14. 堕落への道
しかしである。やはり一度彼に大恥じをかかせているので、今度ばかりは慎重にことを進めないとまずいのである。ここで万が一失敗したりしたら、期待に胸むくらませている級友たちに申し訳ないし、なにより自分たちの手腕のなさに絶望して首をくくりたくなってしまうだろう。それだけは避けたい。そこで私達は数々の有益な情報を集め、最終的に荒川花火大会に彼を招待することを決定した。
まず私達は、南砂へ下見に行った。
私 「なんかずいぶんと見晴らしがいいねぇ」
星也 「つーかジャスコでかいな。待ち合わせの場所ジャスコでいいんじゃないの?」
私 「おー、とりあえず第一候補な。つってもこんなでかいんだぜ、もっと場所限定させなきゃ」
星也 「じゃああそこでいいよ。あのケンタッキーの前」
私「おぉ、いいねぇ。 あっ、バーミヤンもあるじゃん!あそこでご飯食べながら彼の堕ちていく様を見届けようじゃないか」
星也「それサイコーだわ」
かくして、周辺地域の情報をくまなく網羅した私達は次の段階であるメールの作成に着手することになった。
【高橋君、この前のメール、すっごいうれしかったよ☆このあいだのことは全部あたしのせいなのに、変な気持ちにさせちゃって本当にごめんなさい。それで、おわびといってはなんですけど、今度荒川で花火大会があるみたいなんです。あたし、その日部活の合宿の最終日で少し遅れるかもしれないんですけど、今度こそ一緒にいきませんか??】
割と簡単にできた。高橋君はすぐにOKしてくれた。まるで学習能力がない。サル以下である。
簡単に会う約束ができたので、時間的にも余裕ができたため、何人かの友達をこの催しに参加させることとした (もともとその予定であったが)。片っ端から声をかけたところ、数人の男子と数人の女子が快くOKしたのだ。その時の彼らのさわやかっぷりといったら筆舌に尽くしがたいものがあった。
そして当日。集合時間は七時半であったので、私達は七時前にバーミヤンに集合した。とりあえず私は窓際の一番いい席に座り、五目やきそばを注文したあと、彼の出現を今か今かと待ち続けた。
私 「星也、今何時?」
星也 「あと10分で七時半だよ」
A君 「あのさ、もし高橋君が来たら (まぁ来るんだけど)どうするの?もしかしてただ見て待ってるだけ?」
私 「えーと、作戦としては、愛川さんは夏季合宿を理由に花火大会が終了する時刻の八時半に【着いたよ!!】ってメールする。そしたらまぁ彼は挙動不審になりますな。とりあえずそれを見て楽しむのが第一段階。で、その後彼からどんなメールが来てもとりあえず無視。『花火大会の法則』ってやつ。その後はあんまし考えてないんだけど、多分なんか起こるんじゃないかな?」
Bさん 「じゃあ高橋君がなにかしないとウロウロしてる高橋君を見てるだけなの?」
私 「そういうことになるね。けど俺は彼がなにかやってくれるっていう自信はあるよ。その点でヤツは逸材といえるよ。とりあえず今は高橋君が来るのを待って飯を食おう」
その時である。
星也 「…おい、あれ!」
来た。 15へ続く
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