13.最後の晩餐
私と星也はマクドナルドにいた。私はなんとかセットとかいうのを頼み、星也はハンバーガーと水を頼んだ。以前星也は、水をおかわりする時のマナーがあまりよろしくなかったとかで、マックのブラックリストに載ったことがあるという武勇伝がある。そんな星也と一緒にマックに行くのは危険極まりないので、私は毎回500円近くするなんとかセットを頼まなければならないのだ。私はなんとなく星也に話しかけた。
「星也さー、暇でしょ」
「あたり前だろ」 星也はいまさらなにを、という口調で答えた。
「じゃあさ、今度横浜行こうよ。自転車で」
ちなみに私の家からだと鬼のような距離である。常人なら断わるのが当たり前である。
「いいよ」
これが星也である。
セットを平らげたあと、私と星也は本題に入った。
「結局あの手紙はかなりの収穫だったけどさ、なんか弱いよね。花火大会っていう催しをうまく活用できてないっていうかさ。けどさ、あの手紙の内容見ればもう一回ぐらいは誘っても大丈夫だと思うんよ。でさ、花火大会っていったら人が多いってのが醍醐味でしょ。だから次は俺たちだけじゃなくて他の奴も大勢誘って、奴の最後を暖かく寒い目で見守ってあげようっていう作戦でいこう。隅田川は終わっちゃったけど、江戸川辺りでやるらしいからそれに誘おう。 えっ?愛川さんは千葉出身なのになんで知ってるかって?そりゃあお前、こないだ行けなかったんだから、せめてもの償いとして一生懸命リサーチしてきたんだよ、彼女は。高橋君もこれに気付けば、『ああ、俺のためにそこまでやってくれてるのか・・・!うれしいぜまったくよぉ!!』とかって有頂天になること請け合いじゃないか。それで鼻歌唄いながら部活とかにくるんだぜ。で、『なんかうれしいことあったの?』って俺が聞くんだよ。
そしたらあいつのことだから、『え?そんな風に見える?(←本当にうれしそうな顔で喋るのがポイント)俺は別になんでもねぇよ。まあお前も幸せになってくれ!(←いい人をアピール)』とかって言うんだよ。そしたら俺120%吹き出すね。
まあ段取りとしては、この間はごめんなさい、あのメールすっごくうれしかったよ、って感じかな。はっきりいって適当にやって大丈夫だね。あいつたぶん文才ないよ。国語のノートに『くにをかたる』とか書いてあったし。あ、でも彼絵はうまいんだよね。机にでかでかとスパイダーマンの絵が書いてあってさ、なかなか上手なんだよ。けどテスト前になって小沢(仮名・教師)に全部消されたんだよね。あれには笑ったよ。あ、ごめん、話もどすよ。とりあえず、江戸川の花火大会に行きましょう!ってハイテンションでいこう。聞いた話だと7時半にはもう始まってるらしいから、その時間に集合ってことで。けどそれだけじゃつまんないから、愛川さんは部活の関係でちょっと遅れるっていう設定にしよう。うーんと、確か花火が終わるのが8時半だったと思うから、8時40分に【今着いたよ!】って連絡するとおもしろいかもしれないなぁ。けどなかなか現れない愛川さんに対して不安と疑問を抱きながらウロウロしている高橋君をもて遊ぶって感じだね。これだけやれば俺はもう本望だよ。最後になんか送って高橋君の記憶に愛川希という名前が一生消えないっていう結末。この終わり方はシビれるね」
かくしてマクドナルドを去り、私たちは迫り来る江戸川花火大会の日を待ちわびるのであった。
14へ続く
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