞で「カート・コバーン」の死亡記事を読んだとき、最初どこの誰かわかりませんでした。
これがただでさえ発音が難しいケルト系(スコットランド人やアイルランド人)の名前になるともう壮絶で、もういちいち例をあげるのもしんどいからやめるけど、Sinead O'Connorがシンニードになるのはやっぱり「死ね」というのはまずいからだろうか? (本当は「シネアド」と読む。ちゃんとアクセント記号がついてるでしょ)
なんか頭が混乱するー! 日本語でしゃべるときと、英語でしゃべるときと、書くときの表記をいちいち使い分けなきゃならないというのは、ものすごく面倒なのだ。
なんでこういうことが起こるのかというと、バンド関係の日本語表記はレコード会社の担当ディレクターがひねり出すのだが、この人々がまったく英語を知らないからである。それは日本語のライナーやら訳詞やら、下手すると日本語タイトルもめっちゃくちゃなのを見てもわかる。少なくともみんな大学は出てるはずなんですがねえ。
そんなわけで多少なりと英語がわかる者としては、どうしても慣例表記は使えない。かといって、私だけ自分流の表記をしたんでは、他の日本人に通じない。だいたい私は最近、まったく日本の雑誌を読まないので(Mansunの載ったものだけは買ってはいるけど、それは写真をスクラップするためで、読み物は英国誌とインターネットだけで手いっぱいなので)、いちいち表記を確認するのもめんどくさいし。
そこでやむなく折衷案として、固有名詞だけは英語のままにするという方式をとったわけです。ただ、いくら私でも国名まで英語表記するほどのスノッブじゃないので、アメリカ、イギリスはそのまんまです。でもウェールズは決してWalesとは書かない。だってあれは国名だから、という程度のスノッブではあるんだけど。
実はこの日記の原型はもっとひどかった。ワープロ以前、手書きだったころはほとんどが英語・ひらがな・カタカナまじりの文章で、本人以外には日本人にも外国人にも解読不能なしろものだったんだから。というのも、私は大量の文章をものすごい勢いで書く人なので、スピード効率からいって、手書きだと漢字ってめんどくさいからなのだ。幸い、この問題はワープロになって解決したものの、それでも英語が大量に残っていたのを、アップロードするにあたって、固有名詞以外の英語はすべて日本語に直しました。
それでもなお外来語の日本語表記に関しては、ある種のこだわりは残っていて、もうお気づきかもしれませんが、私は批評のことは「リビュー」と書いてます。なんでかというと、私はこの言葉が日本で一般的に使われるようになる何十年も前から(単に「批評」より画数が少ないので)リビューという言葉を使っていて、どうしても今さらわざわざなまった表記を使うことができないから。だいたい「レビュー」じゃ、宝塚か「日劇夏の踊り」みたいじゃない。それにしてもなんで「レ」なんだよー! だったらリバイバルは「レバイバル」か? リストラは「レストラ」か?
「オルタナティブ」なんかもつっぱり通した言葉で、これもちょっと前までは、日本じゃ「アルターネイティブ」と書かれてたんだよね。やっと最近直ってきたからいいけど。
怒りついでにいちゃもんをつけてしまうと、「インディーズ」というのもすごく気持ちが悪い言葉。なぜか日本じゃ、単数でも(単数を用いるべき)形容詞形でも、必ずインディーズと言う。インディーでいいじゃない! そもそも英国じゃ、indieはもうほとんど集合名詞として、複数でも単数形で使っている。日本語じゃ単複の区別をしないので、複数であるべきところでもたいていは単数で呼ばれるのに、なんでこれだけこうなったのか? やっぱりどこかのバカなディレクターか評論家のせいだな。
まあ、あまり原音重視をうるさく言ってると、それこそ「マクドナルド」を「マッダーナズ」と書かなくてはならなくなっちゃうし、Smithsみたいに日本語じゃ絶対に表記不可能な名前(それにしても「スミス」じゃなくて、やっぱり「スミズ」だと思いますがね)もあるので、やっぱり原語で書くほかないわけで、どうか勘弁してください。
しかし、やっぱり「マンサン」じゃ、Mansunのこと言ってるような気がしない。と思うのは私だけだろうか?