august.2004


art of fighting_second storey / trifekta / cd
更に研ぎ澄まされた無駄のない静謐なバンド・アンサンブル、深みを増した清らかな歌声、純度を高めたメロディー。そのすべてが奇跡のように合わさって浮かび上がってくる。演奏あっての歌。逆もまた然り。こういうのを心が洗われる音楽っていうのだろう。前作以上に愛聴盤となりそうなart of fightingの第2章、そのページには偽りのないありのままの心情が淡々と綴られている。


bark psychosis_codename:dustsucker / fire / lp
90年代初頭に活動していた、UKポスト・ロックの礎を築いたバンドのひとつ、bark psychosisが10年ぶりに新作をリリース。多彩な音色の楽器で風景をグレーに塗り込めたセンチメンタルなサウンド・プロダクションが素晴らしく、4adレーベルや一部のシューゲイザーともリンクするゴシックな趣き。piano magicは明らかに影響を受けているであろう、とどこかで読んだのだけど、納得です。


battles_b ep / dim mak / 12"

ジャンル分け不要、最強のインスト・バンドの3枚目となるシングル。魑魅魍魎としたジャングルを怒涛に猛進するソルジャーのような佇まい。短銃じゃなくてショットガンとかでまとめて敵を蹴散らすような。いつになったらアルバムはリリースされるのかヤキモキしっぱなしですが、『ポスト』の先の先へ。いまだ瞬間最大風速を更新中。



epic 45_against the pull of autumn / where are my / cd

琴線に触れるフレーズやメロディー。胸を掻き毟られる音の連なり。そんなインストやヴォーカル入りトラックがバランスよく配置されていて、バンドの成長が手に取るように伝わる好内容。 公式なアナウンスによると春先にリリースされた「slides」が3rdで、本作が2ndとのこと。


marianas_onward+upward / elastic heart / cd

海外のメディアでnotwistやfour tetが引き合いに出されていて気になった、ネブラスカ州リンカーンで活動するスリーピース・バンド。勝手に膨らませていた想像とは違い、スロウコア寄りの地味なポスト・ロックでしたが、これがなかなか良いです。渋めのヴォーカルといい、かなりの枯れ系。


music am_a heart&two stars / quatermass / lp

to rococo rotのstefan schneider、tontraegerのvolker bertelmann、そしてmogwaiやsputniks downにゲスト参加しているluke sutherlandによるインディトロニック・ポップ・トリオの1stアルバム。シンセやローズ、プログラミングの柔らかな音色が、lukeのムーディーかつアダルトな歌声と相まって、気品ある極上の室内音楽を奏でることに成功しています。気分だけでも贅沢を!と、もっぱら休日の午後の転寝に。


junior boys_last exit / kin / 2lp

fennezやmanitobaがリミックスした2枚のシングルは引っかかったのだけど、さてアルバムはどうだろう。kings of convenienceのerland oyeのソロに近い、ネオ・アコースティック・ダンスな仕上がり。悪い意味でどこから聴いても金太郎飴状態、一本調子なサウンド・パターンで1枚聴きとおすにはしんどかった。曲単位では光るモノがあるんだけど。


nisei_more light / bcore / cd

スペインのおそらくはバルセロナのバンド。硬派な質感の歪んだギターサウンドと気だるい歌いまわしは悪くないんだけど、もろjune of 44な雰囲気でちと面白みに欠けるかな。


adem_homesongs / domino /lp

ご存知、fridgeのメンバーであるademのソロ。fridgeの作品からは遠い地平から奏でられるフォーク集で、kieran hebdenがミックスを担当。かすかにエレクトロニクスを導入しているものの、生楽器のアコースティックが主体。枯れた歌声といい、爪弾かれるギターといい、ちょっと意外な側面。


windsor for the derby_we fight til death / secretly canadian / lp
aestheticsからsecretly canadianへレーベルを移っても、基本ラインは変わらないwindsor for the derbyの6thアルバム。ほんのりニューウェイヴな空気感を持ち込む冒険心を本作では覗かせているけれど、歌心に滲み出す哀愁はさすが。巷のニューウェイヴ・リバイバルにおいて表層をなぞっているだけのバンドも少ないないだけに、すごく新鮮な解釈。聴けば聴くほど味わい深いスルメ盤です。


sufjan stevens_michigan / asthmatic kitty / 2lp
2ndが今春リリースされましたが、本作は2003年にリリースされた彼の1stアルバムにアウトテイクを付け加えヴァイナル盤で再発されたもの。タイトルどおりミシガンをテーマにした内容で、歌詞に目を向けると搾取された労働者などが見受けれられるし、政治にコミットしているシンガーなのでしょうか。癖のない伸びやかなソングライティングとメロディー、その点はかなり好み。


elf power_walking with the beggar boys / orange twin / lp
近作ではdave fridmannをプロデューサーに迎えたりとサイケデリック・ポップに深く足を踏み入れていた彼らだけど、レーベルを移籍しての新作は胸が空くよな直球ど真ん中のアメリカン・インディーポップ!そしてゲストにはvic chesnuttがヴォーカル参加!なわけで曲のそこかしこに土臭いアメリカの大地の匂いが。elf powerはもちろんのこと、apples in stereoやof montreal、call&responseなどなど...、エレファント6バブルがはじけて久しいけれど、それでもなおサヴァイヴしているバンドの存在は心底頼もしいです。