ライヴを観ても音源を聴いてもやる気があるのかないのかさっぱり分からない。
でもその感じがとても心地よい。
得てしてプログレとかサイケとかになると知識や技術の競い合いということになったりしてヒジョーに押しつけがましい場合が多い。
がしかしこのバンドはいい意味でそれを感じさせない。
本来の意味で言うところの「適当」という言葉がピッタリだっ。聴く側にたっぷりスキを与えてくれる。
だからつい仲間に入りたくなってしまったり、もしくは自分を勝手に入り込ませたり出来るのだ。
僕はそんなバンドが大好きだ。とはいえもう少し上手いといいよね。
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川村恭子
ラボ・リボルバーは最初、同級生同士で作ったバンドだったんだそうだ。
その第一期ラボは知らないのだけれども、HPをあけるとウニュ〜って音楽が飛び出してきたりして、なんだーと思っていたのだった。ピンク・フロイド好きなのか?と聞いたらほかの人にも「聞けば」って言われたと言うので、驚いたのだ。知らずにあの頃のラボを聴いたら多分、「あー、この人たちフロイド好き?」と思うに違いない。
知り合った頃はもうそのラボではなくなっていて、ボーカル不在のためにいろんなボーカリストがゲストだった。運がいいことに、私は大阪でボノボの蔡くんの入ったサイラボを見たのだった。これはすこぶる気持ちよかった。低音をきっちり押さえたグルーブと蔡くんの声の高さがまじりあって、くらくらするような音楽だった。それまでに聞かせてもらったライヴ音源やデモをさらに進化させて、なんだか新しい扉を開けたような気がした。
でもまたまたメンバーが抜けたりして、どうなるんだろうと心配していたら、そんなこっちの思惑は小さな親切大きなお世話で、ま、あれですね、大きくジャンプする直前は少し下がって助走つける、みたいなもんですかね。そんな感じで扉あけるどころか、門、飛び越していきやがった。
最近高円寺で見たライヴでは、まったく新しいスタイルで新しい音楽だったのだ。いや、手法や奏法がこれまでなかったか、といえば50年のロックの歴史の中にはあったのだ。ところが彼らがやったときに新鮮に映ったし、聞こえたのだから、これはもう自分たちの新しい血や肉になったものだ。
あまたあるロック・バンドの中で彼らのことが好きなのは、どの時期を通しても大きなグルーブをずっと維持しているところだ。そして何より、これはたぶんマツによるところが大きいのだろうけれども、そのポップ・センスなのだ。変拍子あり、凝ったアレンジあり。でも耳にその音色やメロディや何かが残っていく。
伝わるものがある。そこが彼らの新しさの由縁だと思っている。どこかキュートなのだ。
高円寺で聞いたときは、音が小さくて、それがとても良かった。すみずみまで行き渡って聞こえた。
爆音で驚かしてごまかすんではなくて、音や構成や曲やリズムでちゃんと勝負している。
けっこうな自信がないと、実はこれはできない。
なんだか嬉しくなってしまうのだ。よくがんばったなあ、よく続けたなあ。そのふんばりが見事に新しくて、ラボ以外にはない音楽にと育っている。まだ、長い球根生活から芽を出したばかりだけれど、これからどういう葉が茂って、どんな花を開かせるんだろう。ほんとうに楽しみにしているんだ。
2004年 薫風 かわむらきょうこ